変異特異点MMXV:新霊長聖別世紀ネオンジェネシス   作:DUN.ネコノカンリニン

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EVANGELION
:1.00 + f
YOU ARE(NOT) ALONE IN YOUR FATE


投稿遅れてずびばぜん……!
今回微妙にネタバレ注意です。原作履修推奨タグを追加しました。


第十一節:赤い瞳

「転校生! ワシを殴れ!」

 

 シンジが解放された翌日、監視付きという条件下であるが、登校が許された。シンジは学校に行き、一人で音楽でも聴こうかなと教室を出た瞬間これである。

 なぜか呼び出され、なぜか殴れと言われている。

 

「手抜きはナシや! ええから早うせい! せやないと、ワシの気持ちも落ち着かん!」

「そういうことだからさ、頼むよ」

「そ、そういうことなら」

 

 シンジは使徒との戦闘をシミュレートした模擬戦闘で培った技術を使って右フックをかます。幸い、シンジの筋力は平均よりも下回っており、大事には至らなかったが、それでも軽い脳震盪を起こしてトウジは眩暈を感じた。

 しかし、トウジはそれを気合で耐えた。

 

「………これで貸し借りチャラや! 殴ってすまんかったな、転校生!」

 

 トウジは笑って言った。それにつられてシンジも笑った。

 その様子を、じっと、赤い瞳で見つめていたのが―――綾波レイ。彼女は渡り廊下に立っていた。

 そして、その後ろから近づく不穏(?)な影。赤色のサイドテールがぴょこぴょこと跳ねている。

 

「綾波さん!」

 

 後ろから勢いよく呼びかけたのは、藤丸だった。レイは、それを認識し、ひどく落ち着いた様子で振り向いた。

 

「なに?」

「いや、特に要件はないんだけど……邪魔だったかな?」

「邪魔じゃない。けど、不要な会話はしたくない。そういうことだから、さよなら」

「え、ちょっ!」

 

 レイは、それに応えることなく去っていった。

 

 

「ってことがあったんですよミサトさん!」

「あら、そうなの。まぁレイはあんなもんだしねぇ。本人の気質上仕方ないっていうか、そこは境界を見極めるしかないわよ~」

 

 クルクルとコースター付きの椅子を回してミサトが言う。

 隣に座っていたリツコが、ある一部の資料を棚から取り出す。

 

「綾波レイ、十四歳。マルドゥック機関によって最初に選ばれた適格者、第一の少女。エヴァンゲリオン試作零号機、専属操縦者。過去の経歴は全て白紙、抹消済み」

「白紙で抹消済みって……」

 

 少し綾波レイという少女に向ける視線に疑いのまなざしが混ざる藤丸と、

 

「その綾波を助けるために父さんが……」

 

 綾波レイという少女に起こった一つの事故に介入し、レイを父が助けたという事実に驚きを隠せないシンジ。

 件の事件の概要というのは、端的に言えばエヴァ零号機が起動実験中に暴走し、レイが負傷したというものだ。

 そのとき、ゲンドウは高温に熱されたエントリープラグのハッチを開けようとして手に火傷を負った。その時の火傷を隠すための手袋である。

 

「にわかには信じられないわね」

「正規の報告書には記載されていない零号機の暴走事故。削除されているけど、紛れもない事実よ」

「でもそんな暴走事故を起こした零号機の凍結解除、ちと早すぎない?」

「使徒は再び現れた。これは急務よ」

「そりゃそうだけど……」

「ともかく、レイとのシンクロテストは合格。あとは神経接続の再配備がすめば……」

「本格配備、ってわけね」

 

 ミサトとリツコはシンジのデータを見ながら零号機の再配備についての議論を交わしていた。その横で、藤丸は口に手を当て、思考を巡らす。―――綾波レイと言う、少女のことを。彼女から見たレイは、あまりにも怪しすぎる。巨大な陰謀が渦巻いていないと言うことはありえないと言わんばかりに。

 そも第六の異聞帯(ロストベルト)で味方にラスボスがいたばかりなのだ。そのせいで神経が尖っていたのかも知れない。

 

(味方側に敵がいたのはオベロンという前例がいたから有り得ないわけじゃない……。けど、なんかそういうものじゃない気がする。もっと、違う何か―――)

 

 

「―――綾波、どうしていつも一人なんだろ」

 

