変異特異点MMXV:新霊長聖別世紀ネオンジェネシス   作:DUN.ネコノカンリニン

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第七節:鈴と拳と転校生

―――謎の、暗い空間にて。

 碇ゲンドウは七つもの黒いモノリスと対峙していた。そのモノリスにはすべてリンゴに巻き付く蛇が描かれたマークと……「SEELE」という文字が浮かんでいる。

 

『碇、今回の使徒殲滅で費やした金は計り知れない』

『エヴァ初号機の修繕費用がいくらかかると思っている? 小国一つ消し飛ぶ額だ』

 

 その中の二つからゲンドウを責める言葉が放たれる。確かにエヴァ初号機が「第四の使徒」と交戦する前に出した使徒の被害は絶大だ。あらゆる兵器は一発何億という費用が掛かり、国連軍は崩壊し、N2兵器で第3新東京市の一部が灰と化した。

 また、その後の事についてもモノリスから非難する声が出る。

 

『そして碇。貴様が内側に招いたあの旅人は何だ? 人理継続保障機関カルデア―――かのネブカドネザル王が支配していた国と同じ名前をした乱入者だ。我々は、あのような組織の設立は許可していない』

『だが、それは問題ではない。我々が危惧しているのは、カルデアが用いるエヴァンゲリオンに似た何か―――エヴァ・カドモンだ。あれは初陣とはいえエヴァンゲリオン初号機を圧倒して見せたのだ。このようなことは、我々の計画の中にない』

「ええ。存じております」

『ならば早急に対処を検討せよ! あのようなもので、我々の計画を邪魔されてはかなわん!」

『左様』

 

 一際大きく、冷たく、威厳に満ちた声が響く。

 

『我々の目的は使徒の殲滅などではない。それは過程に過ぎない。

 ―――「人類補完計画」。リリスとの契約のため、碇、精進せよ』

「了解しました」

 

 交信が終了したのか、ぶぅん……という音を立てて、モノリスらがフェードアウトしていく。そこに残ったのは緑色のクロマキー背景とゲンドウ、冬月コウゾウのみであった。

 

「終わったか、碇。老人の相手は疲れるな」

「ああ。だが、あの老人どもに一泡吹かせることはできる」

「ほう? どうする気だ、碇」

「決まっている―――カルデアを、利用する」

 

 不敵な笑みを浮かべ、ゲンドウは言った。

 コウゾウは、その様子を見て少し憂い気にうつむいた。

 

 

 夏の、永遠に続く夏の朝。新しい一日が始まる、朝のクラスルーム前。

 ここ―――第3新東京市立第壱中学校2-Aクラスでは、新しく入ってくる転校生の話題で持ちきりであった。

 

―――ねえ、転校生って二人来るんだって!

―――ねえ、転校生の片方はイケメンらしいよ。

―――なあ、転校生の片っぽは赤毛の美少女なんだってよ! テンション上がるな~。

 

 そんな中で、一人だけ転校生に良い印象を持っていない生徒がいた。

 

「ケッ、何が転校生や。ただ珍しいだけやろ」

「まぁまぁトウジ、落ち着けよ。片方は美少女なんだろ? うーん! これは儲け時な予感!」

「懲りへんなぁケンスケ」

 

 トウジ―――鈴原トウジとケンスケ―――相田ケンスケがだべっていると、ガラガラと教室の扉が開く。

 そこから、初老の男性教員が入ってくる。

 

「では、朝のホームルームを始めます。委員長、号令」

「はい、起立! おはようございます!」

『おはようございます』

 

 委員長―――洞木ヒカリの号令を合図にクラスの全員が立ち、朝の挨拶をする。

 

「着席!」

「はい、おはようございます。今日は特に何もありませんが、一日気を引き締めて生活してください。では、終わりま……」

「センセー、転校生は~?」

「お、そうだそうだ。忘れてた、ありがとう。では転校生を紹介します。藤丸、碇、入ってきなさい」

 

 ガラガラと、一度閉められた戸を開け、二人の人物が中に入ってくる。

 一人は黒髪の、儚げな美貌を備えた美少年。

 もう一人は、赤―――というより赤銅色の髪をした活発な印象を与える美少女。二人がそれぞれ黒板の前に立ち、自分の名前を書く。

 少年の方は、「碇シンジ」。

 少女の方は、「藤丸リツカ」と。

 

「これでよし、と……。みんな、はじめまして! 藤丸リツカです。少し前まで海外で生活していて、家族の仕事の都合で転校してきました。みんなと仲良くしたいから、どんどん話しかけてね! それじゃあ、今日からよろしく!」

 

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! と男子生徒から歓声が上がる。どうやら、藤丸の魅力にあてられてしまったようである。

