変異特異点MMXV:新霊長聖別世紀ネオンジェネシス   作:DUN.ネコノカンリニン

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遅くなりました……テストでね、書く時間がなかったんすよ。
ついでにインフルでね、寝込んでたんすよ。
決してサボったわけじゃないんすよ。エタってもないです。だから安心してね!



あと今回で「序」終わるよ。(唐突)


第十三節:YOU ARE(NOT) ALONE IN YOUR FATE

「……中々無理のある作戦を立てたんじゃないかね?」

 

 ゴルドルフは目の前の資料を見つめながら不安げにつぶやく。その資料には「第六の使徒」をどう撃破するかといった内容が記されている。

 

「確かにゴルドルフ君の懸念は杞憂じゃない。今回の作戦、完遂できるかはエヴァ・カドモンパイロットとネルフの協力にかかっている」

 

 そう言ってダ・ヴィンチは手元の資料を一枚めくる。そこには、ある一基の兵器の設計図が描かれていた。名は

 

 『人理定理・使徒爆縮(ヒュームバレル・エンジェルステア)』。

 とある兵器の作成に使用した「聖剣のエッセンス」の残滓を使用して作成された巨大なスナイパーライフル。その威力はアルトリア・リリィの宝具「勝利すべき黄金の剣(カリバーン)」の十三封印を解いた完全解放に匹敵する。

 

「ネルフが自衛隊の基地から開発中のポジトロンスナイパーライフルを得たという情報が入った。恐らくネルフとの共同戦線は間違いないだろう。ダ・ヴィンチ、君の読み通りになった」

「ふふん、もっと褒めてくれても良いんだよキャプテン」

 

 ダ・ヴィンチが誇らしげに言う。なんかこのままほっといたら話進まなそうだな、と思ったゴルドルフが咳払いをして会話を断つ。

 

「えーコホン! 話が弾んでいるところ悪いが、そろそろ本格的なネルフとの打ち合わせが必要だ」

「おっと、それもそうだ。では私とゴルドルフ君はネルフとの打ち合わせに行ってくるから、マシュと立香ちゃんは心身を休めておいてくれ」

「「はい!」」

 

 

「しかしまた、無茶な作戦を考えたものね。葛城作戦部長サン」

「はいはい、二回目のダメ出しありがとうリツコ。けど、今から絶対に無理とは言えなくなるわ」

「それはそうね……まさか、カルデアも同じ作戦を考えていたなんて。もしかしてミサト、カルデアに情報送ったんじゃないでしょうね?」

「そんなわけないでしょ。いくら同盟相手とは言え、そんなバカなことするほど信用してないわよ。私」

 

 ネルフ本部内の会議室。薄暗い照明の中、二人の女性は待ち人を待つ。

 今回の作戦の大きな協力者―――カルデアを。

 すると、会議室のドアが開く。

 

「すまない、遅くなってしまったね」

「いえ、問題ありません。レオナルド・ダ・ヴィンチ技術顧問。そしてゴルドルフ・ムジーク所長、お待ちしておりました」

 

 リツコが言う。

 扉を開けて現れたのは中年の小太りの西洋人とかの「万能の人」レオナルド・ダ・ヴィンチを名乗るどちらかというとレオナルドの作品である「モナ・リザ」に近い見た目をした少女だった。

 

「お越しいただきありがとうございます、ダ・ヴィンチ技術顧問殿、ゴルドルフ所長殿。では、今回の作戦―――ヤシマ作戦について話をしましょう」

「ああ、そうだね。よろしく、葛城ミサト作戦局部長、赤城リツコE計画担当博士」

 

 リツコ、ミサト、ダ・ヴィンチがこれからの作戦について対話をしようとしているとき、ゴルドルフは、

 

(……これ、私がいるの場違いすぎないかね?)

