重返青春記録1999 作:ヤグルマギク
線路は続くよ、どこまでも?
リバースのストーリー風にサブタイトルと一言コメントをつける形にしました。
良かったらさかのぼって確認してみてください。
「異論はない───だが、その前に確認しておきたいことがある」
嗄れた声は木の擦れる音と共に部屋へ広がった。
赤い部屋。コンクリート打ちっ放しに、はめ込みの照明。照明の光も、壁も赤くないのに何故か赤さが満ちた不思議な部屋だった。
まさに夢で見るような不可思議な光景。だが、これは夢であって夢ではない。
発言をした存在。声の質からして、恐らく男性と区別されるであろう木製の異形。頭部は二つ、目や口といったパーツは描かれているだけで、実際にその機能はなく、どこから声がでているか定かではない。
その双頭人形の発言に数拍の間を置いて答えた者が居た。
「マエストロ、何か気になることが?」
真っ黒の頭。白く発光するひび割れがあり、それが目や口と思われる部分を形作る。その黒い頭と同じ色のスーツを身にまとった異形。声は双頭の異形よりは若いが、それでも渋めの男性的な声をしている。
マエストロと呼ばれた双頭の異形は黒頭の異形の言葉を無視し、別の方向へ体を向けた。
カタカタと音を立てて木製の体が向いた先。そこにもまた一人の異形が居た。
「ベアトリーチェに質問がある」
「・・・・・・はい、何でしょう?」
ベアトリーチェと呼ばれた白と赤の貴婦人が答える。
白いドレスと真っ赤な肌に長い黒髪。豊満な体を持ち、床に広がる裾は薔薇の花をモチーフとした装飾が彩る。しかし、彼女もよくよく見れば異形。たしかに顔の下半分は人の形をしているが、花弁にも羽の様にも見える白い飾りが上半分を構成し、その飾りにある目が動く様は、人ならざる存在であることを物語った。
彼ら彼女らの存在を表す言葉は一つ。ゲマトリアと呼ばれる組織である。
マエストロは言葉を続け、自身の意見を述べた。
「要請によって、私は自分の力を貴下に貸したのは覚えているな? 戒律を守護せし者たちを複製して、そちらの計画に付き合わせた件だ」
「ええ、とても感謝していますよ、マエストロ。おかげさまで、私は領地でさらに大きな力を得ることができました」
ベアトリーチェは、あっけらかんとした口調で答えた。感謝していると口にしているものの、その気持ちは強くない様に思われる。
それが分かっているのか、マエストロも声を硬くし、言葉を早くした。
「私は貴下がそれを利用することを許可した覚えはない。そも、私の作品をそのように使うことは許可していないはずだ」
「あの現象はあなたの所有物ではないはずですよ、マエストロ」
ベアトリーチェがマエストロの言葉を遮るように言い放つ。
あの現象。戒律を守護せし者たちの複製。それが示すものは、エデン条約締結式の会場を襲撃した謎の存在たちだろう。古の姿を現代に呼び起こし、倒されても消えず、また現れる存在。
その存在───というよりも、それをどう使ったかがマエストロにとっては大事であり、その使い方に納得がいってない様子である。
「・・・・・・相変わらず不躾だな。私は所有権を主張しているわけではないのだ。それは───」
「不躾?よくもまぁ・・・・・・私にそんな口を」
再びベアトリーチェは言葉を遮った。今度は怒気を孕み、いくつもある目がマエストロを睨みつける。
「まぁまぁ・・・・・・お二人とも落ち着いてください。事を荒立てないでくださいよ」
「そういうこった!」
また別の異形が仲裁に入った。
頭の無い異形。茶色のコートを着た男性の体つきだが、まるでグラデーションでもしているかのように、足に向かってだんだん暗くなっていって、ズボンの裾あたりは真っ黒な陰の中に居るようだった。彼は片手には杖を持ち、もう片方の手には写真を持つ。その写真の中には後ろを向いた男性が映っており、こちらは黒のコートと黒帽子を身につけている。
