戦闘訓練が終わりその日の放課後。
クリスは応接室に呼ばれていた。
置かれている椅子に座るクリス。
対面にはミッドナイト、根津校長、相澤先生、プレゼントマイク……そしてオールマイト。
根津校長が口を開く。
「クリスティーナ・ウィンチェスターさん……」
名前を呼ばれ頷くクリス。
相澤先生がPCを操作して見せるのは訓練映像。
ノイズが酷く走り殆ど見えないがかろうじて見えるのはクリスの姿と声、そして轟焦凍の口から噴出する黒い煙。
「ウィンチェスター……これについて正確な説明を求める」
それは先程の訓練の映像。
額を抑えてため息を吐くクリス……。
どう誤魔化そうかと思案しつつチラリと教師陣を見る。
「説明と言われましても……私は機械には疎くてですね」
「クリスティーナさん、我々が聞きたいのはそんなことじゃない……黒い煙が轟焦凍さんから噴出したと……それを聞きたいのさ」
そう言われてクリスは言い訳の15や20をザッと思いつくも根津校長が先んじて語る。
「嘘はお勧めしない」
相澤先生からは嘘は見抜いているぞっと……眼光鋭くそう告げられる……。
クリスは深く溜息を吐いて片脚を組みながら語る。
「どうせ言っても信じない、頭がおかしくなったか精神が参ってると思われるだけだ」
諦観の眼差しでそう語るクリス。
そう語るが……オールマイトが口を開く。
「ウィンチェスター少女、我々は君の言う事を信じるが、先ずは話してくれないとどうしようもない……私はそう言った事を実体験している、アメリカでね、その際ハンターにも助けられている」
そう告げられ……たっぷり数十秒悩み、口を開くクリス。
「あの黒い煙は悪魔……魔王ルシファーの手によって生み出された闇の住人です」
そう語ると……先生達の眼差しが一気に異常者を見る様な眼に……。
相澤先生がその眼でこちらを睨みながら口を開く。
「ウィンチェスター、嘘はお勧めしないと言ったがまさか突拍子の無い戯言を言い放つとはな……」
そう告げる相澤先生だがオールマイト先生は違った。
最初から肯定している感じといい……こっち側の人間か? ハンターに助けられた……か。
悪魔の事を更に詳しく語ろうとした瞬間……クリスを含めた部屋に居る全員に感じ取れる異常な寒気。
小春日和にも関わらず白い息が見える程寒い。
少しすると幽霊の姿が露わになった。
白髪の青年……。
それを見た相澤先生とミッドナイト先生が嗚咽混じりに叫ぶ。
「白雲‼︎」
「白雲くん⁉︎」
雄英の制服に身を包んだ青年の幽霊は『白雲朧』と言うらしい。
白雲と呼ばれた青年の幽霊はとても穏やかな表情で相澤先生と香山先生を見て懐かしい話をしていた。
「感動の再会を邪魔して申し訳ないですが……続きを話しても?」
そう語ると白雲と呼ばれた幽霊はクリスの方へと振り返り申し訳なさそうにしつつその姿を一時的に消す。
そうして……クリスは語る。
「悪魔とは一部を除いて地獄に堕ちた人間の成れの果てです……地獄に堕ちて文字通り地獄の責苦をくらい自分が人間である事を忘れてしまった者達……それが悪魔です」
そう語ると相澤先生達の表情は険しく……されども全員が全員、長いヒーロー稼業で何か憶えがあるのか顔を見合わせていた。
そして、クリスは今出てきた白雲朧の事も語る。
「先程の白雲朧さん……幽霊となって出てきたのには幾つかの理由があります……1つは遺体を火葬にしていないから、そしてもう1つは彼の遺品をまだ誰かが持っているから……確認なのですが、アメリカでは一般的ですが日本にも土葬の風習がおありで?」
疑問を投げかけるクリス。
アメリカと違い日本では火葬が一般的と聞いた。
故に本来なら幽霊はほぼ出ない、日本で活動するハンター達からも幽霊が出たと言う『狩り』はほぼ聞かなかった。
その問いに関しては相澤先生が答える。
「……このゴーグルは俺が白雲から貰った形見の品だ……だが遺体は間違いなく火葬にした……葬儀に参列して骨まで拾ったんだ、間違いない」
それを踏まえてクリスは思案する。
遺体は間違いなく火葬にされたのに白雲朧の霊体はこの世を彷徨っている。
可能性は2つ……相澤先生のゴーグルに取り憑いているか、そもそも遺体が火葬にされていないか。
検証を行う他ない。
クリスは椅子から立ち上がって語る。
「……白雲朧さんに真実を聞きましょう」
そう告げると相澤先生の表情が歪むが……白雲の幽霊をここに居る全員が見ている。
クリスはテーブルに幽霊を呼び出す儀式を行う為の素材を入れたボウルを置いてそのボウルを囲む様に塩でサークルを作った後で呪文を唱える。
すると先程と同様に冷気が部屋を包み込みポルターガイスト現象が起きる。
そして、白雲朧の霊が現れた。
「よぉショータ、それに香山先輩……さっきぶりだな」
先程同様……雄英の制服に身を包んだ白雲は笑みを浮かべながら相澤先生と香山先生に語りかける。
そして、相澤先生は決定的な質問を行う。
「俺は……お前の葬式に参列した、骨も拾った……なのに、なんでこの世に留まっているんだ?」
震えながらそう語る相澤先生に対して白雲の幽霊は頬を掻いて天井を見つめながら語る。
「俺の遺体は……火葬の直前に摺り替えられたんだよ、今は改造されて黒霧って呼ばれる死体人形になっちまってる……個性も改造されてワープゲートになっちまってる」
そう語る白雲。
それを聞き絶句している相澤先生と香山先生。
2人にとっては親友の遺体が尊厳も何も無く弄くり回されて玩具にされている事実が耐え切れないのだろう。
その姿を見て……白雲はクリスの方へと向き直り語る。
「さて……ショータにも会えたし山田にも、香山先輩にも会えた、未練は無いよ……俺をあの世に送ってくれないか? 君なら……できるだろう?」
そう告げられるが……難しい。
クリスの双眸には見えている、白雲に刻み込まれた刻印が。
無言を貫くクリスに対して白雲は笑みを浮かべながら催促をしてきた。
「おいおい? どーした? 君は『ハンター』だろう? それが君の為すべき事だ」
そう告げられるがクリスは迷っており……たっぷり5分経過してから告げる。
「貴方を今あの世に送ると間違いなく地獄に送られる……それは私の望む所じゃない、貴方の行くべき所は天国です……」