 

 と、内心震えていた。

 

 

 ―――西日が差す電車の中。誰かが、自分の目の前に座っている。

 ガタン、ゴトンと線路のつなぎ目を電車の車輪が通り過ぎていく音が車内に響く。

 

「嫌なんだよ、エヴァ・カドモンに乗るのが。だって怖いんでしょ。味わったでしょ、あの恐怖を」

 

 目の前の何者かが自分に語り掛ける。

 

「世界を救う、とか言って単に利用されているだけなんじゃない? 平凡な日常が、続けばよかったなって思うこともあるでしょ?」

 

 誰かが、自分に。

 

「でも、は……」

 

 反論する。

 

「世界を救って、生きてていいって、自信が欲しいんだよ。だっての代わりはいな―――」

「いえ、あなたの代わりは、いる」

 

 自分は振り返る。

 

「―――綾波、レイ」

「だって、いるでしょう? カドック・ゼムルプスという人が」

「―――!」

 

 それは、自分がいつか見た夢。腐ったような、夢の終わり。

 

「私は、私は―――!」

「今ので乗り越えろ、共犯者」

 

 はっとして目線を上げる。そこには、轟々と炎を、自らの復讐を燃やし続ける者が。

 

「巌窟王―――」

「面を上げろ、藤丸立香。そこに立つべきは、何者か。自覚しろ、人類最後のマスター。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ―――車内は、恩讐の炎に包まれた。

 

 

「―――っ!」

「大丈夫ですか、先輩?」

 

 藤丸は、ベッドの上で目を覚ます。肌は汗ばんでいた……なぜかはわからないが。

 

「うん、大丈夫……」

「そうですか……なにかありましたら、遠慮なく言ってくださいね。では、ダヴィンチちゃんより作戦―――ヤシマ作戦のスケジュールが届いていたので確認、お願いします」

「おっけ」

「では、失礼します。九十分後に集合です」

 

 ドアが閉まる。そして、藤丸は憂いを帯びた面持ちをパチン! と叩く。

 

「よし、行くか」

 

 目に決意を灯して、藤丸は歩みを進めた。心の中に淀んでいた漠然とした不安は、すでに彼女の心の奥底にしまわれた。

 藤丸は黒い上着に袖を通しながら廊下を歩く。いつもは遥かな青空を映している窓ガラスも、今は近未来的な風景とそれを燃やすように照らし出す夕焼け、そしてこれから自分たちが射殺すべき敵を映し出している。

 ストーム・ボーダーは現在第三新東京市上空を擬態してホバリング中。

 藤丸は食堂で少し腹ごしらえしようと向かう。

 

「エミヤ、急ぎで何か作れる?」

「ん、ああ、マスター。了解した。事情はこちらでも把握している。サンドウィッチでも構わないかな?」

「ありがと、エミヤ」

 

 エミヤは手際よくサンドウィッチを作る。レタスをちぎり、ハムを用意し、パンにバターとマスタードを塗って、レタスとハムを挟む。そしてまな板で少し押さえる。

 パンの耳を切り落とし、それをボウルの中に入れる。

 パンの耳を切り落としたサンドウィッチを四つに切り分け、皿に盛りつける。

 そして切り落としたパンの耳を油で揚げ、砂糖をまぶす。

 

「待たせたな、マスター。サンドウィッチとパンの耳を揚げたものだ」

「やった! いただきます!」

 

 藤丸は、四つに分けられたサンドウィッチの一つにかぶりつく。

 

「ん~! 美味しい!」

「それはよかった。喉を詰まらせないようにな」

 

 そう言ってエミヤは厨房へ消えていった。

 食事を終えた藤丸は、「ごちそうさまでした!」と手を合わせた後、時間を惜しむように資料を取り出し、目を落とす。

『ヤシマ作戦』

 そう大々的に印字された黒表紙の資料を開く。そこには、これから行われる作戦のスケジュールが事細かく記されていた。

 