 シンジはプラグ内から見える景色を見ていた。ケイジにかけられた移動用ブリッジ。そこに零号機のエントリープラグからレイが出てくる。

 そのレイに近づくゲンドウ。

 そして、彼らは親しげに話し始める。

 

                       ―――その光景が、酷く不思議だった。

 

 レイはいつも彫像のように動かさない顔を綻ばせている。

 

                       ―――その光景が、酷く妬ましかった。

 

 ゲンドウは自分には絶対に見せない表情を浮かべている。

 

                       ―――その光景が、酷く羨ましかった。

 

『第三次冷却に入ります。第六ケージ内は、フェーズ三までの各システムを落としてください』

『先のハーモニクス、及びシンクロテストは異常なし。数値目標を全てクリア』

『了解、結果報告はバルタザールへ』

『エントリープラグのパーソナルデータは、コールレンジにてメルキオールへコピー。データ送りします』

『回路接続。第三次冷却、スタートします』

『カスパーの状況データを、メルキオールへコピー』

『現在、初号機の最新値は〇.八』

『各タンパク壁の状態は良好。各部、問題なし』

『零号機の連動試験再開まで、マイナス百五十分です』

『了解。定時シンクロテスト、第五〇八プログラム終了。シンジ君、お疲れ様』

 

 いつの間にかシンクロテストは終わっていた。しかしシンジの意識のうちは、ほとんどが困惑と羨望、そして嫉妬で埋まっていた。

 そんな感情も、エントリープラグから出る頃には全て忘れていた。

 

 

 ミサトとリツコはいつか来たバーで飲んでいた。カラン、とグラスと氷がぶつかって音がする。

 

「それで? リツカちゃんやシンジ君との生活は慣れた?」

「まあね、少し、慣れた」

 

 ミサトは頬杖をついて、なんとなく味気のない返事をする。

 

「まだ緊張してるの?」

「いや、今回は恋愛じゃないし、それに急に二児の母親になったようなものよ。緊張もするわ」

「あら、あなたの実生活からよく母親なんて言えたものね」

「う、うっさい! それに、もう家事だけが母親の仕事じゃないんです、よ!」

 

 手元にあったグラスの中に注がれていた酒を一気にあおる。ミサトの口の中にアルコールの香りが充満する。

 

「けほっ、けほっ!」

「あぁ、ほら、一気にあおるから。マスター、水、もらえるかしら」

「わかりました。新人ちゃん、水持ってきて」

「はーい!」

 

 マスターがキッチンの奥に声をかけると、奥から水を持った一人の少女が来る。

 

「はい、こちら水で……す」

「あら、ありが……って、あなた、リツカちゃん!」

「あ、お疲れ様で〜す……」

 

 サイドテールを跳ねさせながらバーテンダー制服に身を包んで現れたのは藤丸だった。

 

「―――で、リツカちゃんはここで何を?」

「えーと……少しばかりバイトを」

「葛城一尉、この子はここの人手不足を知って、自ら手伝ってくれているのです。それに人材も派遣してくれて……本当、感謝しかありません」

「あら、そうなの」

「というか……なんでミサトさんこんな酔ってるんですか?」

 

 リツコは今までの内容を要約して説明する。

 

「はあ……」

「本当、シンジ君も物好きね。こんな保護者の家に帰ってくるなんて」

「違うわよ。私がいるから帰ってきたんじゃない。お父さんがいるから帰ってきたのよ」

「多分、それは違うと思います」

 

 藤丸はミサトの発言を否定する。

 

「シンジは、ミサトさんがいるから戻ったんです。ミサトさんを、信頼しているから」

「……そう、なの。よかった……」

 

 ミサトは安堵の表情を浮かべる。

 その時、ピロピロと携帯が鳴る。藤丸はそれを開いて電話に出る。

 

「もしもし、藤丸です。あれ? シンジ? え、明日テストォ?! ヤバっ帰らないと! マスター、今日上がらせてもらいます!」

「はい、お疲れ様です。新人ちゃん」

「私もそろそろ仕事に戻らないと。……そうだ、リツカちゃん、帰るなら、これ」

「? なんですか、これ?」

「シンジ君の正式なIDと綾波レイの新しいセキュリティカード。さっき渡しそびれちゃって」

 

 それを見てミサトはいつか語った突拍子もない計画を思い出す。少しニヤけた。

 それが覚えていた友人への賛美なのか、照れ隠しなのか、自分でもわからなかった。

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