TMR(of ephraim) プロトタイプ   作:バクネツ02

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 TMR(of ephraim) 外伝8 【Tiamo Makes Ruin of herself mind 】 >>104-111の続き

 

私ティアモはバレンシアの実権を賭けた白兵戦、地区同士の力比べに参加することになる。

しかし私は団体戦いえ自陣の勝利など興味がなく、ただエフラムを倒すことだけを望んでいた。

エフラム…あなたを越える、そしてクロム様との宝物の恋を手に入れる、それが私の愛の証…

邪魔立てするのであれば何人たりとも容赦はしない…

これはティアモの心情なので解せない方のために第三者視点で解説すると…

いつぞやのバレンタインの日、一人身のティアモはエイリークがクロムにチョコレートを渡す現場を目撃する。

友好的だったエイリークは実は恋好敵手であり、自分を出し抜いて高感度を上げようとし、行き過ぎた友情が憎しみに変わる。

その後、何故か手合わせしたことを果たし愛(自分の想いを剣撃に乗せ鍔迫り合い越しに語り合う)、

クロムは自分の想いを剣でしか伝えられない不器用な人間であると曲解する。

なら想いを受け止めてくれる強い剣士に惹かれるはず…つまり、エイリークからNTRするには

自分自身がエイリークよりも強いことを証明すればいい、と結論付けて剣の道へ進む。

途中、宿敵エフラムに出合い彼と剣を交える。これは北斗の拳から得た理論、“兄より優れた弟はいない”によるもの。

エフラムに勝てば、すなわちエイリークより強い、つまりクロムの側にいるのは自分こそ相応しいとの裏付け。

よって、ティアモは邪魔の入らない真剣勝負でエフラムに勝つことを望んでいるのだ。

…と書いたがはっきり言って全ては彼女が妄執と勘違いに過ぎない事を心に止めて欲しい。

 

 ………

 

大会の前日のこと。リゲル陣営は事前の作戦会議を行い、私も参加する。

リゲル陣営の面子は…騎兵2、重歩兵1、剣士3、魔道士4の編隊

ブシドー(ませんし)の私、ディーン、ブライ  Gナイトのジークとジェローム

魔女の三姉妹、マーラ、ソニア、ヘステ  祈祷師ジャミル  バロンのドゼー

 

作戦会議において、長年リゲル地区の政治に携わって来たハルク氏が参謀を担い、

対戦相手の職種及び能力を分析した情報から今回の大会の作戦について話し始める。

詳細を解説する中、私は立ち上がり話の流れをぶった切る…

「碧色のソルジャーの少年は私が相まみえる!手助け干渉、一切無用!!」

作戦を無視して単独行動を取ると断言すると、当然周囲は睨みをきかせる。

自分の作戦を否定されたハルク氏は冷静であったが、

髭を生やした男、分厚い全身装甲を授かったバロンのユニティのドゼーが猛反発をしかけるのだった。

「ガキの分際で作戦指揮を何だと!どこの馬の骨か分からないのような奴がこの大舞台に選ばれたのさえ奇跡的な出来事だと言うのに」

「私はルドルフ氏(地域最大有力者)より、独自行動の許しを得ている」

「糞アマが…つけ上がりおって」

怒りに満ちたドゼーが私の胸ぐらを掴む。まったく品性に欠けた輩だ。

まあ…常識外れなのは私も同じなことは承知しているが…

部屋が騒然する中、ジェロームはこの状況を面白がり私の横暴を助長させる発言をする。

「いいではないのか、毎度毎度リゲルの圧勝というのは歯ごたえがなさすぎる。

 この女はハンディキャップとすればいいだけだ。最初から10対9での作戦を立てればいい」

彼が言うには私は勝手に戦って、勝手に死んでこいということだろう。

「ええ、そうよ。私はワンマン・アーミー、その程度で死ぬ器であるのなら運命なら殉ずる。しからば…」

言いたいことだけ言った私は作戦会義中にもかかわらず途中退場するのだった。

 

 ………

 

エフラム、今度こそ雌雄を決する。

エフラム、既にあなたは宿命の相手

エフラム、あなたの槍と我が剣、真っ向勝負。

エフラム、あなたを越える、それが私の生きる証。

エフラム、討った先こそ私の愛がある…

 

私は漆黒の般若面を被り、彼との戦いを一日千秋の想いで待ち焦がれる…

 

次の日、バレンシア地方の実権を賭けた戦いの幕が上がる…

この聖戦が行われたのはアカネイア地方のマケドニア地区、

事の元凶であるバレンシアでなく他所で行うのはソフィア、リゲル両方に公平であるためだ。

私には味方など必要ないがもう一度説明をいれよう。

 

 ※白兵戦のメンバー紹介※

リゲル  …ミスレンアイドー、ジーク、ジェローム、マーラ、ソフィア、ヘステ、ドゼー、ジャミル、ディーン、ブライ

ソフィア …エフラム、他9名

 

ソフィア陣営のエフラム以外は匿名であるが、決して考えるのが面倒だったわけではなく、

ただ…そのネタバレを回避、今後の展開にご期待下さいということ。

 

 ………

 

各自持ち場に着いたところで開始の合図を待つことにする。

その間、私は腰の長さまである髪を結う。

長い髪を下ろしたままでは剣を振るときに鬱陶しい他、悪ければ戦いに支障が出る。

普段はえりあしの高さあたりで結ぶのだが、今日は違い後頭部の一か所で髪を纏める結い方。

そう侍と同じであり敵前逃亡は士道不覚悟、殺らなければ殺られる…死出の結いだ。

 

