お久しぶりです。篠崎です。
前書きを書いてて思ったんですけど・・・これいるか?
なんか普通に本編だけ書いたほうがいい気がする・・・実際のところみなさんは本編だけと前書きいるのどっちがいいです?
なんか露骨な感想稼ぎみたいになってますが、そんな必要は全くないのでぜひ下書きのアンケートに投票を!(いや、それ露骨なアンケート稼ぎィ‼)
以下本編です。
日が落ち、少し視界が悪くなった中、数100mをわずか数秒で駆け、巨人たちの群れと対峙する姫華楓。
巨人の数は全部で23。先ほどの個体よりも明らかに大きく、20m前後はあるだろう。それぞれが巨大な斧や槍、盾などを持っており、今にも襲い掛かってきそうな雰囲気を出している。
その様子を空から眺めながら、姫華楓は警告の意味を込めて、巨人たちに言葉を放つ。
「さて、俺は無駄な争いは好まない質でな。ここから去るのなら、追わないと約束しよう。しかし向かってくるのなら、相応の報いは覚悟し―――」
言い終わるよりも早く、痺れを切らした巨人の一匹が、足元の石ころを投石してくる。
石ころと言っても、その大きさはハンドボールくらいあり、当たったら大怪我は免れないだろう。それどころか、あたりどころが悪い場合、即死もあり得る。
姫華楓は警告したにもかかわらず、攻撃をしてきた巨人たちを見て、もはや対話は不可能と判断し、戦闘態勢に入る。
左右の翼を大きく広げ、自身が戦闘を行うという意志を巨人たちに見せつける。
巨人たちは姫華楓の行動に警戒心を高め、陣形を組み始める。
盾を持った巨人たちが前に出て、斧を持つ巨人がその後ろにつく。さらにその後ろに槍持が控え、指揮官と思われる鞘に納められた剣を持った巨人が槍持に挟まれる形で陣を組む。
あきらかに知性がある行動に姫華楓は少し驚くも、正面から突破することを決める。
一瞬の沈黙の後、姫華楓は巨人の群れめがけ一直線に突っ込んでいく。
姫華楓の行動に指揮官と思われる個体は少し動揺を見せるが、すぐに頭を切り替え、部下に指示を出す。その言葉は日本語とも英語とも思えない謎の言語であり、何の指示を出したのかを読み取ることは不可能だった。
姫華楓は巨人の正面まで到達すると、そのスピードのまま盾の上から思いっきり殴りつける。
凄まじい轟音と衝撃があたりにほとばしり、姫華楓の攻撃を受け止めようとした巨人の足元に大きな亀裂が入る。他の盾持達も、あまりの衝撃に巨体を揺らすが、地に膝をついたりするようなことはなく、姫華楓を囲もうとする。
囲まれる前に距離を離そうと、姫華楓は両の翼を広げるが、巨人たちが口から放った極低温のブレスを受け、翼が凍ってしまう。
空を飛ぶことが出来なくなった姫華楓は、地面をけって距離を離そうとするが、先ほどのブレスで地面が凍り、滑って膝をついてしまう。
それを好機と見た斧持の巨人たちが、盾持の前に出てきて姫華楓めがけて斧を振り下ろす。
姫華楓は地面に手をついたまま発勁を放ち、地面を軽く揺らす。
その揺れと凍った地面によって、巨人たちの狙いが少しずれ、姫華楓の真横に斧が叩きつけられる。
真横に突き刺さった斧を確認した姫華楓は右手で斧を掴むと、右手を軸にして斧の上に着地する。
巨人は姫華楓を斧の上から振り落とすため、斧を持ち上げようとするが、姫華楓は斧が持ち上がる前に巨人の顎に強力な蹴りを叩き込む。
姫華楓の蹴りをまともに食らった巨人は、脳震盪を起こし背中から地面に倒れる。
姫華楓は倒れた巨人を足場の代わりにし、先ほどまで自身が乗っていた斧を手に取る。
その斧の大きさは姫華楓の身長をはるかに超えており、あきらかに扱えないと誰もが思うだろうが、姫華楓は3mほどの斧を片手で持ち上げると、軽々と振り回して見せる。