一見喋っているのは茶色のコートを着た頭なしだと思ってしまうが、よくよくその声を聞けば、主に喋っているのは写真の中の男だというのが分かる。茶色のコートの男は、大声で肯定の意を叫ぶだけだった。
「・・・・・・失礼しました。マエストロはきっと、普遍的な現象を通じて独創的な解釈をすることは、自分なりの表現法だと考えているのでしょう。しかし、それはマダムの立場では別段考慮する必要がない部分かもしれません。私たちは皆、この世界を解釈する方法が違いますから」
写真の中の男は二体の異形の間に入り、自身が中立であることと、お互いの価値観が違っていることを述べる。
「───つまり、私がマエストロの武器を勝手に奪ったことが気に食わない、ということすよね?」
「・・・・・・貴下が行うのは断じて芸術ではない。そこには美学も何もなく、ただ兵器を生み出すだけの行為だ」
「ええ、そうです。何か問題でも?」
怒りに震えるとはこういうことを指すのだろう。カタタッとマエストロは威嚇のように素早く木製の肉体から音を放つ。
その怒りを受け流しベアトリーチェはさらりと言葉を続ける。
「それに、あなただけではありません。私は黒服が提供した技術力も、ゴルコンダが解釈したテクストもそのように使っています」
黒頭の異形黒服と、写真の中の男ゴルコンダはベアトリーチェの言葉に無言を返す。
「私はあなたたちの芸術に興味はありません。【ゲマトリア】の一員になる時から主張してきた話だと思いますが」
ベアトリーチェと他三人の間に見て取れる関係の溝。対立するほどではないが、冷えた関係性を感じる。何かあれば切り捨てるだろうという感想がうっすらと浮かぶような空気だ。
沈黙と微妙な空気が場を満たす。その空気を壊したのは、黒服のクックックッという笑い声だった。彼は口元に手を当て、ニマリと歪んだ口を隠す。
「その通り。それはそれで良いのでは・・・・・・と、私はそう思っています。仲間同士で争う必要はないかと。彼女はキヴォトスに自分だけの領地を確保しています。私たちの計画に最も必要な存在ですよ」
「アリウス自治区ですね。あそこのすべての生徒と学園を自分の支配下に置くなんて、確かにそれは偉業です」
アリウス自治区を支配下に置いている。その一点においてベアトリーチェは他の者より一歩進んでいた。安定した基盤があればこそ研究に没頭ができるというべきか。そのアドバンテージはとても大きい。
また、エデン条約締結式襲撃におけるアリウス生徒の行動が彼女の指示であったことも示していた。
「黒服のアビドスは残念でしたが・・・・・・おっと、失礼。皮肉を言っているつもりではありません」
「ククッ・・・・・・お気になさらず。たしかに惜しかったですが・・・・・・あの先生の存在は私の計算に入ってなかったので」
ゴルコンダと黒服の雑談によって場の空気は一定の柔らかさを取り戻しつつあった。
しかし、黒服の【先生】という言葉によって再び剣呑な雰囲気へと傾いていく。もちろん傾かせるのは白と赤の貴婦人ベアトリーチェだ。
彼女に眉はない。だが、たしかに【先生】という単語に眉をピクリと動かしたように感じられる。そしてその感覚が正しかったことを、彼女の不機嫌な声色が証明した。
「【シャーレ】例のあの者ですね。私たちの敵対者」
「そういうこった!」
ベアトリーチェの言葉を頭の無い異形───ゴルコンダを持ち上げる茶色のコートの男──が間髪入れずに肯定の言葉を飛ばす。だが、肯定するのは彼だけらしく、他の者は難色を示す。
「いいえ。あの者とは敵対してはいけません。むしろ私たちの仲間に引き入れたほうが良いでしょう」
「私としても大変気に入っている。あの者は、私たちの理解者になってくれるだろう」
「私はまだ判断を保留していますが・・・・・・もしベアトリーチェのように私たちの一員になってくれるなら───」
先生に対して友好的に居るべきと述べる三人に、ベアトリーチェがいい顔をするはずもなく、不愉快そうに数多の目を細めた。口元は扇子で隠すも、頬の動きで苦々しげに歪んでいることが分かる。
