変異特異点MMXV:新霊長聖別世紀ネオンジェネシス 作:DUN.ネコノカンリニン
『ぐおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああ!!!』
再起動した初号機が、獣のような咆哮を上げる。
そして何を思ったか―――エヴァ・カドモンへアクロバティックな動きをしながら襲いかかったのである。
初号機の拳が、エヴァ・カドモンへ突き刺さる。
拳の衝撃で、エヴァ・カドモンがよろめく。
しかし、腐ってもエヴァ・カドモンの素材は幻想種であり、その魂は原初の大地母神―――バビロニア神話に語られる全生命の母・ティアマトである。初号機の素材も幻想種であり、そこは神秘を打ち消し合うが、魂は人。英霊―――否、神霊の領域にいるものとは神秘の濃度が違うのである。
普通なら、初号機の攻撃はエヴァ・カドモンに通ることはない。
だが、しかし―――
「痛ッッ―――どうしたの?!」
『立香……もう、母は疲れました。おんぶして……』
「ああ! 疲弊してる!」
ティアマトの
ティアマトの宝具は、その霊器の最大出力の魔力を放つ。それゆえ―――魔力こそが身体を作る英霊であるティアマトにとって、この宝具は疲弊への特急列車なのである。
―――万事、休す?
藤丸の思考の中で、そんな考えがふと浮かんだ。
しかし―――使命が、彼女を引き戻した。
「……やるよ、お母さん」
『母は疲れた―――けど、子に求められて黙っている愚か者ではない!』
「令呪を以てマスター、藤丸立香が命ずる。ティアマトよ、もう一度奮い立て!」
手の甲に煌々と輝ける紋様―――令呪が一層光を増し、花火のように消え去る。残る令呪は一画となり、それと引き換えに莫大な魔力量がティアマトに注ぎ込まれる。
エヴァ・カドモンは大きな咆哮を上げ、その双眸を輝かせる。
藤丸は、暴走して獣のように振る舞う初号機を、その一挙手一投足を見逃すまいと
「うおおおおおおおおお!」
エヴァ・カドモンが初号機に掴みかかる。
負けじと初号機もエヴァ・カドモンへ反撃を加えようとするが、その拳は強烈な神秘に阻まれてしまう。
その結果―――初号機は、地面へと組み伏せられる。
「けど、ここからどうすれば良いんだろう?」
いくら初号機を圧倒するような力を持っていようとも、そのシステムに造詣が深いわけではない。起動停止方法など、知るよしもなかった。
だがここに、天啓が降る。
電子音が響き、通信ウィンドウが開く。
『立香ちゃん! そちらのストレージにエヴァンゲリオンの内部構造データを送信した。それを見て「プラグ強制射出装置」を起動させてくれ!』
「……はい! 行くよ、お母さん!」
『はい、行きますよー!』
やることが定まった藤丸立香という人物は強い。
人類最後のマスター。ビーストⅠ・魔神王ゲーティアによってもたらされた人理焼却とそれに伴う人理修復を成し遂げたその精神性を、藤丸立香は持っている。
迷わずに獣のように唸り、エヴァ・カドモンに向かわんとする初号機を、再起動したエヴァ・カドモンで止める。
「お母さん、第一スキル『青き星の瞳』、再発動!」
『お行儀よく!』
「グアアァッ!」
初号機が、動きを止める。その間に藤丸はダ・ヴィンチから送られてきた内部構造データを見ながらプラグ強制射出装置を探す。
そして、エントリープラグ挿入口付近。
「見つけた!」
『これが、プラグ強制なんたら……ってやつですか』
円状のレバーがあり、捻って回す形式になっているようである。
藤丸は迷わず、プラグ強制射出装置を起動させる。
プシュッ、と気体が抜けたような音が鳴った後、エントリープラグがものすごい勢いで射出される。
「うおっとっと……よし! エントリープラグ、強制射出に成功しました」
『お疲れ、立香ちゃん。カルデア出張本部に帰還してくれ。エントリープラグのほうはネルフが回収に来るだろうから初号機の近くに安置しとくと良い』
「はい! お疲れ、そしてありがとう、お母さん」
『いいのです、いいのです! 娘に感謝されることが、母の一番のご褒美なので!』
―――こうして、「第四の使徒」戦は、終了したのである。
―――名前、決めてくれた?
奇妙な浮遊感。
真っ白な背景。
病的なまでの、喪失感。
―――男ならシンジ、女ならレイにする。
奇妙なまでの安心感。
一度見たことのある風景。
詩的なまでの、放浪感。
―――シンジ、レイ。
―――碇、レイ。綾波、シンジ。
ありえたかもしれない未来。けど、絶対にありえない未来。
まぁ、そんな未来も悪くない。
……本当に?
―――いや違う。
……いや、違う。
―――綾波、レイ―――
……碇、シンジ……!
「―――ッ、は!」
うなされていたシンジは、病院の一室で目を覚ます。
「……知らない天井だ」
まだ意識もあいまいだ。しかし、そんな体に鞭を打って、ベッドから起き上がる。
足元もおぼつかない。近くの机を使い、なんとか立ち上がる。
しばらくすると、足元が安定してきて意識もはっきりしてきたので、繋がっている点滴をガラガラと運びながら廊下に出た。
光がまぶしい。窓から差し込む光が、病院の白を基調とした壁に反射して、容赦なく網膜を焼く。すると、少し行ったところに青みがかったクセのある長髪の女性―――ミサトを見つけた。
点滴が倒れないように慎重に歩きながらミサトに近づく。
「ミサトさん」
「ん、ああシンちゃん、起きたのね」
「ええ、まぁ」
ミサトに話しかけると、シンちゃんとフランクに応答した。シンちゃんってなんだシンちゃんって。
「どう? 体調は」
「あまり本調子とは言い切れないですけど……もう大丈夫だと思います」
「そう……」
「ストレッチャー、通ります!」
ミサトと話していると、突然前を数名の医療従事者とストレッチャーが通りかかった。
そのストレッチャーには……全体的に、無垢と言わざるを得ない印象を持つレイと呼ばれていた少女が乗っていた。
その医療従事者に混じって、傍らには、ゲンドウがいた。
「……!」
「……まったく。せっかく回復した息子に一言も言えないワケ?」
「ミサトさん、今のは……」
「今の子は綾波レイ。もう一人のエヴァパイロットよ」
「綾波……レイ」
夢の内容などとうに忘れたが、その名前だけは朧げに覚えていた。
「あら、碇シンジ君。回復したのね」
「あれ? リツコ。珍しいわね」
「少し散歩していただけよ。すぐに出ていくわ。それよりも、あなた正気? いくら男に飢えているからって、未成年に手出しちゃダメよ」
「まっさか、そんなことしません」
「一応の自覚はあるのね。まぁいいわ。ちゃんと
「え?」
突如として現れたリツコに言われたことを理解しきれず、シンジは一瞬フリーズした。しかしすぐに再起動し問いただす。
「ちょっとミサトさん、保護者になるってどういうことですか?!」
「あれ、言ってなかったっけ? シンちゃんは、これから私と一緒に住むのよ♪ あ、そうそう」
ミサトは続けて言う。
「あのカルデアとかいう組織の子―――藤丸リツカちゃんも一緒に住むことになるから、そこんとこよろしくね☆」
「えええええええ?!」