数分後、始まりの狼煙が上がる。この戦いは闘技場のような建物の中で行われるのではなく外で行われているからだ。

故に戦場の広く全ての人間に瞬時に伝えるにはこの方法が一番手っ取り早い。

戦いの合図が示され、いよいよだと私は意気込んだが急に地面に異変が起こる。

突然地面が揺れ始め強さが徐々に増し、局所では大地を裂き隆起する現象が生じた。

おそらくこれは祈祷師ジャミルの“メガクエイク”であろう。

味方まで巻き込むが相手は混乱状態に陥り敵の士気が下げるのが目的。開幕に行うのはより効果的だ。

さらに作戦の神髄は地形を変化させることで敵の戦力を分断させ孤立した者を魔女のワープで奇襲をかける二段構え、

最初に頭数を減らせれば当方が圧倒的有利となる…これも参謀のハルク殿が立てた作戦、いい判断をする。

なぜわかるかと?心眼は鍛えているのよ…あと昔読んだ漫画とかにこういう作戦があったのを覚えているからだ。

 

地響きが収まりここからエフラムをどう見つけ出すか…と考えながら地震により高く隆起した大地の壁を飛び越えて行く。

今の私は身軽さと速さと小回りが利き、加えて魔防が高いのが特徴のブシドー(ませんし)であり、

このような障害物を越えることなど容易い。

エフラムの捜索を敢行している中、物影から人の気配が読み取れた。

数からして一人、自陣は開幕の作戦を知っている故私以外は孤立することはないはずだ。

なら敵、おそらく戦力を分断され味方と合流できるまで単独行動を避けているのだろう。

「隠れてないで出てきたらどう?」

と物影に潜む者に声をかける。その人物がエフラムであれば御の字だ。

動く気配がなかった。奇襲を狙っているのか?

真意を探るため再び声をかければ覚悟を決めたのか姿を現す。

現れたのは苺のように艶やかな赤色、波打った髪を持ち大胆にも太股を晒した戦衣装を纏った少女、兄弟家のセリカだった。

正直言って興が乗らない。今の私はエフラム以外と刃を交える気はない。

「エフラム以外とは戦うつもりはない。離脱するのなら情けはかける」

「もしかして…ティアモさんですか!?」

「違うな、少女。今の私はミスレンアイドー、過去は捨てさせてもらった」

「隠しても無駄です。それになんですかそのセンス皆無でダサい二つ名は!」

正体が分かっているのなら素顔を隠して意味がないと思った私はあっさり漆黒の般若面を外し、素顔を顕にする。

そして再度この場から身を引くように勧告する。

「そう…あなたの言う通り、私はティアモよ。もう一度訊く、離脱するのなら今の内よ」

「いえ引くわけはいかないわ。私はミラ教の復興のため聖戦ですから!」

無駄な戦いを避けるように私は誘導したが、相手はその手には乗らない。

まあこの戦いのルールがほぼ敵の殲滅である以上敵は倒さなければならないのだから。

「あなたが何故ユニティで愛を求めているはずなのにリゲル側にいるのですか!

 ミラ様の教えを理解できずドーマを幇助するのであれば、覚悟願います!」

「どうやら私の道を阻むよね!ならあなたを斬ることになるけど恨まないでね」

戦わぬという選択肢を捨てた二人の髪はもはや苺色は『煉獄の炎』、緋色は『東方が赤く燃えている』となり、

般若面をつけ直した私は修羅そのものだった。

私はセリカとの戦いはエフラムとの前座とし、抜刀をしようとした刹那…

何の前触れもなく私の頭上を目がけ轟音と共に稲妻が落ちる。

アイオンの“いかづちよ…いかづちよ…”とも言えようか。

そう、空は雲こそあるが限りなく澄みきった青空が広がりまさに青天の霹靂と言わんばかりの出来事だった。

だが数多の修練を積んだ訳ではない私だが、危険を察知し落雷を紙一重で避ける。

一連の流れはセリカが放った雷の魔法サンダー、私の射程よりも遠方、

そして人の死角である頭上からの先制攻撃、不意討ちという兵法において常套手段用いたものだった。

 

なぜセリカは魔導書の存在を顕にせず、雷の閃光を放ったのか?

紋章町では魔法は一般的に魔導書を詠唱するのが一般的であるが、ユニティは魔導書なしで魔法を唱えることができる。

これは大きな特権であると思われるが魔法という特有のエネルギーを生み出すため術者の体力を媒体としている。

肉を切らせて骨を断つ、いわば諸刃の剣。故に連発に向かず機を逃すと劣勢は必至だ。

 

二度目の稲妻が同軌道上に降り注ぐが一度見た手品であれば対処法は自ずと生まれ、

よってこの攻撃は余裕とは行かないまでも難なく避ける。

次の行動に移そうと考えたが私とセリカの間は大きく離れている。

さてどう攻めようか…私は体よりも口を動かした。

 

