あの後、僕達は揃って停学処分を食らった。
屋上の鍵の複製、自殺未遂、不適切な映像の投影、放送室のハイジャック。
言葉にして並べてみれば結構ヤバイことをしているので、その対応も当然のことだろう。
むしろ、退学とか転校じゃないだけ温情だと思う。
まぁ、義務教育を受けている最中の中学生なのでね、あまり重たい処分は下せないらしい。
というわけで、僕は自室で一人、反省文を書いていた。
「学校で淫夢ごっこしてごめんなさい、と」
バカみたいな文字の羅列。
そもそも反省してないし。
時間の無駄だ。
ふと、珍子のことが気になった。
ニコニコ動画は現在も復旧作業中で淫夢動画も見れないから、さぞ暇なことだろう。
電話でもかけてやろうかしらん。
家から出るのは禁止されているが、通話ぐらいは許されると思いたい。
というか、仮に許されていなかったとしても先生もわからないだろう。
そう考えて、珍子に電話をかけようとスマホを手に取った。
するとスマホが着信音と共に震えた。
どうやら向こうの方から電話をかけてきたらしい。
「もしもし」
「私よ、今貴方の家に向かっているわ」
「えぇ?」
「もうすぐ着くから待ってて」
それだけ言うと、珍子は電話を切ってしまう。
なんだって急にそんな。
意味もわからず戸惑っていると、階下から人の来訪を伝える呼び鈴が鳴った。
もう着いたらしい。なんてせっかちな。
母が出かけていていないため、急いで玄関に向かってドアを開けると、そこには仁王立ちの珍子が立っていた。
「ああ、どうもいらっしゃい」
「お邪魔するわ」
珍子は僕の横をすり抜けると、家の中へとずんずん進んでいく。
そして、リビングで立ち止まると僕の方を振り返って言った。
「貴方の部屋はどこかしら」
「階段を上がった先の正面の部屋だけど」
またしても珍子は僕をすり抜けて、階段を登っていく。
停学で気が立っているのだろうか。
それにしたって、今日の珍子は様子がおかしかった。
「って、人の部屋に勝手に上がったらダメじゃないか」
急いで珍子を追いかけると、すでに彼女は僕の部屋の中に入っている。
「なにか私に見られたくないものでもあるの?」
「……いや、ないですよ? ほんとに」
今どきベッドの下にエロ本を隠すようなヤツはいない。
そもそも物理的なメディアは既に時代遅れで、今はネット上で購入するのが主流だろう。
だから、パソコンさえ無事ならなんの問題もないのだが。
「これね」
そんな僕の浅はかな思考を読み取るのように珍子は目ざとくノートパソコンをみつけると、そのまま手を伸ばした。
「ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいよ! 何してるんですかアンタ!」
「何って貴方のパソコンを見ようとしてるだけよ」
「まずいですよ!」
思わずパソコンの前に滑り込んで、珍子がパソコンに触れるのを阻止した。
「何がまずいのよ、あなたはこれで淫夢動画を編集しているんでしょう?」
「編集? まぁそうだけど」
「よかった、これなら持っていけそうね。じゃあ、私はパソコンを持っていくから、貴方は彼を持っていってちょうだい」
「持っていく? 君は何を言って──うわぁ!」
僕はいつの間にか後ろに立っていたいつかの運転手に米俵のように抱えられた。
珍子はそんな僕に構いもせず、パソコンの周辺機器を回収していく。
「おい、何してるんだ!」
「何って、パソコンとそれを動かすのに必要なものを集めているのだけれど」
「だから何のために!」
「貴方を私の家に連れて行くためよ」
「はぁ!? え、ちょ、待って! えええええ!?」
そのまま僕は白鳥家に誘拐された。
◯☆
「あの、停学中は外に出ちゃいけない決まりだったと思うんですけど」
僕は連れてこられた客室でキーボードを叩きながら、すぐ後ろにいる珍子に尋ねた。
「貴方馬鹿なの? 白鳥の名前を出せば、教員なんて簡単に黙らせられるわ」
やってることがヤクザなんだよね。
急に怖くなってきたよ、僕。
たぶんもう手遅れだけど。
どうも珍子は淫夢動画が見れなくなったために禁断症状を起こしたようで、仕方なく僕を捕まえてきて淫夢動画を作らせることにしたらしい。
どこが仕方ないんだろうね。
これには天国のビリー・ヘリントンも苦笑い。
「ほら、手が止まっているわよ。私のために淫夢動画を作るんでしょ?」
「そりゃ作らせていただきますよ、お嬢様。でもこんな強引だとは思わなかったなぁ」
「いいじゃない、貴方の場合こうでもしないとまた逃げるかもしれないのだから」
「それについてはノーコメントで」
僕は苦笑しながらパソコンに向き直る。
まぁ、自分が言ったことには責任を持つとしよう。
僕はため息を一つ吐くと、珍子に入れてもらった紅茶を口に含んだ。
「……あれ、なんか、おかしいな」
まぶたがずしりと重くなる。
視界がぼやけ、パソコンの画面が滲んで揺れる。
眠気が一気に押し寄せ、抗う間もなく、僕の体は机へと崩れ落ちた。
「やっと…眠ったか」
珍子は机に突っ伏した彼の頬をそっと撫でると、その指先は手首へと滑った。
シュル……キュッ。
細やかな指遣いで、しっかりと結ばれていく縄。
彼女は結び目を確かめるように引き締めると、満足げに微笑んだ。
「ふふっ、これでもう逃げられないわね」
意識のない身体を支えながら、彼女はゆっくりと部屋を出る。
目指す先は深く暗い地下室の最奥。
暴れんなよ…暴れんなよ…
ちょっと、まずいですよ!