「えーっと、『明日、午前零時より発動されるヤシマ作戦について。藤丸立香、マシュ・キリエライト両名は午後七時三十分、第二ターミナルに集合。午後八時〇分、エヴァ・カドモン暫定改修型参号機、および魔術機動礼装ヨハネ・オルテナウスに付随し、移動開始。午後八時五分、発進。同三十分箱根駒ケ岳カルデアベース到着。以降別命あるまで待機』……ね。作戦概要は、どんなのかな……って、えぇ!?」

 

 記されていた作戦は、無茶という言葉が一番似合うものだった。現実的ではあるが、再現性が限りなく低い。だが、やれそう。そんな評価が付くものを、作戦と呼んでいいのだろうか。藤丸は心の中でそう独白した。

 

「落ち着けマスター。今回の作戦、絶対に成功する」

「いや無理でしょこれは。てか、なんでエミヤがそう言えるの?」

「なぜかって? フッ……それは今回の作戦、私が出るからだ。マスター」

「へーエミヤが出るんだ……って、ええええええええええええええええええぇぇぇぇぇえ!? エミヤが!? 適正あったの?」

「ああ。適性があったらしい。なぜかはわからないがね。ま、そういうことだから任せておきたまえ、マスター」

 

 赤い弓兵は、そう言ってエプロンを外した。

 

 

「よし、ギリギリ間に合った~!」

「ちょうどです、先輩」

「来たわね。では、作戦を伝えます……と行きたいところだけど、まだ少し時間に余裕があるからシンジ君、マシュちゃん、リツカちゃん。ちょっち付き合って」

 

 そう言って、ミサトは三人を連れてエレベーターに乗る。そのエレベーターはどんどん下に進んで行く。

 

「十五年前、セカンドインパクトで、人類の半分が失われた。今、使徒がサードインパクトを引き起こせば、今度こそ人は滅びる。一人残らずね。私たちが、ネルフ本部レベルEEEへの使徒侵入を許すと、ここは自動的に自爆するようになっているの。たとえ使徒と刺し違えてでも、サードインパクトを未然に防ぐ。その覚悟を持って、ここにいる全員が働いているわ」

「……」

(……そのセカンドインパクトって、ほんとなんなんだ……)

 

 藤丸は少し思考を巡らせる。だが、その思考もいつもとは違うアラームで遮られる。

 ミサトがクリアランスキーをかざして扉を開ける。

 階数は「L-EEE」。

 重い鉄の扉が開かれたとき、そこに、何かがそびえているのが見えた。

 

「これは……エヴァ?」

 

 シンジが驚嘆の声を上げる。

 藤丸も、驚きで声が出ない。

 

「いいえ。これはこの星の生命の始まりでもあり、終息の要ともなる、『第二の使徒』リリスよ」

「リリス……メソポタミアの悪魔でしょうか?」

「まあ、ただ上がつけた名前がそうってだけね。こいつの本当の名前なんて、誰も知らない。そして、このリリスはサードインパクトのトリガーともいわれている。リリスを守りながら使徒を殲滅する。それは、シンジ君。あなたにしかできないことなの」

「……そんなつらいこと、どうして僕なんですか?」

 

 ミサトは、一瞬沈黙してリリスを睨みつけながら言う。

 

「理由なんて、無いわ。その運命が今回、あなただったってだけ。ただし、シンジ君だけが命を懸けて戦っているわけじゃない。みんな一緒よ」

 

 ミサトはリリスに向けていた顔をシンジに向ける。そして、少し微笑んだ。

 その表情に揺れ動かされたのか、シンジは少し俯き、「もう一度乗ってみます」と言った。

 

 

 作戦現場。

 そこに計四体の巨人が運ばれてくる。

 

「では、本作戦の担当を伝えます。シンジ君、リツカちゃん」

「「はい」」

「二人は初号機、及びエヴァ・カドモンで砲手を担当」

「「了解」」

 

 ミサトは向き直ってマシュとレイのほうを向く。

 

「レイ、マシュ・キリエライトちゃん」

「はい」

「は、はい!」

「二人は零号機、及びJAで防御を担当」

「はい」

「了解しました」

 