「よし、チイとばかしデカいが、十分扱えるな」
もはや化け物に片足どころか腰あたりまでどっぷり浸り始めた姫華楓。いや、元々か。
姫華楓を仲間の背から降ろそうと、斧を持った一体の巨人が薙ぎ払うように斧を振るうが、姫華楓は自身に当たる直前に蹴り上げることで、攻撃をやり過ごす。
姫華楓の凄まじい脚力によって、斧は跳ねるような軌道を描き、巨人は大きく体制を崩す。
体制が崩れ、弱点である喉元をさらしている巨人を見た姫華楓は、高速で斧を振るい、巨人の喉を掻っ切る。
血を吹き出しながら倒れる仲間を見た巨人の一体が、激昂しながら斧を振り下ろすが、姫華楓はその攻撃を横に移動することで交わす。
振り下ろされた斧は、姫華楓の足場になっていた巨人に叩き付けられ、何かが砕ける音が周囲に響く。
「あーあ、まだ生きてたのに仲間にとどめを刺すとか。馬鹿が」
叩きつけられたところから血が噴き出し、巨人の背中を真っ赤に染める。
姫華楓は足元が血でぬかるんだことで動きがとりずらくなり内心焦っているが、その様子を一切表に出さず、巨人の一匹を挑発する。
仲間を自身の手で殺してしまった巨人は、自責の念に駆られ呆然とした表情を浮かべるが、指揮官と思われる剣持の個体が剣を地面に突き刺す音を聞くと、一瞬で表情を切り替え、姫華楓に素人でも感じ取れそうな殺意を向ける。
一瞬で内心を切り替えた巨人を見て、姫華楓は舌打ちをする。後ろで見守っている剣持の個体は、よほど優秀な指揮官だったらしい。その証拠に、巨人たちの目に恐怖はなく、指揮官と思われる剣持に全幅の信頼を寄せているように見える。
姫華楓は、凍った翼を一瞥した後、一番近くにいた盾持に斧をたたきつける。
盾持の巨人は、急に姫華楓が動き出したことに少し驚くも、難なく姫華楓の攻撃を受けきる。
斧を振り切った体制の姫華楓めがけ、三方向から槍の突き刺しが飛んでくる。
三体の槍持が、姫華楓が動くと同時に行動を開始したのだ。
見事なまでに連携が取れた行動に姫華楓は成す術もなく全身を貫かれる―――ことはなく、凍った翼を盾代わりにして、槍の攻撃を弾く。
攻撃が弾かれた槍持の三体は驚愕の表情を浮かべながら、体制を整えようとする。
しかし、体制が整う前に姫華楓が行動を開始する。
姫華楓は持っていた斧を高く真上に放り投げると、不安定な態勢になっている槍持の一体に飛び掛かる。
攻撃が届く直前、盾持の一体が割り込むことに成功し、姫華楓は逆方向に弾き飛ばされる。
空中で身動きが取れずにいる姫華楓めがけて、二体の巨人が手に持った巨斧を叩きつける。凄まじい衝撃が大地に走り、姫華楓は全身に襲い掛かる痛みに耐える。
体制を整えた三体の槍持が一斉に跳ね、止めと言わんばかりに全体重を乗せた攻撃を姫華楓に繰り出す。
身動きの取れない姫華楓は攻撃を翼で防ごうとするが、防ぐことが出来ずに左腕と右足、右脇腹を貫かれてしまう。
「ッ!ガハッ⁉」
喉元からせりあがる嘔吐感を耐えきれず、姫華楓は大量の血を吐き出す。
姫華楓を貫いた三体の巨人たちは槍を姫華楓に突き刺したまま、その場から離れる。
直後、五匹の斧持が姫華楓めがけて巨斧を振り下ろす。
視界を覆うほどの赤黒い雪があたりを覆いつくし、勝負は決したかに思われた。
血染めの雪煙の中から一本の槍が飛び出し、斧を振り下ろした体制のままでいた巨人の喉元に突き刺さる。
姫華楓は絶え間なく襲い掛かる痛みを無視しながら、巨人の喉に突き刺した槍を引き抜き、近くで呆然とする別の個体に投擲する。
投擲された槍は高速で巨人に迫り、目に突き刺さり、そのまま脳を貫通し絶命させる。
斧を避けるため無理やり抉った脇腹と、槍が突き刺さったままの左手と右足から大量の血が流れ、姫華楓は空中で血を吐き出す。
