TMR(of ephraim) プロトタイプ   作:バクネツ02

17 / 18
♯A07

 TMR(of ephraim)♯A07【Tiamo becomes Ms. Renaido】 

 

 《注意》

今回は現在主流となっている年齢設定の三年前ぐらい、ティアモ視点のエピソードとなっています。

 

私ティアモは17歳の弥生より、剣と鍛冶の修行に励むようになりました。

一年が経ち、時は18歳の神無月。収穫際の前日にエフラムと刃を交えたところ、ジェニーと師匠が介入。

師匠が突然倒れるという事故により、一時休戦となるのでした。

 

 ………

 

師匠が突然倒れたことにより、私闘の中断を余議無くされる。

私は直ぐ様師匠を担ぎ、最寄りの宿に運んで部屋の一室に寝かせることに。

現場に居合わせたジェニーはシスターのユニティであり、

師匠が倒れたのは一介に自分のせいでもあると自責し、看病すると申し出る。

私は最初、半信半疑だったが彼女の真っ直ぐで澄んだ瞳を見ると、

嘘偽りはないと判断し看病を任せることにした。

その後、私はエフラムと共に部屋を出るが必要以上に言葉を交わさず、師匠が倒れた理由を考えた。

 

…倒れたのは師匠が叫んだ後、おそらくジェニーがエフラムを庇ったシーンが原因だろう。

なら何故?…そういえば刀鍛冶の上達の手掛かりとして資料を読み耽ていた時、

古びた日記を見つけたことがある。字の癖、文章の書き方からして男性、師匠のものではないと断定できた。

その人物と何らかの関係があるのだろうか?拠点に戻ってから調べておくか。

いや今は師匠の回復を優先しないと…

日が落ち、疲れきったセリカがこの宿にやって来た。

待ち合わせに時間や場所に姿を見せなかったので探し回ったのだろう。

後は私が看ておくと言ったが、ジェニーは拒否をする。

目が覚めるまで私が看る、これがシスターの務めですから…だそうだ。

頑固で融通が利かない少女だと溜め息つく。一体どうやったらああなるのか…とふいに辺りに見渡すと、

宿屋の中で他の宿泊客の子供と楽しく話しているエフラムを見つける。

やはりあなたの所為ね、ジェニーはあなたに感化されたからなの?これだからロリコンは…

私はエフラムの無自覚の所業に憎悪を沸かせた。

その後ジェニーが独断、徹夜で看病すると言いだし、エフラムとセリカもこの宿で一泊することを余議なくされた。

 

夜、不安で眠れない私は刀を取り出し、外で素振りを始ことにした。これは気の迷いを払拭するため。

宿の外に出ると、夜空にはペガスス座とアンドロメダ座で構成された秋の大四辺形が見受けられる。

私は星座に興味ある。自分の誕生日が七夕だからだ。

漫画を描くのを止めた今、こうして星を見上げるのは私の楽しみの一つでもある。

視線を上から正面に戻せば人影が見え、槍を持っていることからすぐにエフラムと判断する。

彼の性格上、毎日鍛練を行うはずだから至極当然か…

エフラムを見つけてしまったことにより、素振りすべきか躊躇する。

彼は私に気がつき、話かけに近づいてきた。

「改めて聞く、何故剣を持った」

どうやら日中の答えに納得がいかなかったようだ。その答えに私は…

「ユニティに昇ったからよ、己の信じる道を生きるために」

あなたもそうでしょ。強くなろうと、生きようとしたからユニティに昇り、

自分の行く道を信じ、阻もうとするもの全てに対して妥協することなく警察と戦っている。

そう、武人として槍の頂点を極めようと、子供達に愛を与えようとしている。

私はただそれが愛する人の傍にいようと、愛する人のために剣を揮おうとするのに置き替わっただけ。

「それがこの有り様か?」

「ええ、悪い?私は純粋に戦いを望む。その極みにある勝利を掴む」

「勝利だけが望みか!」

「違うわ!」

「なら何を望む!」

「勝利の先にある愛よ!」

私は愛という勝利の報酬を得るために戦っている。たとえあなたの妹を傷つけることになったとしても。

あの人の隣にいられるのは一人だけであり、二人もいてはならないから。

この世に天下を取れる人間は二人としていない。武人気質のあなたならわからないことないでしょ。

 

…結局、昼間同様に泥沼化する一方だった。馬鹿らしくなってきた私は宿に引き返す。

部屋に戻り、師匠とジェニーがいる部屋の片隅で刀を抱きながら座り込んだ。

別に監視をしているわけではない、彼女を信頼している。

ただ宿代がもったいないから余分な出費を抑えるための判断だ。

隣の部屋にはセリカが寝ている。ならエフラムはどこで寝るのか?セリカと一緒の部屋だろうか?

