これは語られるはずのない物語   作:篠崎勇気

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拠点の移動

白上フブキと合流した利終とミオは、当初目的としていた水海地帯には向かわず、山脈地帯にある小屋に戻ってきていた。

「ここがうち達の拠点だよ。と言ってもそろそろ移そうって話をしてたんだけどね」

ミオの言葉を聞いたフブキは、頭に?を浮かべながらミオに問いかける。

「これだけ立派な拠点があるんだから、移す必要ってあるの?」

そのフブキの質問に利終が答える。

「拠点のつくりとしては、今考えられる限りいいとは思う。けど、あまりにも場所が悪い」

利終の返答を聞いたフブキは、なおも疑問が残るようで、利終に再び問いかける。

「場所が悪いって?見晴らしもいいし、特に問題はないように思えるけど」

フブキの疑問に、利終は首を横に振りながら答える。

「その見晴らしがいいっていうのが問題なんだ。見晴らしがいいということは、この拠点は敵から発見される可能性が高いうえ、囲まれやすい。囲まれたら逃げることもできなくなって全滅ってこともありうる。それに、この付近って水もなければ食料もない。一応2時間くらい歩けば、池がある洞窟があるが毎回危険を冒して取りに行く必要がある。」

利終の説明にフブキは納得する。

「なるほど~。利終君って頭いいんだね」

フブキの言葉に利終はそっぽを向きながら答える。

「別に頭がいいってわけじゃない。というかこれくらい誰でも思いつくだろ」

利終がそういうと、フブキはにやけながら利終に近づく。

「ふ~ん。少々お耳が赤いですね~。ひょっとして照れてます~?」

利終の耳が少し赤くなっているのを見たフブキは利終をからかおうとするが、そこに意外な人物からストップがかかる。

「はいそこまで。利終君をからかうのはそこまでにして、そろそろ治療を始めないと」

ミオはそう言って二人の間に無理やり入ると、話を終わらせようとする。

そのミオの態度にフブキは少し驚くが、ミオの言うことは間違いないため、利終の治療を始める。

利終は空になっているバケツに能力を使って、エタノールを注ぐ。エタノールが注がれたバケツをミオが持ち利終の左腕にかけようとする。

「ものすごく痛いと思うけど、何もしないよりましだと思うから我慢してね?」

この3人に医療の専門知識はない。けがをしたら消毒して、絆創膏を貼る程度のものだ。腕が切り飛ばされたときの治療法などわかるわけもない。しかし、周囲に助けを求めることが出来ない以上、やらないよりはましということを信じて、利終を治療するしかない。3人が考えた結果、エタノールで消毒をした後、布を巻いて手当をするという考えに至った。

ミオが持っているバケツに入っているエタノールが利終のなくなった左腕に少しづつ、かけられていく。

激痛を覚悟していた利終だったが、エタノールがかかっても痛みがないことに気づき、疑問を浮かべる。

ミオ達も利終が声を上げないことに疑問を浮かべた。

「大丈夫?痛くないの?」

フブキが問いかけると、利終は首を縦に振りながら答える。

「痛くない。かけられている感覚はあるんだが、痛みは感じないな」

痛みとは体が発生させる危険信号だ。今の利終にはその危険信号がうまく働いていなかった。そのことに一同は疑問を浮かべるが、答えは出なかったため、治療に専念することにした。

ある程度、エタノールをかけ終わったミオは、バケツを地面に置くと、右腕の服の先を少し破り、エタノールに浸し消毒する。消毒された布を利終の左腕に巻き付け、止血と空気に触れないようにする。

