翌日、八百万家に夕食に招待されたキャスとクリス。
カジュアルな服装で良いとの事なのである程度カジュアルな服装で八百万家へと向かうクリス。
大型バイクを走らせ暫くして八百万家へと到着して愛車を置かせてもらう。
そして、アメリカから瞬間移動でクリスの隣に到着したキャス……毎度の事でもう慣れたのか髪を掻きながらクリスはキャスへとハグをしながら語る。
「やぁ……キャス……天使の剣は流石に私のバイクの収納スペースに閉まっておけよキャス……強力無比な天使除けに悪魔除け、どんな怪物だろうと絶対に触れられない様に鉄と塩でコーティングして、更にその上から純銀でコーティングしている……人間相手には私のスマホ経由でしか開かない様に複雑で難解なパスコードが掛けられてるから盗られる心配はない」
そう語りかけるも……キャスがいつもの表情を崩さずに逆に質問をしてきた。
「……君が心配ない大丈夫だ……そう言って過去に大丈夫だった事があったか?」
そう問われて今までの狩りやその他のゴタゴタを思い返すクリス。
クリスが大丈夫、心配無いなどの言葉を告げた時に限って何かしらの大丈夫じゃない事が起きる。
確率にして68%程度の割合で。
それを思い返しながらクリスは自嘲する様にヘラヘラとした笑みを浮かべて語る.
「……確かに、私の大丈夫はいつも『大丈夫』だった試しがない……でも今回は晩餐に招待されたんだ、人間から見て危険物だと思われる物を持ち込む訳にはいかないんだよ」
そう説得するクリス、5分程の葛藤の後でキャスは納得してくれたのかクリスのバイクの収納スペースに天使の剣をしまってくれた。
そして、メイドやバトラーに連れられて車庫から徒歩で八百万家の玄関へと歩くキャスとクリス。
応接間を通り食卓へと案内されるキャスとクリス。
其処には八百万の両親と娘である八百万百が座っておりクリスとキャスを見た八百万家の家族は嬉しそうに語る。
「クリスティーナさん、カスティエルさん、どうぞお座りください……今日はあなた方2人に娘を助けてもらった御礼です、どうぞ遠慮なく楽しんで下さい……気に入った食事があればお代わりを持って来させるのでどうぞ遠慮なく仰って下さい」
そう告げられて晩餐会がスタートする。
クリスは育ての親であるボビーや狩りを教えてくれたハンター達からテーブルマナーをみっちり叩き込まれた為に問題なく食事ができる、
カスティエルもジミー・ノヴァックの記憶からテーブルマナーを読み取って問題なく食事を行っている。
そして、和やかな世間話やヒーローの本場、アメリカでの色々な話題をタネに会話を弾ませるクリスティーナ。
30〜40分後、話は本題に入る。
八百万百が食事の手を止めて椅子から立ち上がりお辞儀をして再度御礼を告げてきた。
「クリスティーナさん、カスティエルさん……この前は碌なお礼も言えないままでした……もう一度御礼を言わせて下さい、私の命を助けていただき有難う御座います」
それに対してクリスもカスティエルも食事の手を止めて語る。
「そんな、私はただ知識を活用しただけなので……」
そう語るクリス。
ハンターとはその知識を持ってして他者を助ける存在である。
そして、見返りは求めない。
相手が強く望んでいる場合は例外であるが。
カスティエルも語る。
「娘さんを助けられて良かった……天使としての本分は神の創造物である人間を守る事……」
そう語るカスティエル。
天使という言葉を聞いても微塵も八百万家の皆の表情は崩れない。
個性という不思議な異能が人間に備わってから常識から何から色々変わった。
天使や死神、悪魔と言っても個性と前置きして告げるだけである程度は理解される。
しかしそれはハンター達が狩る狼男やヴァンパイア達もそうである。
なんとも言えない時代になったもんだ。
そう心の中で自嘲する。
そして会話は巡って色々な話に繋がる。
クリスの趣味の話になりビリヤードと告げると今度一緒にやりましょうとの言葉を娘である百より頂いた、クリスも笑顔で是非……と応じる。
その刹那……八百万百の口から一筋の血が流れ、2秒後……コップ数杯分の血を吐き出す。
血に溺れ掛ける八百万百。
それを見た両親はパニックになる
そして……キャスとクリスは即座に理解する。
まだ呪われていると。
キャスとクリスはすぐさま席から立ち上がってクリスが八百万百へと駆け寄りこれ以上状態が悪くならない様に維持する。
「キャス‼︎ 八百万百を治せ‼︎ 私は呪い袋を探す‼︎ まだ呪われている‼︎ だけどなんでだ⁉︎ 魔女のスターターセットは1つ残らず燃やして灰にした‼︎ あの魔女からは2度と呪えないのに‼︎」
そう叫ぶクリス。
そして、クリスは呪い袋を探しつつ八百万百に魔法をかける。
呪いを解く魔法を。
「Ego stagnare omnia maledicta. et conteram omnia maledicta……グッ⁉︎」
そう呟いて解呪を行っていると背後から鈍器の様な物で頭を殴られ頭部に打撲と裂傷を伴い決して少なくない量の血が流れる。
しかし気絶には至らず揺らぐ視界で自身を殴った相手を確認する。
ワインボトルを持った1人のバトラーであり……ようやく理解した。