大量の血を流しながら空中で回転する姫華楓を見た剣持は、止めを刺すべく、巨剣を振りぬく。
迫りくる巨剣を見た姫華楓は、異常なまでに高い身体能力にものを言わせ、空中を蹴ることで攻撃をかわす。
躱せると思っていなかった巨人は降りぬいた姿勢のまま固まり、大きな隙をさらす。
無論、そのような隙を見逃すほど姫華楓は甘くない。
姫華楓は左腕に刺さった槍を右手で引き抜くと、未だ隙をさらしている巨人めがけて突き刺す。
巨人は姫華楓の行動に対応できず、喉を貫かれる―――直前、盾持がその攻撃を弾く。
攻撃を弾かれた姫華楓は、その勢いを利用しその場から離れることに成功する。
何とか巨人たちの包囲網から離れることに成功した姫華楓は、息を整えようと大きく息を吸い、血の塊を吐き出す。
最も傷が深い脇腹を抑えながら、姫華楓は思考を回す。
―――残りは一九。一体一体はそこまで強くないが、連携が上手い。特に厄介なのは盾持だな。アイツらの守りが固すぎる。それに、相手が瀕死であっても決して手を緩めないのも厄介だな。
必死に思考を回す姫華楓を見ながら、巨人たちは陣形を立て直す。
少し数が減ったのが原因か、その陣形にはいくつか隙間があり、先ほどより突破がしやすくなっている。
姫華楓はすでに血が止まっている左腕で、右足に刺さっている槍を引き抜くと、その槍を隙間めがけて投擲する。
盾持の一体が瞬時に位置をずらし、その槍を防ぎ―――上から降ってきた斧に頭を割られ、絶命する。
一体分の大きな穴が陣形に空き、それを埋めるために巨人が動き出す。その前に姫華楓は行動を開始する。
姫華楓は巨人たちに高速で接近すると、防がれて空中に浮いていた槍を右手で掴み、右側にいた盾持の側面から突き刺す。
盾持はとっさに左腕を盾にすることで致命傷を防ぐが、あまりの激痛に盾を落としてしまう。
慌てて盾を拾うとする巨人の左腕に刺さったままの槍を、姫華楓は思いっきり蹴りつけ、傷を深く抉る。
巨人はいっそう深く刺さった槍と、襲い掛かる激痛に盾を拾うことが出来ず、その場にうずくまってしまう。
姫華楓はその巨人のうなじあたりに立つと、思いっきり右足で踵落としを行い、首の骨を粉砕する。
絶命し、倒れる巨人から飛び降りた姫華楓は、振り下ろされた斧を左足ではじき返し、盾の上に着地する。
凍っていた翼が動くことを確認した姫華楓は、左足を盾の持ち手に引っ掛け、空に飛び上がる。
巨人たちは、飛び上がる姫華楓めがけて極低温ブレスを放つが、姫華楓は左足に引っ掛けていた盾を前に出すことで防ぐことに成功する。
姫華楓が攻撃範囲から離れたことを確認した巨人たちは、再び陣形を組みなおす。
しかしさっきと違い、かけた人数を考慮して組まれており、先ほどのような隙間は見つからない。
―――巨人の数は残り十七。盾持が三体。斧持が八体。槍持が二体。さっき俺を攻撃するのに槍を使った奴らが三体。指揮官の剣持が一体。対し、俺は右脇腹が抉られ、左腕と右足に穴が開いている。幸い、既に血は止まっているため、動き回ることに支障はない。だが、血を流しすぎた。活動できる時間はそう長くはないか。
既に血が止まっているとはいえ、流れてしまった血まではどうにもできず、意識が朦朧とした状態で、この場の打開策を考える姫華楓。
正直に言って、現在の姫華楓ではこの巨人たちを突破するのは難しいだろう。
―――最も、それは一人だけだった場合の話だが。
突如、盾持の頭に何かが命中し、巨人の頭を貫き絶命させる。
突然の出来事に居偉人たちは動揺を隠せず、その隙に姫華楓は攻撃を仕掛ける。
姫華楓は右足に引っ掛けていた盾を盾持に向かって蹴り飛ばすと、そのまま加速する。
