彼は“お父様”に恋をした 作:─────
旅人が召使たちと出会ってから少し後、メロピデ要塞での刑期を終える頃のこと
ポワソン町では至る所から原始胎海の水を含んだ水が溢れ出し、町はパニックに陥りかけている。
ポワソン町へ辿り着いたばかりのセルジオとアルレッキーノはその光景を少し遠くから見ていた。
「……お父様」
「許可する」
アルレッキーノは続く言葉を聞くこともなく、セルジオの行動を許可した。
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「──!」
声が出ない。
シルヴァとマルシラックへと原始胎海の水が迫る。
彼らは死ぬ、避けられない、そう思うとナヴィアは声すら出せなかった。
しかし、次の瞬間凄まじい炎熱が辺りを覆った。
炎熱により原始胎海の水の一部が蒸発し、それが収まると共に暴風が残りを吹き飛ばした。
「……あくまでその場凌ぎだ。今のうちに退け」
「──感謝する」
シルヴァは自らを助けた者の顔を見て、少し苦い顔をしながらも感謝を述べ、マルシラックと要救助者とともにその場を離れた。
炎熱と暴風を放った男は、至る所から噴き出る原始胎海の水をできる限り退けてそのまま数人を救助し、原始胎海の水の勢いが衰えると同時に動きを止めた。
「誰だか知らないけど、助けてくれて──」
そこまで言って、ナヴィアは男の顔に見覚えがあることに気がついた。
そして、彼女の記憶の中にあった刃物を持ってこちらへ近づく殺し屋のシルエットと、彼のシルエットとその光なき鋭い眼が重なった。
「あ、アンタ……どうして」
「俺なりの贖罪だと思ってくれ。……許せとは言わん──っ!?」
セルジオは突然膝を突き、その口元からぽたりと血が滴った。
複数同時に使用した邪眼の反動が彼の許容量を超えたのだ。
ナヴィアは思わず駆け寄ろうとするが、背後から聞こえた声がその動きを止めた。
「心配する必要はない、彼の命に別状はない。本来なら寿命を削る邪眼を、許容範囲内ならば無反動……今のように許容量を超えたとしても可逆的な内臓へのダメージで済ませられる」
そこにいたのはファトゥスの一人、召使だった。
その背後には多数のファデュイが控えている。
「状況は把握している。ここからは私たちも救助活動に加わろう」
召使はナヴィアと救助計画を話し始め、セルジオは数人のファデュイに肩を借りてその場を去っていった。
その後駆けつけた旅人がナヴィアから彼の行動の一部始終を聞いて驚くのはまた別の話。
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救助がひと段落したポアソン町の一角にて
「さて、セルジオ」
「……はい」
「命を大切に、とは毎回言っているはずだ。……何故あそこまでの無茶を?」
「故郷を守る、ならば……ポアソン町も──」
「ポアソン町もまた、フォンテーヌの一部だ。だが、それは君の命よりも大事なことか?」
「えぇ、貴女の御心が、俺にとって何より大事なものです」
この返答にアルレッキーノは頭を抱えた。
彼は彼女が望むことは自らの命より重いと本気で思っている。
命を大切にしてこそいるものの、それはアルレッキーノと関係のない場合のみだと、本気でそう考えているのだ。
「……君は毎回私のためならば厭わず命を張るが、私にとって……別途伝えない限り、君の命より大事な願いなどない。わかったか?」
「………………はい」
セルジオは、未だ納得していないと言った様子で頷いた。