変異特異点MMXV:新霊長聖別世紀ネオンジェネシス 作:DUN.ネコノカンリニン
そして礼装は極地用カルデア制服とする。
「―――というわけでよろしくね、シンジ君」
「いえ、こちらこそ……リツカさん」
「リツカでいいよ。そのかわり、こっちもシンジって呼ばせてもらうから」
ミサト宅についたシンジは、先に到着してリビングで待っていた藤丸に会っていた。シンジの手にはコンビニの総菜がたくさん詰められたビニール袋が握られている。
「シンちゃ~ん、総菜そこら辺において冷蔵庫からビール取って~」
遠くからミサトの声が聞こえる。シンジはそれに従って冷蔵庫を上から順番に開けていく。
「…………ビール、ビール、ビールばっか」
そこにあったのは一面のビール。よほどブランドが気に入っているのか、表面に印刷されている文字はほぼすべて「YEBIS」である(たまに「YEBICH」や「BOA」というブランドも混じっているが)。
「うわっ、本当だ。ビールばっかり」
「悪かったわね、ダラシない大人で!」
藤丸がシンジの言葉に同調すると、それにムカついたらしいミサトがドカッと荷物を置いてリビングに入ってきた。
そして、入るなりシンジが出していたビールを手に取りプルタブを開ける。
プシュッと耳触りの良い音を立てるビール。
それを、ミサトは一気に喉に流し込んだ。
「ぷっはー! やっぱコレだわー!」
少し顔を紅潮させながら、ミサトは歓声を上げた。そして唐突に「あっ」と思いだしたかのように藤丸とシンジに言った。
「シンちゃん、リツカちゃん、先にお風呂入っちゃいなさい」
「それじゃあ、リツカ。先入っていいよ」
「うん、ありがとう」
「んじゃ、ちゃっちゃと入っちゃって」
ミサトはリツカを見ながらウインクをして言った。
「風呂は命の洗濯よ♪」
―――――――――
「ふぅ……」
藤丸は、脱衣所で礼装を脱ぎながら物思いにふけっていた。
(この特異点―――タイプとしてはどちらかと言うと異聞帯に近い気がする。アトランティスとか、オリュンポスとか……)
極地用カルデア制服の特徴的な多目的ベルトを外し、上着を脱ぐ。
(それに、使徒とかいう謎の化け物もいるし……ビーストとはまた違う、それこそ『異星の神』みたいな侵略者みたいなやつらなのかな……)
すべて脱いだ藤丸は、湯気の
すると、そこには信じられない光景が広がっていた。
ドタドタとそのままの姿でミサトたちのいる居間へと駆けていく。
「きゃあああああああああああああああああああ! ミサトさん、お、お風呂に、お風呂にペンギンが! しかも水がなんか変! 赤いし!」
「ふーん……」
「って、っちょ、リツカ!」
ミサトは、羨ましがるような目で藤丸を見つめ、シンジは恥ずかしがるように顔を紅潮させて取り乱している。
その驚き様に異変を感じた藤丸が首をかしげる。
そしてミサトが、藤丸の疑問に答える。
「あの子はね、温泉ペンギンのペンペンって言うの。今は数少ない、水棲生物の生き残りよ」
「……数少ない?」
「そう。ペンペンはね、私と同じで家族がもういないの。だから、私と同じようなシンパシーを感じて、引き取ったのよ」
「……」
疑問に答えたあと、ミサトが一言。
「まあ、そんなことはどうでもいいから前隠したら?」
「へ?」
見れば、自分は脱衣所で裸になった直後に出てきたのであったのだと気づいた。
シンジの方を向けば、指の隙間からガン見している少年が見えた。
「てやあああああああああああああああああああああああああ! ロムルス=クィリヌス直伝、
「ごへぇ!」
結構正当性のある暴力が、碇シンジを襲う。
最高神直伝の古代
閑話休題。
なんやかんやでシンジも風呂に入り、食事も終え一段落ついた頃、ミサトが突然藤丸とシンジに言った。