盾持は蹴り飛ばされた盾を弾き飛ばそうとするが、盾と盾がぶつかった瞬間、姫華楓が蹴り飛ばした盾に追いつき、さらに強力な蹴りを叩き込む。
衝撃が一気に増幅され、耐えきれなかった盾持が大きく吹き飛ばされる。
姫華楓は翼を広げ、吹き飛ばした巨人に追いつくと、巨人の足を抱え、剣持に叩き付ける。
「オォォォラァァァァ‼」
戦闘が始まってから最も大きい衝撃が大地を駆け抜け、凄まじい衝撃音があたりに響き渡る。
大量の血しぶきと、砂埃が舞い、周囲をどす黒い黄色が満たす。
視界が当てにならない中、姫華楓は音で敵の位置を判断すると、抱えたままの敵の死体を判断した方向に投げる。
短く抜刀した音がかすかに聞こえ、剣持が鞘から剣を抜いたことを姫華楓は悟った。
直後、短く空を切る音が聞こえ、姫華楓はとっさに頭を低く下げた。
先ほどまで姫華楓の頭があった位置を正確に剣が通り抜ける。
どういう理屈かはわからないが、視界が全く機能しない中、剣持は姫華楓の位置を完璧に把握しているらしい。
その場にいたらまずいと判断した姫華楓は、さらに高く跳ぶ―――ことはせず、地面すれすれを飛んで巨人に迫る。
遠距離攻撃を持たない姫華楓は、動けるうちに敵を倒すべく、賭けに出たのだ。
音を頼りに巨人の一体に近づき、姫華楓は膝裏に強力な一撃を叩き込む。
突然の攻撃によって、巨人は成す術もなく地面に倒れ、倒れた巨人に姫華楓は飛び乗る。
姫華楓が倒れた巨人の手を見ると、そこには何もなかった。
どうやら先ほど姫華楓を攻撃した槍持の一体だったらしく、武器を強奪しようと考えていた姫華楓は舌打ちをし、八つ当たりとばかりに巨人の胸を全力で殴りつけ、絶命させる。
残り14。
そう判断した姫華楓は視界が晴れる前に次の行動に移る。
衝撃音によって姫華楓の大まかな位置を把握した巨人たちは、その方向めがけて武器を振るう―――ことはせず、霧から抜けるように距離をとる。
自滅狙いの作戦が機能せず、姫華楓はいら立ちを隠せず、舌打ちをしようとして、こみ上げてきた血を吐き出す。
直後、短く空を切る音が再び聞こえ、姫華楓はその場から飛び立つ。
すると霧の中から姿を現した剣持が、先ほどまで姫華楓のいた場所に剣を振るう。
さらに姫華楓が空に跳んだことを確認すると、剣持は全力で剣を振るい、周囲の霧を吹き飛ばす。
「おいおい、マジかよ」
剣の風圧だけで周囲の霧をすべて吹き飛ばした巨人を見て、姫華楓は苦笑を隠しきれなかった。
もう二体くらい持っていきたかった、と姫華楓が考えながら、霧の中から出てきた巨人を見る。
巨人の数は十体まで減っていた。
そして、先ほどまでなかったはずの小さな影が一つ。
「ッ⁉」
それが誰かを把握した瞬間、姫華楓はすぐさま彼女のもとに向かう。
巨人たちも急に表れた影に動揺しているらしく、攻撃をしてくる様子もない。・・・ただ一体を除いて。
鋭く振るわれた剣が、彼女に襲い掛かる。
距離を離していた姫華楓が間に合う訳もなく、その凶刃が彼女を切断する―――直前、彼女の刀によって防がれる。
だが、彼女はしょせん人間。力の差というものがあまりに大きく、大きく吹き飛ばされてしまう
姫華楓は急いで彼女の後を追い、地面に叩き付けられる前にキャッチすることに成功する。
彼女の無事を確認した姫華楓は安堵の息をつき、そんな姫華楓を見て彼女はくすくすと笑う。
「・・・なんで来た、いろは」
「もちろん、姫華楓殿を助けに」
彼女———いろははそう言って、姫華楓の手から降りる。
視界が悪い中、巨人をどう仕留めたのかが気になったが、姫華楓は首を振ってその疑問を頭から振り払い、巨人たちと向き合う。