「年端のいかないあなたまで参戦させるとは…ソフィアとは随分と落ちぶれているものね」

これは陽動、セリカがサンダー程度の初歩魔法しか使えないとは考えられない。

サンダーより上位魔法を使わせようと煽り、体力を消耗させ隙が出来たところを一気に叩くのが目的。

それと発生源が分かり易い魔法に切り替えさせることも踏まえている。

「ミラ教の復興の礎となるべく私自身が参戦を申し出ました」

「そう自ら…結構なことね。神を信じて何なる、信じれば救われる?幸せになれるとでも!!」

「…あなたが神を信じるかどうかはかまいませんが…ミラ様を侮辱するのは許せません!!」

と言い切り間髪いれずセリカは別の魔法を唱える。どうやらセリカは私の誘いに乗ったようだ。

セリカが唱えたのはエンジェル。外伝に登場し魔物、不浄者や異形者、魔王の傀儡に対し絶大な効果がある魔法。

前聖戦でも浄化魔法ディルと並び戦況を大きく変えた魔法でもある。

詠唱後五体の羽の生えた天上人、ミラの僕像に息吹を与えたような形ある者がセリカの頭上から現われ、

各々が異なる軌道を描き私の方へ特攻を仕掛ける。

これはファングいえミサイルのようであった。

この時私とセリカの距離は開きがありサンダー程に速射に比べればゆるしとしたもので、

私は特性を見極めるべく迂回しつつ接近を試れば天使達は追うように向かってくる。

誘導性があるようだ、数が五体あるなら一つずつ振り払っていてはいずれ隙が生じるだろう。

さすれば!と私は足を止め、動かざるは山の如しと立ち尽くせば、

その行動にセリカは気が狂ったのかという解せぬ顔を見せる。

五体の天使は不動の私に照準を定め一直線に軌跡を描き突進する間、

徐かなること林の如くとただ機を見極める。

そして当る瞬間を読み、紙一重で縮地を用い一歩で最高速度に達する足運びを用い前進すれば、

天使たちは私がいたであろう所で互い衝突し大に爆散し煙を上げる。

この威力…若干14歳でこの代表戦に選ばれたセリカの魔力なら当たれば致命傷だろう。

…しかし、当らなければどうということない!

私は疾きこと風のごとく、目にも見えぬ速さである縮地による突進に乗じて反撃に出る。

前進と同時に二刀の片方、利き手である左手で抜刀し移動の際に鋭く束ねた緋色の髪が燃え盛る炎のように荒れ狂わせながら

侵掠すること火の如し、雄叫びをあげながらセリカに斬りかかる。

 

「切り捨てぇぇぇ…御免ぇぇぇん!!!」

 

私の大胆なまでの回避からの攻撃転換に煙の中からの出現に呆気を取られるが、

冷静さを失わず携えていた剣を取り私の太刀筋を受け止める。

そう彼女は魔法と剣を扱うことが出来る両刀遣いのユニティ、仮に魔道士だったなら無防備状態で斬られていただろう。

刀と剣の刃が交わる鍔競り合いの密着状態、よくぞこの攻撃を止めたと喜びを感じる。

悲しいかな、戦いを避けたいと言いながらいざ始めて見れば戦いを悦楽している自分がいる。

「いい反応よ、さすがエフラムの妹!!」

「ありがと、私は剣にも自信があるの。伊達に毎日KINISINキラーと手合わせしていないから!!」

紋章町随一の剣客一家である兄弟家で育った故ポテンシャルの高い兄弟に剣術を仕込まれたなら納得がいく。

…だが気にいらない、彼女が得た力は充実した環境によるものだからだ。

剣と顔が睨み合う至近距離が続く中新たな陽動をかける。

これは彼女の価値観を否定し動揺を誘う。これは嫉妬なのは分かっているが言わずにはいられなかった。

「あなたはこの白兵戦をどう見ている?」

「何を…戦いの最中に!!!世迷言を言って動揺を誘うつもりなの!」

「私は真剣よ。答えられないならそれでもいい…

 この闘技大会はね所詮は人のエゴなのよ。相手側を蹂躙して自分の富と権利と威信を手に入れるためよ!」

「そんなことないわ、ミラ様はただ豊穣と繁栄を望んでいるだけ!ドーマ教が侵略するから!」

セリカは剣に憤怒と体重を乗せぶちかますように私を後方に押し出せば、彼女自身もその反動で後退する。

両者再び距離を詰め、刃を交わし金切り音を鳴らす。

セリカはミラ教こそが唯一無二の教えとし、自分たちに非が無いと主張する。

闇の部分を知らないのだろうか?ならその実態を教えよう。だが聞いて考えを改めると到底思えないが。

「じゃあ、何!?あのジェニー、ミラ教いえ、バレンシアに孤児が多いのは何故かしら」

「…それが、なんの関係があるの!!」

「神にこの身を捧げて聖戦の名の元の侵略戦争に参加し、命を投げ出してでも教の威厳を守ろうとする!

 負の遺産なのよ!!」

「違うわ。これは守るための戦い!そうしなければ人としての尊厳が守れない!ましてや自分の家族も!」

「ならそれで幼子は遺され、保護の立て前に修道院に預けられる!」

「自分たちが撒いた種なら育てるのが当然よ!それはミラ教でもなく他教でもしょうでしょ!!」

「表向きわね!本当は次世代を担うための人員確保!精神未成熟な状態から洗脳し独自の価値観を植え付ける。

 そして自教こそが絶対の正義、他者を認めない狂信者をという争いの種を生み出す!!」

「この狂言者がぁぁ!!」」

セリカは私の意図に反して逆上する。私が狂言者?狂信者のあなたならそう聞こえるだけ。

さらなる憤怒を持ったセリカの髪はサイヤ人のように逆立ち始めるように見える。

以前鍔競り合いが続く中、片手で剣撃を受けつつ零距離からセリカは言葉を紡ぐ。

「風、斬!」

と万物を切り刻もうとせん翡翠色の風刃の真空魔法、エクスカリバーを唱える。

末妹だからか精神的成長が遅いか反抗期だから激情になり易いか分からない。

だが戦いで感情になり過ぎると相手に行動が悟られやすくなる。

私は風刃が発生する瞬時にセリカの剣撃の押しの反動を利用しバク転で体を宙に浮かし回避するのと同時に距離を取るが、

セリカは着地するタイミングに合わせ第二派を放つ。

私の視界に入って来たもの、それは先の真空魔法の風刃ではなく無数の光輝く矢、

アローの魔法だった(原作のセリカは覚えられないが登場させたかっただけ)。

この魔法は凝縮、固形化した光の矢であり最大の脅威はその数。一つ一つの威力はさることながら塵も積もれば山となる。

避けきれないと判断した私はもう片方の刀を抜刀し身をかがめ十字に構え盾代わりにすることで直撃を防ぐ。

水平に降り注ぐ数多の光の矢の雨が止んだ頃には、私は全身には多少の切り傷の痕が残る。

セリカの魔法の直撃は回避したとはいえ、軽傷で済んだのはユニティ特有の魔防の加護を受けているからだ。

 

