ワレワレハ侵略者だ!!   作:ワタシニホンゴワカリマセーン

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第1話

「君の事が好きです!!」

 

 普段、学校の屋上とは生徒にとって馴染みの無い場所である。それは立ち入り禁止と言う壁以外にもそもそも立ち入るメリットが少な過ぎるのも原因だ。

 昼食の場所にするには直射日光で眩しい上に暑すぎるし、スポーツをするには狭すぎる。てか、使用用途が限定的すぎてそもそも行く理由もない。まぁ、入っちゃいけないって言う根本的な問題がある為にどうしようもないのだが…

 だが、告白するには打ってつけな場所だと僕は思う。何というかロマンチックだし、誰にも見られる危険もない。だから

 

「ごめんなさい。」

 

 こう言ったシーンにも対応出来るのだ。

 

 

 僕は足から崩れ落ちた。

 

 

 小学生の頃から7年間僕…『飯島 将吾』はその少女に恋をしていた。『春乃 宙』……僕と同じ高校一年生の少女であり、性格は所謂陰キャ。特別可愛いと言う訳でもなく、特別頭が良いと言う訳でもない。いつも教室の端で本を読んでいる様な少女、それが彼女だった。

 特に魅力的に感じない少女だと皆が言う。それもそうだ。クラスには彼女以上に可愛い女の子なんかゴマンといて、世間にはそれを助長する様に更に美しい女性で溢れかえっている。クラスの端で本を読んでいるだけで、ろくにコミュニケーションを取ろうとしない彼女が魅力的になんて映ろうはずがないのだ

 だけど僕にはそんな彼女が最上級に魅力的に感じていた。理由はわからない。もしかしたら授業中消しゴムを拾ってくれたなんて単純な理由なのかも知れない。

 とにかく、僕はその…春乃 宙の事が好きだったのだ。

 

「…振られたぁ〜…」

「見事な振られっぷりだったね。」

 

 窓硝子から沈む夕日に当てられながら友人である"佐田 秋"と廊下を歩く。7年物の恋が先程に打ち砕かれた手前、僕の脚は重かった。

 

「オイ、見てたのかよ。」

「ああ、泣きながら逃げ帰る所もばっちり」

 

 秋はそう言うとスマホの画面に先程の告白の現場を映す。こう言う事があるから態々屋上の鍵を盗んだのに…やらかしぞんだ。

 

「まぁ、誰にも見せたりしないさ。君が7年間振り絞れなかった勇気をやっとこさ振り絞った結果だからな。」

「じゃあ、撮ったりするなよ。」

「それはそれ、これはこれ。」

 

 スマホを眺めながらニヤニヤする秋に対して僕は軽くため息を吐いた。コイツはどうも変な性癖があるらしく、曰く勇気を振り絞る誰かの真っ赤に染まった苦しそうな表情や絞りに絞った声にもならない様な苦しそうな声が好きだとか。

 初めて聞いた時は軽く引いたっけ。奴のスマホの中には大量のそう言う映像がファイル別に入っているし、寝る時はイヤホンでその音声をランダム再生して寝るらしい。しかも、一番厄介なのはコイツ中々にモテるのだ。つまり勇気を振り絞って告白してくる様な女の子がいれば全員受け入れてしまうクズなのである。確か先日で19股になったらしい。本当に死んでくれ。

 

「これで将吾のコレクションは46個目。いやぁ〜君のソレは質が良いからねぇ…ウチとしては嬉しい限りでサァ…」

「僕はクスリか何かかよ。」

「俺としては依存性は大差無いと思っているよ。君は少し俺の性癖を歪めたって言う自覚を持った方が良い。」

「ボケが重い!」

 

 秋が意味の分からない言語を話しているのを僕がツッコむ。いつものルーティン。いつもの風景。

 正直、振られてだいぶ精神的に参ってしまっていたのだが、この茜色の空気に当てられたせいか、少し整理が着いてきた気がする。

 多分、秋のおかげか。

 性癖は終わってるし、女癖も悪いがやっぱり良い友人である。

 

