「「「ジャッジャジャーン!」」」
前回から2日後、ついに拠点が完成し、お披露目会となった。
と言っても、お披露目されるのは利終だけだったりするのだが・・・。
いつも通り、つれない釣りをしていた利終は、ミオに声をかけられると同時に目隠しをされ、腕を引っ張られて移動させられた。
その後、急に止まったと思ったら、今の言葉とともに目隠しを外された。
少しまぶしく思いながら、利終は目を開け、出来た拠点を見る。
手に入れられる素材が木だけだったため、瓦などはついてないが、そこそこ立派ともいえる平屋ができていた。
俺が後からスバルに聞いた話だが、この時2階建てとかにしなかったのは、安全性が確保できなかったかららしい。
思ってた以上にちゃんとした家が出来たことに、利終は少し驚く。正直、素人たちの寄せ集めの知識だけで、ここまで立派な家を作れるとは思っていなかったからだ。
「おお・・・。普通にすげえ・・・」
素直に思ったことを口にする利終。その反応を見て、3人は誇らしげに胸を張る。
「でしょ⁉でしょ⁉そう言ってくれるならうち達も、頑張った甲斐があったよ~」
後ろに生えた尻尾をぶんぶんさせながら、ミオがそう答える。その様子を見た利終は、昔かっていた犬に似ているな、と思っていた。
利終は何となく、ミオの頭に右手を載せると、そのままなでる。
急に撫でられたミオは、一瞬、体をビクッっとさせたが、そのまま何も言わず撫でられ続ける。
利終はミオの表情からしていやがっているわけではないと判断し、そのままなで続ける。
なでる利終と撫でられるミオ、しばらく二人はそうしていたが、利終が、二人を生温かな目で見るフブキとスバルを視界に収め、ミオをなでるのをやめた。
利終の手が離れた瞬間、ミオが少し残念そうにしているのが見えたような気がしたが、利終は気のせいだと思うことにした。
そんな二人を見ていたフブキはからかい口調で、声をかける。
「おやおや~?白上達にかまわず続けてどうぞ~。白上達は背景に徹するので」
「そうそう、ミオしゃのこういう場面ってあんま見ないから続けてよ~」
スバルもフブキと一緒にからかい口調で話しかける。二人の言葉を聞いた利終は、少し首を傾げながら答える。
「あんまり続けるのはミオに悪いだろ?というか頑張ったのは二人もおんなじなんだから背景に徹する必要はなくね?」
利終のその言葉を聞いたフブキは少し耳をピクピクさせ答える。
「ええ!白上達も頑張りましたとも!これは利終君にご褒美をもらってもいいですよね~?」
フブキの言葉に、利終は苦笑しながら答える。
「今の俺にできることってあんまりない気がするが、それでいいなら」
「言ったね⁉言質はとったからね!」
利終の言葉にスバルが反応する。その後、何をしてもらおうかな~っと考え始める二人。
その様子を見ていた利終は、ミオに振り返りながら言う。
「あ、もちろんミオもいいからな・・・ってどうした?」
ミオのほうを見てみると、自分の頭を押さえながらうつむいている。
何かあったのかと思った利終はミオに声をかける。その言葉を聞いたミオはハッと顔を上げると、慌てて首を横に振りながら答える。
「な、なんでもないよ⁉いや~⁉ご褒美は何にしてもらおっかな⁉」
ミオは誤魔化すように、鼻笛を歌いながら、フブキたちに合流する。
慌てた様子のミオを見て、利終は少し疑問に思ったが、あまりツッコむのも野暮かと思い、口には出さず、ミオの後を追った。
「さて・・・きれいな拠点を見事に完成させてもらったわけだが・・・」
あの後、はしゃぐ3人をなだめつつ、家の中を見させてもらっている利終だが、予想していた通りの出来事に、頭を抱える。・・・もっとも抱える腕は片方ないが。
中に入って最初に思ったのは、部屋が広いということだった。
入ってすぐは共有スペースとなっており、みんなで集まるときには主にここを使うだろう。奥には廊下があり、その先には8つの個室がある。こちらはそれぞれの自室になる。
部屋が8つある理由は、もし人が増えたときの保険である。部屋主がいないときは食料やその他の小道具を入れるスペースとして活用する。
布団やベットがないとはいえ、ほぼ野宿の状態から、ここまでの家に住めるようになったのは非常にありがたい。
利終は頑張ってくれた3人に感謝をしつつ、能力が使えたら欲しいもの出せれるのにな~、と思っていた。
利終の能力は、依然使えないまま。正確には使おうとすると意識が遠のく。そのことから考えるに、おそらくなくなったのではないということが推測される。おそらくだが、利終の能力は『何か』を使用して、物質を生成するものではないかと思われる。
今の利終はその『何か』がないから意識が遠のくのだと思われる。おそらく、その『何か』は生きるのに必要なパラメータだと考えられる。
つまり何が言いたいかというと・・・利終の能力を使って家具を生み出すことはできないということだ。
利終が頭を抱えた予想通りの出来事とは、家具が一つもないことだ。
確かに家としては十分機能するだろう・・・たとえ、テーブルすらなかったとしても。
テーブルは簡単に作れる部類だからまだいい。しかし、ベット?布団?動物や綿が全く見つからないこの世界で?無理じゃね?