 

「それじゃあ、次は僕かな……。は、はじめまして。碇シンジです。よろしくおねがいします」

 

 きゃあああああああああああああああああああああああああああ! と女子生徒から黄色い歓声が上がる。どうやらたどたどしい、その態度と言動に庇護欲を刺激されてしまったようである。

 

「静かに。藤丸と碇は途中から来たのでわからないことも多いだろう。みんな、藤丸と碇から質問されたら親切に答えてあげなさい。では以上。ホームルームを終わります。少し早いですが、みんなも藤丸と碇に聞きたいことがあるだろうからね」

 

 神か、この教師。

 2-Aの生徒全員(トウジを除く)がそう思った。あのいつもは授業の時間をセカンドインパクト時の苦労話でつぶしてくる教師の後ろ姿が、初めて聖人に見えた。

 そして、ホームルームが終わると、二人の周りに人が集まる。

 

「ねえ、碇くん。趣味ってある?」

「え……えっと、強いて言うならチェロを弾くことかな」

「チェロ……いいよね、チェロ!」

「な、なあリツカさん」

「なに? リツカでいいよ」

「! リツカって、日本に来るまでどこにいたんだ……ですか?」

「ははっ! 敬語外していいよ。うーん、いろんな所に行ったな。フランスでしょ、ローマでしょ、オケアノス……は違うか。ロンドンでしょ、アメリカも行ったし、エルサレムも行った。メソポタミアにも行ったでしょ? ロシアも北欧も中国もインドも大西洋もブリテンにも行った。あと行ってないのは南米くらいかな?」

「うおー! すげぇ!」

 

 ワイワイ、ガヤガヤ。

 その騒ぎは落ち着くことを知らなかった。だが、一人の少年―――トウジの一言で静まり返ることとなる。

 

「おい転校生!」

 

 ドカッと椅子に座り、藤丸とシンジに語りかける。

 

「今日の昼休み、中庭に来い! ちょっと話したいことがあんねん」

「ちょ、トウジ!」

「うん、いいよ。昼休み、中庭ね」

 

 そうして、一時限目の予鈴が鳴る。国語の女教師が入ってきたことに気づいた生徒たちは、次々と席に座りだし、そして一時限目が始まった。

 

 ―――昼休み、中庭にて。

 シンジは、トウジに胸ぐらをつかまれて頬を一発殴られていた。

 

「……ッ」

「ちょっと、何してるの!?」

「すまんな、転校生。ワシもこんなことしとぉないんやが、妹が前の戦いでケガしてのぉ。……それで、ワシはコイツを殴らな気が済まへんねん!」

 

 どくん、とシンジの心臓が跳ねる。

 僕が、転んだせいで……? 誰かが、けがをした?

 僕の、せいで……?

 シンジの脳裏に、底知れない理不尽に対する怒りと、自責の念が沸き上がる。

 そんなシンジの様子を見て、藤丸は、ギリッと奥歯をかみしめて前に出た。

 

「……その事故は、私が原因かもしれないよ」

「―――なんやって?」

「思い出して。その事故を起こした機体の色はどんな色だった?」

「はァ? 知るわけないやろそんなこと。ケガした妹が言うとったことや。ワシは実際には見てないわ」

「多分、白と黒だよ。そして、その白と黒の機体を操作していたのは私。多分、爆発の衝撃に巻き込まれちゃったんじゃない?」

 

 トウジは、少し困惑した。

 

(……そんなわけあるかい。妹の―――サクラの傷は爆発に巻き込まれたっていう傷やない。どちらかと言うと、おっきい瓦礫にぶつかったみたいな傷や。……似ても似つかない状況やのに、コイツはなんで転校生をかばっとるんや?)

 

「……知らん。けど、ワシはコイツを殴らなあかんねん。だって、サクラの傷は爆発の傷やないからな。……まぁ、けど、自分も前の一件に関係してるっちゅうんなら自分も殴りたいんやけど……さすがに、女子に手ぇだせへんわ」

「……そう、ありがとう。それじゃあ、シンジから手離してくれる?」

「おう。なんか萎えたわ」

 

 トウジはシンジの胸倉から手を離して、地面に落とす。

 うまく体勢が取れず、シンジは尻餅をついて着地する。

 

「―――ッ!」

 

 そして―――彼の中に沸き上がっていた理不尽への怒りが静かに燃えた。

 

「―――なんにも知らないくせに」

「……なんやと!」

 

 その言葉に憤慨したトウジは、最後に一発を殴ってから中庭を後にした。

 

 

 そうしているうちにも―――驚異の足音は、どんどん近くなっている。




トウジエミュムズすぎるぅぅぅ!
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