孤高の鬼、羽島伝記   作:狐ノ陽炎

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博麗神社

博麗神社に行こうと簡単に言うが、他の奴を誘うと必ずと言ってもいいほど断られる。まず理由の一つ、遠い。ってよく言われる。私は週6のペースで行くからかそうは思わない。あと大抵の理由としてやっぱ博麗の巫女と仲良くしたくないんだろう。まあ、普通そうだし、これに関しては色々しょうがない部分もある。私は率先して人間を守る立場だからこそ人間と関わる点において嫌ではない。当然博麗の巫女もその内の一人だ。

 

私は普段から歩いて移動する事を心掛けている。理由は特に無いが、ここ数百年そうしていたら歩く事に慣れちゃったって感じだ。もしかして…歩くのが面倒だから断られてるのもあるのか?

 

まあいいか…。気のせいだと信じよう。

 

そりゃあ当然飛んだ方が楽なんだけどさ、歩く楽しみってのを感じるのが幻想郷、妖怪の山の良いとこだと思うんだな。それに加え天気や春夏秋冬百通り、下手したらそれ以上数えきれないほどの景色を楽しめるんだ。なら空を飛んで楽をするより、ちょっと苦労して楽しみを見つけた方が人生…いや鬼生か。楽しいだろう?

 

今日も今日とて昨日と同じで違うような綺麗な景色と風景。夏の鳥や虫の音が鳴り響き、どこの誰か、どんな生物かもわからない気配も感じる。嗚呼、とても心地いい。こんな平和で静かな日々が、毎日でも続いてくれればいいのにな…。

 

「ふぃー、あちー」

 

和服とはいえ夏用を着用している。でも袖の丈が少しでもあるからか、やはり暑い。この季節なら飛んでた方が直射日光直撃でめっちゃ暑いだろうなぁ。森の日陰を上手く辿りながら行くのも悪くない。川の流れる水の音がちょろちょろ聞こえるのもいい。ただの意識でしかないが、とても涼しく感じるからだ。

 

博麗神社へ行くルートは二つある。一つは人里を経由するルート、もう一つはそうではない森や山など、道無き道だ。当然一日一日変わった景色を見る為に、後者のルートを選んでいる。誰かに会う事もほぼ無いから本当に居心地がいい。

 

しばらく歩くと、博麗神社へ向かう最後の階段が目の前に現れる。どのくらい経ったかはわからないが、意識的に景色、風景を見ていたせいか、自己感覚は遥かに短い。さて、階段の角度はかなりキツめで、この炎天下を凌ぐ陰なんか存在しない。ここくらいは飛ぶかジャンプすれば一瞬で境内へ辿り着けるが、それさえも私はしない。これも意識的なもんだけど、神社の階段ってやっぱ近道せずに上った方がいいのかなって思うからだ。体力もあるし腕力もある、そんな鬼だけど炎天下には勝てそうにない。

 

「あっちぃ…」

 

階段を上り終わる頃には汗が頬を何度も流れ、息は切れかかっていた。蝉の声は両脇の森林から煩く鳴り響きっぱなし、あー夏なんだなってより思わせてくる。神社の中も暑いだろうけど、外よりはマシなはず。さっさと入って水でも頂こう。

 

「霊夢ー、いるかー?」

 

障子を勢いよく開け、博麗の巫女を呼んだ。しかし、返事は一切帰って来ない。

 

「居ないのか?」

 

その気配も感じない。こんな暑いのによく外出できるなと、自分自身人の事言えないなーと思いながらそう思った。でも喉は乾いて汗も止まらない。水の在りかは分かってるから、とりあえず勝手に頂くとしよう。廊下を数歩歩いて台所、その横に外の世界から流れついたと言っていたとある機械。確か名前は、『冷蔵庫』だったかな。この中に入ってる物は勝手に冷たくなっていく。不思議なものだけど便利品であることは間違いない。冷蔵庫の中には案の定、瓶に入った水が数本並んでいる。その内の一本を手に取り、私の喉をすぐさま潤わせる。

 

「___っぷはー!!いきかえるー…!」

 

ちょっとここ最近暑すぎてとある妖精が恋しくなる。ぎゅーって抱きしめたらひんやり涼しいんだろうなぁ…。

 

「あらあら、天下無敵の鬼様も、暑さには参ってしまうのね」

 

どこからかよく聞き覚えのある声が聞こえてきた。完全に背後を取られた私だが、見知った相手なので特に慌てる必要も無くゆっくり振り返る。が、あまりにその姿が衝撃的過ぎて私は思わず声を出してしまった。

 

「どうしたゆか…うわぉ!!?」

 

私の驚いた顔を見れて大層満足したのか、静かに扇子を口に当て微笑む。

驚くのも無理はない。上下逆さまに、不思議な"スキマ"と呼ばれる空間から髪を下にぶら下げていたからだ。それに距離があまりにも近かったせいで、余計に驚きを増幅させる。

 

「…何してんの紫」

 

彼女は八雲紫、華扇と同じく幼馴染で同い年の妖怪。誰よりも幻想郷を愛す彼女こそ、博麗の巫女を作り上げた人物で、私の親友だ。

 

「ふふっ。貴方を驚かすために待ってたのよ」

 

そりゃーよかったねー。私がぶすーっとした顔をしたのが分かったのか、もう一度微笑み小さく笑った。

 

「それで、霊夢は?」

「どこだと思う?」

 

この状況、紫の考えていそうな事、これらを考慮すると…

 

「修行か?」

「なーんだ、正解」

 

外してほしかったんだな。残念だがそこまで分からず屋では無いぞお前の親友は。

 

「どーせ邪魔だって言われてここで大人しくしてたんだろ」

「あらあら、それも正解」

 

八雲紫の気配はこの幻想郷において遥かに大きい。そんな彼女が、いくら視界に入らないとはいえ修行中の博麗の巫女を監視していたら気になってしょうがない。邪魔だから神社で大人しくしてろって言われた事なんか容易に想像できる。

 

「いつ修行に出た?」

 

時間によっては夕方まで帰って来ない。

 

「ついさっきよ」

 

あちゃータイミングわりぃ…。

こりゃー本当に夕方まで帰って来ないな。しょうがない、ここは霊夢の夕飯を奢ってやるとするか。とはいえさっき冷蔵庫の中はかなりシケた物しか入ってなかった。相変わらずの貧乏生活を送ってるんだろうな。言ってくれれば幾らでも金渡すし手伝うのに。それを言わないのが霊夢の良い所であり悪い所でもあるんだけどさ。

 

「しょうがねえ、霊夢の為の夕飯を持ってきてやるか」

 

一体何のためにここに来たのやら、博麗神社へ来て五分足らず。今度は冷蔵庫から水瓶を一本取り、それを持ってまた炎天下の中へ出る。霊夢と私、紫は…まあ要らないから二人分か。しかし修行の後すぐに肉なんか食ったら胃もたれとかしそうだよな。ここは精のつく食事、米と魚があれば十分か?料理まですれば文句も何もないだろう。

 

というわけで来た道を戻るように妖怪の山へ、河童達のいる何の滝…だったかな?名称なんかあまり覚えてないけど、とりあえず河童達に会えれば分かるはずだ。

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