 ミサトの担当告知が終わった時、続けて後ろからリツコが出てきて作戦の詳しい概要を伝える。

 

「いい、砲手担当の二人。陽電子は地球の自転、磁場、重力の影響を受け、直進しません。その誤差を修正するのを忘れないでね。正確に、コアの一点のみを貫くのよ」

「でも、どこがコアかなんてわかんないですよ」

 

 藤丸は「第六の使徒」の姿を再度思い浮かべる。

 青色の正八面体。たしかに、今まで戦ってきた使徒と比べて明確な露出している弱点というものが少ない。というか見当たらない。

 その疑問に、リツコは答える。

 

「問題ないわ。目標には、攻撃中にだけ実体化する部分があります。それがコアだと推測されているわ。あなたたちは十字とマークが重なる瞬間に合わせて引き金を引くだけでいいの。初号機もエヴァ・カドモンも、あとはAIが自動でやってくれるわ」

(……エヴァ・カドモンの調整って、AIなのかな? EI(REI)の間違いじゃないかな?)

 

 初号機が後ろで運び込まれている様子をしり目に、リツコは続ける。

 

「ただし、狙撃用大電力の最終放電集束ポイント、またカルデアが要地と言っていた場所は一か所のみ。よって、二機はそれぞれ狙撃作業中は動くことができません」

「逃げれないってことですか……」

「そうよ」

「それじゃあもし外して敵が反撃してきたら……」

「余計なことは考えず、射撃に集中しなさい」

 

 そう言われて、シンジは押し黙る。すると、後ろで沈黙を守っていたレイが、口を開く。

 

「私は、初号機を守ればいいのね」

「そうなるわね。そしてマシュ・キリエライト。あなたはエヴァ・カドモンの防御よ」

「はい! シールダーの意地を見せます!」

「頼もしいわね。シールダーってのはいまいちわからないけれど」

 

 そしてミサトが歩み出て、一言。

 

「時間よ。全員着替えて」

 

 

 天球には、まるでこちらをのぞき込むような眩しい星々。

 それを見上げる人々。

 ―――ヤシマ作戦の第一段階が始まっていた。全国の発電所から、発電された電気をすべて集めて、溜める。

 都市部も、徐々に消えていく。外側から始まって、徐々に徐々に内側に。高層ビルも上から下に順に電気が消えていく。そして最終的に、中央にある信号さえ、その灯を消した。

 消灯。

 そんな様子を、プラグスーツとオルテナウス装備にそれぞれ着替えた藤丸とマシュは足場から眺めていた。

 なぜか、話を切り出すことができない微妙な雰囲気が流れる。

 

「……」

「……」

「……きれいだね」

「はい。私も、そう思います。なんだか、悲しいような、懐かしいような気がする。不思議な感じですね」

 

 マシュは感嘆の息を漏らす。

 その様子を見て、藤丸は言う。

 

「マシュは、今、楽しい?」

「え、はい。少し不謹慎ですが……今までにないような戦いなので。先輩が言っていたロボットのロマンというのが、なんとなくわかった気がします」

「でしょ? カッコいいよね。こういうの」

「はい!」

「……いきなり、訳も分からない特異点に巻き込まれたときは少し不安だったけど、それでもこんな体験ができたのはよかったって思ってる。私も楽しいよ、マシュ」

「先輩……!」

 

 その時、ピロピロと無信が鳴り、音声が流れる。音声はダ・ヴィンチからだった。

 

『やあ、立香ちゃん、マシュ。いい夜だね。さて、挨拶もここまでにして本題だ。

 作戦開始まで残り十分を切った。これから二人ともそれぞれの機体に搭乗してもらう。いいね?』

「「はい!」」

『よろしい。では、移動を開始してくれたまえ!』

 

 プツリ、と無信が切れる。

 藤丸は無信機をしまって、マシュに向かって手を差し出して立つ。

 