彼は幼女から『夜、一緒に寝てくれませんか?』と言われ程の人間であり、一緒に寝るという可能性は十分在り得る。

だとすればこの展開は…KINSIN!もう自主規制もの。

と私は微かな期待をしながら船を漕いでいた。

 

しばらくすると、鍛練を終えたエフラムは部屋に入って来るや否や部屋の片隅に槍を抱え座り込んだ。

おそらく私と同じ理由故の行動だろう。しかし、私は気にくわなかった。

外での口論もそうだが、それ以上にセリカの部屋で寝ないからだ。兄妹なら一緒部屋に寝ないのか?

保護者なしで思春期の兄妹で外泊よ…若さゆえの過ちをしないのか…?

それが出来たら今頃ロリコンに走らずシスコンで留まっているか。

いや、その前にこの部屋借りたのは私。あなたは向こうで寝なさい!

…と言ってしまったら、また衝突し兼ねない。師匠、病人が寝ている手前で荒事など御法度だ。

私は不満で苛立ちを避けるようには眠りについた。

 

翌朝、窓から入る日差しが私を照らし、その眩しさで目が覚める。

師匠は以前意識を取り戻さず、夜通しで看病していたジェニーは酷く寝むそうだった。

またエフラムの姿はなく、行方を尋ねると朝の鍛練を行っているそうだ。

師匠が未だ目覚めないのを不安がっていても仕方がない。

心機一転、身支度をするため一度部屋を離れ、用を済まし部屋に戻る。

その頃にはセリカも起きて来て師匠の容体を聞くなり、私の心中を察していた。

気まずい空気に押し潰されそうなった私はジェニーに交替を申し出る。

咄嗟に考え出したことでもあるが彼女まで倒れたら元も子の無いからだ。

ただジェニーは俄然引こうともしなかった。

まったく…と呆れていると鍛練を終えたエフラムが戻り、ジェニーを見るなりと声をかける。

「まだ看ているのか?寝なければ体に障るぞ」

「ですが、これもシスターの仕事ですので…あの…エフラムさんが一緒に寝てくれるなら、そうします」

「わかった。俺も昨日はそれほど寝てなかったからな。

 少しばかり仮眠をとるか…セリカ、後は任せていいか?」

「ええ、もちろんよ。ジェニーもゆっくり休みなさい」

と言葉を交わした後、エフラムとジェニーは隣の部屋に移動する。

エフラムに対してやけに素直ね。もしかして、ジェニーはエフラムのことが好きだとか?

有り得る…昨日の言動といい、脈有りね。

ただ私を含めここにいる全員が重大なことをサラっと流していた。

遅れて事の問題性に気がついた私は大声で上げる。

「“わかった”…じゃないわよ!ロリコンの現行犯を真のあたりにしたじゃない!」

「まあまあ、落ち着いて下さい、ティアモさん。エフラム兄さんが捕まるのは今に始まったことではないから…」

セリカは“それはよろしいのですが…”と言わんばかりにスルーする。

確かにエフラムは既に前科持ちだ。だが自分の知り合いを兄が食ベようとしているのに何とも思わないのだろうか?

と私は疑問に感じセリカに問うと…

 

エフラムはユニティであり、ユニティであるならミラかドーマ教に殉ずるのが一般的だ。

脳筋の兄のことだからドーマ教の教えに魅せられることが考えられる。

せっかくの新規層、特に親族であるなら絶対に入教させなければならない。

だが過去何度も勧誘したがその都度断られた。

どうしたものかと悩んだ末、ミラの教え“産めよ増やせよ”の考えに至った。

なら既成事実を作れば良し。

嫁と同じ教えを信仰するのが家族円満の秘訣であり、子も信仰させれば一石二鳥だ。

合意の上なら問題な…有りだが、責任を取れば何の問題はない

 