いろはが倒したと思われる個体は盾持一体と、無手になった元槍持が二体、そして斧持ちが一体の合計四体だ。
倒した個体を確認した姫華楓は、いろはにこっそり耳打ちをする。
「いろは、あいつら相手にどこまでやれるかわかるか?」
「そうだね・・・。少なくとも二体同時は無理そうかな。一対一だったら何とか倒せるかもだけど、それも結構ギリギリって感じ。さっき倒せたのは、向こうが完全に風真の存在を知らなかったからできた不意打ちってとこかな」
いろはの言葉に考えを回す姫華楓。
一対一であればとのことだったが、その状況を相手が許してくれる訳もなく、十対二の構図が完成しようとしてる。
どうにかしなければ、と考え、姫華楓は一つの案を思いつく。
思いついた案を実現させるために必要な情報を集めようと、姫華楓はいろはに続けて尋ねる。
「なあ、いろは。もう一つ質問なんだが、あの短時間でどうやってあいつらを倒したんだ?」
「え?普通に足を切った後、倒れてきた巨人の首を切っただけだけど・・・。切っただけっていても、線をなぞっただけだからあんまり自慢にはならないけどね」
「線をなぞる・・・?その線ってのは巨人の体に浮かんで見えてるのか?」
「そうだけど・・・。ってもしかして姫華楓殿には見えてないでござるか?」
「線とやらは一切見えてねえな。なるほど、その線を目印に行動したから、視界が悪い中でも敵の位置がしっかり把握できたのか」
いろはがどうやって巨人を倒したのかを知った姫華楓は、作戦が実現できると確信する。
姫華楓がいろはに自分の考えを打ち明けると、いろはも姫華楓の作戦に乗っかることを了承した。
いろはが頷いたことを確認した姫華楓は、翼を大きく広げると、強力な風を引き起こす。
姫華楓が起こした風は、周囲の土や血を巻き込み、瞬く間に視界をふさぐ竜巻へと進化する。
竜巻が出来上がったことを確認したいろはは、足音を極限まで抑えながら竜巻に飛び込む。
視界が封じられた中、敵を感知する方法は二つに限られてくる。
一つは『音』や『気配』と言った物理的な感知方。姫華楓が行ったように、相手が出した足音などを頼りに、相手の大まかな位置を割り出す方法や、超音波などを使ったイルカや蝙蝠などが行う方法がこれに当てはまるだろう。
そしてもう一つは『超能力』と呼ばれる類の、非現実的な感知法。
いろはの場合はこれに当てはまるだろう。視界が悪い中でも、相手の体に浮いている線がはっきりと見えていたと言ことは、超能力の一種と考えることが出来るだろう。
先ほどの剣持を除く巨人たちは、姫華楓の位置を把握しきれていなかった。つまり、普通の巨人にはどちらの方法も取れないということがわかる。
であれば、姫華楓が視界を封じてしまえば、そこはいろはの独壇場となる。
姫華楓の予想通り、いろはは迷うことなく巨人の一匹に近づき、一瞬で仕留めることに成功する。
大きな地響きとともに何かが倒れた音を聞いた剣持の巨人は、仲間がやられたことを悟り、視界を晴らそうと剣を持ち上げる。
その行動を予想していた姫華楓は、剣持の個体を蹴り飛ばし、集団から引き離すことに成功する。
姫華楓の作戦はいたって単純だ。
視界を封じて巨人たちの群れを一掃する。その際、最も障害となる剣持を、姫華楓が群れから引き離し、一対一で戦い、倒す。
視界が効かず、群れのリーダーからの指示もなくなった巨人の集団は混乱を引き起こし、その状態で襲い掛かるいろはから身を守ることは不可能だろう。
いろはも油断せず、真っ白な風景の中に浮かぶ線を見据え、確実に一体一体倒していく。
いろはが剣を振るうたびに鮮血が飛び、地に倒れ伏す巨人の音が鳴り響く。
音が鳴りひびくこと、九回。