「ありがとうなミオ」

利終は自身の治療をしてくれたミオに対し、礼を言う。

ミオは利終の顔を見た後、そっぽを向くと利終に対し答える。

「別にこれくらい大丈夫だよ。けど、今後はもう無茶しないでね?」

利終はミオの言葉に少し笑いながら答える。

「分かってる。どちらにしてもこの身体じゃ無理はできないけどな」

利終がそう答えると、ミオは至近距離まで顔を近づけ、念押しするように言う。

「例え体が五体満足だったとしても無理はしない!いいね?」

顔が近いことに少しドギマギしつつ利終は答える。

「分かった、分かりました。今後は軽率な行動と無茶なことはしないようにします」

しばらく、利終の目を厳しい目つきで見ていたミオだが、しばらくすると優しい目つきに変え、利終に言う。

「なら今回のことは許します。けど、次はないからね?」

そのミオの表情に利終は見とれ、目を離せなくなる。

そのまま、至近距離で見つめあう二人だったが、フブキの咳払いの音で現実に思考を戻し、急いで離れる。少々顔を赤くしつつ、二人はフブキのほうを向く。

二人をにやにやした顔で見ていたフブキは、からかう口調で二人に言う。

「お二人だけの世界に入るのはいいんですが、白上を忘れるのは困りますな~。イチャイチャするのは二人きりになってからすべきだと白上は思うのですよ」

フブキの言葉に二人は声をそろえて言う。

「「イチャイチャなんてしてない(よ)!!」」

二人のそろった声は小屋全体に響いた———。

 

 

 

フブキが先頭、その後に利終、ミオの順で3人は森を歩いていた。

あの後、フブキは二人をからかい続けたかったが、今後の方針を決めるなければならなかったため、からかうのは程々にし、方針を決める話し合いを持ちかけた。釈然としなかった二人だが、フブキの言うことは最もであるため、しぶしぶその話し合いを受け入れた。

3人で話し合った結果、当初目的としていた拠点の移動を最優先にし、水海地帯に向かうことに決定した。

食料問題や水の問題、さらに敵に襲われた場合を考え、早めに拠点を変えるべきという判断になったためだ。利終の体のことを考えると、長距離移動はよくないとミオは言ったが、このままここにいて敵に襲われた場合、今の利終では確実に死亡するという答えも否定できなかったため、最終的に条件付きで移動することに賛成した。その条件とは———