後退し間合いを取り、仕切り直しをする。

現在の状況を示唆すれば、私は軽傷。一方セリカの方何度も魔法を放ちかなり体力を消耗している。

その証拠に呼吸が激しく肩で息をしているようで喘いでいるようにも見えるが、まだ目は死んでいない。

これ以上の傷を負えばエフラムとの戦いに支障がでかねない。

なら次で終わりにしないとね…セリカ、あなたに引導を渡す。

 

魔法を唱える暇を与えぬ速さで距離を詰め剣撃を放てば、セリカも持てる力を振り絞り右手で剣を持ち受け止める。

鍔競り合いの膠着状態を見計らいセリカはまた先と同様の魔法を唱える。

先程と同じ戦法、まさか二度目来ないと裏を読んでの攻撃だろうか?

どちらにせよ魔法を発生する前に斬るだけ。

剣を交差している左手の逆、空いている右手で無防備のセリカに袈裟斬りを仕掛けるが思いもよらぬ光景を目にする。

先程の見た風刃をセリカが握っている、いや違う左の掌から発生させ私の右の脇腹、肝臓を突こうとしていた。

瞬時に袈裟斬りをしようと振り上げた腕をたたみ実体を成した風刃を小太刀で受け止める。

「ビームサーベルだと!?」

「違うわ、黒魔法を本来の従来の運用ではなく術者の周りに停滞させることにより攻撃に転用したもの!!」

いや…一点に集中することで防御にも運用できるはず。

魔法をそのような使い方があることに驚嘆するが同時に欠点を見つけ出す。

形を保つにはエネルギーが必須であり固形ならば尚更だ。

加えて常用運用はただ放つだけであるがこの運用では継続的に発生させなくてはならなく、燃費はかなり悪くなる。

体力を節約すべきセリカの現状であればこの戦法は今取るべきではない…自爆を誘うだけだ。

自爆を…誘う…?まさか!

両手それぞれの鍔競り合いの膠着状態に持ち込んだのは、私の足を止めるため。

そして魔法を唱えるには口さえ開ければいい。

「まさか自爆をしそうと考えているでしょう…」

「そうね、残念だけど今の私ではあなたには勝てないわ…

 だからね!!あなたのように私情で生き、世界を混乱させる者を無くすため、

 ソフィア…いえミラ教の勝利に貢献するため、

 エフラム兄さんはどうでもいいけど、アルムを守るため、

 私はあなたを道連れにする!!」

「それは…新たな負の連鎖を生みだすだけよ!!」

どうにか距離を取ろうと試みるが時既に遅し…

ファイアーエムブレム、封印の盾にはめ込まれた宝玉を連想させる五つの灼熱の玉が、

五芒星を描くように現れ二人を取り囲む。

そして徐々に標的である私に向かい星の形を狭め…やがて大きな火柱を立てた。

 

 ………

 

火柱が消えた後のこと、互いにまだ息があり、

おそらく術者であるセリカの体力を消耗していたため本来の威力には程遠かったのだろう。

だがそれが転じて私は大きな怪我を負わずに済む。しかし炎の魔法を直に食らって熱くは無いのかと?

ブシドー(ませんし)の恩恵もあるが、もともとで1000℃以上に熱した鉄と戦っていた経歴あり、

熱には多少に慣れていたからだ。

 

私は自分の損傷を確認すると横に倒れているセリカの状態を見る。

…もはや虫の息で戦闘不能状態まで陥られ辛うじて単語を発することができる状態だった。

多少手古摺らされたけど前座はこのくらいか…

私は魔法によって負傷した所に傷薬を塗り近くにある回復床までセリカを担ぎ運ぶ。

セリカをその隣に下ろし、自分は回復床に腰かけ負傷した身体を癒す。

セリカにトドメを刺さないのは、彼女はエフラムのおびき寄せるための餌にするのが理由だ。

シスコンである彼は妹の危機を無意識に反応し必ず来るであろう。

上を前提とし今まで彼女を戦闘不能に陥らすまで戦っていたというわけであるが、

実際あと一歩で台無しになってしまい冷や汗をかいていた。

 

数刻経過後、私の傷も癒えたがエフラムは現れない。

もしかして手古摺っている?やられたか?なら所詮その適度人間なのか、

いや来る、彼は必ず…戦う宿命にあると心の中で考えていた。

その時、人の気配を察知し待ち侘びたと興奮に駆られるが、

臆することなく姿を見せたことから味方だと分かった。

「ほう、一人倒すとは口先だけではないようだな。もう死んだかと思ったぞ」

あたかも見下すような言葉を吐いた主は重装の鎧を纏ったドゼー。

その男はセリカがまだ息をしている状況を見てトドメを刺そうとする。

何度も言うが、この戦いは殺してもいいのが暗黙のルールとなっているからだ。

私はドゼーがセリカの前に向かおうとする間に立ちはばかる。

「退かぬか!なぜ敵を庇う」

「手助け、干渉、一切無用だと言ったはず」

私にとってセリカが死んでしまっては不都合だからだ。

仮に死んだのであればエフラムは平常を失う。私が求めるのは彼との真剣なる戦い。

精神不安定な状態で勝ったとしても意味がない。

そのために、敢えてセリカを戦闘不能の状態にしている。

 

