彼は“お父様”に恋をした   作:─────

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「捜査は順調か?旅人」

「……!お前は……」

 

ロシの工場へ向かおうとした蛍の元へと現れたセルジオに、パイモンが警戒する仕草を見せる。

 

「そう警戒しないでくれ、俺はこれを渡しに来ただけだ。……歌劇場で開けるといい」

 

彼は懐から一枚の封筒を取り出して蛍に手渡した。

彼は蛍がそれを受け取ったのを確認すると、話をする暇も無く何処かへ去っていった。

 

──────────

マーセルを追い詰める証拠を見つけた蛍は歌劇場へと走り、ふと思い出してセルジオから渡された封筒を開封する。

そこに入っていたのは……

 

『①カーレスと面会しているジャックの様子を注意深く観察すること

②ジャックが行動を起こさなかった場合、両名を片付けるべく〝三人目〟が動く、その様子を観察しておくこと

③ジャックと〝三人目〟のどちらともが失敗した場合、〝三人目〟を原始胎海の水で溶かし、カーレスを始末すること

以上を仕事内容として、100万モラでこの契約を締結する。

マーセル』

 

それは、ナヴィアとともに推理した第三者の存在を裏付けると同時に、下手人はさらに保険をかけていたという証拠であり、三年前にナヴィアの父カーレスが逮捕された事件において、動くことこそなかったものの彼もその場にいたのだという証拠でもある。

 

結果から言えば、マーセルと名乗っていたヴァシェはロシの製作所で見つかった証拠と、セルジオから手渡された契約書が決定的な証拠となって逮捕となった。そして、冤罪を着せられていた執行官タルタリヤも何故か同じく有罪と判決され、メロピデ要塞へと送られることとなった。

そしてその後、噴水広場にて原始胎海の水によって増幅された水元素の感知能力によって広場の噴水に集まっていた〝溶けた〟者たちの思念と接触し、命を落とした。

 

─────

それから数日後、パレ・メルモニアにて

 

ファデュイ執行官の一人である召使と、水神フリーナと最高審判官ヌヴィレットの面会の場にて

 

「……」

 

黙り込むフリーナの視線の先に居るのは、断固として椅子に腰を下ろすことなく、召使の背後に立つ一人の男だった。

 

「召使殿、彼は?」

「壁炉の家の子供の一人だ。……少し特殊でね。詳しくは口に出さないが、実力と人格において誰よりも信頼が置ける、側近のようなものだと考えてくれて構わない」

 

男は口を開くことなく召使の背後に侍っている。

そうして執行官タルタリヤについて話し合いが始まり、議論が交わされる中、やはり男は静かに佇むのみだった。

 

「……今回は有意義な話し合いができてよかった。それでは、失礼させていただこう」

 

話し合いの末、今回の件についてメロピデ要塞はフォンテーヌから独立した自治区であるため、フォンテーヌ側からの調査が終わり報告がなされるまでは召使たちは動かないこととなった。

召使はフリーナとヌヴィレットに背を向け、部屋から退室する。

召使の横に侍っていた男──セルジオは彼女が退室するまでフリーナとヌヴィレットの様子を観察し続け、彼女が不意打ちなどを受けることなく退室したことを確かめた後に退室した。

二人はパレ・メルモニアの外に出ると、召使が彼に語りかける。

 

「……セルジオ、話は聞いていたね?」

「はい、一部始終を聞いておりました」

「なら、するべきことはわかるね」

「勿論」

「……良い報告を待っているよ」

「仰せの通りに」

 

───────

こうして送り込まれたセルジオだったが、旅人とパイモンの二人がメロピデ要塞の内部でその姿を見ることはしばらく無かった。

しかし……

 

「最後──三つ目の質問だ。……医務室にいる患者たちと俺の看護師長、彼らは一体どんな秘密を隠してる?」

 

メロピデ要塞の調査も佳境に入った頃、召使が送り込んだリネとリネットの内、リネットをメロピデ要塞のリーダーであり「公爵」リオセスリが人質に取って召使を呼び出すべく脅した──ように見えた──その時。

 

「随分と余裕だな、俺まで気付いた上での余裕か?」

 

リオセスリの首筋に刃が向けられる。

 

「……おいおい、勘弁してくれよ。フレミネくんを助ける為には俺が扉を開けなきゃ……」

「そんな物、俺の炎で溶かせば良い」

 

刃が炎を纏うや否やリオセスリは機械製の籠手でそれを弾き飛ばす。

 

「オイオイ、リネくんよりも話が通じないなこれは」

「……俺はただ、邪魔をする一切を焼き払うのみ」

 

執務室に膨大な熱気と冷気が充満し、煙が辺りを覆う。

 

「お前の無理難題に答えてやる。……アレは原始胎海の水だな?」

「──ッ!?お前──」

「お前たちの〝禁域〟とやらを荒らしたわけじゃない。ただ、この場所の周囲の水質に変化があったらしいと聞いたのでな、水質を調べたのだが……どうだ?」

 

部屋に入って来た看護婦長シグウィンの麻酔銃を剣で弾き飛ばしながら彼は言う。

 

「そうか、それでリネットはどこに?」

「本当に寝てるだけだ。起きたらそっちに向かわせる」

「フレミネはお前が雇った代理人が回収した頃か?」

 

その時、ちょうどクロリンデがドアを勢いよく開いてフレミネを運んでくる。

 

「……リネット。俺の任務は終わった、ひと足先に帰還する。……旅人、また弟が世話になったな。悪いが、後少しだけコイツらに付き合ってやってくれ。俺は上で仕事がある」

 

彼を見つけたクロリンデは彼を睨んだが、彼はそんな視線を完全に無視して執務室から出ていった。

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