そういや鹿はいたなぁ、と思いつつ、利終はどうすべきかを考える。
そんな風に利終が悩んでいると、ミオが声をかけてくる。
「どおしたの?頭でも痛むの?」
「いや、そう言うわけじゃないんだが・・・。家具をどうすべきかと悩んでな」
利終がそう返すと、ミオは納得の表情を浮かべる。
後ろで聞いてた二人も、どうしようかと悩みだし、4人で話し合いが始まる。
「最初に必要なのは、それぞれのベットじゃない?今のままだとろくに疲れも取れないからさ~」
「白上も賛成です。疲れが取れないと、いざという時動けなくなりますしね」
「けど、ベットを作ろうにも、どおやって?
綿とかないんだよ?」
「ミオの言う通りだ。現状ではベットを作ったところで対して変わらないのしかできない。せめて羊とかがいれば話が変わってくるんだが・・・」
などと話しながら時間が過ぎていく。そうして話し合った結果・・・。
「よし・・・。まずは情報収集だな。家具を作ろうにも、どこにどの動物や植物があるのかわからない以上、情報を集めないと話にならない。」
「とりあえず賛成かな。正直、簡易的なものであれば机とかは作れるけど、ベッドとかってなると、綿とか羊の毛皮とかが必要だもんね」
「白上も賛成です。この先、どこに何があるって情報は絶対必要になると思いますし」
「うちも賛成なんだけど・・・。集めるにもどおやって?まさかとは思うけど自分たちで直接その地域に行くの?」
ミオの言葉に利終は首を横に振りながら答える。
「いや?それについては当てがある。」
利終は自分のポケットから地図を取り出すと床に広げながら答える。
「今俺たちがいるのが右上の水海地帯ってところ。そして、俺の当てとは真ん中上にある廃墟地帯、もしくは右下にある遺跡地帯だ。まあ、単純な推測にはなるが、他の雪原地帯や砂漠地帯と比べると、構造物は必ずあるし、そこに資料とかがあるかもしれない。」
利終の考えにミオは賛成しつつ、自身の意見を述べる。
「なるほど・・・。結構運の要素もあるけど、その分、推測が正しければいろんな問題が解決するかもしれないね。けど、行くなら廃墟地帯じゃない?距離的にも近いし」
ミオの言葉にフブキとスバルも賛成を示す。
「白上もミオの意見に賛成です。確実に情報が手に入るという保証がない以上、遠出は危険だと思います」
「スバルもそう思うね。それに利終君の体のこともあるしね」
3人の意見が一致し、行先は廃墟地帯に決まった。
利終個人の意見では遺跡地帯だったのだが、理由がロマンというだけでは通らなかった。
利終は無念と思いながらも3人の意見に従い、4人の次の目標は、廃墟地帯で情報を集めることになるのだった。
次の日、遠出になるということでできる限りの用意をした4人は、廃墟地帯に向かって歩き出した。
フブキは先頭に立ち、周囲を警戒しつつ、戦闘をいつでもとれるように、持ち物は何も持っていない。利終は右手で二つの水筒を持ち、スバルは腰にメガホンをかけ、ミオは食料を入れた木の桶を持っている。
明らかにミオの負担がでかいが、獣人の身体だとそこまで重さを感じないため、この形となった。
地図が正しいとすると、廃墟地帯は森林地帯が左方向にあるようにして歩けばつくらしい。
どうやらこの島?は森林地帯を中心に8つの地帯があるようだ。北には目的地である廃墟地帯があり、北東には先ほどまでいた水海地帯がある。水海地帯の下には温暖草原地帯があり、さらにその下・・・南東には遺跡地帯がある。森林地帯の南であり、遺跡地帯の西にあたるその位置には砂漠地帯があり、そのさらに西には利終とミオが出会った山脈地帯がある。山脈地帯の北側には雪原地帯があり、北西には寒冷草原地帯がある。
地図に書いてあることを信じるのであればこのようになるが、そもそも砂漠や雪原といった、一つの島にあるにはおかしすぎる地帯が存在する。これらのことも、ここがVRの世界であると考えれば納得がいくだろう。最も、異世界ですとか言われても否定ができないが。
