ユーラシア連邦領内。
時は少し遡る。
それはファウンデーション王国によるコンパス壊滅作戦の失敗した後。
ユーラシア領内へと避難してきたコンパスの前に、105ダガーの部隊が整列した。
「これが、ユーラシア連邦の部隊……」
「ものの見事にダガーばっかりだな。補給のままならないはずのブルーコスモスだってウィンダムを持ってる時代だぜ?」
マリューとムウが、アークエンジェルから降りて目にした光景にそう呟く。
「マリューさん!ムウさん!無事ですか!?」
ジェットストライカー装備の105ダガー3機にエスコートされてきたライジングフリーダムがゆっくりと着地し、開いたコックピットハッチからキラが飛び降り駆け寄ってくる。
この数年すっかり大人びたと感じていた彼の、久しぶりに見せる慌てぶりに、出会ったばかりの頃を思い出した2人は思わず顔を綻ばせた。そして、2人ともがキラの頭をクシャリと撫でた。
「ちょ、恥ずかしいですよ……」
そう言って赤面するキラの顔には、しかし、いまだ消えない陰が纏わりついていた。戦い続けて追い詰められていく彼の姿に、大人の2人は悩ましげにお互い顔を見合わせた。その様子に気づいたキラが頭に?を浮かべ質問する直前に、突如として彼らの横に虚空から暗緑色のニンジャめいたモビルスーツが姿を現した!いや、「めいた」ではない。あからさまにニンジャなのだ!
条約違反の危ないジツを使い虚空から現れたNダガーN、もといニンジャが片膝をつき、そのコックピットから特殊部隊員にエスコートされたラクス(とその秘書。決して忘れられてはいなかった!)が姿を現した。ニンジャの中からまたニンジャ!その特殊部隊員はユーラシア・ニンジャに違いなかった。コズミック・イラとは核がポップコーンの如くポンポン弾けるサツバツとしたマッポーの世である。ニンジャが存在するのは誰の目にも明らかであった。なんたるジゴク!おおブッダよ!寝ているのですか!
「ラクス!よかった、無事で……!」
「キラ……!」
駆け寄るラクスを抱き止めようとしたキラだが、ふと顔を曇らせ、その抱擁を拒んだ。
「キラ……!?(私の抱擁を、拒みましたわッ……!まさか、浮気……?)」
「ラクス……。君が無事で本当によかった。でも僕はもう君と歩けない……。僕は君に相応しくない……!」
「そんな……!(これは間違いなく浮気ですわッ!!きっと夜会の時にキラにベッタリだったあの黒髪ロングの女性ですわッ!!これはオルフェ・ラム・タオの陰謀ですわッ!私にちょっかいをかけるのはまだ許せても純真なキラを誑かした罪は万死に値しますわッ!ああっ、キラ!私はどうすれば……)」
「ラクス……!」
「キラ……!」
キラとラクスがとても深刻そうに深い皺を刻みながら渋い顔をしている。はたから見れば互いの名を連呼している謎の状況である。
「ほーう?なるほど、若いねー。ふたりとも」
「キラくん、何かあったのかしら……」
「まあ、こんな局面じゃ無ければ微笑ましいで済むんだけどなぁ。どうしたもんか……っとォ?」
ムウの直感が何かが近づいてくるのを捉えた。
クルーゼとも違う、不思議な存在感がゆっくりとこちらに近づいてくる。
そして、その男は駐機状態のダガーたちの間から、ユーラシア連合の軍服を身に纏った将校の背後に付き従うようにして現れた。
「クライン総裁。ご無事で何よりです」
そう言ってラクスと共にファウンデーシャン王国の地下司令部に詰めていたユーラシア連邦の将校B(星に脳を焼かれてる方)が声をかけた。
「此度は本当にありがとうございました。あなた方の助勢が無ければ私もコンパスもどうなっていたか……」
「ファウンデーション王国、独立時より彼の国の動向には目を光らせていましたからな。しかし今回のブルーコスモス殲滅作戦の危険性に勘づいたのは、こちらのゼレンスキー中尉のおかげなのですよ」
そういって将校が背後に控えていた男に目をやると、彼はラクスたちの前に進みでて、オーブめいた綺麗で流麗なオジギを披露した。