「利終君に戦闘をさせないこと。利終君の身の安全を第一に考えることとは、利終君ってミオに愛されてますね~」

フブキは歩きながら利終のほうを向き話しかける。フブキの言葉を聞いた利終は反論をする。

「ミオが優しいだけで、別に愛されてるとかそういうのではないだろ。というか、白上さんはちゃんと前を向いたほうがいいと思うぞ」

利終の言葉に、フブキはにやけながら答える。

「大丈夫ですよ~。ちゃんと周囲を確認しながら歩いているので、木にぶつかるなんてことはしない———あだッ‼」

後ろを向きながら歩いていたせいか、後ろにある木に気づかずフブキは後頭部をぶつける。その場にしゃがみ込み、頭を押さえていたがるフブキに利終はあきれた様子で言う。

「だから言ったじゃん。白上さんってアホなのか?」

利終の言葉にフブキは顔を上げながら答える。

「アホじゃないもん!というか痛がっている女の子に対してアホってひどくない⁉」

フブキの言葉にミオがフォローしきれないという表情で答える。

「フブキ、今のはフブキが悪いと思う」

「ミオまで⁉とほほ・・・」

ガックシと肩を落とすフブキだったがこの場にそれを慰めようとする者はいない。

肩を落としたフブキは顔を上げると疑問に思っていたことを利終に言う。

「というかですね、利終君。別に白上のことはフブキでいいですよ?ほかのみんなからもそう呼ばれることが多いですし」

突然言われた利終は少し考えるとフブキに答える。

「なら白上って呼ばせてもらうわ。ほぼ初対面なうえ、恩人をいきなり下の名前で呼び捨てにはしづらいからな」

利終の言葉に少し納得できなかったフブキだが、妥協案を飲むことにした。

「なら仲良くなったらフブキって呼んでくださいね。それまでは我慢するとします。」

フブキの許しをもらった利終は、ほっと安堵の息をつく。

そんな二人の会話を聞いてミオは少し頬を膨らませながら、フブキに声をかける。

「利終君としゃべってないで周りの警戒をしようよ。いつ襲われてもおかしくないんだよ?」

「はーい」

ミオの言葉にフブキは返事をすると周囲に警戒を配りながら歩き始める。

利終は警戒しながら歩くフブキの後姿を見て、疑問に思っていたことをフブキに聞くことにした。

「そういえば白上って手から青い焔を出せたよな?あれってどうやってるんだ?」

フブキは周囲の警戒を緩めず、利終の質問に答える。

「正直白上もよくわかってはいないんです。どうと聞かれても、こうぐわぁーって感じで手に意識を向けたらできたので」

フブキの言葉を全く理解できなかった利終だったが、ミオには少し通じたようで、利終にかみ砕いて説明する。

「多分フブキも感覚的にしか扱ってないってことだよ。でも手のひらに意識を向けるっていうのは利終君の能力に似てるね」

ミオの言葉を聞いて少し理解を深める利終だったが、新たに出てきた疑問を口に出してみる。

「ならミオにも能力があるかもな。三人の内、二人が能力持ってるんだからミオが持っててもおかしくないと思うしな」

そう言われたミオは試しにと、目をつぶり手のひらを意識してみる。しばらく目をつむっていたが何も起こらず、目を開く。

「利終君みたいに過程をイメージしてみたけど何も起きないね。ならうちのは利終君のとは違うのか~」

少し残念そうにミオがつぶやく。その言葉を聞いたフブキは顔をニヤつかせながらミオに言う。

「そっか~。ミオは利終君とおそろいがよかったのか~。いや~、健気ですな~」

フブキの言葉にミオは顔を赤らめながら反論する。

「別にそういうのじゃないし!ただ単純に利終君の能力のほうが便利そうだと思っただけだし!」

必死に否定しようとするミオを見て利終はいたずら心が芽生える。

「そっか~。ミオは俺と一緒がよかったって思われるのは嫌なのか~。ちょっと悲しいな~」

「ちが‼」

わざとらしく悲しむ利終を見てミオはとっさに違うと言いかけるが言葉に詰まってしまう。そこで、利終の表情がこちらをからかっている表情だということに気づいて、頬風くらませながら二人から顔をそむける。

「もう!二人してうちをからかって!もう知らない!」

そう言うとミオは一人森の中を歩き始める。利終とフブキはお互いに顔を見合わせながら、少し笑いあうと、ミオの後を追い始める。

「からかって悪かったな。謝るから許してくんね?」

「ごめんごめん。ミオがかわいかったからさ~。許してよ~ミオ~」

「知らない!」

穏やかな雰囲気を出しながら三人は森の中を歩く。

 

 

 

森を歩き続けて丸一日が経過した。利終の体が万全ではないことに加え、徹底的に敵を避けていたためかなりの時間を使っているのだ。三人は会話を続けながら森を歩いていたが、先頭にいたフブキが急に立ち止まる。

「この先から潮の匂いがする・・・。多分水海地帯ってとこについたんだ!」

そう言うとフブキは駆け出す。利終とミオの二人は慌ててフブキの後を追い駆ける。三人はついに森を抜け、水海地帯にたどり着き、目を大きく見開いた。

「おぉぉ(わあぁぁ)!」

海岸を思わせるような砂浜に、視界いっぱいに広がる湖。まさしく絶景というにふさわしい風景に三人は心を奪われる。

しばらく景色に見とれていた利終だったが、やらなければいけないことを思い出し、思考を切り替える。

「っといつまでも景色に見とれている場合じゃないな。とりあえず、生活拠点を作らねえと」

利終の言葉を聞いて、二人は現実に戻ってくる。太陽は真上くらいにあり、今の時間が正午に近いことを教えてくる。のんびりしていたら日が暮れてしまうため、三人は急いで拠点を立てるための準備をする。

利終が能力で斧を作り、フブキに渡す。フブキはその斧を持って森に向かう。その後、利終は再び能力を使い、鉈と鋸、槌を作る。その後、再び能力を使おうとした時、利終は急速に意識が遠のきかけ、慌てて能力の使用を中止する。その様子を見たミオは心配そうな声で利終に話しかける。

「利終君、大丈夫?やっぱりまだ体調がよくないんじゃあ・・・。」

ミオの声を聴いた利終は、うなずきながら答える。

「かもしれない。能力を使おうとすると意識が遠のくからな。というかよく考えてみれば、この能力ってデメリットらしいものがないんだよな。もしかしたらあるけど気づいてないだけかもしれないけど」