利終達は会話をしながら歩き、前方にビルのような構造物が見え始めたことで、目的である廃墟地帯にたどり着いたことを知った。
廃墟地帯は、その名の通りいくつものビルを含める建物があり、窓ガラスが割られ、ところどころ蔓に覆われた建物もみられる。
利終達は高い建物には近づかないようにしつつ、手前にある一軒家に入り、何か情報がないかを探した。
コンクリートらしきものでできた建物で、モダンっぽい家?だった。
中は少し埃っぽかったが、それ以外は普通で、つい最近まで人が住んでいたとすら思えるほどきれいであった。窓ガラスが割れ、いかにも廃墟という感じでなければの話だが。
「「「「お邪魔しまーす」」」」
4人は小声で、そう言うと、家の中を物色し始めた。現実でやればアウトどころか、一発で刑務所にぶち込まれることをしているが、そもそも人がいないようなのでセーフである?
利終達が家の中を物色していると、ミオが何かを見つけたのか、少し大きな声で3人に呼びかける。
「みんな~、こっちきて~」
利終達がミオの声がする部屋に行くと、そこは書斎室と思われる場所だった。いくつもの本がある。
早々に目的のものが見つけられたことに喜びつつ、利終達は手分けして、その本を一冊ずつ、読み始める。
「ええっと?『初心者必見!ゲームを作ろう!プログラミング入門編』。これは、今は関係ないね」
「こっちのは・・・『これを読めば君も生物博士!世の中の生き物1000選』。って1ページ目にゴブリンの情報が載ってる!?明らかにモンスター図鑑じゃん!」
「これは・・・『偉大な歴史人物』。ってこの『クリティア』って誰だよ。聞いたことねえよ」
「『世界の怖~い話』って、こんなの読みたくないよ!なんでこんなのあるのさ!」
4人それぞれの担当を決め、関係ありそうなものは中央に集め、そうじゃないものは元の場所に戻していく。2時間ほどかけて、本の整理を終え、4人で話しあう。
「関係ありそうなのはこの13冊か・・・。とりあえず、この『生物辞典』はナイスだ。ゴブリンや狼・・・正確には『ウルフ』か。様々なモンスターの情報が載ってる。って目次の欄に、『人間』なんてもの載ってるんだが。いやまあ、生物だけれども。」
利終は首をひねりつつ、とりあえずその人間の欄を見る。そんな利終を横目に、ミオは利終が持ってきた本の一冊を手に取り、尋ねる。
「え?利終君、歴史書なんている?うちには何故関係あるのか理解できないんだけど」
ミオの疑問に、フブキやスバルもうなずく。
利終は3人に本を開きながら答える。
「このページ見てみ?『なぜ、クリティア王はこのクリティア王国を作ったのか』って乗ってるだろ?俺の知識にはクリティア王国なんてものはないし、聞いたこともない。」
利終の言葉にミオ達は納得する。
「つまり利終君は、この世界の歴史は白上達が知っている者とは全く違うって考えたんですね。」
フブキの言葉に利終はうなずく。
この本がこの世界の歴史を正しく書いてある本であれば、この世界から元の世界に変える方法も見つかるかもしれない。さすがにそう簡単にはいかないだろうなと、利終は考えているが。
利終はみんなが納得したことを確認した後、手元にある『人間』のページが開かれた生物辞典を見て、目を見開く。
そこには、人間の最大の特徴として、『種族能力としてステータス看破を持つ』、という記述があったからだ。
その情報が正しいかを判断すべく、利終はミオを見ながら小さくつぶやく。
「『ステータス看破』」
すると、利終の前に謎のウインドウが現れ、そこにミオの情報と思われる文字が浮かび上がる。
突然言葉を発したと思うと、ウインドウらしきものを出した利終に3人はびっくりし、ミオは利終に尋ねる。
「え!?利終君何それ!?」
利終はウインドウを見ながら、生物辞典を指さしながら答える。
「いや、これに『人間は種族能力としてステータス看破を所持している』って書いてあったから試してみたんだが・・・、って何だこりゃ!?」