「初めまして。クライン総裁。ならびにコンパスの皆様方。自分はゼレンスキー中尉であります。しがないモビルスーツパイロットなんぞをやっております。改めて、皆さんがご無事で何よりでした」
「もしかして、あのダガーのパイロットの……?」
「はい、肯定であります。ヤマト准将殿」
「あなたが……」
彼の肯定の言葉にみんなの視線が集まる。
味方の援護とトラップありき、かつ洗脳下にあったとはいえコンパス最強のキラを止めた男である。並のコーディネイターなど歯牙にもかけない隔絶した実力を受け止められるそのセンスが、彼の存在感を際立たせていた。言われてみれば、なんだがオーラが湯気のように立ち昇っている気さえする。(実際は無茶な戦闘の連続で疲労した身体が発熱し、ユーラシアの冷たい空気に触れて気化しているだけである)
その男の名は、パイロットとしてはユーラシア領外では意外にも知られていない。
主に防衛戦で本領を発揮する拠点防衛のプロフェッショナルであり、基本的には領内での活躍が多い事から、戦時下での外国において、たとえゼレンスキーの功績をユーラシアがどれだけ発信しようとも外国の国民までは届かないのである。
コンパスでさえ、ユーラシアとの関係性が深くない為にそれは同じだった。
「ゼレンスキー中尉。此度はキラのこと、本当にありがとうございました」
ゼレンスキーにラクスが頭を下げる。
その言葉を聞き、キラはグッと口を結んだ。
今回の一連の事件は自分が操られた事が発端になっていたので、キラとしては負い目がある。それに、先日のオルフェからのネチネチ嫌味攻撃が真面目すぎるきらいのあるキラの心に深く突き刺さっていた。
『デュランダル議長を討って君は世界から秩序、平和、争いのない社会を奪った。デスティニープランを知った人類はもう止まらない。ラクス姫はそうした人類を導く光だよ。その傍らに、血塗られた手を持つ君は相応しくない!』
命を奪って得られた平和の中で、奪ったその手を持つ者の居場所は果たしてあるのだろうか……。平和を信じて必死に戦った。戦って戦って、武器を振ったその先にあったのは、更なる終わらない闘争だった。
理想を求めて戦いの中で死んでしまった方が幸せだったのかもしれない。そう思えてしまう程、喪ったものが多すぎた。望まずしてガンダムのコックピットに乗り込んだ少年の背中には、その宿業はあまりにも大きすぎたのだ。オルフェの言葉に心乱されるのも、無理からぬ事である。
敵と信じた者を討ち、偽りと信じた平和を拒み、平和を望む恋人の願いも叶えられない。自分は、この世界に、ラクスに相応しくない。
その思いが、キラの心を重くしていた。
だが、その心を見抜いた者がいる。そう、ゼレンスキーである。
なんせこの男、キラの内面描写までバッチリねっとり大画面で20回以上再生している変態(ガノタ)であった。
内心「おいたわしや、兄上(カガリが姉上説など諸説ある)」と視聴中気が気でなかったファンとしては彼のメンタルケアができるこのタイミングを逃したくない。推しに過剰に関わらない精神などクソ喰らえである。この世界では彼は子供で、自分は大人である。助けあげたくなっちゃうのが心理なのである。
「ヤマト准将。ちょっと散歩しませんか」
なんか真面目な話になってきたな……。
アコードのラクス拉致イベントが無くなったので諸々の清算をゼレおじが担当することに。
改めて見るとキラの内面はぐちゃぐちゃ。
全部知ってる元視聴者からしたらこんなん放って置けないわけで。
月面ラストバトルまでに何回か掘り下げを挟みます。
あと4話くらいかな。お付き合いよろしくお願いします!
それとイングリッドはニンジャです。
宰相(関白?将軍?トニカクエライヒト)の横にはべるできるっぽい女の人は大体クノイチ。つまり女ニンジャだ!色仕掛けはお手のもの!
謎理論でラクスにマークされる哀れな少女よ……。