重返青春記録1999   作:ヤグルマギク

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ー The path to the Catacombs ー

 貴女は慰霊の洞窟へ足を踏み入れる。大輪の花火を持って。


ここ好き、感想、評価お待ちしております♡


1stー06 カタコンベへ続く道

 ミス・サオリ、ミス・ヒヨリ、ミス・シャーレとヴェルティは霧雨の降る夜道を移動していた。

 鼻にはツンと雨の匂いが漂うも、それ以上に裏路地の蟠った空気が雨と混ざり合い、煩わしさで身を包む。

 その中を、一行は進んでいた。

 

「時間を気にしていたけど、何か理由があるの?」

 

 ヴェルティは尋ねた。

 それに、サオリが答える。

 

「アリウス自治区に行くには、トリニティ地下のカタコンベを通過しないといけない」

 

 そういう秘匿された場所にアリウス自治区はある、と説明は始まった。

 

「カタコンベの入り口は、判明しているだけでも約300か所。その中の【本当の入り口】は限られていて、残りはすべて偽物だ。そして、カタコンベの内部は、定周期で変化する」

 

 と、サオリは言葉を続ける。

 つまり、正しい道順を辿らねば、永久・・・・・・とは言わないが、当分は彷徨うことになるだろう、ということだ。

 

「だから私たちは正しい入り口と、そこからアリウス自治区に通じるカタコンベの内部ルートを暗号で伝えている」

 

「内部が変化する・・・・・・?」

 

 アリウス自治区とトリニティについて、ヴェルティは詳しくない。だが、サオリの口ぶりから、何らかの大規模な神秘術術式が掛けられた特殊な場所───そう、例えば真理の探究者が住まうエーゲ海上の島のような──であると解釈した。

 

「そうだ。この前通った道が行き止まりになっていたり、あるいは方向を見失ったり・・・・・・そんな感じになる」

 

 どのような仕組みでそうなっているのかは、分からないが・・・・・・という言葉で、サオリは説明を結んだ。

 

「そして、今はもう正しい入り口はどこか分からないと」

 

「逃げ出した猟犬に帰り道を教える必要はないからな」

 

 自虐的な言葉とともに、サオリは小さく自嘲の掠れた笑い声を出す。そこには、後悔の香りも混ざっていた。

 

「で、でも・・・・・・たった1つだけ、まだ使える入り口が残ってます」

 

 と、ヒヨリが代わって説明を続ける。

 彼女たちが知っている入り口。それは、まだ彼女たちが離脱する前から知っていたルートを指していた。

 しかし、そのルートも今日の日付が変わるまでしか使えない。

 

 だから、彼女たちは急いでいた。

 だが、同時に救出作戦でもある。となれば、できるだけ気づかれずにいたいだろう。

 

「・・・・・・そろそろ、警戒エリアに入る」

 

 それは、説明を終えるという意味と、作戦開始を望む意味を持った言葉だ。

 ヴェルティは頷いて通信機を取り出した。

 

 

 


 

 

 

「相棒からGoサインが出たよ」

 

 ヘッドホンの片側に当てていた手を離して、元諜報員のコーンブルメはそう言った。

 

「OK、アタシらは空から、アンタは地上からだ」

 

 それを聞き届けた現代の魔女リーリャは、コーンブルメに箒へ乗れと促し、もう一人のチームメイトに指示を出す。

 

「最初の目標は?」

 

「200m先曲がり角の奥に歩哨がいるよ、ミス・メラニア」

 

 ふわりと浮き上がる最中にコーンブルメは標的を伝える。そして、作戦は開始された。

 

 

 


 

 

 

「おい、アリウススクワッドは本当に来ると思うか?」

 

「この警戒の中に易々と飛び込んでくる奴なんているもんかよ。戦力差はあっちの方が余程分かってるぜ」

 

 数人の歩哨。その会話が耳に届く。

 心配をしている仲間を励まし半分揶揄い半分の調子で仲間は笑う。

 

「オレが思うに、トチ狂ったか、とんでもない馬鹿だな」

 

 もし、奴らが来るとしたらな、と言葉を結ぼうとした歩哨は、次の瞬間、壁へ叩きつけられた。

 

 誰もが言葉を失う。

 だが、彼女らも訓練されたプロの少年兵だ。数瞬後には敵対者の襲撃があったと理解し、戦闘態勢に入る。

 

 銃を向けた先、そこには既に黒い影が迫っている。引き金にかかった指が動くより先に、相手の肘が銃を殴りつけ、打ち払われた。

 

 その勢いよって生まれた隙を相手は逃がさない。

 肘を振り抜かずに、捻りの反動で戻した拳が、顎を打ち抜いた。

 

 一人目、二人目と立て続けに倒れたのを見て、最後の一人が無線機に手を伸ばす。

 

「まだ、早いぜ、それはッ───」

 

 そんな声とともに、上空から、まるで鳶のように鋭く速い一撃が飛び込んでくる。

 それは、魔女の箒に載ったリーリャだった。

 

 現代的な魔女の箒は、木製では無い。その見た目はもはや箒では無く戦闘機を思わせるような金属。

 

 重さと速度を掛け合わせれば、それ即ち威力だ。

 浮いているとはいえ、重量は大きい。さらにそこへ二人も載っているのだから、推して量るべしというものである

 

 

 

 最後の一人も気絶した。

 定期報告が無くなれば、敵も何らかの行動を取る。それがどれほど先かは分からないが、30分も先まで待つはずも無い。猶予はせいぜい15分あるかどうかだろう。

 

 であれば、計画のためにも、聞き出すだけ聞き出して時間を稼がなくてはならない。

 

 三人はアリウス兵をサッと縛り上げた。

 

 そうして、そのうちの一人を、たたき起こす。

 

「いいか、よく聞け。選択肢を二つやる」

 

 まだフラフラと首が据わらぬアリウス兵に、リーリャはズイと近づき、ギリリと握った拳をよぉく見せる。

 

「一、今すぐ全部話すこと───二、アタシにボコボコにされた後に全部話すこと」

 

「お前ら誰───」

 

 ある意味当然の疑問だろう。リーリャ率いる小さき分隊は、本来局外の登場人物だ。

 

 だが・・・・・・

 

「選べ」

 

 彼女は質問の答えしか受け付けない。

 

 

 


 

 

 

 空気が変わった。サオリはそう思う。

 滞留した空気の中にピンと張った糸のような緊張感が、増していると。

 

「向こうも始めたかな」

 

 シルクハットの少女が小声で呟いた言葉に、無言でサオリは頷く。

 

「陽動がアリウス兵を引きつけてはくれるだろうが、警戒は厳しくなるぞ」

 

 クリアリングを適切に、素早く済ませ道を進む。

 

「入り口は一つ、警戒が強まれば、当然そこは固める」

 

 だから、そこにたどり着くまでは、装備と体力を温存して進む。

 カタコンベの中に入れさえすれば、戦場の広さは狭まり、人数不利は緩和される。

 

 と、その時、爆音がサオリたちの元に届いた。

 ヒヨリが一瞬跳ね上がり、先生とヴェルティは硬直する。

 それは、本格的に戦闘が開始されたことを告げる花火だ。

 爆音は続き、その進行方向は、サオリたちの向かうカタコンベの入り口にゆったりと進んでいる。

 

『───増援アラートに反応した部隊三つ、そっちを通るかも』

 

 耳に届く通信に従って身を潜め、通過したのを確認して進む。

 作戦は順調だと言えた。 

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