悪魔に憑依されていると。
しかしながら……天使であるキャス、そして魔法使いである自身に一切悟らせなかったのは驚嘆に値する。
そして、別の意味で驚いたのは雇い主である八百万の両親。
「お……おい⁉︎ 何をしているんだ⁉︎」
慌てふためき……問いかけている。
勤続45年のバトラーがこんな暴挙に出ればそれは驚くのも当然だろう。
しかし、当のバトラーはと言えば手を払う様な仕草を行うと八百万の両親は眼に見えない謎の力で壁に磔にされる。
そして、バトラー……いや、バトラーに憑依している悪魔は口を開く。
「悪いな、バトラーは今俺の中で眠ってる、紹介が遅れたなこういうモンさ……悪魔だよ、しかし俺は運が良い、あのクリスティーナ・ウィンチェスターを捕まえられるなんてな」
そう呟いて瞬きをすると……バトラーの両眼は漆黒に染まる。
それを確認したクリスは揺れる視界で氷水が入ったワインクーラーを引っ掴んで中に入っている水を躊躇うことなくバトラーへとぶち撒ける。
晩餐が始まる直前にクリスはワインクーラーに十字架を浸していたのだ。
中の液体は普通の人間ならばただの氷水、しかし悪魔に憑依されているのならば耐え難い苦痛を与える聖水になる。
身体中にそれを浴びたバトラーから焼けた鉄を押しつけた様な音が生じて火傷の様な傷を負うが即座に負った傷は再生していく。
「グッ⁉︎ 聖水か……しかしこんなもんで俺を足止めできると思ってるか?」
ニタニタと笑いながらそう問いかけてくる悪魔。
対してクリスも挑発的な笑みを崩さずに語る。
「いいや? だが……忘れてはいないか? お前の前にいるのは最強と謳われたハンターだ、天井を見てみろよ? 水は魔法使いのお友達ってよく言うだろう?」
何かを指し示す様に視線で天井を指すクリスその言葉を聞いて悪魔は天井を見ると……天井とシャンデリアのちょうど真ん中の辺りに水で形作られた悪魔封じが。
それを見て悪魔は舌打ちしてクリスを睨みつけながら呟く。
「悪魔封じか……」
その瞬間、悪魔が行なっていた壁の磔も消失して八百万の両親は自由になる。
呪い袋を探していたキャスも呪い袋を見つけて燃やし八百万百の治療に当たっている、そして八百万百は無事に治癒された。
そして……クリスは揺れる視界と傷口から流れ出る血を抑えて悪魔に対して死刑宣告を告げる。
「さて……地獄に送り返してやるよ……」
一息、呼吸を落ち着かせて悪魔祓いを行うクリス。
「Exorcizamus te, omnis immundus spiritus omnis satanica potestas, omnis incursio infernalis adversarii, omnis legio,omnis congregatio et secta diabolica.
Ergo draco maledicte et omnis legio diabolica adjuramus te.
Cessa decipere humanas creaturas,eisque aeternae Perditionis venenum propinare.
Vade, Satana, inventor et magister,omnis fallaciae, hostis humanae salutis.
Humiliare sub potenti manu dei,contremisce et effuge, invocato a nobis sancto et terribili nomine,quem inferi tremunt.
Ab insidiis diaboli, libera nos, Domine.
Exorcizamus te, omnis immundus spiritus omnis satanica potestas, omnis incursio infernalis adversarii, omnis legio,omnis congregatio et secta diabolica.
Ergo draco maledicte et omnis legio diabolica adjuramus te.
Cessa decipere humanas creaturas,eisque aeternae Perditionis venenum propinare……Vade, Satana‼︎ Ut Ecclesiam tuam secura tibi facias libertate servire te rogamus, audi nos‼︎」
悪魔祓いを唱え終わるとバトラーの口から黒い煙が勢い良く噴出し、悪魔の本体たる黒い煙は地獄へと送り返されていった。
そうして……悪魔が抜けた事により気絶したバトラー。
数秒後に眼を醒まして心ここに在らずと言った感じで辺りを見回す。
「……私は? 一体? 奥様、旦那様……」
正気を取り戻したバトラー。
それを見てクリスは安堵の表情を浮かべてゆっくりと椅子に座りもたれ掛かるとぐったりとした声で呟く。
「キャス……私も治してくれると嬉しい」