姫華楓が起こした竜巻が晴れた後には、血に染まった大地と、返り血で己を濡らすいろはだけが残っていた―――。
いろはが竜巻の中で巨人を切り続けている中、姫華楓と剣持は対峙する。
姫華楓は白と黒の翼を広げ、剣持はその巨剣をまっすぐ持ち構える。
背後で巨人の倒れる音が響いたその瞬間、剣持と姫華楓は激突する。
姫華楓は自身に向けて、まっすぐ降りぬかれた剣を、すべるように避け、巨人の顔に接近すると、そのまま拳を全力で振りぬく。
巨人は少しよろめくも、拳が当たる直前に顔を後ろにそらしたおかげで、あまりダメージはない。
そのことを予想していた姫華楓は、再び巨人の顔に接近し、そのままラッシュを打ち込む。
姫華楓の凄まじい猛攻を、巨人はしばらく受けていたが、突然大きく目を見開くと、そのまま顔を後ろにそらし、姫華楓めがけて頭突きを放つ。
頭突きを正面から食らった姫華楓は大きく吹き飛び、翼を広げて空中で制止する。
空中で制止した姫華楓めがけて、剣持が鋭い一撃を放つが、姫華楓はその攻撃を難なくよけ、そのまま反撃する。
下から迫る蹴りを、のけぞることで回避した剣持は、そのまま回し蹴りを姫華楓に叩き込む。姫華楓は剣持の蹴りに拳を合わせる音で迎撃し、そのまま懐に飛び込む。
しかし、剣持は姫華楓の行動を完全に予測しており、懐に飛び込んできた姫華楓めがけて剣を振り下ろした。
誘いこまれたことに気づかなかった姫華楓は、剣を避けることできず、直撃する———寸前、遠くから響く爆発音が剣持の手を緩ませた。
姫華楓はその一瞬の隙を突き、剣を避けきると、そのまま胸元に接近し、地面に穴をあけられるほどの威力を持つ発勁を放つ。
姫華楓の発勁を食らった剣持は、内臓が一瞬でズタボロになり、絶命する。
倒れ伏す剣持を見た姫華楓は、いろはの援護に向かうおうと、翼を広げ———既に戦闘が終了しているいろはを発見し、そばに降りたつ。
「いろは、無事か?」
「全然大丈夫でござるよ。風真より姫華楓殿のほうがよっぽど重症でござる」
実際、いろはにほとんど傷はないが、姫華楓はいたるところから出血していたせいで、全身血まみれの状態であった。
姫華楓は自身の状態をすばやく確認すると、いろはに答える。
「・・・いや。ほとんどの傷はもうふさがってるから大丈夫だ。どうやらこの身体は、回復力もすさまじいらしいな」
自身の血で汚れていたはずが、脇腹のかすり傷程度しかない姫華楓。
そのことを半分不思議に思ったが、特殊な体が原因だと納得せざる負えなかった。
「ならいいでござるが・・・。ともかくここを離れたほうがいいでござるな」
「賛成だ。しばらく戦闘は勘弁してほしいものだがな」
二人はそんな会話をしながら、素早く移動を始める。
いくつかの謎を残したまま―――。
「クッハハハハハ!ハハハハハ!ハハハ・・・ゲホッゲホッ!」
金色の髪をした青年は笑い転げ、遂にむせる。
そんな様子を片手に石を持ちながら冷めた目で見る青髪の少女。
つい先ほどまでいつもと変わらぬ胡散臭い笑顔を浮かべていた青年が、今は腹を抱えて笑っている。
きっかけと言えば森の中心から聞こえた爆発音くらいだが、少女には青年がそれで笑う理由がわからなかった。
青年はしばらく笑い続けた後、必死に息を整え、少女に言葉をかける。
「ハハハ!・・・はぁ。いや、すまない。つい堪え切れなかったもんで」
「あっそ。何がおかしいのか私には全然わからないけどね」
「だろうな。何せアイツがここにきてるとは思わなかったから、笑い転げてるんだし。とりあえず、契約変更だ」
青年の言葉に、苦いものでも噛んだような表情をする少女。
青年は少女に目もくれず続ける。
「アイツがいるなら全ての前提が崩れる。だから裏からサポートに徹するのはやめだ。今後は積極的に関わりに行くぞ」
