変異特異点MMXV:新霊長聖別世紀ネオンジェネシス   作:DUN.ネコノカンリニン

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第一節:第三新東京市

「ようこそ、カルデアへ。歓迎するぜ?」

 

 その可憐な少女は言った。

 カルデア―――

 その言葉を碇シンジは頭の中で反芻する。

 なまじ学者上がりの叔父夫婦へ預けられただけあって、その言葉に検索がかかる。

 

「カルデアって―――」

「う〜ん。君が想像しているカルデアとは違うかな。ここはネブカドネザル王の治めていたカルデア国の名を冠したものではない。

 ―――人理保障機関カルデア。星見のカルデアさ」

 

 予想を外してしまったことにシンジは少し肩を落とす。しかし、まずい状況には変わりないことに気がついた。

 

「あなた達って、何なんですか? ネルフじゃないんですか」

 

 その問いに、可憐な少女は首をかしげる。

 

「ネルフってのは知らないかな。けど……ああ、そう言うことね。目の前の状況が受け入れられないのか。

 まず自己紹介しようか。―――私はダ・ヴィンチ。レオナルド・ダ・ヴィンチだ。気軽にダ・ヴィンチちゃんと呼んでくれたまえ」

「レオナルド・ダ・ヴィンチ……って、ええ! 男じゃないんですか?!」

 

 シンジは驚愕した。

 まさか歴史で男性だと習った偉人が、女性であったというこおを知ったならば、誰でもこのような反応になるであろう。

 

「いや、大きな私がそういう趣味だったからね。この姿はその模倣だよ。……私についてはここまでとして。このカルデアの愉快な仲間たちを紹介しよう!」

 

 そう言ってダ・ヴィンチは振り返り、人物を手で示す。

 

「このカルデアの希望の光であり、人類最後のマスター―――藤丸立香。

 そしてデミサーヴァントのマシュ・キリエライト。

 元クリプターのカドック・ゼムルプスに、ゴルドルフ・ムジーク新所長だ」

「あ……碇―――碇シンジです。よろしくお願いします」

「よろしく、シンジ!」

「はい、よろしくお願いします。シンジさん」

「ああ、よろしく」

 

 藤丸、マシュ、カドックが言う。

 そして、ズイッとゴルドルフが前へ出てきた。

 

「先程、技術顧問のダ・ヴィンチに紹介された、ゴルドルフ・ムジークだ。

 ……早速だが、ここはどこか知っているか?」

「ここって……ここは第三新東京市ですよ。箱根の」

 

『は、箱根……?』

 

 疑問と沈黙が、その場を支配した。

 シンジは、その状況についていけず、ポカンとしていたのは言うまでもない。

 

 

 ―――使徒の襲撃は続いている。

 そう頭の中で独白したのは女、葛城ミサトであった。

 彼女は、自らの愛車―――アルピーヌ・ルノーA310のボンネットへ背中を預け、ガラケーの画面をじっと見つめていた。

 彼女が何をしているのか。端的に言うと人を待っているのである。

 しかし、普通の民間人とは違う―――第三の少年と呼ばれる少年のことを。

 名を、碇シンジと言い、彼女が所属する組織―――特務機関ネルフの総司令である碇ゲンドウの息子である。

 ……だが、当のシンジが一向にこない。

 使徒の襲撃が始まり、国連軍との交戦が始まり、第三新東京市はもはや戦場と言っても過言ではないこの状況に、何をしているのか。

 ミサトは、アルピーヌ・ルノーへ乗り込み第三新東京市を走り回り、碇シンジを探す。

 コンビニには当然おらず、シェルターの入口付近にも駅の出入り口にもいない。

 

「……まさか、迷子になってるとか?」

 

 そう思って車を走らせていると、一人の少年が見えた。

 

「ん? あれは―――」

 

 ミサトは、頭の中に入っている資料を確認する。

 

「―――碇シンジ、君よね?」

 

 だが、状況は異常であった。

 国連軍のものとも似ても似つかない特殊兵器へ、彼は乗り込んだ。

 そして特殊兵器は音を立てて第三新東京市上空を進む。

 

「もしかして……敵!? チッ、出遅れた……!」

 

 ミサトはアルピーヌ・ルノーのアクセルを全力で踏み、運転可能ギリギリの速度まで上げ、特殊兵器を追う。

 

「―――そこの特殊兵器、止まりなさい!」

 

 彼女は出しうる限りの大声で特殊兵器へ向かって叫び、無駄だとわかっていても発砲した。

 

 

〝そこの特殊兵器、止まりなさい!〟

 