…と彼女は答えた。

私は自分の欲求のため他人の人生を左右させることを遺憾に感じるも、

自分を顧み、意中の相手を奪うことはセリカと同じ行為ではないのかと自問し、顔をしかめる。

するとセリカは拍子の抜けたことを言い出す。

自分はジェニーの後押しをしているだけ。

彼女は孤児だから年上のお兄さん的な存在が欲しくてエフラムに惹かれている。

エフラムも既成事実を作ってしまえばロリコンから育メンに変わる。

だが非難されないかと?いやミラ教が全力を持って支援するから問題ない。

 

…と、あたかも自分の傍若無人な考えを正当化する。

しかしジェニーが孤児であること、その言葉を聞くとあながち間違ってはいない。

孤児、それは歪んだ世界に翻弄される者。神から見放された者。愛に飢える者。

生きることを我武者羅になる者。誰よりも平和を切望する者。自らの意思で軌跡を創り出す者。

私と同じで彼女も愛を欲し、暖かい家庭を築きたいのだろう。

それにエフラムもさっさと一線を越えてしまえば楽になる。

と納得しかけた時、エフラムもといロリコンが部屋に入ってくるとセリカが声をかける。

「早かったわね、エフラム兄さん。女性の立場から言えば早い(アレク)のはどうかかと思うんだけど」

「どういう意味だ?(子供を)早く寝つけさせるのは大切なことだぞ」

「えーと、なんていうかジェニー的には早い(アレク)いうか…かたいつよいおそい (アーダン)の方が…」

…セリカ、例えが逆だわ、こういう時は名前で隠喩しなくてはいけないのよ。だって規制に引かかるでしょ!

しかし、当のエフラムは何の事だか全く分かっていない。純粋というか、青春真っ盛りの男子が性に興味無いのは問題よ。

このままでは埒が明かないと思ったセリカはストレートな言葉を放つ。

「Make Loveに決まってるじゃない」

「英語で言われても分からんな。堂々と言えることではないが俺は勉学が苦手だ」

「保健体育だからエフラム兄さんの得意分野よ」

それでも状況を把握できないエフラムに私は噛み砕いて説明を入れると、ようやく理解する。

同時に潔癖であると反論、そして自論を臆することなく語り始め、

やがて如何わしいことを考えていたセリカに説教を始める。

「なんでそうなるんだ?第一俺はまだ学生であり、自立していない身だ。

 甲斐性はおろか自分自身の稼ぎで生活していない人間が、子作を作ってどうやって養う。

 勝手な自己満足で作って、やがて責任が取れなくなったら捨てる。捨てられた子供は親なしとなる。

 セリカ、お前を思春期で恋愛だの結婚を夢見る年頃なのはわかるが、その考えを改めろ!」

正論なのだがロリコンにされるのは屈辱だろう。

セリカの顔は苛立ちを見せよって反論に出る。

今ここに兄妹喧嘩が勃発するのだった。

「得意のお説教!?さすが自分の理想論を妹に押し付けるのはエフラムに兄さんの御家芸ね。

 女性の気持ちを考えられないから、いつまでたっても童貞なのよ」

「童貞は関係ないだろ」

「あるわ!童貞を捨てる、それは伴侶となる女性を一生愛し養うこと!それがミラ様の教え!

 童貞を捨てられない男としての覚悟が足りない。覚悟のない人間の言葉なんて当てにできない。

 だから私は童貞を捨てられる場面にもかかわらず、捨てられないチキンな兄の言うことなど聞けやしない!」

喧嘩が始れば私はすっかり蚊帳の外、聞きに徹していた。

 

小一時間が経つが未だ終わりの兆しが見えない…と思っていた時だ。

「セリカ、お前は自分の理想論を掲げすぎている。男、いや人間はそこまで万能でない」

「そうだ、人は自分が思っているほど万能ではない」

と突然の声に皆驚き口論を止める。その声の主は師匠だったからだ。

私達は看病のことをそっち除けで論争に身が行っていたようだ、不用意で何たる不覚。

とはいえ師匠が目覚めたことに安堵する。何時目覚めたか、具合はどうかと問えば、

目覚めたのは今より少し前で、自分が置かれている状況を把握しようした。

私の声が聞こえ、ベッドに寝かされていることから気を失いここに運ばれたのだろう。

私の名を呼ぼうとするがエフラム達との話に夢中で、また頭に違和感が残りしばらく周囲の声に耳を傾けていた。

聞き続けるほど切りがないと口を挟んだそうだ。

師匠の意識が回復し、エフラムに加担したことによりセリカが拗ね。

兄妹喧嘩は終わりを迎えることになる。

 