ウインドウには大雑把にミオの情報が載っており、『HP』や『MP』といった項目から、『Racial Abilities』や『Unique Ability』という項目、さらに『STR』や『VIT』といったゲームをやっている者なら見慣れたと言っていい情報が載っている。
だが利終が驚いたのはそこではなく、項目の一番下に乗っている、『Abnormal Status』である。
そこには『体調不良』と書かれており、利終は慌ててミオに問いただす。
「『体調不良』って・・・。おいコラミオ!体の調子よくないならちゃんと言えや!」
利終に突然問い詰められ、ミオは困惑しながら返す。
「え!?『体調不良』ってうちが!?全然そんなことないんだけど!?」
ミオの発言を聞き、利終はこのウインドウが信用できるのか怪しむ。体調不良を見つめると、さらにもう一つ小さなウインドウが出てきて、利終は納得の表情を浮かべる。
「BADステータス『体調不良』。この状態異常にかかったものはHP、MPを除くすべてのステータスが半減する、か。もしかしてミオの身体能力がフブキの半分くらいしかないのって、これのせいなんじゃあ・・・。」
利終の言葉を聞いた3人は同時に納得する。さらにフブキはもう一つ、別のことも納得したらしく、口を開く。
「この感覚は白上達にしかわからないと思うけど、急に身体能力が上がってうまく体を扱えないんですね。もしかして、それのせいでミオも気づかなかったのでは?」
ミオは白上の言葉に共感したらしく、しきりに首を縦に振っている。
そんな二人の様子を見た利終は、それもそうか、と納得する。
人は基本、自分の身体を自由に制御できる。それは当然のことだが今の二人は違ってくる。
今の二人は、全力を出したら車並みのスピードが出るようなものだ。動体視力的な意味でも、その状態で完全に体を制御できるわけがない。
更に言うと、急に身体能力が跳ね上がっているのだから、自分の全力がどこまでのものなのかも知ることはできないだろう。
「『ステータス看破』」
利終がそんな風に考えていると、スバルは利終の方向を見ながら、そうつぶやく。
いきなりだな、と思いつつも、辞典にある『自分のステータスを見ることはできない』という記述から、スバルに試してもらう気だったため、特に気にせず、そのままスルーする。
ところが、スバルは悲鳴に近い声を上げて、利終に問い詰める。
「~っ!利終君!HP1ってどういうこと!?」
「・・・は?」
突然そう言われ、利終は完全に思考が停止する。
ミオとフブキの二人もスバルの発言を聞き、声をそろえて言う。
「「利終君!それってどうゆうこと(ですか)!?」
完全に思考が停止している利終は二人の悲鳴に近い質問で、思考を取り戻す。
「は!?マジで自覚ないんだが!?それって見間違いとかじゃないよな!?」
利終の言葉にスバルはウインドウを指さしながら答える。
「いやだって『HP1/108』って書いてあるもん!基本的にこういうのって、右の数値が最大で、左が今だって決まってるもん!」
スバルの言葉に、納得しつつも、完全に心当たりがない利終。確かに、ミオのウインドウには『HP783/812』と書いており、その発言には説得力がある。
片手がないとはいえ、そこまで瀕死の状態ではないだろ、っと利終は思ったが、一つとある考えに思い当たり、自身の仮説を述べながら、スバルに質問する。
「あ~、もしかして俺の能力って、HPを消費して使ってたり?だとしたら、使おうとした瞬間意識が遠くなるのにも納得がいくんだが。スバル、俺のUnique Abilityのところにはなんて書いてある?」
「え、『物質生成』って書いてあるけど・・・。」
俺の能力って物質生成って名前だったのか、と思いつつ、利終はスバルに続けて言葉をかける。
「その『物質生成』って文字を見続けてみ?多分詳細が表示されると思うから」
利終の言う通りに物質生成の文字を見続けるスバル。そうすると、小さなウインドウが出てくる。スバルはそのウインドウを読み上げる。
