変異特異点MMXV:新霊長聖別世紀ネオンジェネシス 作:DUN.ネコノカンリニン
「―――行くよ、頼光!」
『ええ、行きましょうマスター。最先端の鬼退治、ですね?』
エヴァ・カドモンが起動する。藤丸はプラグ内のコンソロールを操作して、エヴァ・カドモンに取り付けられたカメラから得られた外の風景を投影する。すると、そこにあったのは―――
『ぐ、あああああああああああああ!』
「―――シンジ!」
『第五の使徒』に圧倒されている、初号機の姿だった。使徒が放った光の鞭のようなもので初号機がからめとられ、そこの装甲から焦げ付いている。
「第二スキル『魔力放出(雷)』、発動!」
『ご覧になってください』
「『
藤丸はエヴァ・カドモンに指令を出す。エヴァ・カドモンはカルデアから支給された特殊装備・ミナモトソードを抜き、『魔力放出(雷)』で放出した魔力を使い、電光石火のごとく使徒に近づき―――光の鞭を切り裂いた。
「大丈夫、シンジ?」
『あ、ありがとうリツカ! 大丈夫』
「よし、それじゃあ反撃しよう! って、ちょ!」
光の鞭を切り裂いたエヴァ・カドモンを敵だと認識したのか、まだ残っている光の鞭でエヴァ・カドモンを拘束する。
「ぐ、ああああああ!」
『リツカ!』
「私のことはいいから、シンジ! 早く、コアを!」
『うん! うおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
プログレッシブナイフを装備した初号機は、使徒めがけて突進する。しかし―――
『な―――くっ!』
「シンジ! がっ、は!」
『マスター!』
光の鞭に阻まれ、初号機は遠くの神社まで吹き飛ばされる。エヴァ・カドモンは地面にたたきつけられ、転倒する。
「……こっちは大丈夫。ありがとう頼光」
『ええ、それなら良いのですが……あちらの紫色の巨人の搭乗者、筒の扉を開けてますよ?』
「え?」
エヴァ・カドモンのカメラを最大ズームする。それで初号機を観察していると、エントリープラグが排出される。そして―――あろうことか、シンジはエントリープラグのハッチを開け、誰かを招き入れようとしている。
そこには―――
「あれは、鈴原と相田!? どうしてここに?」
『……こちらの通信が聞こえているかしら、リツカちゃん』
「ミサトさん! シンジがハッチを開けてクラスメイトの二人をエントリープラグに入れようとしていて……」
『そう。あの行動に伴って作戦は停止されました。エヴァ・カドモンは残留、初号機は即時にネルフ本部に帰還し、あの二人を保護してから作戦を再開します』
「了解です!」
『その必要はないです、ミサトさん』
声を震わせながら通信に割り込んできたのは、シンジだった。その声の震えからは恐怖の感情をありありと感じ取ることができる。
―――その必要はない。
そう断言したシンジは、続けて言う。
『初号機、特攻します!』
「『はあああああああああああああああああああああああああ?!』」
宣言通り、初号機はプログレッシブナイフを両手に握り、使徒へ突進した。A.T.フィールドを中和し、コアへナイフを突き立てる。
―――火花が散る。コアの外殻と振動するプログレッシブナイフの刃が摩擦によって熱を帯びる。その間にも使徒は初号機の装甲を削っている。
『やめなさい、シンジ君! これは命令です、撤退しなさい!』
『くっ、……いや、だっ!』
「……ああ、もうしょうがない! エヴァ・カドモン、援護します!」
エヴァ・カドモンがミナモトソード片手に使徒の背後に回る。
「2画目の令呪を以て命ずる―――源頼光、宝具を開帳せよ!」
『ご命令とあらば……この頼光、鬼になります』
「マスタースキル『
プラグ深度が徐々に深くなっていく。それに伴ってシンクロ率も上がっていき―――プラグ深度は安全域スレスレの100まで到達した。
「宝具、開放!」
『来たれい四天王。……いえ、牛頭天王の神使たち。我が記憶の形をとりて―――参ります! 「
それぞれ異なる五つの武器による神速の五連撃。最後の童子切安綱の形に変形したミナモトソードの攻撃でコアにヒビを入れる。
「シンジ! 今!」
『くぅぅぅ…………あぁぁぁぁぁぁぁ! 砕け……ろっ!』
予備電源も底が尽きそうになったとき、初号機がより力を入れて使徒のコアを砕く。
そして使徒は活動を停止して―――エヴァ初号機も、その活動を停止した。
「は―――やった……!」
『マスター、もう、母は眠ります』
「うん。お疲れ、頼光」
ほぼ同時に、令呪で装填した魔力も切れたからか、エヴァ・カドモンもその活動を停止した。
「……どうして、あんなことをしたの?」
「……」
暗い更衣室に、少年と大人はいた。少年はストローが刺さったままのカップを両手で握りしめ、ベンチに座っている。大人は暗い更衣室を照らす唯一の光を背に、腕を組んで仁王立ちしている。
その顔には怒りと同時に失望も見て取れる。
「私は指揮官で、あなたは部下。当然、あなたには命令に従う義務があります」
「……わかってますよ、そんなこと」
「―――ッ!」
少年の一言が、大人をさらに激昂させる。
大人は、少年の胸倉をつかむ。少年は、力なく手に持っていたカップを床に落とす。
―――それでも少年は、大人と目を合わせようとしない。まるで対話する気はない、早くどこかに行けとでも言うように。
そんな様子を見て呆れたのか、大人は手を離し、更衣室を後にする。
暗いままの更衣室には、うなだれた少年と、床に液体を血のように垂れ流す蓋の外れた紙コップだけが転がっていた。
「ふんふんふふ~ん」
藤丸は居候先のミサト宅にいち早く帰り、夕食の準備をしていた。入居初日に決まったことで、家事の当番が毎日決まっている。今日は藤丸が夕食の当番だったというわけである。
まな板の上にはキャベツが半分に割られた状態で包丁を添えて置かれている。そしてその横にはバットが置かれており、カラッと揚げられたとんかつが三つほど並んでいる。
「いや~エミヤに料理習っといて良かった~」
そう呟いて、トントントンと小気味良いリズムでキャベツを千切りにしていく。
そして全て切り終えたとき、ぐつぐつと隣の鍋が震えだした。
「お、ナイスタイミング!」
藤丸は鍋にかけていた火を止めようとした。しかし、その時。
プルルルルル、プルルルル。
間の悪いことに電話がかかってきた。藤丸の持つ携帯電話にはカルデアかシンジ、ミサトしか登録していないのでどちらに転んでもすぐに出なければいけない内容である。
「はー……誰だろ? ミサトさんからだ」
応答ボタンを押す。
「もしもし、藤丸です」
『あ、リツカちゃん! シンちゃん、まだ帰ってない?』
「はい、まだ帰ってきてないからご飯食べてないですよ」
『え―――それは困った! あのね、リツカちゃん……シンちゃん、行方不明になっちゃった!』
「―――は?」
藤丸は茫然とした表情で言った。
火を消し忘れた鍋からはみそ汁が沸騰し、気泡があふれていた。
ちょっと短いかも