「一応、この映像君に送っておくよ。」

「要らないんだけど…」

「まぁ、御守りにしといてくれ。」

 

 秋は僕のSNSアカウントにその映像を送るとふと、僕の顔を見つめた。

 

「うん、因みにだけど屋上の鍵。誰が持ってるんだろうか?」

 

 そこまで言ってから僕は自分の過ちに気付く。ポケットに突っ込みプラ製のストラップを掴みポケットの外へと手繰り出した。

 

「やばっ…!」

 

 それは教員室から盗んだ屋上の鍵だ。逃げ帰った手前、すっかり忘れていた。

 

「早めに閉めに行った方が良いと思うよ。明日になったら絶対バレるから。」

「…で、でもなぁ…春乃さんまだ居るだろ?」

 

 僕は呟く様に秋に問いかけるが、その中で秋はただ肩を叩くだけ。

 ぽんっと行ってこいとばかりにニヤニヤとする。

 

「お前は本当にクソッタレだよ。」

 

仕方なく僕はまた走り出した。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 気まずい。最高、最悪レベルに気まずい。こんな事ならば、ロマンチックに屋上で告白とか考えなければよかった。暗くなっていく空が屋上に続くドア隙間から見える。

 いない事を祈ってみるが電話をしているのか彼女の声が響いている。希望は断たれたと言っていいだろう。

 トンっと最後の段を上り終えた。短い階段だ。僕の心とは裏腹にそう時間はかかるまい。

 ドアの向こうにいる彼女に声を掛けようとドアノブを握って捻る。あー、嫌だ。あんなに大人げ無く泣いて逃げたのだ。流石に羞恥心やらなんやらで頭がいっぱいだ。

 

「パパはもう少し私を信用した方が良いと思うの!!成人の儀式はちゃんと済ますから!」

 

 …あれ?声優変わった?

 

 扉の隙間から声が響く。その声は彼女の声ではない。だが、そこに居るのは確かに彼女だけ、つまり彼女の声のはずなのだが。声色どころかそもそも喉から変わっている。いつもの酒焼き声の様な濁声はどこに言ったのだろうか。まるで綺麗な風鈴の様な涼やかな声。

 ふと、途中まで開けていた重い扉を精一杯開けてみた。見れば彼女は電話に夢中でこちらに気付いていない様だ。

 

「だから、それデマだから!!地球にはウルト◯マンも仮面ラ◯ダーも居ないから!

え?…テレビに映ってるって…それは子供用の作り物で…!!」

 

 なんだか苦労してる様子だ。

 

「とにかく助っ人とか要らないから!私一人で出来るからね!!

え……あー、もう、わかったよ!」

 

 話しかけるかかけまいか迷っていた、その瞬間だった。プシューーーーっと自転車のタイヤの空気が抜ける様な音が響く。

 ガコンッと響くは重厚ある鉄の音。

 

 見れば彼女の頭は()()()()()()()()()()

 

「………は?」

 

 まるでスプラッタホラーの様に、まるで戦場写真の様に、現実味の無い何かエグいものを口に無理やり流し込まれた思いだった。ショッキングと一言言ってしまえば早いがそんな物では済ませられない。

 

 だが、そんなトラウマ一歩手前の思い出も次の一瞬で全て別の物に置き換わった。

 

「………あれ、飯島くんまだ居たんだ……。」

 

 割れた頭の破片をゆっくりと下に下ろして、ぶらんと揺らしながら、彼女は振り返った。

 

 その破片の奥にはいつもの春乃さんからは考えられない程に綺麗な、否、綺麗過ぎる顔があった。

 流れるように腰まで落ちた髪はどう言う原理か、銀髪にピンクの水玉模様が点在しており。顔はまるで彫刻で掘られた後、綺麗にやすった様に滑らかな曲線でこの世界で一番の美女を検索して描き出しているみたいだ。

 彼女はゆっくりと僕に向けて手を伸ばす。まるで僕を望む様にゆったりと、そして…

 

「ごめんね。死んで。」

 

綺麗な声色でそう呟いた。

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