「ええっと~、『物質生成は自身のHPを消費することで、作成過程をイメージできる物質を生成する能力です。消費する量は作成する物質の重量で決まっており、10㎏で一ポイント消費します。ただし、10㎏に満たないものであっても、一つのものに対し、一ポイント消費します。』って書いてあるね。」
その言葉を聞き、利終は自身の仮説が当たっていたことを確信する。
今思えば、弓矢の生成や水筒などの小物、さらにウルフとの戦闘など、HPが減る出来事はいくつもあり、HPが1になっていたのも納得がいく。
身体全身にのしかかる倦怠感の正体は片手を失ったことによるものだと考えていたが、これも少しあったのかな、と思っているとミオがスバルに質問する。
「HPってことは回復する手段ってあるよね!それってHPってとこ見ればわかったりしない?」
ミオに言われたスバルは、HP欄を凝視する。すると、再び小さなウインドウが出てくる。
「ええっと~?『HPは[Hit Point]の略称であり、その人の体力を示す数値です。/より右側が現在の数値で、左が最大の数値です。減ったHPを回復させるにはポーションやヒーリングクリスタルを使用するか、[ラージリカバリークリスタル]から染み出た液体を飲む、回復能力を使用するなどがあります。ただし、自然回復はありません』だって。」
いや、うすうす予感はしてたけど自然回復ねえのかよ、と利終は思った。
基本的なゲームなどでは、『寝る』という行為で回復するケースが多い。だが、この『寝る』で回復するのは自然回復の一種であるため、この世界では機能しないらしい。
利終の、この世界がVRの世界であるという仮説の信憑性が高まると同時に、考えなくてはいけないことが増えた。
「そのポーションやヒーリングクリスタルといったアイテムはどこにあるんだろう?白上達の知る限り、そんなアイテムはなかったはずですが・・・。」
フブキの言葉に利終は頷きつつ、気になっている物を上げる。
「それもそうだが、俺は『ラージリカバリークリスタル』ってのに興味があるな。他のアイテムと違って、消耗品のアイテムじゃないっぽいしな。無限に回復できるんだとしたら、絶対に確保しときたいアイテムだ。」
そんな話をしている最中、スバルはある一点をじっと見ていたが、やがて首を横に振りながら答える。
「どおやら、出てきた小さい奴からは、もう一個小さい奴は出てこないっぽいね。」
スバルの言葉を聞いたミオは少し肩を落としながら言う。
「つまり、その能力でポーションとかの入手方法や作り方はわからないってことだね・・・。この本の中に、それっぽいのもなさそうだし・・・」
本は動物の情報を中心に集めており、道具関連の本はなかった。
この家の持ち主?が動物好きな人だったのか、動物関連の本が比較的多く、道具などの本はなかった。13冊あるうち、8冊が動物の本。歴史本が1冊。3冊は釣りの本であり、残りの1冊は日記帳である。
「この日記帳って利終君が持ってきたやつだよね?なんで日記帳?」
フブキの疑問に利終は答える。
「いや、日記帳を記入するようなマメな性格の人だったら、いろいろ情報が手に入るんじゃないかと思ってな。そういや、中身見てなかったな」
フブキは納得しつつ、日記帳を開く。
「『2321年5月14日土曜日、今日は久しぶりの休みだ。これから何をしようかな。とりあえず朝食を食べて、ショッピングモールに買い物に行こう。』」
1ページ目に書いてあった記述をそのまま読み上げるフブキ。
全く中身がない、いたって普通の日記だが、あきらかに異常な点が一つあった。
「え・・・。2321年!?何年先の話なの!?」
みんなが思ったことを代表するかのように言うスバル。利終は同じ疑問を思ったが、今は重要ではないと判断し、フブキに先を促す。フブキはパラパラとページをめくり、関係なさそうな部分を飛ばす。数十ページほど進めると、突然めくるのをやめ、その内容を読み上げる。
