彼は“お父様”に恋をした 作:─────
フォンテーヌ邸にて、訪れたばかりの蛍とパイモンがリネたちに誘われて彼らの仮住まいへ向かった時のこと。
リネがフレミネのことを紹介した少し後、黒いフード付きのローブを着た男がリネとリネットに近づき、フードを脱いだ。
「久しいな、リネ、リネット。──そこにいるのは、かのご高名な旅人殿では?お前たち、知り合いなのか?」
「……セルジオ」
リネットがポツリと呟くと、パイモンが思った疑問を口にする。
「……ん?知り合いなのか?」
「この人はセルジオ。一応、僕らの兄にあたる人だよ。彼は──」
「俺は口下手で、それに仕事に集中しすぎて弟たちと話す機会も少ないからいざ会っても会話が続かない。……白けさせてすまなかった」
パイモンの疑問に答えたリネの言葉を引き継ぐようにセルジオが蛍とパイモンへ謝罪する。
「詫びと言ってはなんだが、今度会ったらぜひ一緒に食事でも。旅人本人の視点から語られる冒険譚にはとても興味がある」
「食事!美味いのか!?」
「あぁ、一級品を約束する」
「絶対だぞ!」
そんな会話を交わしたセルジオと旅人たちが再会したのは、意外にもリネとリネットの裁判の際ではなく、それよりも少し後のことだった。
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旅人が意識を失うと同時に、まるで見計らったかのように迫るマシナリーの群れ。
それを守ろうと駆けつけたナヴィアと、それを追うようにしてクロリンデが加勢したが、警備ロボの数は増え続け彼女たちを数で押し潰そうとしている。
旅人は意識を取り戻したものの、体が十全に動かない。
その時、彼女たちの前に黒いローブが躍り出る。
「下がれ──!」
その一言をナヴィアとクロリンデが聞き取り飛び退くのとほぼ同時に剣を引き抜くと、その両肩に下げられた
振り抜かれた剣は、警備ロボの半数以上を一瞬にして溶断した。
残り半数の警備ロボも三人の手で同じように機能停止へと追いやられた。
「あっ!セルジオ!」
ローブの男の正体にパイモンが勘付いたと同時に、男がフードを脱ぐ。
「また会ったな、弟たちが世話になった」
「そうだぞ!二人とも大変だったのに、なんで会いに来なかったんだよ!」
「弟妹に罪がないことくらいわかる。だから、最悪の事態を想定して準備をしていた。……俺はあいつらとは少し違う出自だからな、あいつらみたいに善良じゃない。荒いやり方が得意なんだ」
鋭い目つきにパイモンがたじろいだその時、彼はその視界にクロリンデを捉えた。
「……よし、腹は減っているか?約束を果たそうと思うのだが」
「今日はもうお腹いっぱい食べちゃったぞ」
「そうか、ならそれはまた後日だな。コイツを渡しておく」
彼が旅人に手渡したのは、焼け焦げた一枚の円盤──かろうじて見える模様からそれは元々モラだったのではないかと推測できる──もはや原形をとどめておらず、使用できないそれを見て、旅人が首を傾げる。
「これは?」
「壁炉の家とは別の、
「食事はまた今度誘う。空いてる日があれば教えてくれ」
そう言って彼は、旅人の前から姿を消した。