「そう言えばあなた達明日から学校だけど早く寝なくていいの?」
「「え? 学校?」」
早くない? と藤丸とシンジは思った。まだここに来て一週間も経っていない。大体二日ぐらいである。身分証も発行できていないはずだ。
「身分証も、リツカちゃんの場合は仮の戸籍も発行したし、もう転入届も受理されちゃったから、明日から学校よ」
「マジすか」
藤丸はあまりにも早い対応に絶句した。
その夜、与えられた自室にて。
藤丸はカルデアと通信していた。電波をネルフに傍受されないように、特殊な魔術通信で。
「……てことで、今日得られた情報は以上です」
『ありがとう、立香ちゃん。なるほど、「赤い水」に「最後の水棲生物」。貰った情報でこちらも仮説を立ててみた。少し聞いてくれ』
こくり、と藤丸は頷く。
その様子を見てダ・ヴィンチは語り始める。
『まず、結論から言うとこの特異点は極めて異常だ。人理定礎値は計測不能。これは
これについては考察することはまだできないけど、赤い水と水棲生物の絶滅のついてはある程度考察を進めることができる。それは、葛城ミサトの言葉から出てきた―――セカンドインパクト、という単語だ。立香ちゃん、ジャイアントインパクト、と言う言葉は知ってるね?』
「確か……月ができた要因だったような」
『うん。その認識で間違いない。もっとも、SE.RA.PHでの一件で、月は外宇宙の知性体が置いていった記録装置であることが判明したわけだが。だが、それはあの一件に携わった我々しか知りようがない。
さて、ジャイアントインパクトの話はここまでにして、セカンドインパクトの話に移ろう。ミサト氏の話によれば南極に隕石が墜落して起こった天変地異との話だったが、ゴルドルフ君が聞き出した情報によると、これはカバーストーリーらしい。実際は―――原初の使徒である「第一の使徒」、通称アダムスが復活したからだそうだ』
「第一の使徒」アダムス。そしてネルフ本部の地下にはりつけにされているという巨人・リリス。そして、使徒の目的は地下のリリスと融合し、サードインパクトを引き起こして人類を霊長の座から引きずり下ろすこと。それらの情報を用いた考察が、次々とダ・ヴィンチの口から語られていく。
『現在、アダムスはすべて行方不明。リリスの存在も、知らされてはいるものの、こちらには見せてくれなかった。つまり―――アダムスとリリス、これらはこの特異点の謎を解き明かす上で重要なピースとなるということだ』
「……ありがとう、ダ・ヴィンチちゃん」
『いやいや、どうってことないさ。それよりも、早く寝た方がいい。長々と話につき合わせてしまってすまなかったね』
「いいよ。わたしも、枕が変わってて眠れなかったから」
『ははっ! まあ、でもここはどれだけ文明が発達していようとも特異点に変わりない。休息は取れるときに取っておくべきだよ』
「うん、それじゃあ、おやすみなさい」
『うん。おやすみ立香ちゃん、いい夢を』
そして、藤丸は目を閉じ、眠りの底に落ちていった。
視点は、
彼女―――ダ・ヴィンチは今日得られた情報をルーズリーフに写し、そのすべてを徹夜で整理していた。本来休息も食事も必要ない、サーヴァントの身体能力とオリジナルと比べると性能はやや落ちるもそれでも高性能な頭脳とを稼働させて、情報と情報を、点と点を結び線を引くように、つなげていった。
そこで、彼女は一つの疑問にぶつかる。
(アダムスとリリス、そしてエヴァ。すべて創世記に登場する単語だし、使徒にいたってはキリストの十二人の弟子のことを指す言葉だ。それがなぜあのような人類の敵かもしれない生命体に名として与えられているのか……。考察を、もう少し詰める必要がありそうだ)
実際、彼女はこの世界の真実に触れかけていた。
だが、その答えは、まだ遠い。