「モビルスーツで受け止めるぅ!?」
格納庫内に整備長の声が響き渡る。
父さん、母さん、ねーちゃん。俺です。ゼレンスキーです。
俺は今、宇宙にいます。
ガーティ・ルー級宇宙戦艦『ハラショー』。
随分と陽気な名前のその宇宙戦艦は、ミラージュコロイド・ステルスを起動させて地球の大気圏から僅かに離れた高度で、首都モスクワの直上で身を潜めていた。
その背後に同型艦3隻『スヴィエート』『ウルィーブカ』『ウォッカ』が同様にステルスを展開し控える。
その隠密部隊旗艦を務めるハラショーの格納庫の中で、俺は自機の整備長と今回のレクイエムをアルミューレ・リュミエールで受け止める『オペレーション・サハクィエル』について最後の大詰めに入っていた。
「つか!!相談が遅いッ!!」
「だってだってぇ……」
「気色悪い言い訳すな!無茶振りする時は事前に相談せぇって何度言ったらわかるんや!」
「事前に相談してたら怒るだろ?」
「当たり前や!そも、正気じゃないやろ中尉!たとえアンタは平気でも他のやつらはレクイエムの熱量で蒸発してまうで!」
「その理屈で俺が平気な理由がわからない……」
「アンタはその程度で死なんやろがい!」
「……?」
「ドタマぶち抜かれて生きてる人間がアンタ以外いてたまるかい!」
「でも急所は外れてたし」
「普通の人間は頭が急所なんですわ中尉」
「何言ってんだよ当たり前だろ」
「「HAHAHAHAHAHAHA!」」
笑いながら殴り合う2人を、他の整備士たちはいつもの事として目もくれない。
「……しかしまあ、開発陣が理論上行ける言うんもあながち法螺じゃないんでしょうな。ここんところどっかの誰かさんが無茶ばかりしよるさかい、ハイペリオンストライカーも改良が進みましたからなぁ。ソレが100機も集まれば……。実際テストしとらんので確実とは言えませんが、レクイエムのエネルギー輻射による熱ダメージも理論上は防げるはずですわ」
「フク、シャ……ネツ……?ダメ……?」
「流石に熱ダメージはわかるやろ!?……熱の伝わり方かて何種類かありますでしょ?伝導熱、対流熱、輻射熱。今回は宇宙なんで空気に依存する対流熱は関係ありまへんな。伝導熱は直接物同士が接してると起こりますが、機体そのものはレクイエムには触れてへん。ほんなら問題になるんは電磁波として伝わってくる輻射熱ですわ」
「???」
「遠赤外線って聞きますでしょ?」
「もちろん知っている。焼肉が上手くなるアレだろう?」
「……ですな。アレが輻射熱、電磁波ですわ。波には振動数があるんですな。そんで遠赤外線の振動が肉に吸収されて、その振動が肉を温めるっちゅーことです。で、今の改良版アルミューレ・リュミエールならエネルギー振動数を制御して共振を防げる」
「なるほどわからんありがとうまた明日」
「この後すぐなんだよ馬鹿野郎!」
「あー!」
「次にアンタは『馬鹿って言った方が馬鹿なんだぞ!』と言う」
「馬鹿って言った方が馬鹿なんだぞ!……ハッ!?」
「このネタ何回やるねん!ええ加減にせぇ!」
「ジョジョ面白いだろ!?」
「知らんわ!叙々苑か何か知らんがアンタははよブリーフィングいきぃ!」
「この世界にも叙々苑がある事が一番不思議だぜ……」
「叙々苑がモスクワに進出したのはC.E.70でな。あんときゃたかが焼肉になんで行列ができんねんと前日の夜から並んでたワテは思うたわけや」
「お前も並んどるやないかーい!」
「うるさいわはよ行け!」
「ゼレンスキーはクールに去るぜ……」
「は よ い け」
格納庫から馬鹿が出ていくのを見届けてから、整備長は馬鹿の105ダガーを見上げた。
装甲はピカピカに磨き上げられていたが、それでも消えない大小の傷が、数々の武勲と名誉とともにその身に刻まれている。
先のブラックナイツとの戦闘で傷付いたこの子を見た時、自分の心臓を鷲掴みにされたような気分になった。
まったく、あの男は無茶ばかりする。それで実際死にかけている(というか普通の人間なら死んでいる)のだから、偶には自分の事も大切にすればいいのに、とも思う。
(誰かの笑顔を守る為には、自分も笑顔でおらなあかんで。中尉)
そんな柄にもない事を思いつつ、ダガーの装甲を拳でトンと叩いた。
「ダガ坊やい。どうか、あの馬鹿を守ってやっておくれな」
まかせろい!
そんな幻聴を聞いたような気がしたが、お前はせめて標準語で喋れや……と整備長は1人ツッコミしながら最後の作業に取り掛かった。
日刊ランキング6位!?ありがとうございます!
コメント返信が出来てませんが、めっちゃ楽しく読んでます。
キレキレの面白いコメントが多くて悔しい……笑
なるべくコメントの疑問は本文に練り込んでお答えできればなーと。
次回からは最終決戦篇です。
この作戦の背景。
ゼレおじがアコードを煽るだけ煽る。
レクイエムがモスクワに飛んでくるのを確実に誘導し射線を限定させる。
強化されたシールドで受け止め第1射を無駄撃ちさせる。
これでアコードがヤバいという認識を全世界に認知させコズミック・イラのここまで生き残ってきた全勢力VSアコードという展開に持ち込む。
以上、完璧な作戦です(メガネクイッ)
なおゼレおじのこれまでの活躍でクソマイナー装備のハイペリオンストライカー(ほぼ一点モノ)の大量発注が入り、アクタイオン・インダストリー社はゼレおじの売る国債をアホほど買った。
美しいウィンウィンの関係。
ユーラシアではウィンダムの配備が遅々として進まないのもこの男のせいである。
その代わり大西洋連邦側よりダガーの性能がいいという噂があったり、脳を焼かれたユーラシアの星のフォロワー達の操縦スキルがメキメキ上がった結果、機体性能に頼らない熟練どもが揃ってるのもユーラシア連邦の特徴である。