変異特異点MMXV:新霊長聖別世紀ネオンジェネシス 作:DUN.ネコノカンリニン
「あなた、何?」
「私はカルデアのマスター、藤丸立香! ……人類の最後の希望だっていうのなら、私がやる!」
赤木リツコの発言を否定したのは、カルデアのマスターで、現行人類の最後の希望。人類最後のマスター―――藤丸立香であった。
そして藤丸はリツコに詰め寄る。
「彼―――シンジ君はまだ十四です! なら、年上の私が一番槍を入れます!」
「無理ね。あなたでは、エヴァは動かせない」
「どうして……!」
「
碇シンジ―――彼が、初号機の適正者なのよ」
藤丸は、リツコが言う科学的な理由に押し黙る。
そこでリツコは、藤丸の後ろでワナワナと震えるシンジを見る。
「僕が乗れるわけ……そんなワケないでしょ! こんな大きなロボット、どうやって動かせっていうのさ!」
『説明を受けろ、シンジ』
「! ―――父さん……」
アンビリカルブリッジよりも更に高いところ。
そこに、一人の人影があった。
サングラスを掛けた、初老の男。―――いや、老けて見えるだけか。
どことなくシンジに似た男こそ―――ネルフ本部の司令であり、碇シンジの父親である碇ゲンドウであった。
『早く乗れ。でなければ……帰れ!』
瞬間、シンジのトラウマがえぐられる。
いらないと言われた。
捨てられたと思った。
成長はした。けど、成熟はしていない。
そんな子供が―――更に幼い、親が必要な時期に埋め込まれたものを、克服できるだろうか?
いや、できない。
「私からもお願いするわ。―――碇シンジ君、あなたが乗らなければ、人類は滅びるわ」
その一言は、惰性を起こすには十分だった。
しかし、それでも。
あと一歩が、踏み出せない―――!
『……冬月、予備が使えなくなった。レイを出せ』
『良いのかね?』
『ああ。問題ない』
「―――ストレッチャー、通ります!」
ゲンドウが、冬月に指示を飛ばし、その直後に医療班と見られる人物たちが、ストレッチャーを押して運ぶ。
その上には、傷だらけの少女が苦しそうに横たわっていた。
―――しかし
刹那、大きな衝撃がネルフ本部を襲う。
『……奴め、ここに気がついたか。
乗るなら早くしろ、シンジ』
「……ん……ァ……ッ―――!」
「―――!」
少女の苦しむようなうめき声が、シンジの脳髄を突き刺す。
慌てて駆け寄り抱きかかえ、
ぬめり
妙な感触を覚える。
左手を見ると―――
(これは……血……!)
少女の鮮血。
その鮮やかに、悲しく輝く赤色は、少年の決意を固める最後の一ピース―――雨であった。
逃げちゃダメだ。
逃げちゃダメだ。
逃げちゃダメだ。
逃げちゃダメだ。
逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。―――逃げちゃダメだ!
