トリンさんの話を聞いた数日後、私は卒業した音楽大学に足を運んでいた。
かつて、母も卒業した大学でもありプロになった母もよくお世話になっていた。
清香「上野先生いるかな?」
上野と呼ばれる先生は私が大学時代にお世話になった先生であり有名フルート奏者でもあった。現在は引退して音楽大学の教師をしている。
清香「失礼致します。卒業生の雨宮清香です上野先生はいらっしゃいますでしょうか?」
職員室を探すが先生は見つからない。今日はお休みなのだろうか?今日は出直すとしようかと思ったところ…
上野先生「清香ちゃん!?久しぶりね!!」
清香「先生!!お久しぶりです!!」
反対側の入り口から先生が職員室に入ってきた。よかった、ちょうどタイミングが良かったようだ。
上野先生「聞いたわよ、今度ソロリサイタルが決まったんだって?練習はどう?」
清香「練習は順調なのですが…」
上野先生「本番前にまだ悩みがあるって顔をしてるわよ?よかったら話聞くわよ?」
やっぱり先生には何もかもお見通しだったみたい。先生と私は職員室から移動し、空き教室で話をする事になった。
上野先生「それで一体どうしたの?」
清香「先生はどうしてプロの音楽家になったんですか?」
私が先生に聞きたかったのは音楽の道に入ったきっかけ。どういう理由でプロのフルート奏者になりたかったのか、どうしても聞きたかった。
上野先生「そぅねぇ…じゃあ逆に質問するけど清香ちゃんはどうして世界に音楽があるんだと思う?」
清香「それは…心の癒しのため…ストレス解消のため…でしょうか?」
上野先生「うんうん。それもあるけど、私が思うに音楽があるのはこの世界が音楽の世界だからだと思うの」
清香「音楽の世界ですか?」
上野先生「音楽は常に私達の生活のすぐ隣にあって、私達は日常的に音楽に触れ、その様々な音楽で私達の心を癒してくれているからなの。」
上野先生の話すのを聞いて私はなるほどと呟く。確かに言われてみれば私達の身の回りには常に音楽が隣り合わせな気がする。当たり前だから意識した事無かったみたい。
上野先生「音楽には、人間の感情を揺さぶり、リズムやメロディ、ハーモニーなどの音楽の要素が、脳の活動を活性化させ、私たちの心を動かす力があるのよ。」
確かに言われてみれば音楽は確かに人々にかなり元気をくれる存在だと思い知らされる。トバスピノが音楽に反応したと言う事は、トパスピノは心の安らぎを強く求めていたのかも知れない。
上野先生「それで私がプロの奏者になったのは世界中のみんなが私の演奏が少しでもみんなの心の拠り所にあってほしいからって思ったからなの。」
清香「心の拠り所…ですか」
上野先生「音楽は生きる力を与えてくれる物であり、音楽がフルートが人生を豊かにして大切な物を深く繋げる物だと私は思っているわ。」
清香「大切な物との繋がり…」
それを聞いて私はトパスピノとの繋がりを思い出した。私のフルートの演奏が気に入ってくれた事。私はきっと母の意思を継ぐ事に必死で本当の意味で音楽と正面から向き合えて無かったのかもしれない。
清香「なんかすっきりした気がします。まだなんとなくですが、私のやるべき事がわかったき気がします。」
上野先生「それでいいのよ!!まずは音楽そのものを楽しみなさい、そうすれば自然と自分の望む演奏ができると思うから。」
先生の言葉は私の心のモヤモヤをあっさり消し去っていった。
次回 ソロリサイタル