「『2321年7月2日土曜日、昨日はクリティア王からの発表があった。他種族に対抗するために開発していた兵器が遂に完成したとのことだ。私たちの平和を脅かし続けていた他種族たちが遂に滅びるのだ。これで私たちも平和に暮らせるようになる。クリティア王万歳!クリティア王国万歳!我らの平和を脅かしてきた他種族に呪いあれ!』」
あまりにも異常と獲れるその内容に一同は顔を曇らせる。
「他種族を滅ぼす兵器・・・。もしかしてこの場所が廃墟になったのって、その兵器が原因だったりするんじゃ・・・。」
スバルの言葉に、三人もうなずく。この手の兵器は人間の手にあまり、人間を滅ぼす兵器になるというテンプレがあるからだ。
フブキはそのままページをめくる。そこからしばらく、普通の日記が続いたが、あるページで完全に手が止まる。
「『2321年7月21日木曜日、なんだこれは!話が違う!他種族を滅ぼせる力を持っているのではなかったのか!?クリティア王が作られたというあの兵器は、黄道の一匹すら倒せず破壊されたではないか!しかも、その報復に黄道が3匹もこの場所に攻めてきやがった!この王国はもはや滅びるしかないのか・・・。いやまだだ!以前クリティア王が発明されたというウイルスをもってすれば、いくら黄道といえど無事ではあるまい。』」
フブキの読み上げた内容に利終達は気になる点をいくつも見つける。
「って兵器が暴走して滅びましたとかじゃなく、そもそも倒せなかったんだ・・・。その兵器を倒したっていう黄道って何だろう?」
ミオの疑問に利終が考えられる可能性を口にする。
「具体的なものは何もわからないが、特殊な存在であることは確実だろうな。3匹ってことは複数匹いるってことだろうが・・・数は恐らく12か13だろうな。」
利終の言葉にスバルは驚きつつ答える。
「え!?なんで12か13匹って予想できるの?」
スバルの質問に利終は、自身の考えを述べる。
「正直名前からの予想でしかないから、あってない可能性もあるけどな。『黄道』ってのは、黄道十二星座のことを指すんじゃないかと思ってな。だけど、黄道には蛇使い座も混じっているから、12か13のどっちかだと思う」
黄道十二星座、太陽の軌道上にある星座の総称だ。生まれた日によって、決まっている星座も、この黄道一二星座からきている。
「黄道・・・。多分、うち達が戦ってきたやつらよりはるかに強い奴らだよね。」
ミオの言葉に利終は頷く。生物図鑑・・・いや、もはやモンスター図鑑だが、そこに書いてあることが正しければ、利終の左手を切り刻んだウルフは、『突然変異種』のウルフだろう。住んでいる環境によって、まれに強力な個体が現れ、その個体を中心に群れを成すのが、ウルフが持つ特徴らしい。
更に言うと、ウルフ自体は群れを成さなければ、そこまで脅威ではないらしい。利終の攻撃を簡単にはじく皮膚を持つウルフが、だ。
どうやら、この世界は人間にとても厳しいらしい。何せ、図鑑にすら『人間は能力を持たなければ、この世で最弱の生き物である』って乗っているほどだ。
利終はそこまで考えて、一つの可能性を思いつく。
モンスター図鑑と勝手に言っているが、ここに乗っている情報は本物のモンスター図鑑と変わらないだろう。
ならば、と思い、利終は目次の欄にある様々なモンスターの名前を見ていく。
そして、ある一点で目が留まった。
そこには、利終があるかもしれないと考えていたモンスターの名前が載っていたからだ。
利終は右腕を器用に使い、そのモンスターが載っているページを開く。そのモンスターの名前は・・・。
「『アラゾーナス・レオン』」
利終が突然発したその言葉に、一同は首を傾げる。
「何?そのなんとかレオンってのは?何か特殊なモンスターだったり?」
スバルの言葉に利終は頷きながら答える。
「『太陽に準じる者にして、獅子の王。王ははるか頂から下界を見下ろすのみ』。つまり、黄道の一匹である可能性が最も高いモンスターだ。」
利終の言葉に息をのむ一同。
この時、未来は確定したのかもしれない。
彼らが戦うべき相手の名は———。