蒼角の兄になってしまった。 作:蒼角はここだよ!!!
攻撃% +1
会心率
会心ダメージ
HP +3
↑こういうのを振り直すのができたら良いなあという発想と妄想から生まれました。
ですのでこの短編は私の妄想捏造考察詰め込みセットです。
そしてこんなタイトルのくせに蒼角兄要素は薄めです。というか蒼角この短編に出ません。
前半アキラ、後半月城柳です。
注意点として、柳さんのPVは見ないと意味が分からないかも。
シリアスかどうかは人によります。
壱
俺は月城柳が嫌いだ。
それは別に、かつて限定キャラとして彼女がガチャに登場した時、俺の暗号化マスターテープを根こそぎ奪い取った私怨というわけではなく、ただただ
……まあ、私怨に違いはないが。
向こうはそうじゃないみたいだし、蒼角もそうじゃないみたいだが。
嫌いなものは嫌いだ。
勘違いしてほしくないのは、当の本人、つまり月城柳は世間一般で言う模範的な善人なので、この感情は俺だけが持つ俺だけの問題であるという点だ。
月城柳という人間は、おおよそ素晴らしい人格の持ち主である。
理性的で、知識人で、常識人。
だから嫌いだ。
あの凛とした表情で見つめられた時、俺は平静ではいられない。
あの目で見つめられた時、俺は怒りが込み上げる。
自分に。
何もできなかった自分に。
逃げてしまった自分に。
俺が背負えなかった物を託された彼女を嫌う自分が、どこまでも憎い。
戦争を始めた張本人の父親を止められず、病に侵された姉を見捨て、何も知らぬ蒼角を置き去りにして、あの場所を去った自分が、どこまでも。
だから俺は、俺があれだけ苦心して成し遂げられなかったことを呆気なく成し遂げた柳が、羨ましくて、妬ましい。
本当に、嫌いだ。
「
「……ああ、アキラか。どうした?」
迸る激情を宥めて俺が目を開ければ、『Random Play』の店主、アキラが丁度俺の店の扉を開けたところだった。
灰色の髪を携えた優しげな好青年である彼が、凄腕のプロキシ──非合法のホロウナビゲーターであることを、俺は既に知っている。
俺がここでやっている『裏稼業』を頼りたいと言って。
どこでどう知ったのかは知らないが(少なくとも俺は表で広告した覚えはない)、そのあたりは伝説の『パエトーン』というだけあって、情報通なのだろう。
実際は『羊飼い』経由かもしれないが、まあそこはどうでも良い。
「いつものやつ頼んで良いかな、どうも運が悪くてね」
「……俺は構わないけど……本当、よくこの金額が払えるな。どう考えても赤字だろ」
「よく言うよ。払える人にしか提供していないくせに」
「それはそうだ」
言って、アキラは懐から何枚かレコードのようなディスクを取り出した。しかしこれは一般的な音楽再生用のものではなく、エイファさんの店で調律される、いわば音動機専用のドライバディスクである。
それをバラバラと取り出して……いや多いな。これを全部強化するだけでも相当ディニーと助剤を使用しただろうに、挙げ句の果てに俺の店にまで来るとは、中々の太客っぷりだ。
「……一応確認するぞ。この処置をした場合、エイファさんがエーテル助剤で『伸ばした』音は消えて、ディスクは調律した当初の状態に戻るが、助剤は返ってこない。当然ディニーの補償もない。それでも構わないな?」
「ダメと言ったらまけてくれるのかい?」
「俺はお前と違ってド田舎の出身でな、そういった制度は存在しない」
「むしろ田舎の方がありそうだけどね……」
失礼なことを言う奴だ。
だが、不思議と不快には感じない。アキラの口調や柔和な声がそうさせるのだろう。自覚があるのかないのか知らないが、はてさて、この魔性にこれから一体どれほどの人間が取り込まれるのやら。
そんなことを考えながら、俺はアキラに渡されたドライバディスクを並べてから、横笛を取り出す。
仕事道具である。
竹で出来たそれは鬼族に伝わる伝統的な楽器であり──母さんの形見でもあった。
心が落ち着く音色。
俺の唯一の拠り所。
それほど大事なものを商売道具として使っているのはどうなんだという批判は甘んじて受けよう。
俺も自覚している。
ただ、この音を吹くことで、吹き続けることで、俺が母さんとの思い出を忘れることは絶対にない。
どちらが言い訳で、どちらが本音かは分からない。
分からなくても良い。
「────」
ともあれ、俺が母から受け継いだ横笛により奏でられるこの旋律は、何故かエーテル助剤によって
かつてゲームでドライバディスクを厳選していた俺からすれば喉から手が出るほどの現象だが、原理は謎である。
あえて真面目に考えるのなら、この笛から発せられる特殊な周波数がディスクに何らかの影響を及ぼしているのだろうと思われるが、まあ、音動機とディスクの機能的な関係性をまともに理解していない俺が考えても意味はない。