「愚かで怠惰な思考ですね。【シャーレ】の先生は必ず排除しなければなりません」
吐き捨てるように、しかして強く主張するように、ベアトリーチェは提示する。それに対する三人の答えは勿論沈黙。その沈黙は否定の意であり、呆れの思いも含まれていたが、ベアトリーチェはそれを不理解であると理解した。
「私がアリウス自治区をターゲットにしたのは、純粋にそこが秘匿された場所であるからで、それ以上の意味はありませんでした。【トリニティ】や【ゲヘナ】・・・・・・それらに向けられた怒りと増悪など───私にとってはどうでもいいこと」
そう言葉を始めたベアトリーチェを、他の者たちは冷たく眺める。アリウス自治区の持つ怒りと憎しみがベアトリーチェにとってどうでもよいことのように、他の者たちからすれば、ベアトリーチェの計画はどうでもよいことである、といった風だ。
「【増悪】は子どもたちを統制するための手段に過ぎず、【エデン条約】は守護者の力を得るための方法に過ぎず、【スクワッド】は使い捨ての道具でしかない。聖園ミカが先生をトリニティに連れてこなかったら、私もあの者の事など歯牙にもかけなかったでしょう」
聖園ミカの名前が出る。アリウス自治区とつながりを持ち、エデン条約を失敗させようと動いていた彼女がベアトリーチェと何か関わっていてもおかしくないだろう。たとえそれが、ベアトリーチェ側からの一方的な観測だとしても、随分と色々協力してしまったのだろう。
「アレが介入すると、私の持っているすべての意味が変わってしまいます。あの者は危険です。私の計画を果たすためには、真っ先に【先生】を消さなければならない」
ベアトリーチェの数多の目には憎悪が浮かんでいる。それはアリウス自治区の生徒がゲヘナやトリニティに対して抱いているのと同じ増悪。しかし、それを指摘する者は居ない。ただ、ゴルコンダが小さく【アンタゴニスト】であると呟くのみだった。
「私の決定が気に入らないようですが───どうせ私たちは各々の目的を追求するだけの存在。あなた方に私を妨害する権利はないでしょう」
一種挑発にすら聞こえる言葉───これまでの言動を見るに、彼女に挑発の意識はないのかもしれないが──彼女の言葉は真実のようで、黒服が彼女の言葉を肯定する。
「・・・・・・ええ、そのような権利はありません。思うままになさってください、ベアトリーチェ」
黒服の言葉に、ゴルコンダとマエストロは何も言わない。
「あなたの計画というものが何なのか、私たちに具体的に教えてくれたことはありませんでした。しかしマダム、あなたがアリウス自治区で進めている計画は……きっと、先生に邪魔されますよ」
黒服の言葉にベアトリーチェは不思議そうな目を向ける。まるで予言でも授けるかのように喋る黒服が珍しかったのか。それとも計画を見透かされていたのが意外だったのか。少しの動揺を声から洩らしながらベアトリーチェは喋る。
「ええ、そうです・・・・・・既に手は打ってあります。【アリウス自治区の生徒】が先生を処理してくれることでしょう」
「なるほど、自治区の生徒ですか……スクワッドはいかがなされたので?」
ククッと笑い、皮肉交じりの言葉を投げかける黒服。またもや見透かされたという動揺が見え隠れするベアトリーチェは、苦々しく感じていることを隠そうともせず言葉を続ける。
「どうやら上手く雲隠れしたようです───廃棄しようとしていた消耗品ですから、問題はありません。先生を殺せば許す機会を与えると、彼女たちにとって断ることのできない提案をしてあげようと思ったのですが、存外薄情だったようで……」
アリウススクワッドが居なくなったという情報を述べるベアトリーチェ。少々早口で回る舌は焦りの裏返しだろうか。
取り繕いのように扇子で再び口元を隠した彼女は、部屋中を一度に睨んだ。
「・・・・・・どうやら、見知らぬ方がいらっしゃるようですね」
ギロリと睨め付ける瞳の鋭さは、思わず息を呑んでしまうほどの威圧感がある。
「・・・・・・あぁ、失念していました。客人として招いたのですが───」