利終の考えを聞いたミオは、ふと思い浮かんだ考えを口に出してみる。

「使おうとすると意識が遠のくってことは、体力とかを消費して物を作っているのかな?」

ミオの言葉に納得する利終。体力を消費する代わりに物体を生み出すのが利終の能力なら、これまでのことに説明がつく。最も仮説であって確定ではないが。

「体力を消費するのはあるかもな。体力消費なら、しばらく休めば使えるようになるかな。」

そう口に出し、利終は横になる。その利終を見て、ミオは少し心配になるも自分に与えられた役割を思い出し、周囲を警戒する。

利終が能力で道具を作り、その道具を使ってフブキが木をとってくる。フブキが木をとってくる間、場所が取られないようミオが警戒する。利終が最初に提案した案は、自身が警戒に当たり、フブキとミオの二人で木を持ってくるというものだったが、ミオに却下された。今の利終の状態では単独行動は危険であるからだ。結局、身体能力に優れたフブキが木を取ってくる役割を担い、その間、利終はミオと一緒に行動することを厳命された。

心地よい風に吹かれながら利終は目をつむる。しばらく風の音を聞いていた利終だったが、やがてそのまま眠りについた。

あたりを警戒していたミオは、利終から寝息が聞こえてきたため、そちらに意識を向けた。

利終は自身の右腕を枕替わりにしたまま眠りについており、一瞬起こそうかと考えたが、疲れがたまっているのだろうと思いそのままにした。

利終の寝顔を眺めながら周囲を警戒していたミオだったが、好奇心から利終の横に寝転んでみる。いわゆる添い寝の形である。

好奇心から添い寝をしたミオは、しばらくその形を維持する。

やがて、心地よい風とどこか安心する匂いを感じ、ミオも眠りにつくのだった。

 

 

 

木を取って帰ってきたフブキが見たのは仲良く添い寝する二人の姿だった。

穏やかな様子で眠る二人にフブキは怒りがわいてくる。

まあ、自分が頑張って木を切って、持ってきているというのに、他の二人は寝ているのだからその気持ちは非常によくわかる。

たたき起こそうとしたフブキだったがミオと利終の状態を見て、毒気が抜かれる。

得に利終は明らかに疲労していたのがわかるからだ。

が、それはそれ、これはこれとフブキは思い容赦なく二人をたたき起こす。

「コラー!二人とも、白上が頑張っている間に仲良く添い寝とはいい御身分ですね!起きろー!」

ぺしペしと、二人をたたきながら声をかけるフブキ。

「んぁ?」

その声にまず利終が起き、声を上げる。

「寝ちまってたか。すまん白上。任せっきりにしちまってたみたいで。ミオにも悪いことをしちまったなっって」

そこで利終は自身の服を引っ張りながら寝ているミオを発見する。

一瞬パニックになる利終だったが、思考を落ち着かせるとフブキに尋ねる。

「なあ白上。ミオってなんで俺の服つまんだまま寝ているんだ?」

突然、聞かれた質問にフブキはにやけながら答える。

「利終君が愛されているからですな~。見てるだけで癒されそうですな~」

フブキの言葉にため息をつく利終。とりあえず、フブキが頑張った分自分も頑張るべきだろうと思い、フブキに周囲の警戒をお願いする。

利終は立ち上がり、フブキが持ってきた木に近づく。2本ある木のうち、一回り小さいほうに近づくと木を持ち上げようとする。あまりの重量に利終は木を持ち上げることが出来ず、利終はどうしようと頭を抱える。

木の重量は約500㎏であり、利終一人では持ち上がらない。フブキは小脇に抱えるようにして、二本持ってきたが、あれは獣人の身体能力を持つフブキだから可能であったのであって、利終には不可能であった。

どうしようかと悩んでいると、隣から声をかけられる。

「重いなら手伝おうか?片腕ないみたいだしさ」

突然声をかけられた利終は、その声の主が誰だかわからないまま答える。

「いやさすがに悪いから大丈夫だ。できるならミオの様子をっって⁉」

違和感に気づき、利終は飛び跳ねるようにしてその場を離れ、声の主を確認する。

黒く短い髪をした少女がこちらをきょとんとした表情でこちらを見ていた。頭には紅白に分けられた色の帽子をかぶっており、首からはホイッスル、腰にはメガホンをかけており、元気で活発なイメージを受ける。

