『本日からしばらくは雨〜...傘を忘れないように〜...』
何処からかニュースの音が聞こえる。
「おっはよ〜。」
「おはよう。」
「今日、確かテストあったよね?」
「うぇ!?マジで!?勉強してないよ〜。」
「はい...はい...すいません。交通機関が爆破で停止してしまい...。はい、ありがとうございます。後日、必ず書類を渡しに伺います。」
そんな日常のひと時。
共に、しとしとと降り注ぐ雨の音が響く。
予報通りに。
何処にでも。
人があまり寄り付かない裏路地であっても。
───
「もう...朝、なの?」
ある少女(戒野ミサキ)はそう呟き、体を起こす。
もはや雑巾のようにも見えるボロボロの外套に身を包んだまま。
かろうじて破けていない。
『耐えている』
そんな言葉が似合う茶色のコートを着て。
「はぁ...。」
「別に何でも良いけどさ。」
「肉体が虚しい殻に過ぎないとしても、せめて朽ちるまでは雨が凌げる所で夜を過ごしたいな。」
彼女はそうぼやきながら姿勢を正す。
隣に落ちていた穴だらけになった傘を手に取りながら。
立ち上がったことで、その外見の異質さがより明らかになる。
『背中から傘が生えている』
そうとしか形容が出来ない。
通常ではあり得ない。
いや。本来はあるはずのモノが出現出来るようになったから、出てきたのだろうか。
理由は何にしろ、古ぼけたコートの様なモノに、手持ちの部分が刺さった傘を身に纏っている。
苔むしているかの様な薄い緑色をした穴の空いたボロボロな傘だ。
そんな奇妙な外見をした彼女はブラックマーケットへと繰り出した。
「全ては虚しいとしても...せめて。」
「日銭は稼がないとね。」
「じゃないと、生きれない。」
今日もまた、仕事を探しにとある企業の「隠れた求人」の応募が出来る場所へ向かう。
見るからに崩れかけの建物ドアを開け、中を覗く。
内装は外見と違い、しっかりとした場所だ。
そう言うコンセプトのカフェと言えば信じてしまう人が居るかもしれないと言うほどに。
そこには、いつもテキパキと愛想良く対応している店主が居た。仕事を探す少しの人と話しながら。
「ええ〜と。ちょっと待ってな。」
「コイツに出来そうなのはこれとこれと...」
「良し。これか、これ。好きな方を選べ。」
「ええっ!これだけなんですか!?」
「そうだよ。他には特に無いね。」
ぶつくさと文句を言いながら、目の前のいかにも頼りなさそうな生徒は依頼を選ぶ。
店主はそんな生徒の依頼を受理し、次の待ち人を呼ぶ。
「はーい。いらっしゃい。仕事を探しに来たんだろ?じゃあ...」
「待て、君、あの有名な『傘とコートの傭兵』か?ならちょうど良い仕事がある。」
「受けてくれるね?」
───
目標や依頼内容を聞き、私は目的地へ向かう。
今いた仕事場からそう離れていないちょっとした廃墟だ。
雨のおかげか、スムーズに目標の集団を捕捉できた。
彼らが何をしたのか。はたまたされたのか。
もしくは両方か。
何の因果かは分からないが...今、私がする事は不運な人々を沈黙させる。それだけだ。それが、仕事だから。
影から愛銃であるロケットランチャーを構え、撃つ。
...空中で弾が散り、辺りに落ちる。
特殊な弾丸を使用しているので着弾した所はしばらく燃え続ける。
そうやって、少しづつ相手を追い詰める。近づいて来た敵には傘で応対しながら。
いかにも壊れかけなボロい傘だけど、何故かなかなか壊れない。しかも、意外と頑丈だ。
そうやって敵を完全に一箇所に固める。
固まって瞬間、私は姿勢を低くし、走り出す。手にはボロ傘を携えながら。
そのまま、敵の前に躍り出る。
彼らの間に傘をおもむろに突き出し...開く。
『"拡がれ!"』
自身の頭の上に。本来の傘の用途として。
自分は濡れないように傘に身を隠し、相手は濡れるように傘の上に乗せて。
そんなめちゃくちゃをやっても不思議と重さは感じない。この傘と外套のお陰だろうか。
そんな事を考えながら、対象の沈黙を確認する。
今回の仕事は上手く行ったようだ。
...いつからだったかな。1人になったのは。
もう、いつからなのかは分からない。
濡れた紙が破けるように、みんなが居なくなったのは。
捨てられちまった傘みたいに浮かんでいた私を受け入れてくれたけど…。
やっぱり私には過ぎた縁だったのかな。
一仕事終わると、結局私って一人なんだなって事実が心に染み入ってくる。
帰りながらそんな事を考える。
...思考に耽っていて気づかなかったが、もう、帰って来てたようだ。
少し億劫だが、だからと言って報酬を貰わないといけないのでドアを開ける。
今度は店主1人しか居なかった。
───
「よーっし。報酬だよ。お疲れさん。」
手渡された給料袋を受け取る。
「君、強いね。今後も、仕事頼めるかな?」
ただ、頷く。
「ありがとな!」
「気をつけて帰れよ。」
「今後ともご贔屓に〜。」
そう、店主が私に言葉を投げかける中、店を出た。
彼に余計な返答をする必要もないだろう。そう考えながら。
そこからは、あまり覚えていない。
何が起きたか、はたまた何も起こらなかったのか。それはきっと、必要じゃないだろう。
この瞬間。たった今、重要なことは、私が今朝、離れた
それだけだ。
雨は好きだが、だからと言って雨に打たれ続けるのは好きではない。
何だか怒りや悲しみ、そして虚しさがとめどなく溢れてくる。
行く当ても無いので一人座って居ると手に柔らかいものが触れた。
何が触れたのか気になり顔を上げる。
どうやら狐みたいだ。
「ほら、あっち行った。」
「余計な関心は持たないで。」
「私にもう...知り合いなんて、居ないから。」
そう呼びかけてみても居なくならない。
こんな誰も来ない路地裏に来たって事は...
そう考えると...少し、親近感が湧く。
「もう...これ以上、雨に濡れないように。」
「そう言われて傘を刺された事は、何度もある。」
「でも...私を撫でたり、寄り添ってくれる人は、ただ1人として居なかった。」
「皮肉だね。あれ程嫌っていた大人の武器で救われたと思えば、また、大人の手によって酷い目に合ってる。」
「...はぁ。」
「何処まで行こうと、逃れられないのかな。私は。」
誰に向けてでもない問いかけが霧散する。
さっきの狐はもう居ない。返答は雨音だけだ。
ついった始めました(唐突な報告)
小説情報の所に載せてます。
ある意味記念みたいなもの...魔王ソロの。
楽しかった。
きつねヒス、とても強い。
it's potential man.
このミサキはアリウススクワッド(家族)が居なくなった時の感情が今も続いていると思っていますが(唐突な転換)、もうそんな感情はない。人だからね。年月が過ぎれば多少は忘れ去るさ。
今彼女を支配してるのはその時の思い出とそれに結び付けられたego由来の感情のみ。
店主は余計な関心を投げかけてくる人にミサキの目からは写っている。(事実はともかく)
「傘とコートの傭兵」
二つ名
ヘンテコな格好だけど実力は確かだと噂されてる...らしい。
裏で思ってた事はこんくらいですかね...ほんへに書けよ