「じゃあマシュ。行こう!」

「……はい、マスター!」

 

 マシュはその手を取って立ち上がる。そして、光が失われた町を背に、それぞれ歩き始める。

 時刻は午前零時を回った。

 ヤシマ作戦、開始である。

 

「よし、エントリー完了、令呪も装填! エミヤ、聞こえてる? ……エミヤ?」

 

 流れるのは沈黙だけ。

 だが、かすかに聞こえる声がする。

 

「よかった、いたんだ」

『な、なぜだ……』

「へ?」

『なぜ、なぜ私が―――マスター、一回実体化しても良いかね?!」

「言ってるそばから実体化してるじゃん……って、え? エミヤ、どうした」

「聞きたいのは私だ! なぜ、なぜ私が―――マスターに似た女性になっているのかね?! おいダ・ヴィンチ、聞いているか?!」

 

 通信ウィンドウが開く。

 

『ああ、こちらでも今観測した。なるほど! エヴァ・カドモンに適性のある男性サーヴァントを憑依させると霊基に異常が出る場合があると。これで少し研究が進んだよ。ありがとうエミヤ』

「どういたしまして……じゃないわ、たわけ! どうしてくれる!」

『うーん……まだこちらではどうすることもできない。耐えてくれ!』

「なんでさ……。まぁいい。私はおとなしく、射撃補正システムに戻るとするよ』

 

 そう言ってエミヤは霊体化した。

 

『ふぅ……なんかすごいことになってたね』

「そうですね……」

『よし、気を取り直して! 今回の作戦は二子山第二基地と箱根駒ケ岳カルデアベースでの高出力兵器一斉射撃での狙撃作戦だ。どちらかが外してもどちらかが仕留めることができる……と考えての作戦だ。だから本当に、君はあの使徒のコアを破壊することだけに集中してくれ。あとのことはマシュがやる。碇シンジとタイミングを合わせて撃ってね』

「了解! アーチャー、修正任せた!」

『ふむ。了解した』

 

 そして、パッと大きな閃光が走る。

 

「これは?」

『合図だ! 我らが羅針盤は指し示す(I am the born of my sword)……。全行程終了(ロールアウト)、「人理定理・使徒爆縮(ヒュームバレル・エンジェルステア)」、全装填門待機(フルオープン)! こちらの準備は万端だ、マスター!』

『カウントスタート! 13、12、11、10……』

 

 ダ・ヴィンチのカウントダウンの声に、藤丸は脂汗をにじませる。いつものマシュのようにバイザーをつけ、使徒のコアと思われる付近に現れているマークと十字をじっと見つめている。

 

『9、8、7……』

 

 ゆっくりと、近づいていく。

 指に、少し力が籠められる。それと同時に、少し、心臓が締め付けられる。

 

『6、5、4……』

 

 意識が、遠くなっていく。まるで、ここに自分じゃない誰かがいるみたいに。

 この一射に、全てがかかっている。人類の未来の、全てが。恐らくこの特異点で解決しなければ、白紙の地球が焦土に代わるような、なにかを討たなければ。そのプレッシャーが、意識を追い出してく。

 

『3、2、1……』

 

 だが、迷いは捨てた。こちとら人類最後のマスターやぞ、と自らを奮い立たせる。

 鷹のような目つきで、使徒を見据える。

 

『発射!』

 

 瞬間、閃光が走る。

 藤丸がトリガーを引いた瞬間、視界が真っ白になり、そして黄金の輝きが銃口から放たれた。

 それこそ、聖剣の輝き。

 その聖剣の輝きは質量を持ちながら、陽電子と同等の速度で直進して―――使徒のコアらしき部分に命中する。

 

”ぎやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!”