そんな少女を見て、利終は一人の人を思い浮かべる。

「大空スバル?」

これまた有名な人であり、ミオやフブキと同じ事務所に所属している。

スバルは利終の言葉を聞き、笑顔で答える。

「そのとおり!ところでミオって言ってましたけど、もしかして大神ミオって名前だったりしません⁉」

かと思えば急に距離を詰めてきて、利終は少しドギマギする。利終は一度目を閉じると、息を整え、スバルの質問に答える。

「ああ、合ってるよ。ミオならそこで白上と一緒にいるが・・・」

「フブちゃんもいるの⁉」

再び食いつくスバル。利終はその勢いに若干引きつつも答える。

「フブちゃんというのが白上フブキのことだったら合ってるな。というか距離が近い」

言外に離れろという利終に対し、スバルは素直に離れる。離れてくれたことにほっとしつつ、ミオ達にあってくるように伝えようとする。

「あれ⁉スバちゃん⁉」

伝える前にフブキがスバルの存在に気づき、声を上げる。スバルもフブキのほうに走っていき、二人は感動の再開に喜ぶ。

「なんだか女所帯になってきたな」

同性が一人もいないこと、そろっている女性は全員有名人であること、その二つを考えると、腹が痛みを訴えてくるが、利終は気にしないようにした。次に見つかるのは同性であってくれっと願っていると、いつの間にか隣にいたミオがつぶやく。

「利終君にとってはハーレムだからうれしいんじゃない?」

「いや俺はどちらかというとハーレムは嫌いなんでお断りしたい。っというかいつの間に起きたんだ?」

「ついさっき。馬鹿みたいに大きな声に起こされた。」

利終とスバルの会話(主にスバルの声)は聞こえていたらしく、ミオはその声で起きたらしい。それはすまないことをしたなと、利終が思っていると、感動の再開(笑)を済ませた二人が戻ってくる。

スバルはミオを見つけると、飛び掛かるようにして再会を喜ぼうとした。

「ミオしゃ!会いたかったよ~!」

全力で再開を喜ぶスバルに対し、ミオは淡々とした表情で返す。

「うちはそうでもないけどね」

「ミィオォしゃぁぁぁ???」

あまりに辛辣なミオの言葉にスバルはオーバーリアクションをとる。

利終もミオがあまり辛辣な言葉を使うイメージがなかったので少し驚いたが、聞かなければならないことがあったので、頭の隅に追いやる。

「あー、大空さん?君はここにいたのか?」

利終の質問にスバルは答える。

「うん。気が付いたら浜辺の上で寝ててさ。それからどうにか生き延びてきたんだよね。大変だったな~。魚を獲ろうとしても、素潜りなんてできないし、森に入ったら鹿しかいないし。運よくりんごのなる木を見つけられなかったら飢え死にしてたかもしれない。」

スバルの言葉を聞いた三人は、食料の確保が優先と考え、スバルに問う。

「ねえスバル?そのりんごのなってる木ってどこにあるの?」

ミオの言葉にスバルは答える。

「分かぁんなぁい」

スバルの言葉に三者は別の反応を見せる。

「スバちゃんだからしょうがないよね~」

「なあミオ、こいつはアホと認識すればいいのか?」

「いいと思うよ。うちもちょっとあきれて何も言えない」

「畜生コンビ誕生⁉」

もはやコントである。

食料問題を解決するために利終は思考を回す。スバルが見つけたりんごの木はここからさほど遠くない位置にあると思われるが、正確な位置はわからない。ならばこの湖で釣りをしたほうがいいのかもしれない。だが素人が釣れるのかという疑問もある。そう考えると、りんごの木を探したほうがいいかもしれない。しかし、正直りんごばかりだと飽きるしな。などと考えていると、服を引っ張られ、引っ張られたほうを見る。