「何を…貴様は干渉するなと言ったのはエフラムという餓鬼だけだ。この小娘は関係ない、なら息の根を止めてもかまわんだろう」

私の意図をドゼーが知る由もなく食いかかる。邪魔立てするなら味方でも容赦はしない。

漆黒の般若面をつけた私は瞬時に二刀の刀を抜刀し、ドゼーに急接近する。

「身の程を弁えよ」

漆黒の騎士を意匠した台詞と共に刹那に重厚で固い鎧を物ともせず切り刻む。

私の刀は鍛錬に鍛錬を重ねた古の技術、その切れ味は竜の鱗も断つ。

そして、剣匠から伝授された技を自らにより昇華させた剣舞…奥義“朱雀飛天舞”。

斬られた者は視界を三分割され死に至る奥義であり、喰ったドゼーは散り台詞を言えないまま沈んだ。

 

ドゼーをゴミのように斬る一部始終を目撃したセリカは満足に喋れないながらも私に問う。

「狂ってるわ…どうして味方を…」

味方?そんなもの私には関係ない。理解できないなら教えてあげる。

エフラムが現れるまでも間、セリカに私の奇っ怪な行動の理由を語ることにした。

 

これは結局、理想的な戦争と言っているが単に支配欲の塊、

参加しているユニティは所詮消耗品でしかなく、得するのは有力者だ。

ルドルフ氏は有力者でありながら前大会まで自ら戦いに参加していたのは、

我が身を痛まず為政者を気取ることを気にくわなかったからだ。

そしてこの制度自体に疑念を持つようになり、闘技大会を破壊、消滅させるとこで数十年前の暗黒期に再び戻し、

他の地方からのバレンシアの解体に着手を促そうした。

計画を進める中、二年前に私という存在に出会う。

どちらの陣営、教にも深くかかわりを持たなく、誰よりも革命、自分の与えられた運命を変えたいと強く念っていることに興味を示し、

私にユニティに転昇出来る方法を教え、転昇後に破壊者という概念を植え付けた。

では私はルドルフ氏の傀儡に過ぎないと?そのようなことは先刻承知。

いや、ルドルフ氏の考えは共感出来るものであり、敢えて私は受け入れている。

思惑を知ったルドルフ氏は私をこの闘技大会での単独行動の許可を与えた。

これはエフラムと戦うまでの間、道を阻もうとする敵味方を潰し、彼を倒した後は敵味方への攻撃することを意味し、

前代未聞の不祥事を起こすことでこの制度に疑念を誘発させることが目的であった。

 

 ………

 

話を聞きセリカは驚愕と怒りを見せるが私は話を続ける。

数刻後、新たな数人の人影と遭遇し内一人が声を発した。

「セリカ!大丈夫!」

「アルム、エフラム兄さん。ダメ、来ないで」

セリカの名を叫んだのは彼女と同年代と思われる少年。そして後ろには私の標的者がいた。

会いたかったわ…エフラム!!

回復床から立ち、セリカの傍まで移動する。

エフラムと話が出来る距離まで近づいた時、般若面を外し己の素顔を晒す。

「収穫際以来…久しいわね、エフラム。妹の危機となれば必ずあなたがここに来ると私は信じていた」

待ち侘びながらも出会えた喜びを伝え、まだ動くことのできないセリカの喉元に刃を突き付ける。

これはもう一人(アルム)がいる状況で人質を取り、決闘に持ち込もうとするため。

「ティアモ、貴様」

「何言っているのかしら、この戦いの意図を知らないわけではないでしょ」

そう…この戦いは敵を殺しても構わない(バルキリー、オーム等は自腹)のが暗黙のルール。

普通セリカを倒していない方がおかしい。エフラムは怒りと何故生かしておくのかと真意を測りきれない顔を見せる。

「エフラム、妹を失いたくなければ私の望みに答えて欲しい…」

「何が望みだ!?」

「邪魔の入らない真剣なる勝負を。この私、ミス・レンアイドーはエフラム、あなたとの果たし合いを所望する」

「受け入れなれないと言った場合は…」

意図が理解できないエフラムは辞退をした場合を問い、私は即座に返答する。

「今此処であなたの妹を斬首する」

「そんな…」「エフラム…兄さん、アルム。私のことは…いいから…この人から…離れて!」

「セリカを置いてそんなこととできない!」「ダメよを早く!」

「貴様、そうまでして決着をつけたいのか」

私の無慈悲な言葉にたじろぐアルム、なんとしても私と交戦させないようにするセリカ、

そしてエフラムはセリカを人質にして戦闘に執着していることを看破する。

 

意図が伝わったとわかるや否や、エフラムにこの所業に至った理由を包み隠さず話す。

「無論よ。私の愛を求める理由を否定し、私と到達すべき点が同じと言いつつ妹選んだ」

子供、孤児を大切にすべきという信念を掲げながら、あなたは私やジェニーの想いをいなした。

「ましてや私の愛しい人を奪い、乙女としての矜持を打ち砕いたのは他でもない。あなたとエイリークの双子の兄妹よ!」

「何故エイリークが関係ある!?」

そうね、あなたすれば関係ないけどこの決闘に彼女が大きく関係している。

貧乳同盟を結んだはずのエイリークは私のクロム様の恋路を阻んだ。

あなた達双子は最初に友好的な態度を示しておきながら、私は屈辱を味あわせた。

最初こそ憎悪が湧いたが今はそんなことはない。寧ろ喜びを持っている。

あなた達の存在は身に染みる程たくさんのことを教えてくれた。

『全ての人が平等でないこと』『この世界は偽善者ばかりなこと』『己の意思で生きること』

『欲しいなら奪い取れ』『愛は自分の手で掴む物』『KINSHINは許さん!』…と。

そして“戦う運命の赤い糸で結ばれていた”という極意に辿り着いた。

 