 

 と甲高い音を立てて、黒い結晶と化す。

 

「やった!」

『ああ。こちらでも確認した。目標から生体反応消失。「第六の使徒」は殲滅された! よくやったね、立香ちゃん!』

『いや、待て! おかしい。コアを砕いたはずなのに、液体化しない!』

『―――! マスター、危ない! はああああああああああああ! 「いまに在りし夢想の城(ロード・キャメロット)」!』

 

 ―――その時、使徒は一瞬だけ形状を取り戻し、初号機のいる方向とエヴァ・カドモンのいる方向それぞれに光線を照射した。それが最期のエネルギーだったのかわからない。だが、使徒はすぐに形状崩壊した。

 

『……霊基パターン、最後だけ変化していた。あの使徒―――土壇場の土壇場、今際の際でクラスを復讐者(アヴェンジャー)に変化させていた! いや、それよりも……立香ちゃん! 碇シンジ―――いや、綾波レイが危ない! すぐに救助に向かって!』

「はい! マシュ、行ける?」

『今すぐにでも行けます!』

「それじゃあ行こう」

 

 そうして、エヴァ・カドモンとJAは二子山へ向かった。

 二子山。特徴的な二つの山がつながったような形をしている山で、その斜面に今回の作戦の要が建てられている。

 その要―――二子山第二要塞。その近くの森林を、二人の少女は歩く。

 焼けてしまった森。その中に、山吹色の巨人が一体。近くに見慣れた筒状のエントリープラグが転がっている。

 

「綾波さん!」

 

 近寄ってみると、シンジがエントリープラグの中からレイを出している。

 

「シンジ、綾波さんは?」

「あ、リツカ! うん。綾波は大丈夫だと思う」

「少し痛いけど、大丈夫」

 

 そう言って、綾波レイは()()()()

 その微笑みは、女性の藤丸でさえ少しドキリとしてしまうほど魅力に満ちていた。

 

「綾波さん、笑えたんだ」

「うん。碇君が教えてくれた。こんな時は、笑えばいいって」

「いいね、素敵な笑顔」

「はい。素敵です!」

「……嬉しい。けど、照れる……」

 

 レイは、頬を赤らめて言う。

 

「うん、かわいいよ。綾波」

「お、シンジ。口説いてる?」

「く、口説いてないよ! リツカ!」

「いじり過ぎはよくないですよ、先輩」

「ふふ、ごめん!」

 

 そう言いあって、四人の少年少女は森林の中を歩く。

 孤独でない、戦い。

 そのようなものが、シンジの心を満たした。シンジは、心の隅で思う。

 

僕の運命は、決して孤独じゃない(I am not alone in my fate)

 

 そして、歩を進める。

 その影を、三十八万キロメートル先の瞳が、捉えていた。

 

 

 月面にて。

 一人の少年が、棺からよみがえった。

 赤い瞳は三十八万キロメートル先の運命を見据えている。

 

「また三番目とは、変わらないね。君は。……そう、君は。

 今回はイレギュラーが多い。―――まあ、いいかもね。それも」

 

 真上の地球を見上げて、少年は言う。

 

「逢える時が楽しみだ、シンジ君」

 

 その姿は、まるで人間とは思えぬほどに整っていた。

 すべてを壊してしまいそうな危うい雰囲気を漂わせながら、少年は、これからの運命を嘆いた。

 

 

  ―――新霊長聖別世紀ネオンジェネシス・序[YOU ARE(NOT) ALONE IN YOUR FATE]/了




―――予告―――

 出撃するエヴァ仮設五号機。
 配属されるエヴァ2号機とそのパイロット。
 消滅するエヴァ4号機と強行されるエヴァ参号機起動実験。
 月より飛来するエヴァ六号機とそのパイロット。
 そして目覚める白狼、新たなるエヴァ・カドモンとそのマスター。
 次第に壊れゆく碇シンジと藤丸立香、そしてカルデアの物語。
 ―――この運命は、何処へ向かうのか。
 これは、失われた運命を取り戻す物語。
 次回、「新霊長聖別世紀ネオンジェネシス・破[YOU CAN(NOT) ADVANCE IN YOUR FATE]」
 さぁて次回も、サービスサービスゥ!
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