彼は“お父様”に恋をした 作:─────
「……そこで、君に彼女らの補佐を任せる」
「承知いたしました」
遺跡についての話を終えたアルレッキーノは、自らの背後から足音が聞こえると、それに向かってそう話した。
「セルジオ!お前、倒れたって……」
「あの程度、どう言うことはない。無視しろ」
「……でも、アンタ血を吐いて──」
「些事だ。これ以上言わせないでくれ」
現れたセルジオに、パイモンとナヴィアが交互に心配とも懸念とも取れる言葉を口にするが、その全てを彼は一蹴し、アルレッキーノに視線を向けた。
「「博士」の実験の結果、彼は魔眼の耐性の強化とともに傷の回復能力も向上している。おそらく既に先程のダメージは癒えているだろう。元々はこの遺跡の調査も彼に任せる予定だったのだが、彼が倒れたのはこれが初めてなんだ、そこで念の為に彼は主体ではなく補佐として君たちと同行してもらうことにする」
アルレッキーノの言葉に、彼を心配する声も止んだ。
正確には、未だ懸念はあったがアルレッキーノがこう言った以上は彼も止まらないだろうと理解したのだ。
「ちょっといい?あたしも一緒に行っていいかな?」
「ナヴィア嬢がご同行を?」
「……では、私たちも」
「いいえ、今回は私一人で行かせて」
ナヴィアは、マルシラックとシルヴァの同行を拒んだ。
「……私は、彼に聞きたいことがあるの。それに、彼と旅人を二人きりには出来ない」
「おい!オイラもいるんだぞ!」
「彼が剣を抜いたら、アンタじゃ何もできないでしょ」
ナヴィアはセルジオに強い視線を向けた。
ポアソン町の人間が彼によって救われたのは事実だが、ナヴィアは未だ、自分を殺そうとした男を信頼しきれずにいたのだ。
マルシラックとシルヴァを同行させずに行くのは完全に敵とみなしてはいないと示す為の最低限の礼儀のつもりなのだろう。
「……なるほど、確かにナヴィア嬢とは浅からぬ縁があると聞いたことがある。セルジオ、今後の友好的な関係のためにも、道すがら話をするといい」
「……承知いたしました」
こうして蛍、パイモン、ナヴィア、セルジオの四人は遺跡へと向かった。
その道すがら、ナヴィアがセルジオの肩を叩く。
「……旅人から聞いたこと、本当?アンタがあたしを狙ってたって」
「……あぁ、お前に契約書を渡したヴァシェの件より前に一件、お前に関する依頼があった。生死問わず、一千万モラ。……俺の顔は覚えていたのに、これは覚えていないのか?」
「幼い頃のことだから記憶が曖昧なのよ……、一千万なんて大金があたしに?でも、その依頼はパパが止めたって……」
「そうだな、一千五百万の月三十万の支払いとの約束だった。──そのうち一千万は未だ支払われていないがな」
彼は呆れたようにも疲れたようにも聞こえるため息を吐いた。
ナヴィアはそれに少し戸惑ったような表情を浮かべ、不服そうに
「……契約書が残ってるのなら、一応払えないこともないけど?」
「いらん。取り立てがしたいわけでもなければ、今は金に困ってないからな」
「そう。じゃあ、贖罪っていうのは?」
セルジオは少し戸惑ったような表情を見せる。
「……罪の意識、とでも思ってくれ。昔、お前たちの仲間も何人か手にかけたんだ」
「──!…そう、それじゃあ態度で示して」
ナヴィアが込み上げてきたものを抑えてそう言うと彼は
「あぁ、お前の懐の深さに感謝するよ」
それだけ行ってナヴィアから視線を外して前を向いた。
遺跡は目前だった。