黒服が詫びの言葉を口にする。彼は緩んだネクタイを締め直す仕草で、少しの恥ずかしさを誤魔化した。
コツコツコツとハイヒールでコンクリートの上を進む音。その音は軽く、体重の軽い女性であると推測ができる。
「───こんにちは」
柔らかい声だった。声の通りは良く、落ち着きのあるしっとりとした声質。だが、同時に他者を居竦ませるような声でもあった。
「妾の名は、アルカナ」
ゲマトリアの会合に現れた新しい存在。
体に巻き付かせたかのような黒いドレス。右側の足の付け根は骨盤と鼠径部ギリギリを攻める過激な露出で、左側も随分鋭いスリットが入っている。豊満な胸も谷間を強調したデザインになっており、男性ならば目を引くところが数多あるといえるだろう。だが、それでも淫らといった印象ではなく、ミステリアスさを与えるのは、彼女が恐怖を備えているからだろう。
また、万年筆のペン先から零れたインクのような紺青の長い髪の毛と黒いドレスは、ベアトリーチェと対極の存在のようにも感じられた。
そのアルカナと名乗った女性は他のゲマトリアと違い、確かに人の形をしていると言える───だが、彼女もまた異形だった。ある一点、最も目立つ部分に人ならざる要素がある。
それは、頭に刺さったアクセサリーとそこから垂れるコールタールのような黒い粘液。ボタボタと垂れるそれは、彼女のドレスの上に落ちると、そのままドレスの中に溶け込んでしまう。
「新しい出会いというものは、実に喜ばしいことよ・・・・・・妾はそう思っているわ」
ニコリと微笑んだアルカナ。しかし、細まった目の奥は登場時と変わらない。仮面の表情を付け替えたかのような形式的な笑顔だ。
「・・・・・・勧誘、ですか」
ベアトリーチェはアルカナを上から下まで品定めしながら呟いた。だが、問う言葉自体はアルカナではなく、紹介した黒服の方へ向かっている。その問いに黒服は頷いた。
「えぇ、彼女もまた求道者。同じように探究を行う者同士、誘ってもよろしいでしょう?」
「私は、構わない」
「私も、断る理由はありません」
「そういうこった!」
ベアトリーチェは反対だと主張しようとしたのだろう。それを言い出す前に、他の参加者は賛成を投じ、反対を主張する機会を失する。
マエストロとゴルコンダ、デカルコマニーの即答具合に、ベアトリーチェは黒服が既に根回しを済ませていたのだろうということに気づく。彼女はその行動を敵対的だととらえたらしく、頭の目が吊り上がった。扇が隠し忘れた口元はギリリッと噛み締めた白い歯が覗き、擦れ合う音が耳に届くのではと思うほどゆっくり力強く動いた。
「……少々話しすぎたようです。私はこれで帰るとします」
パサリと口元を隠した扇。誰も引き留めることはせず、忌々し気に踵を返した彼女の背中を見送った。
ここまで観測していると、この瞬間も【ベアトリーチェの孤立】を描き出す演出のようだと思えてくる。いや、そうなのだろう。少なくとも黒服は作為的にふるまっていたようなところがあった。
「───ところで、先ほどから聞き耳を立てているそなたは、どこから紛れ込んできたのかしら」
ゾッと背中を駆け抜ける悪寒。頭の天辺から尻尾の先まで毛が逆立ち、得も言われぬ恐ろしさがこみ上げる。先ほども感じた、他者を居竦ませる威圧感が十倍、二十倍となって押し寄せた。
アルカナの瞳がまっすぐこちらを射止める。薄い亜麻色の瞳は瞳孔が小さく、彼女のうすら漂う狂気の片鱗を感じさせた。
「そう身構えないで、幼き子よ」
「ミス・アルカナ、いったいどうされたのです?」
虚空に向かって話しかけるアルカナに困惑するゴルコンダとデカルコマニー。黒服とマエストロは納得したように、アルカナの視線を辿り、そこに何かがいるのを認識する。
ニコニコと笑みを吊り上げ、一歩二歩と歩を進めるアルカナ。逃げるという選択肢は選べない。足が縫い留められたように動かず、視線を逸らすことも難しい。ヒールと床に垂れた黒い粘液の音が耳に響き、その音が近づく度に、鼓動が少しずつ早まる。