服を引っ張っていたのはミオであり、何か言いたげな表情である。その子ことを察した利終はミオに言葉をかける。

「ん?どうした?」

「利終君がまた一人で考えてる。うち達にも関係することなんでしょ?ならうち達にも教えてよ」

ミオは利終の言葉にそう返す。その言葉を聞いた利終は、三人に食料確保の方法を考えていることを告げる。

その言葉を聞き、スバルが答える。

「細かい場所はわからないけど、あっちにあるのはわかるよ?」

その言葉を聞いた利終は素直に思ったことを言う。

「ならはよ言えや」

「利終君、心の声漏れてるよ」

「おっと失敬」

とりあえず今晩はリンゴだなと考え、組をわけることにする。

りんごを取ってくる組と、ここで拠点づくりをする組だ。

話し合った結果、フブキとスバルがりんごを取りに行き、ミオと利終が拠点を作ることになった。

フブキがバケツを持とうとするところで利終が待ったをかける。

「そのバケツだと持ち運びに不便だろ。今作るから待っとけ」

そう言うと、利終は能力を使い道具を作成しようとする。しかし、手が光った瞬間、利終は意識が遠くなるのを感じた。

慌てて能力の使用を中止し、息を整える。その様子を見ていた三人はそれぞれ別の反応を見せる。

事情を察したミオは利終の体調を心配し、事情が分からないフブキは不思議そうな顔を浮かべ、そもそも利終の能力を知らないスバルは頭の悪い人になっていた。

息を整えた利終は事情を理解していない二人に説明をする。

「スバルは知らないかもしれないから先に言うと、俺は物質を生成する能力を持っててな、今それを使おうとしたんだが意識が遠のいて使えなかったんだ」

利終の説明にスバルは納得の表情を浮かべる。その反応を見た利終は疑問に思ったことをスバルに聞く。

「普通、こんなこと言っても痛い奴としか思わないと思うんだが、スバルはなんで納得してるんだ?」

利終の言葉にスバルは当たり前のように返す。

「スバルも能力持ってるからに決まってるじゃん」

スバルの言葉に三人は驚き、問いただす。

「「「スバル(スバちゃん)も能力を持ってるの(か)⁉」」」

突然そろって声を上げた三人に、少し驚きつつもスバルは腰にあるメガホンを手に取りつつ答える。

「うん。このメガホンを口に当てて声を出すとね、しばらくの間、力が強くなったり、足が速くなったりしてさー」

その言葉を聞いた利終は、思ったことを言ってみる。

「今それって実践できるか?」

利終の言葉にスバルは首を縦に振りながら答える。

「うん。見てろよ~」

スバルは大きく息を吸い込むと、メガホンを口に当て、大きな声を出す。

「やっほーーーーーー!!!!」

何故やっほー?と利終は疑問符を浮かべるが、その直後、体中に力がみなぎってくるのを感じる。

利終はとっさに二人を見てみると、二人も自分の体に起きた変化に驚いているらしく、その様子から、スバルの能力は全体支援であると推測する。

「どお?能力を使ったらこおーんなに早くなるんだよお?」

スバルは利終達の変化に気づいておらず、三人の周りを走っている。その様子を見た利終は少しあきれながらも言う。

「悪いけど元の身体能力がわからないから比較の仕様がないんだが」

利終の言葉にスバルはしまった!という顔を浮かべる。

「やっぱりなんも考えてなかったか。まあでも、俺やミオ達の身体能力も上がっているみたいだから、能力に嘘はないみたいだけどな」

利終の言葉を聞き、スバルは首をかしげる。

「あれ?スバルだけじゃないんだ」

よくわかっていなさそうなスバルに、利終は自分の予想を言う。

「俺の考えだから当たっているかはわからないけど、スバルの能力は全体バフみたいなものなんだと思うぜ。効果時間はどれくらいなのかわからないけどな」

利終の言葉にスバルは納得の表情を浮かべる。そして、ふと気づいたことがあったらしく、利終に対し言葉をかけてくる。

「そういえば君の名前を聞いてなかったね。君の名前は?」

利終はそういえばまだ自己紹介がまだだったなと思いつつ、スバルに答える。

「俺の名前は葛音利終だ。まあ、好きに呼んでくれ」

利終の自己紹介を聞き、スバルは笑顔を浮かべながら自己紹介を返す。

「一応自己紹介するけど、スバルの名前は大空スバルだよ!これからよろしく利終!」

自己紹介とともに出された手のひらに、握手を返す利終。合流してくる人がみんなホロライブのメンバーばかりであることから、今後増えるんだろうな~と利終は思いつつ、男来てくれと願う。

三人から四人に増えた一行は今後のことを語り合うのであった———

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