彼は“お父様”に恋をした 作:─────
アルレッキーノが次の言葉を発するより先に、セルジオの背後から、ガタッ、バタン!と凄まじい音が響いた。
セルジオが咄嗟に振り返ると、そこにはリネ、リネット、フレミネの三人が倒れていた。ドアの隙間からのぞいていた三人はセルジオの言葉に驚いてバランスを崩し、なんとか立て直そうとしたものの立て直しきれずに部屋の中へと倒れ込んでしまったのだ。
「……お前たち」
「──あ、えっと……」
一番最初に顔を上げたリネと、セルジオの目が合う。
セルジオは今まで一度も見せたこのない表情で三人を見つめている。
「……盗み聞きか、お前たちの得意技だったな」
「いや、ちが──」
「何が違う」
意を決して最も信頼するアルレッキーノにのみ打ち明けようとした彼の最大の秘密を、リネたちが盗み聞いたことに対する怒りや困惑がその瞳にありありと浮かんでいる。
「……お父様、お目汚しを失礼しました。今夜のことは、ただの……悪夢の類だと、考えていただければ幸いです」
彼は、アルレッキーノへ深々と一礼すると、部屋から出るためにドアの前で倒れた姿勢のままの三人を跨ごうとする。
「──待ちたまえ」
アルレッキーノは彼を呼び止めた。
「君の言葉で、私の疑問が一つ消えた」
彼女の言葉にセルジオは首を傾げる。
そんな彼を前に、彼女はただ言葉を続ける。
「君をここに迎える前から、君の評判は聞いていたんだ。曰く、モラ至上主義で、モラさえ払えばどのような相手だろうが殺し、命の価値など認めすらしない。曰く、邪魔ならば協力関係にある仲間だろうと殺すと」
「しかし、君はこの
アルレッキーノの言葉に、セルジオは静かに首を縦に振る。
アルレッキーノはその仕草に何かを確信したかのように瞳を細める。
「……それは、君の幼少から積み上げられ続けた考えが変わったのではない。君にとって
セルジオはもう一度、首を縦に振った。
「物心ついた頃から続けたやり方を
アルレッキーノは一口紅茶を啜る。
「故に、私は君を許す。君が壁炉の家の一員である限り君は私の家族だ。ただ……」
そこまで言って、アルレッキーノは言葉を切ると、少し口角を上げた。
「
「許していただける、それだけで望外の喜びです」
「……それはそれとして、リネ。お前には少し話しがある、他の二人を連れて待っていろよ」
そろりと部屋を出ようとしたリネたちは、セルジオに呼び止められ、冷や汗を流すのであった。