 そんな叫びとともにパン、とストーム・ボーダーの中にあるスピーカーから発砲音が流れた。

 

「あれは―――誰だ?」

「あの人は―――もしかして、葛城さん?!」

「葛城?」

 

 シンジはポケットに入れていた写真を取り出して見せる。

 

「この人です」

「ん〜……その人―――葛城、という人で間違いないね。彼女が、君の言うネルフという組織からの迎えってことで良いのかな?」

「はい。多分、この人です」

「OK。なら、この人も乗せてしまおうか」

 

 ダ・ヴィンチは操縦室のコンソール―――そこに備え付けてあるマイクへ近づく。そして、葛城という女に話しかけた。

 

「ハロー! 私は人理保障機関カルデア―――その技術顧問を務めるレオナルド・ダ・ヴィンチという者だ。君が、シンジ君の言っていた葛城、っていう人で良いのかな?」

〝……ええ。私が特務機関ネルフ戦術作戦部作戦局第一課の葛城ミサトです。碇シンジ君、いませんか?〟

「彼に用があるんだろう? ならば、この中へ入りたまえ。外は、落ち着いて話ができる状況じゃないと思うのでね」

 

 車両用出入り口のドアを開く。

 ストーム・ボーダーは着陸し、彼女が入ってくるのを待つ。

 しばらくすると、彼女は車と一緒に入ってきた。

 コツコツ、とヒールを鳴らしながら司令室へと向かう。

 

「来たわよ」

「ああ、歓迎するよ。我々―――人理保障機関カルデアの拠点、次元境界穿孔艦ストーム・ボーダーへようこそ。葛城ミサト君」

「……この子が、碇シンジ君ね?」

「あ―――はい。碇シンジです」

 

 そう言って、ミサト―――葛城ミサトはシンジに近づく。

 おもむろに手に持っている資料をシンジの前に突き出し、言う。

 

「碇シンジ君―――私と一緒に来てもらえる?」

「え?」

 

 しかし、そこにダ・ヴィンチが割り込む。

 

「おーっと、それはいただけないね! 彼は私達カルデアが保護している。だろう? ゴルドルフ君!」

「え? ……ああ、そのとおりだとも! 碇シンジ。彼は我々カルデアが保護し、現在質問をしている途中だ。なにぶん、我々はここに来たばかりでここの事情をよく知らん。無論、貴様にも答えてもらうがね」

「……それじゃあ、私が変わりに答えます。それが終われば、彼をこちらに渡してください」

「ふむ……どうしたものか」

 

「それじゃあ、渡す代わりにそちらのネルフに協力を要請してくださいよ」

 

 奥から歩いてくる人影。

 それは徐々に近づいてきて―――紫色の、少女がみえた。 

 

「……あなたは?」

「シオン・エルトナム・ソカリスです。ここの機器の大部分を作った錬金術師ですよ」

 

 飄々と、彼女―――シオン・エルトナム・ソカリスは名乗る。

 そのシオンを見たミサトは、訝しげに顔を歪めた。

 

「―――その条件は飲めない、と思うわ。上がなんて言うかわからない」

「いやいや。条件を飲めないなんて言う権利そっちにはナイナイ。でしょ?」

 

 ミサトは、自らの状況を理解している。

 カルデアからの提案、あるいは要求を飲めなければ自分、シンジ含め何をされるかわからないからだ。

 だが―――戦術作戦部作戦局第一課の長としてのミサトが邪魔をする。

 絶対に、ネルフとしての維持を貫き通せ―――と。

 チラリ、とシンジの方を見る。

 シンジは、自らの置かれた状況を理解していない様子だ。なら、仮にこの待遇から叩き落されれば、よほどのショックを受けるだろう。―――そう考えたミサトは、必死に戦術作戦部作戦局第一課の長としてのミサトを押し殺した。

 

「……わかりました。全て無事に終われば碇司令へ協力を要請します」

「良いですね〜。それじゃあ、私はまだ仕事があるので」

 

 そう言って、シオンは去っていった。

 何したいのかわからない人ね……―――それが、ミサトの率直な感想だった。

 そしてミサトはカルデアの面々へ向き合う。

 

「私も腹を括りましょう。……こんな状況に置かれたんじゃ、機密保持も何もあったもんじゃないものね。

 さ、あなた達はなんの情報が欲しいの?」

「それじゃあ率直に聞こう」

 

 ダ・ヴィンチがミサトに詰め寄る。

 そして、口を開く。ミサトは意を決して―――その言葉を聞き届けた。

 

「―――今、西暦何年?」

「―――は?」

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