「・・・へえ。アイツってゆうのはいろはちゃんと一緒にいた男の人のこと?」
「いや、さっき森の中心で派手に爆発を起こしたやつだよ」
「・・・ん?さっき一瞬だけ空に跳んでた人のこと?遠目でなんも見えなかったけど、あなたには見えたんだ」
「いや?髪色くらいしか見えなかったが?」
全く成り立っていない会話に混乱する少女。
そんな様子の少女を見た青年がわかりやすいように説明する。
「これは俺たちの感覚なんだけどな~。こんな場所であんな派手なことをする灰色頭のやつって言ったら俺には一人しか思いつかないんだよ。まあ、見た瞬間直感で理解したってやつだ」
「・・・それって人違いの可能性のほうが高くない?」
「いやない」
やけにはっきり断言する青年に少女は理解できないという表情をする。
これは青年の直感と経験が、青年に確信をもたせているため、少女が理解することは出来ないだろう。
これ以上は説明しても意味がないと判断した青年が少女に指示を出す。
「とりあえず、あの二人が向かっている先には反応が一つあるんだよな?」
「・・・そうだね。『旅人の製図』にはそう乗ってる」
少女はそう言うと、一つの紙を取り出す。
その髪にはこの世界の地形がすべて乗っており、さらにいくつかの青と赤の点が浮かんでいる。
青年と少女がいる箇所にも、それぞれ青と赤の点が存在しており、地図上のどこに人がいるのかを示しているように見える。
青年は少女の手元を覗き込むと、しばらく考え込み、少女に指示を出す。
「・・・よし。しばらくはサポートに徹しよう」
「さっきは関わりに行くって言ったくせに・・・。ちなみになんで?」
「まあいくつか理由はあるんだが・・・。一番は見極めるためにかな」
「見極めるって・・・何を?」
「それは企業秘密ってやつさ」
そう言うと青年はいつもの胡散臭い笑みを浮かべる。
少女は頭に疑問符を浮かべるも、青年に何を言っても語らないだろうと察し、別の疑問を投げかける。
「なら、知り合いに合流はしないの?早めに合流したほうが、お互い安心だと思うけど」
「問題ないね」
「なんで?」
自信満々に答える青年に、少女は少しイラつきながら理由を問う。
この極限状態と言っていい中、知り合いを微塵も心配売る様子がない青年に腹を立てたからだ。『アイツ』のことを語っているとき、青年の表情は少し穏やかになったところを見るに、かなり仲がいい相手のはずだ。それを微塵も心配しないとはどんな人でなしだと思って。
しかし、青年の答えは少女の予想をはるかに裏切ることになる。
「んなもん決まってる。アイツだからだよ」
「どうゆう意味?」
「アイツがこの程度でくたばるわけがない。いつだってそうだ。どんな理不尽も不条理もぜ~んぶ何とかして見せる。だからアイツが・・・『
信頼してるからこそ心配は不要である。
そう答え切る青年に少し羨望の感情が沸き上がるも、少女はそれを無視し、青年に問い続ける。
「・・・その『終』って人が、あなたが全幅の信頼を置く人の名前?」
「ああ。多分今は『利終』って名乗ってるんじゃないかな。俺みたいにさ」
「つまりあなたも偽名だと」
「そりゃそうだろ。あんたも偽名名乗ってるんだし。いや、偽名つうのはおかしな話か。お互いこのアバターの名前を名乗ってるって言った方が正しいもんな」
そう言ってけらけら笑う青年に、半分同意を返す少女。
少女の同意に気を良くしたのか、さらに笑いを深める青年。
この日、世界が大きく動いた音がした―――。
前書きや後書きは必要と思うか
-
いる
-
いらない
-
まあいるんじゃない
-
まあいらないんじゃない
-
作者が決めろや