「もういい。エフラム兄さんなんて、このままシグルド兄さんみたいに“君にキス出来ない運命なんて…”

 のようなこと言って一生童貞でいればいいんだわ!童貞も捨てられない兄の言うことなんて聞くもんですか!」

セリカは部屋を出る際、ドアを怒りに任せドアを閉め大きな音を鳴らせて行った。

全く…頑固な兄と妹ね。エフラム、あなたも年上なんだから下の弟妹の気持ちくらい分かってあげなさい。

と言いたいところだけど、私もセリカの言うことは聞きいれられないわ。

セリカが出て行った後、師匠は腑に落ちないエフラムに忠告を入れる。

「君と妹が喧嘩するのは勝手だが、一人で街を歩かせるのは如何なものだと思うな。

 冷静さを失っている上、今日は収穫際ということだ、ガラの悪い連中に絡まれると危険だ」

確かにそう、年頃の乙女が一人で出歩くのは危ないわ。

エフラム、シスコンとしてここであなたは妹を追いかけるの?

でも忘れてない?隣の部屋にはジェニーが寝ている、彼女を置き去りにするつもり?

孤児の彼女は寂しさを人一倍敏感だ。

彼女のことを分かっているなら、あなたのいう信念を貫き通すなら、彼女を取るわよね。

妹か孤児。果たしてあなたはどちらを取るの?

と、私はエフラムに視線を送り、彼の次に取る行動に注目する。

「…確かにそうだな。すまん、行ってくる!」

エフラムは師匠の言葉を聞き入れ、セリカを追うこと選ぶ。

私は未だ寝ているジェニーのことをどうするかと尋ねるが、

「起きたら、ここで待っててくれと伝えてくれないか」

と私達に任せ出て行ってしまった。結局あなたは妹、身内の方が大事というわけなの?

失望したわ。

師匠の容体のこともあり、私達はしばらく待つことに。

この時太陽は南中に近い位置まで登っていた。

 

ジェニーは未だ起きてこず、私と師匠は昼食をとることにした。

その時、野暮とは思いながらも倒れた仮説を立て師匠へ問う。

「お前の思っている通りだ、ジェニーという少女がエフラムを庇ったとき、俺の中にある苦い記憶を甦らせた。

 俺はあの時から止まったままだ…何も変わっていない」

あの時から止まったまま…?何か心の奥隅に留めておきたいほど、嫌な記憶なのだろう。

ならこれ以上は言及する必要はない。

「疑問に感じないのか?」

否と言えば嘘である、という私の表情を読み取った師匠は自分の過去について話す。

「俺は500年前から生きている」

「500年前?あの時の聖戦(*1)から…?では師匠は印付きかラグズなのですか?」

ベオクであればとうに寿命を迎えている、私は一般的な見解を挙げるがどれも違っていた。

師匠は正真正銘のベオクなのだ。なら封印されていたのか?という新たな説を挙げる。

「まあ、その答えに近からず遠からず。正確に言えば時が止まっていると言ったほうが分かり易いか」

「時が止まる?それは…もしかして、ルカヴィ(*2)と契約したと…なら師匠は…!?」

 

 ―独自設定による補足―

*1…外伝4参照。聖石(*3)と契約して現世に転生したルカヴィを倒す戦い。一回目は1500年前、2回目は500年前。

*2…悪魔のこと、元ネタはFFT,FFXIIを引用しています。

*3…黄道十二(+1)星座が記された石、ルカヴィの魂を封じ込めている。魔石同等の認識をしていただけたら。

   この話で聖魔の光石に相当する聖石は“光石”と別称しています。

 

そう、悪魔であるルカヴィと契約、魂の融合を交わすと不老不死の体を得られるという。

ただ不死はエーギルの崩壊、あるいは光石によってエーギルが封印されればその意味をなさない。

前聖戦でルカヴィとなった者は全て倒されたと論文に書かれていたが、

その論文の参考文献が偽りの情報が記されていることも考えられる。

それ故、兄弟家のミカヤさんが自分の中にルカヴィを潜ませているのは公にされていない。

なら師匠も明らかにされていない歴史の闇の部分を持った人間か?