いいだろよぉ! な、ニョロトノ!
やめてください…!
な、な、暴れんなって!
ちょっ! ちょっ!?
うっ、何すか! 何するんですか!?
何するん…ちょっとホ↑ントに…ドイツ…!?
う、羽毛…
気持ちいいか?
う、うん…
気持ちいいだろ?
うん…
お前のことが好きだったんだよ! (迫真)
ウン、ウン、ウン、ウン、ウン、ウン、ウン…
フッ! フッ! フッ! フッ! フッ、フッ、フッ、フッ…(機関車)
ウンッ! ウンッ! ウンッ! …ンッ! 、パッソ!
いいよ、来いよ! 胸にかけて! 胸に! アアッ!
ウン! ウン! ウン!
アッー、胸にかけて、アッー! …ファッ⁉
ウーン…
~二人は幸せなキスをして終了~
「……なんで僕達、淫夢本編なんて見てるの?」
「大人の事情というやつよ」
そう呟くと、珍子はそっと僕の肩に頭を預けた。
僕は縄から解放された手を持ち上げ、そっと彼女の髪に指を通す。
柔らかく、しっとりとした感触が心地よい。
何度か優しく撫でると、彼女は黙ったまま更に身を寄せてきた。
いよいよこれは逃げられない。
まさしく野獣。
そういえば、僕と珍子が始めて話したのも野獣先輩ダンスがきっかけであった。
「これも必然、か」
珍子の穏やかな寝顔を眺めながら、あのときのことを思い出す。
「こんなにかわいい女の子が淫夢厨だなんて、やっぱりこの世界はイカれてるぜ」
まずウチさぁ 屋上あんだけど 焼いてかない?
(ンアッー!)
ま、多少はね?
おまたせ アイスティーしかなかったけど いいかな?
これもうわかんねぇな この辺がセクシー えろい
暴れんなよ… 暴れんなよ… お前のことが好きだったんだよ!
あ、いいじゃん 入れたろ すここい 歌
Y A J U & U ヤジュウセンパイ 114514 いいよこいよ!
ヤジュセンパイ イキスギ イクイク ヤリマスネー
One on One for High-Five! One for All
Y A J U & U ヤジュウセンパイ
One on One for High-Five! One for All
Y A J U & U ヤジュウセンパイ
One on One for High-Five! One for All
Y A J U & U ヤジュウセンパイ
One on One for High-Five! One for All
Y A J U & U ヤジュウセンパイ
One on One for High-Five! One for All
Y A J U & U ヤジュウセンパイ
One on One for High-Five! One for All
Y A J U & U ヤジュウセンパイ
One on One for High-Five! One for All
それから十年が経った。
なんやかんやあって僕と珍子は結婚し、今は新婚旅行で世界各国を巡っている。
だというのに僕は彼女の後ろを従者のように歩いていた。
隣に並んで歩くと、なんというか、他人の目が気になってしまうのだ。
あれから珍子は美しくなった。言葉で表現するのが野暮なくらいにね。
けれど、何よりも惹かれるのはその表情だ。
彼女はどこでも自信に満ち溢れた笑顔を絶やさない。
その秘訣が人権侵害コンテンツであることを僕以外の誰も知らない。知っても信じられないだろうが。
「なに離れてるのよ、あんまり遠くまで行くと、ぐるぐる巻きにして引きずっていくわよ」
「それだけは勘弁してくれ」
考え事をしていたせいで、珍子と距離ができていた。
僕は小走りで珍子のもとに急ぐ。
── いいよ、来いよ!
「え?」
路地裏の方から滅茶苦茶聞き覚えのある声が聞こえた。
「もしかして今のは本物の……」
「何かあったの?」
なかなか来ない僕にしびれを切らして、珍子が道を戻ってきた。
「……いや、なんでもない。行こうか」
僕は珍子の手を取って走り出した。
勝手に素材にしてしまってごめんなさい。
そして、僕を救ってくれてありがとう。
身勝手だとは思いながらも、どうしても祈らずにはいられない。
あなたが救った人よりも多くの幸福があなたに訪れますように。
お元気で、野獣先輩。
「急に走り出してどうしたのよ!」
「この辺にぃ、うまいラーメン屋の屋台、来てるらしいっすよ」
「あっ、そっかぁ…」
「行きませんか?」
「あっ、行きてぇなぁ」
「行きましょうよ」
「じゃけん夜行きましょうね~」
そして、二人は人混みの中に消えていった。
こんなきみょうな淫夢厨の話は、信じられないという方は、このできごとは、みんな真夏の夜の夢だと考えてください。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます! いえ、ありがとナス!
皆様のおかげで無事完結しました。
没入感を損ねたくなかったので毎話のあとがきで書くことはありませんでしたが、感想、評価、お気に入り、ここすき、誤字報告、本当にありがとうございました。実は毎回感謝していました。
あとは軽い設定集とあとがきを書きたいと考えていますが、作品の裏側とか作者の自我が出てくるのが苦手な人もいるでしょうから、次の話として分けて投稿したいと思います。
もし、気に入っていただければ感想、評価、お気に入り、ここすき等してくれると作者が喜びます。
何度もいいますが、ここまで読んでくださってありがとうございました。
では、またどこかで。
引用
真夏の夜の淫夢Wiki
Babylon 34 真夏の夜の淫夢 ~the IMP~ 第四章「昏睡レイプ!野獣と化した先輩」
モチモチ様『ヤジュセンパイイキスギンイクイクアッアッアッアーヤリマスネ【踊ってみた】』