「もはや愛を越え憎しみになり、憎しみをも超越し宿命となった」「宿命だと?」

「一方的だと笑うかしら?」「いや…笑わないさ。貴様の望み通り果たしを合い受けよう」

「全力で望む」「兄さん!!」

私の期待通りエフラムは果たし合いに応じるが、アルムは援護しようと弓矢を構える。

邪魔するなら、まずはお前から倒す…!!と形相を修羅化させ、ガンを飛ばせばアルムはすくみあがる。

そうよ、それでいいのよ。邪魔せずにただあなたは見ていればいいのよ。

「アルム、お前はセリカの手当てを専念していろ!」

「わかったよ…」

エフラムは表向きにはセリカを看ていろ、裏では手出しはするなと伝える。

動けないセリカをアルムに預け、同時にエフラムと距離を取る。

“愛という幸福を手に入れる…これが私の生きる軌跡、TMR(Timao Makes Revolution)”

のミラの顔を“エフラムに勝つ…これが私の生きる道、修羅の道”という ドーマの顔を覆うように

外していた漆黒の般若面をつけ直し、

“私が望むのは一途に意中の相手との愛。あなた達を倒し、その極みにある幸福を手に入れる。”

…と念じ、二本の小太刀を抜刀し構えを取る。

エフラムも自分の得物を手にして構えるが、彼は槍ではなく二刀の対象の双刀を持ち、

その双刀は刀身の反った湾曲剣でなく刀身が真っ直ぐな刀、

“斬る”よりも“突く”ひいては“貫く”ことに長けているのが特徴の所謂“直刀”であった 。

槍を捨ててもあくまで突く概念を捨てていないのか?

いや違う。これは形状から剣に見えるが大身槍の柄を短くし、片手で扱える使用の槍。

おそらく投擲も可能だろう。

決闘において長柄では私の速さ、剣の間合いに不利であると思っての策か。

相手の戦略を見極めつつ待ち焦がれた戦いの仕切りをつける。

 

「兄弟家エフラム」 「ティアモ改め、ミスレンアイドー」

「妹を守るために」 「いざ尋常に」

「戦う!」     「勝負!」

アルムとセリカが見守る中、エフラムとの決闘の狼煙が上がる。

私は得意の縮地、ませんしの攻撃モーションのごとく彼の視界から消え一気に私の剣の領域まで近づく。

エフラムも私の領域に合わせて向かい接近する。

この前(収穫際時)、刃を交えた時は足を負傷していたせいで分からなかったが彼の足は速い。おそらく私と同等だ。

これは幼少期から鍛練を詰んできた賜…それでこそ、倒し甲斐があると言うもの!

先に仕掛けて来たのはエフラム、左の槍を上から縦一閃に薙ぎ払う。

二刀を交差することで受け止めた瞬間を見計らい右の槍を突こうとする。

そうと来るのは容易に読み取れるが故、刀を押し上げ彼の重心を後ろ下げる。

「これこそが待ち焦がれた戦いね、エフラム!!」

「ああ…そうだな」

これでは重い一撃を放つことを出来ないと判断した彼は右を防御に専念しつつ左の槍を引き、

私が攻撃してこないと見切り次第、後退し距離を取る。

再度互いに一瞬で間合いを詰め先のような攻防を幾度か繰り返す光景は、

太陽炉と疑似太陽炉の放つ碧と緋の光がぶつかり合っているように見える。

 

私は今までの抱いた彼への感情を払拭するかの如く引導を渡そうとするが、

彼は太刀筋を捌きつつその眼は虎視眈々と機を見極め後の先を取ることに徹していた。

なら先の先を取る。そう彼との闘いは戦略、小細工不要の真っ向勝負で勝ってこそ意味があり、

一瞬で距離を詰めた私は反撃の糸口を与えない疾風怒涛の攻撃に、

“愛を手に入れるため栄えある同人の神の称号も捨て己の進む道を阻む者の妥協しないユニティに転昇し仮面を被った。

欲しいものがあるからここまで生き、そして手に入れようとした”…と辛酸を嘗めた思いを乗せる。

「私は生きてきた、そう…生きてきたのよ。このために生きて来た!

 たとえルドルフ氏の傀儡に成り果てても!このレンアイドーだけは!!」

彼は嵐ともいえる猛攻を凌ぎつつ私の生きた軌跡を否定する。

「貴様は愛に妄執し力に呑みこまれた者の終焉だ」

「違う。戦いと愛を望む…これはドーマとミラの意思!!

 いえ誰もが持つ潜在意識であり、私はその意思が強いだけ。そう、あなたの様にね!!」

「貴様と一緒にするな!!」

 

その後も一方的な攻防は続き、幾どの斬撃を受け止める内に彼の右肘が下がり均衡が破られると、

「エフラムに兄さん!!」

「アルム戦いに集中する。セリカを安全な所へ移せ!」「わかったよ…」

「戦いに集中すべきよ!!」

同時にアルムが兄の劣勢を見ていられず声を発し、その声に一瞬反応したエフラムに隙が生まれ、

私はよそ見する彼に喝を入れる勢いで太刀筋を入れるが瞬時に反応し槍の刃で受け止め、押し払い距離をとった。

アルムはエフラムの言う通り満足に動けないセリカを担ぎその場を離れて行った。

好きにしなさい、私もエフラムと果たし合いする初期目標が達成された以上第三者がいない方が戦いに集中できる。

最もエフラムも同じことを考えだろう。

アルム達が去った後、二人きりになった私とエフラムは互いに声を掛け合う。

 

「こままでは」   「埒が明かないわ」

「ならば」     「さすれば」

「うおおおおぉ」  「はあああぁぁ」

 

叫びと共に精神統一した私は刀に入魂し身体と刀を同化させる。

彼もまた目をつむり精神統一を行えば、どこか黄金に輝くオーラを放っていたようにも見える…いわゆる明鏡止水の境地だろうか?

一点の曇りが無い鏡、波のない静かなで水の如く、やましさやわだかまりのない静かに澄んだ心境。

幼女と一緒に入浴、就寝。妹や異性の裸体を真の当りにしても動じないという心。

これがあなたの会得した極みだというの?