「妾はそなたを脅かすつもりはないの」
優しくも恐ろしい、夜闇のようにしっとりとした声が耳から脳に入り込む。確かな心地よさを感じながらも、一方で縫い付けられたままの体は、警鐘を掻き鳴らす。
すぐそばまで寄ったアルカナは両の手で、私の頬を包んだ。
「可愛い、可愛いネズミ───いえ、キツネかしら」
触れられた肌に暖かさを感じる。けれど、同時に汚染めいた邪悪さも感じる。
最大限吊り上がった口角は恐ろしさを助長し、一切笑うことのない目が行動を縛った。
「ここに? ここには我々以外誰も・・・・・・」
ゴルコンダの言葉に一瞬アルカナが気を取られた隙をついて、手を振り払った。
「・・・・・・はぁ、はぁ」
荒い息を整えようとするも、焦りが不自然な呼吸を引き起こし、より乱れた呼吸となる。
ゼェゼェと喉にへばりつくような咳が絡まり、整えるはずの呼吸はいつまで経っても治ろうとしない。
次第に体の節々が強張り始め、起こしていた上体がふらついてベッドに再び倒れこんだ。
マットレスに沈んだ体は咳込みの苦しみでくの字に曲がり、どんどんと小さくなっていく。
「───はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
口の中に鉄の味がうっすらと広がり、口の端から涎が垂れる。
体が言う事を聞かない。寒気はアルカナに迫られた時からずっと続いている。それは、先ほどの光景が現実と陸続きであると訴えかけているようにも思え、また呼吸が乱れる。
「ヒュッ───ゴホッ…う、うぅっ・・・・・・!」
思わず抑えた口元。口の中は鉄の味から酸っぱい味に変化する。ざらりとした舌ざわりに呼び起され、抑えきれずに吹き出す。袖は汚れ、饐えた匂いが鼻についた。
「ゲホ、ゲホゲホ・・・・・・!」
口の中に残ったものを吐き出し、わずかな力を振り絞って体を動かす。
幽かな思考で、先ほどの出来事を組み立てる。アリウス自治区は既にゲマトリアの手に落ちていた。故に自治区は見つからず、締結式の襲撃時に使われた正体不明の技術もそこから来ていた。主犯はベアトリーチェ。彼女は先生を狙っている。アリウススクワッドが居なくなったということは気にかかるが、ある意味幸運、先生を狙う戦力の減少は───
「ッ!? ゲホ、ゲホッ・・・・・・!」
誰か来てくれないのか。いや、そういえば誰か来客の予定が……。
遠のく意識、チカチカと明滅し霞む視界の中、部屋の扉が開いた。
「えっと・・・・・・その、こんにちは。セイアちゃん・・・・・・」
隙間から顔を覗かせる友人。桃色の長い髪が重力に引かれ垂れるのを耳にかけ直し、ベッドの私を見る。
私の現状に気づいたのか、血色の良かった顔からサァーッと青く白んだ顔になった。大声で私の名を叫びながら、駆け寄ってくれる。
「ミカ・・・・・・」
「セイアちゃん、大丈夫だからね! 今、病院に───」
私を抱き上げたミカ。見上げる友の顔は大変に慌てているが、そこまで必死になってくれることが嬉しい。君は私を襲わせたのに───本当のところどう思っているか、それが目の前で詳らかになる。
「ミカ、先生がアリウスに・・・・・・」
日が落ちたかのように、目の前は真っ暗になった。だが、伝えるべきことは伝えることができただろう。
「へ?」
カクンと力が抜けた体。相変わらず軽いセイアちゃんを掻き抱き、まだ息があることを確かめる。
「ねぇ! 早くッ!」
扉の向こうにいるはずの正義実現委員会に叫びながら、頭の中では別のことを考える。
先生がアリウスに? 何故? 鈍る頭で考えるには、この問いは重過ぎるし、情報も足らない。だが、さらに聞き出すこともできないのだ。
時間はない。
決断は、今しなくてはならない。
先生を助けに行かなくてはならない。
当小説内では、
黒服 CV.諏訪部順一
マエストロ CV.黒田崇矢
ゴルコンダ CV.寺村拓也
というような感じで扱います。
……つまりそういうことです、わかるね?