復讐少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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病院に棲む怨霊

 ジョーの急な訪問から数日後。

 日曜日の朝8時、チャイムが鳴り……寝ぼけ眼を擦りつつ、すっかり冷め切った珈琲を一口啜り眠気を飛ばすと鏡に映る下着とブラのみの自身を見て数秒考え込んでクローゼットからガウンを引っ掴んで羽織るとドアを開ける。

 すると……そこには赤が入り混じった白髪と眼鏡が特徴的な女性が居た。

 

「初めまして……私は轟冬美と言います、ウィンチェスターさんのお宅であっていますか?」

 

 女性──轟冬美は酷く憔悴した顔でそう告げてきた。

 クリスは家の中へと招き入れ客間に通すと座るように勧める。

 テーブルの上には世界に1冊しかない書物や色々な本が乱雑に積み上げられておりそれらを退かしつつ語る。

 

「散らかっててすみませんね……コーヒーか紅茶しかないですが如何です?」

 

 紅茶をと言われたのでケトルの湯を沸かしてティーパックのアップルティーを注ぐとカップに入れて差し出す。

 飲んだのを確認してからクリスは語る

 

「それで……一体何の用でしょうか?」

 

 きた理由を問いかけると冬美さんはハンドバッグから10数枚の手紙を取り出して語る。

 

「母を助けて欲しいんです……母は、過去にちょっとある事をして今は精神病院に居ます……母と私は手紙や面会で頻繁に話しているんですが……昨日、面会に行った時……母の怯えようが異常だったんです……話を聞くと、病院内で親しかった人が続け様に死んだと……それに、その時必ず、電気が明滅したり急に寒くなったりといった事象が起きていたと……」

 

 それを踏まえて……クリスは口を開こうとした。

 その時、起きてきたジョーが口を挟む。

 

「はぁいおはよ……お客さん? 初めまして、クリスの姉でジョアンナ・ベスと申します……なんの話?」

 

 冬美さんは再度同じ事を説明する。

 説明を聞き終えたジョーは即断していた。

 

「間違いなく幽霊の仕業ね……ポルターガイストやその他情報が明らかに悪霊のそれを示してるわ……今すぐに『狩り』よ、クリス……」

 

 狩り、その言葉に対して意図を掴めずクエスチョンマークを浮かべている冬美さん。

 

 

「ええっと……狩りって何の事かしら?」

 

「姉さん……話をややこしくしないでくれ……この馬鹿な姉は放っておいてください……手紙を見てもよろしいですか?」

 

 許可をもらって手紙を見ると……そこには次は私が狙われているという言葉と……2人の死に様が克明に記されていた。

 コメカミの部分に、脳まで達する程の人差し指サイズの穴が開いていたと。

 それを読みクリスは今回の件について、とある確信を得た。

 

(……レイスか、しかし……都合の良い場所に巣を構えたもんだな)

 

 レイスとは手首に鋭い棘状の器官を持ち、これを使って獲物の脳を吸い取り捕食する怪物である。

 また、直接肌で触れ合った相手に幻覚を見せる能力を持つ。

 純銀または純銀で作られた物が弱点であり、それに触れると瞬く間に肌が焼け爛れる、傷つけられた場合は傷口に酷い火傷を負う。

 

「クリス? 幽霊なら平気よ……ハンターの基本中の基本よ? 墓を暴いて骨に塩を撒いて燃やす、簡単な仕事よ‼︎」

 

 横でそう語るジョーを見つつ……溜息を吐いて語るクリス。

 

「簡単な仕事だって言ってる内はまだまだ未熟なハンターだよ姉さん……この家業に簡単な仕事なんてない……分かってるでしょ?」

 

 そう冷淡に告げて鋭い眼差しでジョーを射抜くクリス。

 ジョーも、それは理解しているようですごすごと引き下がる。

 クリスは冬美さんの方へと振り向くと語る。

 

「まぁ……現実的に1番手っ取り早いのはお母さんをとっととその病院から退院か転院される事です、レイスがその病院を根城にしている以上速ければ速い方がいい……長女の貴女のお力でどうにかできませんか?」

 

 こればっかりはクリスやジョーには不可能故にまずは冬美さんの方へとコンタクトを取ってもらわないといけない。

 そう問いかけるも冬美さんは力無く首を横に振って無言で示してきた。

 

「では冬美さんのお父様は……たしか高名なヒーローであった筈……事情さえ説明すればご納得して頂けるのでは?」

 

 現実的に考えるとこれが1番手っ取り早いのだが……冬美さんの表情を見るに無理そうか。

 

「最後の手段ですね……」

 

 そう呟いてクリスは複数持っている身分証明書の1枚を財布に突っ込んで出かける用意をして語る。

 

「行きましょうか、その病院に……直接話を聞きたいですし」

 


 

 愛車であるバイクを走らせる事1時間。

 病院に到着すると所定の位置へと停めて降りるとクリスは冬美と共に院内へと入る。

 受付で冬美さんが急遽の面会ですがと語る……。

 クリスはジャケットの内ポケットから警察手帳を取り出して身分を示す。

 

「警視庁特別事案専門捜査部のガーネット・マリアンと申します、ここで起きた事件についてお伺いたい事がございまして」

 

 そう語る。

 受付の女性は驚いた様な表情を浮かべて少々お待ちくださいと告げられ内線を繋いでいた。

 2〜3分もすると30代半ばの女性がきた。

 テキパキと指示を飛ばしており、クリスの方へ向くと院長と名乗ってきた。

 そして、流れる様に応接室へと通される。

 


 

 応接室に入りソファに掛けると院長から再度身分を示してもらえないかと告げられる。

 警察手帳を手渡すと院長は不審な眼でクリスを見遣る。

 

「警視庁特別事案専門捜査部……失礼ですけれど聞いた事が御座いませんので上司か県警の方に電話をしても?」

 

 その問いかけに対してクリスは笑顔で肯定を示し上長の電話番号を口頭で告げる。

 その電話番号をスマホでダイヤルして通話を繋げ暫く話している。

 数分もすると院長は確認が取れたのかこちらへと顔を向けてきた。

 

「確認が取れました、ガーネットさん……それでお話とは?」

 

 そう問われる。

 クリスはゆっくりと口を開く。

 

「亡くなった2人の入院患者……この2人が亡くなった日に勤務していた全従業員と話がしたい、あと……轟冷さんにも話を伺いたい」

 

 そう語ると……院長は難しそうな表情で告げる。

 

「……それは……ご家族の意思を尊重した上で判断致します」

 


 

 院長との面談から15分後。

 クリスは轟冷の病室で詳しく話を伺っていた。

 

「……状況を把握しました、さて……此処からは私の仕事です」

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