「いや、そうではない。俺は聖戦時ルカヴィと戦っていた方の人間だ。

 当時の俺は自身が打った刀を手にしてルカヴィ討伐にあたった。あいつと共に…」

 

「それが…ケリーさんですね」

「何故それを…?」

「不躾ながら文献を探索している時に偶然…日記を」

ケリー…師匠の家にある資料の中に紛れ込んでいた日記の著者と同じ名前。

日記の中には師匠の名前も多く見られていたこともあり、何かと縁があると推測は出来ていた。

日付も戦乱時の途中で終わっていることから、どこかで命を落としたのだろう。

「そうか…あれを見たのか。ケリーは俺の相棒であり、刀鍛冶の助手でもあった女性だ」

師匠は今まで一切口にしなかった自分自身の過去について話し始める。

 

自分は一介の刀鍛冶でありながら卓越した剣の技量を備えていた。これは今の私でも分かることだった。

その腕前を買われ、ルカヴィ討伐を依頼される。

師匠がケリーと共にルカヴィと対立した時のこと。

なんらかの術、呪いにかかり手足の感覚が無くなり、感情…意識以外は束縛される。

おそらくその術、呪いというのは様々だが、いずれも生命体の五感を奪う効果がある“悪夢”だろう。

動けなくなり死を覚悟した時にケリーが自分を庇う。

目の前で血を流し、息絶えた後エーギルを吸われる。

死亡直後ではまだ細胞が活動を停止していなく、皮膚には艶がある。

だがエーギルを吸われることにより、皮膚は徐々に枯れるように朽ち果てて行く。

そして魂形成に必要な量を下回ると、彼女は跡片もなく消えてしまった。

死んだのではなくケリーという存在自体が無くなった。

師匠はこの一部始終を見てしまった。

これがトラウマの原因だという。

ルカヴィが再び自分に視線を向けると、再び自分の番かと覚悟する。

その時、どこからともなく温かい波動が流れてくる。

これはルネスの疑似封印の盾の効果であり、ルカヴィを衰退化させる。

同時に師匠自身も身動きが取れるようになり、状況を把握できないなりにもルカヴィに刃を向け、斬り伏せた。

偶然とはいえ、師匠は生き延びることができた。

 

数十年経って異変を感じる、聖戦時と容姿がまったく変わらない。

当時は今ほどベオクとラグズそして竜の仲は平穏ではなく、寧ろ溝が生じていた。

化身の能力を持たず寿命が長い、すなわちそれは印付きであり非難の的になる。

それを避けるかのように師匠はベオクしかいないバレンシアの人里離れたこの場所に暮らすようになった。

それからというもの、師匠は彼女が殺されたことを自分のせいだと負い目を感じながら生きてきた。

症状は非常に重症で日常において記憶の中で蘇る他、寝ている時でさえ悪夢になって現れる。

その結果女性恐怖症になったというわけだ。

昨日師匠が倒れたのは、ジェニーという少女の容姿が昔のケリーに酷似していたため、

エフラムの前に立った瞬間、忌々しい記憶がフラッシュバックを起こしてしまったという。

「すまないな…こんな情けない師匠で」

師匠は自分の弱さに自嘲しながら話す。

決してそうは思わない、誰だって触れられたくない記憶があるのだから。

それより勝手な事をしたばかりと謝れると、

「気にするな…と言いたいところだが、感情に負けて関係ない人間まで刃を向けるのは止めろ」

「以後、肝に銘じておきます」

と忠言を真摯に受け止める。私がジェニーに刃を向けなかったら事は生じなかったし、

そもそも発端であるエフラムと私闘を行わければ良かっただけだ。

 

「しかし、師匠はなぜ刻が止まったままなのでしょうか?」

と別の話題、先の話の途中で疑問に思ったことを師匠に訊けば、

自分自身の心の問題だと答える。

「お前は自分の欲望のために力を揮うが、それはあくまで破壊者の心であると言ったな」

「はい。古い秩序を打ち砕き、再生という新たな世界を生み出す先駆者になると…」

「まさに今の俺への当て付けだな…過去に縛られ前に進もうとしない」

「そんなことは…」

刻が止まっているから縛られている。忘れられない。

前に進まないようにしている。その過去を引きずっている深層心理が影響していると。

だから私が最初に訪問して行きた時、私の“愛する人のために強くなりたい、変わりたい”