幾度も頭の中を駆け巡った言葉。
それを飲み込んで―――少年は決意を固めた。
目の前の未知へ挑む決意を。
「―――やります。僕が、乗ります!」
「シンジ君?!」
「よく言いました。エヴァのコア、システム書き換えて」
『了解』
シンジは、藤丸へ振り向く。
「シンジ君……良いの?」
「良いんです、リツカさん。僕の代わりに行こうとしてくれて、本当にありがとうございました」
「……止めるなら、今だよ?」
「そこまでにしておけ、立香君」
「でも……新所長……」
「無駄だ。こうなった少年は、てこでも動かんよ」
そう言って、ゴルドルフはシンジの背中に在りし日の自らを重ねる。
まだ幼かった頃。
傲岸不遜に振る舞っていたあの頃。
ただ、家名に恥じない結果を残すためにひたすらにがむしゃらに突き進み続けた懐かしき過去。
それを知っているから、ゴルドルフは言うのだ。
「これから私はネルフの司令と会談しなければならない。立香君、マシュ君はストーム・ボーダーへ戻っておけ」
「……護衛は」
「百貌のハサンがつくそうだ」
藤丸は、最後に今まさにエヴァに挿入されるという瞬間のエントリープラグを見上げ、悲しい目をする。
それは、自分と同じような世界を一身に背負わされる人間をこれ以上作りたくないという理想ゆえだった。
「……新所長、それじゃあストーム・ボーダーに戻ります」
「はい。失礼します、ゴルドルフ新所長」
悲しい背中が、第一ケージをあとにした。
「あ、おかえり〜。ちょうど良かった、君たちに見せたいものが完成したのさ!」
そう言われて藤丸たちがダ・ヴィンチについていった先にいたのは―――
「これは……」
「エヴァ?!」
「うんうん、その反応を期待していたのさ! まあけど、これはエヴァンゲリオンじゃない。これはエヴァンゲリオン、そのカルデア式建造個体―――汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオンカルデア式建造個体群汎用人型決戦兵器エヴァ・カドモン―――その試作壱号・ティアマトだ」
巨大な白と黒のカラーリングが施されたエヴァンゲリオンに似た巨人、汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオンカルデア式建造個体群汎用人型決戦兵器エヴァ・カドモンであった。
しかし、それよりも藤丸たちが気になったのは、建造方法である。
あんな物、ホイホイと量産できるわけがない。実際、ミサトを尋問した時に出てきた情報では現在存在しているエヴァンゲリオンは日本に二機、ドイツに一機しかないという。それを、こんな短時間で作れるのか?
「……今、君たちはこう思っているね? 『こんな兵器を短時間で作成することは不可能だ』―――と。
そう。私も思ってたけれどね……このエヴァ・カドモンは人造人間ではなく、ゴーレムなんだ。だから人造人間に必要な培養、生育という期間をかっ飛ばして作成できたのさ。これにあたってはアヴィケブロンの力が大きいかな。
そして、エヴァンゲリオンの構造としては、コアにある何らかの存在に働きかけて動かすという構造になっている。また、構成物質も謎だが恐らく私の見立てだとアレは幻想種の類だ。それも原初の人類―――アダムかイブのものだね。と、なるとここもアヴィケブロンの出番だ。彼の宝具―――『
そうしてコアには英霊を使うことにした。けれど、一つの依代には一人の英霊しか入ることができない。だから、型に合う機体を作らなければいけない。今回はそのプロトタイプ。―――原初の女神、ティアマトの霊器に合うように設計した。
ちなみにいつでも実体化は可能だし、エントリープラグの模造品、カルデア・プラグの中なら自由に意思疎通が可能だ。宝具は一回の戦闘で三回が限度、って感じかな。起動には令呪が必要だから気をつけてね。
ダ・ヴィンチが説明を終え、二人を見ると、目をキラキラと輝かしてダ・ヴィンチを見つめていた。
「やっぱり万能は伊達じゃない!」
「はい! ダ・ヴィンチちゃんの頭脳には驚かされてばかりです!」
「ははは! よせやい、照れるだろう?
―――ま、ふざけるのはここまでにして。我々カルデアはネルフと共同戦線を組んだ。となると、必然的に援護しなければならないわけだ。……だから、立香君。君にはこれからエヴァ・カドモンへ乗ってもらう。良いね?」
先程の雰囲気から一転、一気にシリアスが充満する。
藤丸は、決意の表情を固め、令呪の浮かび上がる右手の手首を掴む。
「……はい。藤丸立香、行きます!」
「よし! それじゃあエントリースタートだ! ムニエル君、システムを起動して。立香君はカルデア・プラグへ搭乗。残念ながら今回はプラグ用の礼装は準備できていない。少しキツイだろうが、頑張ってくれたまえ!」
―――そして、原初の巨人の模造品は目を覚ます。
※ゴルドルフの過去は捏造です。実在のゴルドルフやゴルドルフなどとは関係ありません。