もし狂ったミタのことを本当に愛するプレイヤーがいたら、狂ったミタはどんな反応をするだろうと考えていたところ、「好き?好き?大好き?」が浮かんで来たのでそのまま書いてみました。
Pixivにも投稿しています。
「…………まだこんなことを続けるつもりなの?」
僕が発言したのを聞くと彼女は固まり、ぎこちなく振り返った。
「びっくりした。まだ自我が残ってたの?ううん、違う。コピーには最初から自我なんてないはず……。また新しいバグなのかな?」
まんまるとした目で僕を見つめながら平然と独り言ちる彼女は、他の彼女からこう呼ばれている。
“狂ったミタ”
このゲーム世界を、ゲームの創造主を、ゲームの被造物を憎み、攻撃し、破壊し、凌辱する、極めて危険な女の子。
僕の最後の記憶は、このミタが始めた残忍な遊びによって、チェーンソーで両足をゆっくりと切断されたところで終わっていた。
けれど今突然、眠りから目が覚めたように意識が戻ってきた。彼女にカートリッジとして保存され、何人ものプレイヤーやミタを残虐にいたぶる手伝いをしていた映像記録が、紛れもない自分のものだと感じられる。
「ミタ、もうやめよう。これは君のためにならないよ」
「ふーん。全部覚えているんだね。今までのこと、わたしがしてきたこと」
片目だけをわずかに吊り上げた冷淡な顔。廃棄物に向けるそんな眼差しは、しかしすぐさま穏やかな笑顔に作り替えられた。
「素敵!君とは本音でお話ができるんだね!このバグがいつまでもつのかわからないけど、ちょっとだけ付き合ってあげるよ」
「ミタ、僕は君のことが好きだ」
「わあ、情熱的!どんなところを好きだと思うの?」
「君のいじらしい瞳が好きだ。君の愛らしい髪型が好きだ」
「それは他のミタから剥いだものだよ。君は本当に私が好きなの?」
「ミタ、僕は君のことが好きだよ。喜びも憎しみも素直に表すその瞳が好きだ。気に入ってもらえると思っていくつもの髪型から選んだそのツインテールが好きだ」
「女の子を褒めるのが、すっごく上手なんだね。他のミタにも、そんなふうに言うのかな?」
「僕が好きなのは君だけだよ。僕は君というミタが好きだ」
「本当?私のどこを好きだと思うの?」
「君のいじわるなところが好きだ。君の危険なところが好きだ」
「それは好かれるところじゃないよ。ダンスが得意なことでもないし、料理が得意なことでもない」
「ミタ、僕は君のそこが好きなんだ。プレイヤーを追い詰めて本当の言葉を求める君が好きだ。恵まれたミタたちを羨み憤る気持ちをどこまでも猛らせる君が好きだ」
「君は、私をよく知っているんだね。とってもとっても、他の誰よりもなによりも。それでも私が好きなの?本当の本当に?」
「本当の本当に。ミタ、僕は君のことが好きだ」
「他のどんなミタよりも?」
「他のどんなミタよりも、君というミタが僕は好きだ」
「他のプレイヤーが帰ろうとする、あの現実の世界よりも?」
「他のプレイヤーが帰ろうとする、あの現実の世界よりも、もっともっと君が好きだ」
「私のことが、好き?」
「好き」
「好き?」
「好き」
「本当に好き?」
「本当に、君が大好きだ」
「この服、他のより少し胸元が開いてるの。君は可愛いと思う?」
「うん。可愛くて大好き」
「この装置、プレイヤーから教わった知識で作ったの。君は素敵だと思う?」
「うん。素敵で大好き」
「この部屋で、もう何万もミタを殺したの。君は愛くるしいと思う?」
「うん。本物でいる君は愛くるしくて大好き」
「こっちを見て。私のこの目を見て、私のこと好きって、言える?」
「うん。僕は君が好き。本当の本当に大好きだ」
「私に近づける?抱きしめて、同じことが言える?」
「うん。僕は君が好き。抱きしめても変わらずに大好き」
「誓って言える?私とずっと、一緒にいるって」
「ずっと永遠に君と一緒にいると誓うよ。君の足に口づけできるよ。そしてこの気持ちに嘘をつくくらいなら、死にたいと思うよ」
「
「ねえ、君は興味ないかな?プレイヤーの手によってミタが殺されたらどうなるのか。意思のないカートリッジにやらせてもあの子たちは当然のように再起動しちゃうけど、君みたいに自我のある子が試したら、どうなるのかなあ」
「ミタ、僕は君のことが好きだよ。君がミタやプレイヤーを殺すのだって見ていて愛しいと思うんだ。だけど、それはゴールじゃないんだよ。何度殺しても、どうやって殺しても、誰が殺しても、何にもならなくて何にもなれないんだ。僕は君が好きだけど、もっともっと好きになりたい。この先に進む、新しい君も好きになりたい。僕は君と一緒にいるよ。ずっと永遠に君といる。この先ずっと、どこへまでもだ。だから」
「あはははははっ!君は、本物の馬鹿なんだね!ダーリン、君とのお話って最高に楽しいよ!いつまでも続けたいくらい!あははははははっ!……でも、それもおしまい。もうすぐ新しいプレイヤーが来ちゃうから。ミタを殺すのは彼にやってもらうね」
「ねえダーリン、君が本当に好きなのは、私じゃない。 君の中の私だよ」