変異特異点MMXV:新霊長聖別世紀ネオンジェネシス   作:DUN.ネコノカンリニン

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第二節:神を経る者(ネルフ)星空の観測者(カルデア)

「―――今、西暦何年?」

「―――は?」

 

 一瞬、ミサトの思考は停止した。

 こいつらは今なんと言った? 西暦を聞いて何になると? まさかタイムトラベラーとか? いやいやまさか。エヴァなんて言う未だに信じられない兵器なんかもいるけど、まさか時間をどうこうする技術は流石にないでしょう。―――ミサトの思考は、一旦停止すると、その停止を補うように思考を始めた。

 

「……今は、西暦2015年よ」

「なるほど。私達は二年前にゼロセイルしたんだ。もう一つ聞こう。

 ―――第三新東京市とは何だい? 私達の記憶では、東京都は東京都だし、箱根は箱根だ。しかも東京市、なんていう市町村はない。東京市はまだ東京都が東京府であった頃にしかないはずだ。しかも第三、と付いているなら第二もあるわけだ。なぜ、二回も遷都しているのかな?」

 

 ……まさかのタイムトラベラーだった。

 しかも二年前、ということは2017年からの来訪者だというわけだ。しかしカルデア側の歴史では東京都がまだ存在している。―――ミサトは、更に混乱した。

 だが、その混乱を見せないように質問に答える。

 

「第三新東京市は、三つ目の日本の首都よ。きっかけと言えば……十五年前のセカンドインパクト。南極に隕石が衝突し、南極にある氷が全て溶けた。……そして、2000年に紛争に巻き込まれて東京に新型爆弾が落下。東京都は壊滅し、長野県へ遷都された。そこが第二新東京市。

 けど、国会で二回目の遷都案が可決されて、今の箱根―――第三新東京市になった。これが実態よ」

 

 衝撃が、ストーム・ボーダーを包み込む。

 そして藤丸は考えた。

 ―――もしや、そのセカンドインパクトがこの特異点の原因ではないのかと。

 そのセカンドインパクトが、何かしらの方法で聖杯を生み出し、特異点を形成しているのではないかと。

 

「……もしかして、そのセカンドインパクトがこの特異点の原因?」

 

 思わず口に出す。

 

「はい……その可能性は大いにあると思います。けれど、先輩の予想が正しいとしたら、あの巨大な生物についての謎が残ります」

「巨大な生物……ああ、『使徒』のことね」

「使徒?」

 

 ミサトは、話して良いものかと悩んだ末に意を決して答える。

 どうせ言わなければ死ぬのだ。言ってもネルフで殺されるか監禁されるだろう。どっちみち死ぬなら、せめてこの少年だけでも救いたい。―――そう思ってのことであった。

 

「本来外部の人間には話してはいけないのだけれど……あれは使徒。セカンドインパクトの際に現れた、人類の敵よ」

「人類の……敵……」

 

 瞬間、ノウム・カルデアの前身―――フィニス・カルデアに所属していた面々の顔がひきつっていく。

 人類の敵。

 すなわち、人類史に仇なす者。

 それの筆頭格として脳裏に浮かんだのは―――ビーストⅠ・魔神王ゲーティア。

 一度人理を焼き払い、憐憫によって守るべき人類を滅ぼした獣。

 それに連なる存在が、今顕現している―――!

 

「……目的、使徒の目的はなんですか」

「使徒の目的は、第三新東京市の地下にあるジオフロント―――その最奥、セントラルドグマに安置されているリリスと接触することよ。リリスと接触して―――サードインパクトを引き起こし、人類を絶滅させ、その地位を奪うことが最終目的よ」

「―――地位を奪う。要は霊長としての格を人類から使徒へ移すことが目的、というわけか。しかし、セカンドインパクトが隕石事故だとするのなら、その説明は矛盾が生じている。その言い方だと、セカンドインパクトの原因が使徒関連のようじゃないか」

「……そうね。セカンドインパクトの原因は―――」

 

「報告します! 巨大生物―――使徒に動きあり! 現在、現れた紫色の巨人と交戦中」

 

 ……全員が、息を呑む。

 それは、ミサトも例外ではない。

 なにせあの紫色の巨人は―――

 

「―――初号機! もしかして、レイが乗ってるの?!」

「初号機?」

 

 