 

という姿勢に自分も感化され前に進もうとしたことが弟子に取った本当の理由とまたも自嘲した。

もちろん、それだけではなかった。

私の話から近年紋章町にミカヤさんが現れたこと事を聞き、

遠からず聖戦の再来するのではないかと懸念していたこともあったからだ。

聖戦を再来するのなら武器は必須。

しかし、ルカヴィに太刀打ち出来る武器と言えば、ほとんどが聖遺物や神器となっている。

人…ベオクが自ら作ったとされるのは1000年の神将器ぐらいだ。

なら現在はどうか?1000年以上経つというのに未だこの手の技術は平行線を保ったまま、いや、衰退している。

単にこの500年平和であり、が大きな戦いが起こらなかったことが大きな要因だろう。

再度大きな戦いが起こり得るのであれば、頼みの綱は過去の産物のみ。

私に刀鍛冶の技術を継承させたのは、過去の技術を蘇らせ、その先にある物を生み出させるためだそうだ。

何時までも過去の産物に頼っていてはならない。新しい物を創りださなくては、先へは進めない。

自分より前を向いている私に託したいと思ったからだそうだ。

私知らぬ内に大役を任されるようになっていた。

 

時間が経ち、昼下がりの午後。ジェニーが起きて来て、師匠の目覚めを喜んぶ。

だがエフラムがセリカを追って出て行ったきり帰ってこないと聞き、悲しげな表情をした。

一向に帰ってくる気配もないので私はジェニーを宿舎まで送ると師匠に進言し承諾を得る。

師匠は一足先に帰り、私はジェニーを送り届け、お礼にとワープの魔法で拠点に送ってもらった。

収穫際以降、私はエフラムとは会うことはなかった。

 

 ………

 

それから半年以上経った水無月のこと。

私はかなりの量の修練を積み、師匠からも二刀の心得も学んだ。

再度修行の成果を得るため、私は転昇の儀を行うことに祠に向かう。

これで三度目だがこの場所はどうも慣れない。僕像の前に赴き魔戦士に昇ることを冀う。

しかし、僕像からは“この者、転昇にあたわず”と告げが来る。

修練が足りなかったのかと肩を落とすと、 “魔戦士のユニティは男性専用” と再度告げが聞こえる。

なら女性が昇れるユニティがあるということか?

ならそれに昇ると私は意思を示し再び転昇の儀を行った。

光の繭が私を包み、出てくる際に私は木賊色の闘衣に臙脂色と藤色が織り成す陣羽織、

目元と口元が開き、実用性の高い漆黒の般若面を授かった。

これは剣士系女性専用の最高位のユニティ、ソードマスターだ。

“ソードマスターではない、ブシドーである”…と告げが聞こえる。

いやこの姿ほぼ覚醒のソードマスターなんですけど…

“ブシドーである。異論は聞かん”

神様曰く、どうやらこのユニティの名称はブシドーらしい。

 

 シビリアン(村人)→ 傭兵 → 剣士 → ブシドー(魔戦士)

 

ともあれ私は無事傭兵系のULTIMA TE(最高位)のユニティであるブシドーに昇った。

その後、今までの刀鍛冶の技術の結集として、対称の双刀を打ち出す。

名は“須戔男尊(スサノオ)”、“小太刀“益荒男(マスラオ)”だ。(名の元ネタは…察してくだい)

双刀と言っても一般の太刀より短い、小太刀の双刀。

攻撃力に劣るが軽量で小回りが利く分、防御力が非常に高い。盾として使える刀、それが小太刀の特性。

小太刀と私の速さを相乗させて敵を一気に薙ぎ払う。

技を磨き必ず打ち破って見せる。その時まで待っていなさい…エイリーク。

クロム様は私にこそ相応しいのだから。

 

 ………

 

18歳の文月初旬、対エイリーク戦に備え心身共々の鍛練に精を出していたある日。

拠点の工房に来訪者がルドルフ氏の書簡を携えた使用人が訪れた。

どうやら私宛てのようだ。封を開け中身を閲覧すると、大会への参加の勅令だった。

そう…今私がいるバレンシア地方では紋章町において異質な場所。

 