大事なのは、それができるということ。
そういう仕組みがあることだ。
転生してからというもの、俺が覚えていた原作知識はほとんど役に立たなかったが、店を開くにあたってようやく活用できた知識である。
何かと揃っている六分街で、針の隙間を縫うような需要を満たせたのは幸運と言えるだろう。
音動機とドライバディスクのシステムがゲームと同じだったことを感謝しなくてはならない。
「──……こんなところか。確認は?」
「いいさ。君の仕事を信頼しているからね」
「そいつは重畳。それじゃあ、十三枚のディスクリセットで三十九万ディニーだ」
「…………」
値段を聞いた瞬間、音色に聴き入っていたアキラの安らかな顔が苦々しいものに変わった。
覚悟をしていたものの、まとまった値段に思うところはあるらしい。
そして何を思いついたのか、
「エイファさんは、分解する時に、調律にかかった費用と助剤を七割ほど負担してくれるんだけれど」
と言った。
アキラはどうやら何か伝えたいことがあるみたいだが、生憎俺は鈍感なので、「そうか、良心的なんだな」と返した。
エイファさんはなんて優しい人なのだろう。
尊敬しなくては。
そんな俺の白々しい態度を前にアキラは何かを諦めたらしい、ふぅ、と一つ息を吐いて言う。
「……エイファさんは、一つアパートを挟んでいるとは言え、よくこれで店を構えることを許したものだね」
「筋は通したからな。それに、彼女としても『新たな旋律の可能性を感じ取れるのは美しい』、だそうだ」
更に下世話なことを言えば、エイファさんは俺がいることで儲かっている。
本来アキラが言うように、エイファさんの店でディスクを分解する場合、強化にかかった費用と助剤は七割五分ほど返還される。
ゲーム的な表現で言えば、レベルを最大まで上げるために七万五千ディニー程度かかるが、分解した場合、五万七千ディニーは返さなくてはならない。つまり、実質彼女の儲けは二万ディニーもない程度なのだ。
だがしかし、ここに俺が挟まることでそのサイクルは変わる。
エイファさんの店で強化したディスクを分解せず、俺にリセットさせることで、エイファさんの懐には七万五千ディニーが丸々入るのだ。
彼女は一枚七万五千、俺は一枚三万の儲け。
これほど両者が得をする商売もない。
正直、かつての厳選の苦労を思えばリセット代金は一枚十万でも安いと思うのだが、流石にそれはエイファさんとの関係に軋轢が起きると思い控えておいた。
俺は笛を吹いているだけだしな。
「……ニコにどう説明したものかな」
「俺から言わせてもらえば、邪兎屋のディスクの面倒をお前が見ていること自体が変なんだが」
「まあ、そこは色々あってね。腐れ縁というやつさ」
「……ふうん」
あの守銭奴がこの金額を了承するとは思えないが……本当にこいつら、どういう関係なのだろう。
どんな仕事をしていようと勝手だが、爛れた関係でなければ良いが。
「……ま、値段が気に入らないなら、笛を持ってる別の鬼族に頼むんだな」
「それは僕が君以外に鬼族の知り合いがいないことを知っての台詞かな。だとすると相当
「……これでも安くしてるからな。本当に」
「分かってるよ」
呆れた風に返すアキラの様子を見て、彼らがまだ蒼角に出会っていないことを悟る。
テレビや雑誌で蒼角の存在を知ってはいるのだろうが、一度でも会っていれば、アキラはああいった言い回しはしない。……となると、零号ホロウにもまだ行っていないようだ。まあ、それ以前に彼らは『パエトーン』の称号を失ってもいないので、やはり原作が始まる前なのだろう。
現時点で、対ホロウ六課の蒼角と関わりがあるはずもない、が。
ただしそれは、イコールでアキラが六課の誰とも知り合いではないという意味にはならない。
なぜなら。
「こんにちは、蒼淵──あっ。貴方はビデオ屋の……」
「やあ、柳さん。奇遇だね」
六分街に構えるこの店に、月城柳本人が訪れるからだ。それも頻繁に。
自然、この店をよく利用するアキラは柳と顔馴染みになってしまう。
無論、『パエトーン』であるアキラは柳がどう変装していようと
その証拠に、既にドライバディスクは彼の懐の中に収まっていた。正体が露見する恐れはない、今のところは。
「それじゃあ、蒼淵。また来るよ。次はもっと使いやすい家具がいいな」
「……お気に召されるよう努力するよ」
お互いに心にもないことを言って、あくまでも俺たちは表の間柄なのだとアピールしてから、アキラはついでのように「柳さんも、機会があれば是非『Random Play』へ」とビデオ屋の宣伝をしてから店を去った。
アキラは六課の人間と関わるべきではない立場の人間とはいえ、柳が来ると妙に撤退が早い。
気を遣われているのだろうか。
だとすれば、むしろそれは失敗している。
「……店長さんとは、随分親しげですね」