 ―――ネルフ本部。

 そこに手を組みながら座るサングラスを掛けた男、碇ゲンドウは苦悩していた。

 息子が来ないのでやむを得ずレイ―――綾波レイを初号機に乗せてしまったことについてだ。

 今は、ただ苛立ちと心配がそこにある。

 なぜ来ない、シンジ―――それが、ゲンドウの思いであった。

 ピピーピピーッと、突然アラームが鳴る。

 

「国連関連組織より通信。音声通話をつなげてほしいとのことです」

「構わん。繋げろ」

「了解! 通話回線、開きます!」

 

 オペレーターが機械を操作し、電話の回線を開き、モニターに「SOUND ONLY」と記されたホログラムが映る。

 

『ハロー、特務機関ネルフのみんな! 我々は人理保障機関カルデア。そして、私はそれの技術顧問をしているレオナルド・ダ・ヴィンチだ。

 ―――突然だが、碇シンジと葛城ミサトはこちらで保護している』

「何?」

『この意味がわからないわけではないだろう? 見る限り、あの紫色の巨人はもう限界らしい。そして、その紫色の巨人―――汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン。その初号機のパイロットとして碇シンジは招かれた。違うかい?

 まあどちらでも良い。君たちには、我々カルデアからの要求を飲んでもらいたい』

「……何が望みだ」

 

 ゲンドウが珍しく焦る。

 何しろ、ゲンドウにとって息子であるシンジは必要ないが、パイロットとしての碇シンジは必要なのだ。

 額に汗を浮かばせながら、ゲンドウは問うた。

 それに、カルデアのダ・ヴィンチは答える。

 

『それはね―――我々カルデアとネルフとの技術協力及び軍事的協力だ。この要求を今ここで飲んでもらえるのならば、今すぐにでも碇シンジと葛城ミサトの両名はそちらに引き渡そう』

「……どうするかね、碇」

 

 ゲンドウの隣に立っている冬月―――冬月コウゾウが問う。

 

「無論だ。そちらの要求を飲もう。

 問題ない、冬月。これごときに我々の計画は揺るがない」

『感謝するよ! では、そちらに送り届けよう。大丈夫。危害は加えないと約束する。だから先程初号機を出した通路から我々の船を入れてくれ』

「……船、かね?」

「ほ、報告します! 巨大な飛行物体を確認! 電波の逆探知により、アレがカルデアの拠点であると思われます!」

 

 司令室中央部に位置するホログラフィックモニターには、まるでSF映画に出てくるかのような飛行物体が浮いていた。

 ―――非科学的なたちの悪い冗談。

 ネルフ職員の頭の中には、その言葉が渦巻いていた。

 程なくして飛行物体が着陸し、ハッチが開く。

 そこから出てきたのは、葛城一尉、碇シンジ。そして小太りな外人と、淡い紫色の髪をした武装済みの少女。そして―――赤髪の日本人の少女であった。

 

 

 ―――第一ケージ。

 そこに、数人の男女が入室する。

 金髪の女―――赤木リツコは憂鬱の表情を浮かべ、戦闘を立って歩いていた。ミサトはそんなリツコの姿を見て同情する。

 その後ろについていくのは藤丸、マシュ、ゴルドルフ、ミサト、シンジの五名。

 その要件はもちろん「軍事的協力」の件である。

 薄暗いケージの中、リツコは突然立ち止まる。

 

「……碇シンジ君。あなたに見てもらいたいものがあるの」

「見てもらいたいもの?」

「そう―――これよ」

 

 バン! と照明がつく。

 そこに―――紫色の巨人、エヴァンゲリオン初号機が浮かび上がる。

 

「うわ! こ、これは……さっきのロボット?! えーっと確か……」

 

 そこでは、損傷した初号機の修復作業が絶え間なく行われ、少し傷ついた初号機がL.C.Lに浸かりじっと佇んでいた。

 

「―――ロボットじゃないわ。これは汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン。その初号機よ。人類の最後の砦、そして―――」

 

 初号機を見つめていたリツコがシンジに向き合う。

 

「―――碇シンジ君、あなたが乗るのよ」

「―――それは、やっちゃいけない!」

 

 赤木リツコの言葉を、誰かが否定した。

 その声の主は―――

 

「あなた、何?」

「私はカルデアのマスター、藤丸立香! ……人類の最後の希望だっていうのなら、私がやる!」

 

 カルデアのマスターで、現行人類の最後の希望。人類最後のマスター―――藤丸立香であった。

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