 

開眼後、彼は双槍の片手槍を合身させ双刃の槍と化し新たな槍の型を取る。

そうこれがこの槍の本来の姿であり、彼の槍術の真骨頂が垣間見ることが出来る形状。

今まで双槍で戦っていたのは私の速さに目を慣らすための時間稼ぎということだった。

いずれにせよここからが私が見たことのない本当の彼の姿なのは間違いがない。そして…

 

「いざ尋常に…」   「勝負!!」

 

と第二幕の仕切りをつけ、この戦いに終止符を打とうとする…

号令後、エフラムが前進するが私は左の小太刀での居合いの構えをとり、

彼の槍の領域に入り一撃を放つ時に生じる溜めに合わせ縮地からの居合一閃を放つ。

彼は危険を察知するなり槍を盾にして一閃をいなした瞬間、

逆手に持った右の小太刀を右切上げの方向に振り上げれば、

即座に槍を回して刃で受け止め、同時に身体を回転させ左の小太刀を彼の首を目がけ振り上げる。

首をくねらせ紙一重でかわすが僅かに首をかすめ一線の傷が生じ、血が滲み出る。

しかし彼は一切表情を変えず臆することなく槍を上方向への薙ぎ払いから突きを放ち、視界には槍の刃が迫る。

彼同様に私も焦ることなく瞬時に小太刀を交差に構え、槍の突きを受け止め強引に顔面直撃の軌道を逸らす。

しかし槍の一撃は重く力負けをした結果、槍の矛先は私の頬を掠め髪の色と同じ緋色の鮮血を流れ出、

槍が引いた後一度距離をとるため後退を試みた時に彼はある言葉を紡ぐ。

 

「…無双稲妻突き」

 

最後の言葉が聞こえた時には槍を放ち終え、後方に移動する私を捉えていた。

その槍の一閃は天からの裁きの如く、覇者が何人を寄せ付けず一方的に蹂躙する雷光の一撃であり、

薙ぎ払う動作を交えれば槍の届く空間であれば不可侵な領域と感じられた。

小太刀で一閃の軌道を逸らし、次に来る水平に薙ぎ払いと同時に同方向に大きく飛んで槍の領域から脱出する。

 

既にもう一閃を放っていた。

 

師匠は言っていた、武人とは己の武器でしか語り合えない不器用な存在だと…

鍔競り合い越しに私とエフラムは互いの真意を交え合う。

 

『私は純粋に愛を求める。そしてその愛であなたを倒す。それが私の生きる証!』

『俺もそうだ、愛があれば世界を変えると、だが今は違う!』

 

私は回想する。私が到達するのは戦う者が到達する極み。

宝物(ほんもの)の愛

エフラムはかつて私に歪みがあると言った、しかし彼とて愛を求める存在。

故に

いや本来の

私が到達するのは

人が求めるのは手に入れられる愛の極み、運命の相手の伴侶。

だが彼もドーマを顔を持つ存在

鍔競り合い越しに、剣

 

二本の槍を合身し両刃の槍とさせた。

朱雀飛天舞

 

剣舞の太刀筋を捌いていく。

 

 

「愛の極みの幸福を!」

「狂愛の果てに幸福など無い」

「憎しみや復讐の狂愛の先にあるものはより大きな悲しみと喪失、そして新たな憎しみの種だけだ」

「では何を求めろと…私が愛を求めるなとでも言いたいの!」

「求める物などない」

エフラムは私を後方に吹き飛ばす。私が態勢を整える間、

両手持ちに換え、防御を捨てた捨て身の一撃を放ち戦い終わらせようする。

「創るんだぁぁぁ」

叫びとともに放たれた槍一閃を片方の小太刀で受け止めるが、とても受けきれる威力ではない。

しかし、意地でも踏ん張ろうとしたことに機が私に向く。

双槍と小太刀が投げ出され、武器を失ったエフラムは丸腰になる。

絶好の機会を逃さず、私はもう一本の小太刀を両手で持ち、得意の振り下ろし引導を渡す。

 

「切り捨てぇぇぇ…御免ぇぇぇん!!!」

 

勝利を確信した私、だが彼はまだ闘志を見せある行動に出る…

「白刃取り!?」

私の太刀筋見極め刀身を両手で挟みこみ、斬撃を受け止める。

膠着状態を抜け出そうと両者が力をかけた時、エフラムは私に言葉を放つ…

「愛とは自分以外の生き物、無機物問わず好意を持ち、慈しむ行為のこと!

 如何なることがあれど決して誰かの好意、気持ちを干犯し蹂躙するものではない」

「それは…詭弁よ!人いえ、生き物は欲望で動くもの!博愛は実現不可能な理想論でしかないわ!!」

更に力を掛け合い、刃が彼の掌に食い込み鮮血が流れる。しかし痛さを我慢しつつも私に言葉をかけ続ける。

「愛により快楽や幸福を得たいと願う人間は、自分の非と業を受けとめられず相手を妬む。

 現実から背き己の威厳と安寧を得るために、世界を歪ませる!!