紋章町にはアカネイア、バレンシア、ユグドラル、エレブ、マギヴァル、テリウス、イーリス(+ヴァルム)といった自治体が存在する。

アカネイア、ユグドラル、テリウスではアカネイア、グランベル、ベグニオンが中心として行政を、

エレブ、マギヴァル、イーリスでは各地区が公平に立ち合って政治を行っていた。

 

バレンシアも後者の方針を取り入れているのだが、ソフィアとリゲルとの仲は劣悪である。

それは、ソフィアはミラとリゲルはドーマの兄妹神発祥の地とされていることが起源であり、

二神の価値、道義、信条は極端であったとこも相乗し、紋章町のベオク間において最も古く、今もなお根強く残る地である。

よって公平に求めれば求める程、議会は荒れるばかりでなく、武力行使に至ることも少なくはなかった。

 

リゲルとソフィアは大きな運河で隔てられている。

ミラ教の聖地であるミラの神殿は運河の側にあり、ドーマ教側が攻撃しやすい。

そのため、宗教戦争が勃発しやすかった。バレンシアの宗教戦争は特殊である。

メサイア、イリュージョンの幻影でシャドー(覚醒でいえば魔符のようなもの)を召喚させ、戦わせる。

つまり代理戦争である。

だが幻影の魔法を唱えるにはユニティは体力、そしてエーギルを媒体とし魔法に転換する必要があり、

そうLight My Fireだ。

術者のエーギルは有限、しかも一定のエーギルを失えば体を構築する細胞、そして魂までもが崩壊に至る。

つまり召喚魔法の多用は身の破滅を誘発する。

だとしても両教の召喚の魔法を使えし者達は、自らの命を投げ打ってでも自陣の為に貢献した。

遺された子供が孤児となり、孤児院で育てられ新たな駒として命を散らす。

この現状を看過できず、他の自治体が仲介に入ろうとするが、自分たちの内輪揉めであり、部外者が口出しするなと頑なに拒む。

 

近年のこと、一向に改善されないバレンシアの対立に他の自治体は煮えを切らす。

連合を組み、バレンシアという自治体の解体に着手する。もちろん、元凶であるミラ教とドーマ教もだ。

当然バレンシア側は対抗するが、連合を相手には無謀という程の体力差があった。

このまま戦って負けるのは愚かでしかいいようがない。

と判断したバレンシアは連合側にある立て前である提案をする。

4年に一度闘技大会を行い、勝利した方に自治権(決定権)を持つという内容で、この条件と引き換えに自治体の存続を締結させた。

この案件は無益な血を流さない戦いだと評価する者いれば、

結局は己の威信と繁栄しか考えていない愚行だと蔑視する者もいた。

周囲の反応はどうあれ、この制度を導入にしたことにより、

バレンシア地区にも以前よりか安定した生活が送られるようになったのは確かだった。

 