やや棘のある声で、柳は言う。
どういう感情なのだろう。
考えるだけで疲れそうだったので、俺はそれをただの感想だと捉えて──つまり内容を一切無視した上で、俺は返事をした。
「何の用だ。調整は最近やっただろ」
「用がなければ、来てはいけませんか?」
「…………」
彼女は俺の居場所を突き止めて以降、何かと理由を付けて俺の店へ訪れていたが、いよいよ開き直って理由もなく足を運ぶようになった。
まるで、心配性の家族のようだ。
あるいは、姉のようだ。
「それとも。……貴方にとって私は、未だ家族の仇ですか?」
「…………いや」
そうじゃない。
お前は鬼族の救世主だ。
転生し、この世界の知識を持っていながら、父親の暴走を止められず、姉さんの病を治せもしなかった俺と違い、柳は未来を何一つ知らないまま全てを救った。
俺ではなく、柳が。
予定通りに、運命通りに。
羨ましくて──妬ましい。
そう言えたら、どれだけ良かっただろう。
柳との仲も改善するかもしれない。
蒼角にまた会えるかもしれない。
だが、俺のちっぽけな下らないプライドは、弱音を吐くことを許さなかった。
「……俺に家族はいない。いないよ。あの男に勘当された瞬間から、俺には父親も姉も妹もいない。だから俺は、姉さんの弟じゃないし、蒼角の兄でもないし、ましてやあんたの弟でもない」
「…………」
「あんたに何の責任もない。だって、関係ないからな」
「──っ私は!」
悲痛な声で、柳は叫んだ。
それ以上、俺の言葉を聞いていられないとでも言うように。
「頼まれたんです。
「…………」
「誰も、貴方のことを憎んでいません。恨んでいません。むしろあの時、族長に挑んだ貴方に帰ってきて欲しいという声も出ています」
柳は、俺の額に視線を移す。
俺の抉れた左角から、そのまま義手となった左腕を見て。
それから義足となった右脚を見る。
俺が一族の掟を破ってまで父親を殺そうとして、親殺しを成そうとして、結局無様に負けて縁を切られた一部始終が、そこにはあった。
「だから、蒼角にも──」
「俺はお前が嫌いだよ、月城柳」
「…………」
あまりにも唐突な宣言に、少なからず柳は驚いた様子を見せた。
嫌いだ、と心の中ではいくらでも思っていたけれど、思い返してみれば、こうして面と向かって言ったのは初めてかもな、と発言してから思った。
失敗したと思った。
そしてしっかりと俺の発言に柳は傷付いたみたいで、俺は罪悪感で心が満たされていくが、それでも止められず、むしろ堰を切ったように言葉は続く。
「そうやって自分を蔑ろにして、誰かのために身を削る姿が嫌いだ。献身が烏滸がましい。お前は姉さんの血を受け継いだんだろ。託されたんだろ。だったら、自分の身はどうでも良いとか、つまらない人間だとか、そういう風に考えるなよ」
だから俺は、柳が嫌いだ。
だから俺は、俺が嫌いだ。
「もう……放っておいてくれ」
そこから俺は、急に何もかもが嫌になって、柳を無理矢理店から追い出そうと彼女の手首を掴んで引っ張った。
だが、彼女は微動だにしなかった──もはや四肢のうち二本しかまともに動かない俺では、姉さんの血の力には勝てないらしい。
鬼の力には。
「……それでも」
俺の抵抗を受けて何を思ったのだろう、柳は逆に俺の右腕を掴み、そのまま店の壁に押し当てた。
長身の彼女にそれをやられてしまうと、未だ蒼角よりも多少背が大きい程度の俺には、自然と覆い被さられたような形になる。
俺の顔に、柳の影がかかる。
髪がかかる。
何故か、姉さんの影が見える。
「だからこそ──私は、貴方を見捨てるわけにはいきません。だって、貴方は蒼角の……たった一人の家族なんですから」
「…………お前がいるだろ」
「代わりはできても、代わりにはなれません」
「…………」
何故か泣きそうな顔で、柳は言う。
いや、ひょっとしたら既に泣いていたのかもしれない。
そう思ってしまうほどの震えた声で、柳は俺を呼ぶ。
懐かしい声音で、呼ぶ。
「蒼淵」
「…………」
「蒼角を、ひとりにしないで」
そう言って、柳は俺を抱きしめた。
姉が、弟を守るように。
優しく、力強く。
「……クソ」
お前は誰なんだ、柳。
だから嫌いなんだ。
俺の姉でもないくせに、そんな風に思い詰める姿が嫌いなんだ。
そして、そんな姿で姉さんのことを思い出す俺も、大嫌いだ。
「……俺は、お前が嫌いだ……!」
情報を極力絞り、後出しの情報でどんどん蒼淵くんが皆様の脳内出力でショタになっていっていれば、私の目論見は成功です。
青肌和装片角義手義足ショタ、いかがですか。
情報を絞り過ぎて話の流れが掴みにくかったら申し訳ない。
ちなみにアキラは初っ端から「蒼淵」と呼び捨てにしているので一応年下(同い年)推測はできるようになっています。
こんな妄想を楽しんでいただけたのであれば幸いです。
それでは。