 だから弱さを知って強くなる…

 恐れず信じることで憎しみに変わる前の本当の愛を知らなくてはならない!!」

「それがあなたの会得した愛のULTIMA TE(極み)!?そんなもの微塵も存在しない!!」

「無いというなら俺は創り出す。

 たとえ報われなくても行動し立ち向かう、Tomorrow Meets Resistance。

 その先にあるものこそ、それこそが皆が求める未来だ!!」

 

自らの想いを力に乗せ、エフラムは白刃取りのまま私の喉笛を目がけて刀身を押し出し、

喉に受けた強打により呼吸困難に陥り一瞬記憶が飛ぶ。

朦朧とする意識の中、私はこの痛み愛を手に入れるための試練、志半ばで倒れるわけにはいかないと

決して引こうとしない闘争心が肉体を凌駕し、左手でエフラムの顔を殴り飛ばす。

負けられない…ここで負けたら、私の軌跡が閉ざされる。

再度己の道を切り開こうと私は小太刀を拾おうと屈むが急に水月に痛みが走る。

エフラムの峰打ちだ。喉と腹に打撃を受けた私はもはや立っていることすられず地に沈み、

虚ろに広がる視界には私の小太刀を拾い上げたエフラムが立っていた。

負けは確定、その事実を受け入れないように意地でも闘志を見せる。

心まで折れたら、私がこれまで生きて来た事でさえ全部否定されるからだ。

『戦い…なさい、エフラム!その…私の刀で私を…切り裂きなさい!』

腹部への衝撃故満足に話せず、彼の目で訴えることにすれば、

「わかった」

と返事したが私の希望と裏腹にエフラムは私の双刀を森の中に向けて力の限り投げ捨てた。

この行動に解せなかった私は痛みを堪えながらも口を開く。

「なぜ…トドメを刺さ…ないの!孤児は…世界から…淘汰される者。いてもいなくてもいい存在…」

「そう思うか?修羅化したあんたはともかく、以前の君がいなくなるのは、俺は悲しい」

エフラムは自分の双槍を拾い上げ、背中越しに別れ言葉をかける。

「君に愛の為に生きろとは言わない。だが、歪んだ世界に絶望し、力を翳してまで愛を手に入れるのなら、

 愛を創り出せ、君自身の愛を!それが本当に望む軌跡なはずだ…」

そう言いい自分の弟妹の救援に向うため私の視界から消え去った。

 

 ………

 

エフラムが去り、私は一人置き去りにされた。

私は喉と腹部の強打で満足に呼吸ができず、体も衝撃の痛みが残り起き上がることが出来ない。

どうにかうつ伏せから仰向けに体を反転させると今にも雨が降り出しそうな雲行きだった。

私は求めた愛とは…なんだったの?自問すれば涙が零れ、奇しくも雨が降り始める。

泪雨?そんな慰めるようなものはいらないわ…

我慢すればするほど涙腺は刺激され、ついには決壊に大粒の涙が頬を流れ落ちる。

私は今までの人生を振り返る。

孤児であることに足を取られないようしゃかりきになっていた…

性格上誰かに頼りにされると背伸びして頑張っていた…

誰かに弱さを見せないように強がっていた…

努力しても散々な結果しか得られない綱渡り日々、

やるだけ損する毎日に斜の構えたほうが楽になれると思うようになった。

自分に無いモノを持っている人間に嫉妬し、いつのまにか自分自身が歪んでいた…

私は…ただ私は熱くて辛い自分を隠して生きていた…そうだったんだ。

 

私が本当に欲しかったのは、望むものは…

 

数刻ぐらい泣き続ければ、次第に呼吸だけでも苦痛だった痛みが和ぐ。

立ち上がり地を這うようにおぼつかない足取りで歩き始め、せめて雨をしのぐ場所を探す。

開幕のメガクエイクで生じた凹凸、雨による地盤の緩みが重なり、私はある場所に踏み入れた瞬間急落下し、

途中で意識が途切れた。

目を覚ました時には雨は止み、辺りは既に暗闇に包まれていた。

動こうとした時左腕と右足に痛みが走る。転げ落ちた際に負傷したのだろう。

痛さからして骨折しているかわからないが強打、捻挫してしまったようだ。

微かな月明かりを頼りに落ちる前の場所を探し当てれば有に数メートルを越えていた。

左腕と右足が使えないとなると登るのは絶望的であり、助けが来ないなら私はここで朽ち果てるだろう。

 

そして夜空に浮かぶ月を見ながらこれまでの私の所業なら当然の報いだと受け止める共に、

誰もの人生の収支が足し引きゼロであれば、

死ぬまで使いきる運の数を自分で出し入れできればどれほどいいだろうか…

やはり神は全ての人に愛を与えてくれないと再認識し、自分が求めた愛とは何だったかと自問する。

そして手解きとして用いた恋愛必勝マニュアルの内容振り返り、最後に書いてあったことを思い出す。

 

『恋愛道とは(愛する者の為に)死ぬことと見つけたり…』

 

恋愛道…愛する人ために生き、愛する人のために死ぬ。

自分中心ではない利他的な愛・自己犠牲を厭わない献身的で純粋な愛。

いわゆる究極の愛。

私が目を背けてきた愛。

今一度究極の愛を見つめ直せば、私は勝手に愛して憎しみ宿命づけていただけだった。

もし私がいなくなればクロム様はエイリークと幸せを掴める。

クロム様が幸せを願うなら私がいなくなればいい。なら私の存在を消すことが究極の愛。

 

「これが恋愛道の極み。恋愛道とは…死ぬことと見つけたり…」

 

私は懐に潜ませておいた小柄を取り出し、自分の腹を切る。

口から血を吐きながらエフラムが別れ際に言った言葉を思い出す。

『愛を創り出せ、君自身の愛を!それが生きる為、争いのない明日の為になる』

ごめんなさい、愛を知らない人間が創り出す事は出来ないわ…

創れないなら私は欲していた愛はなんだろうか?走馬灯のように私の人生が巡り還る。

そこで会ったはずのない両親の姿を垣間見ることができた。

母さん…父さん…!?一度でいいから会えて良かった…

できれば触れたかった…笑顔で言葉を交わしたかった…一緒にご飯を食べたかった…

この時私は悟った。ただ家族の温もりを欲しがっていたと。

だから、その淋しさを紛らすため愛に固執していたと。

意識が遠のいていく中で、

生まれ変わった来世では私に子供が出来たのなら私は暖かい家庭を築きたい。

そう願い私は遠い夜明けを越えずに深い眠りについた。

 

つづく…

 

 

 

 

 

 

 

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