私が知ったこの闘技大会の情報をお教えしましょう。

・この闘技大会は通称ユニティファイトと、宗教関係者からは聖戦とも呼ばれている。

・ルールとしては新暗黒、新紋章のような通信闘技場形式であり、

 敵の殲滅あるいは、制限時間経過時に拠点を占領した方が勝利となる。

・参加人数は、覚醒のすれ違い通信と同様10対10としている。

・開催場所は両陣営公平になるように他の自治体の場所を借りて行う。

・参戦の資格としてはユニティまたはユニティになる因子をもつ者のみに限られる。

 これは部外者を嫌うバレンシアの風習からである。

・バレンシア地方では聖なる井戸水には戦闘不能者を蘇らせる奇跡の聖水が流れている故、

 殺しても構わないというのが暗黙のルールとなっている。

・この大会の近況を挙げれば、ここ数回はリゲルが連続して勝利を収め、バレンシアの実権はリゲル主導となっている。

・地域有力者が自ら参戦することは稀であり、ほとんどは部下や代理人を参戦させる。

 勝てば、有力者側は利権を獲得でき、参戦を請われた側も莫大な報償が貰える故利害が一致していた。

 代理で戦いを請うのが傭兵の仕事いえば仕事である。

・私に何かと目をかけて頂いているルドルフ氏も前大会までは自ら参戦し勝利に貢献していたという強者だ。

 壮年でまだ戦えぬわけではないが、今回は後釜であるジークに代わりを委ねることにしたという。

・長年実権を握られているソフィア地区では、それなりの生活水準を保っているものの、

 ミラの教え通りの優しさと慈しみが支配する優麗の政策を取れず、リゲルの質実剛健の方針を喫さなければならなかった。

・このような背景がありソフィア、ミラ教団関係者は悲願の政権奪回、革命に躍起になっている。

・ミラ教の修行に励むセリカがミラ教を普及させようと熱心になっているのは単にこの件が影響受けている。

・兄弟家のアルムとセリカも若年ながらこの大会の候補として挙げられている。

 

 ………

 

そう今年は偶然にも政権を賭けた戦いが来月葉月に開催という。

この書簡の中身は “代表者として参加を請う。是非を問うため、一度足を運ばれたし”というものだった。

師匠にはこの大会のことは告げず、ルドルフ氏に面会する旨だけ伝え拠点を出る。

ルドルフ氏の館に到着後、件の人物と対談をする。

「話は書簡に書いてある通りだ、私は君に参戦してもらいたいと思っている」

「私…がですか?不肖ながらユニティになって一年、剣技も未熟であります。リゲルの命運をかけた大舞台に立つのは…」

「そうか…ソフィアの地区の代表に、エフラムという少年がエントリーされたと耳にした。

 君は彼と少なからず因縁があるらしいな、戦って決着を着けたいのだろう?」

「何故そのことを?」

「君のことは調べさせてもらったよ、私は君のことを気に入っている。だからその舞台を用意しただけだ」

先までは辞退を願おうとしたが、エフラムが参加する旨を聞いただけで私の気は一転する。

ここまでお膳立てして頂いたルドルフ氏のお心遣いに深く感謝した。

「代わりにと言ってなんだが…」

ルドルフ氏は私の参加するにあたり、一つ要求を申した。

それはバレンシアの軋轢に偏見を持たず、ただ純粋に二神の根幹を欲しようとしている私にしかできないこと。

もう一つ出場する時は義名を名乗り、正体を隠すということだった。

つまり私は懐刀の役割、しかしエフラムと戦えるのであればその要求は易いもの。

私はその要求を即時に受け、ルドルフ氏の屋敷を後にした。

 

 ………

 

拠点に戻るなり、私は参戦する旨を師匠に伝える。

師匠は“そうか…”と特に激昂した様子を見せなかったが私にあることを問う。

「仮に負けたとしたらどうするんだ?いや勝ったとしてもだが…」

エフラムに負けるそれは師匠の流儀に泥を塗る行為だ。

その時は潔く辞める。

勝ったとすれば、エイリークより強いことが証明される。つまり、クロム様の隣にいる権利は私の物。

だったらここにいる意味は…

決着はどうあれ、彼と対決するに以上はここを出なくてはならない、その答えの気がついたのは今だった。

「正直言うと、お前は剣技にしても鍛冶鍛錬にしても筋がいい。手放すには非常に惜しい人材だ。

 鍛練を重ねれば恋愛の為に生きるという考えを改められるとは思ったが…」

師匠は私を引きとめ、辞退をしたらどうかと言葉をかける。

私は後ろめたさを感じながらもエフラムとの対決する方に気持ちが行っていた。

勝手な弟子で申し訳ないと思いながらも師匠に背く道を選ぶ。

師匠はまた“そうか…”と覇気がなく呟き、

「ここを出るのなら止めはせん、なら最後に手合わせをしてもらおう」

「つまり、ここで俺を倒して行けということ?」

「そうとは言わん。自分が人に教えるのに向いていたかどうか確かめるだけだ」

「わかりました…」

互いに剣を取り合い、手合わせをする。

私は師匠から伝授して頂いた剣技と飛天御剣流を参考にし、自ら昇華した奥義を放つ。

その名は『朱雀飛天舞(スザクヒテンノマイ)』(元ネタは聖剣伝説3)

 

 ………

 

その後、私は師匠に謝りきれないほどの謝礼をし、山を下りる。

大会までの間、ルドルフ氏の館を拠点とし、剣を揮うことに精を出す。

時には騎士様にも手合わせを願い、勉強をさせて頂いた。

そして大会に臨むことにする…

 

次回に続きます

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。