ワレワレハ侵略者だ!! 作:ワタシニホンゴワカリマセーン
中は思ったより不思議空間ではなかった。普通にキッチンがあって普通にテーブルがあって普通に椅子があって普通にソファーがあって普通にテレビがあって…
一般的な一軒家のリビングと言った風景だ。だけど、窓から見える景色は現在19時を示しているにも関わらず青空で太陽がギラギラと燃えている。
彼女は流れるようにリビングの椅子一つに座ると僕にも「座れば?」と促してくる。それに従った。
「じゃあ、説明だったね。どこから始めようか。」
そう呟けば、また彼女は春乃さんの顔をかぽんっと外すとテーブルに置く。彼女の顔を再び見る、流れる様に長髪の白ベースのピンクの水玉模様の髪が肩に落ちれば、さっき僕を殺そうとした綺麗な顔があった。
「じゃあ、私の正体からだね。
私はこの星からだいぶ離れた星からやってきた宇宙人だよ。名前はハル・ハール。
ハルからやってきたハルンハルだよ。」
「ちょっと待ってくれ。ハルで脳みそが忙殺されそうだ。」
僕は思わず彼女を静止する様に手を伸ばす。ハルハルハル…意味が何一つ分からない。初心者に専門用語を使って説明しようとするな。
それを見て彼女は手を顎に当てて、思考し始めた。
「あー、私の星の言語では地球で言うところの『ハ』と『ル』それぞれ一単語に120通りの意味があるからね。それぞれイントネーションがちょっとずつ変わったりするけど。地球人だと分かりにくいかもね。
ちなみに名前の次に出たハルは『ハ』が地上って意味で『ル』が球体って意味。つまる地球って意味だね。勿論貴方の星じゃなくて私の星を指してるよ。『ハルンハル』は私たちの総称、所謂『人間』みたいな物だと思っていて。」
ハとルで言語を集結している生命体か…
「あ、別にハとルだけで話してる訳じゃ無いからね。ハとルの言語が多いだけでアとかカともか普通に使うから。」
別にそう言う事でも無かったらしい。
正直、春乃さんの顔が衝撃すぎて話が半分以上入ってこなかった少ない情報を咀嚼しつつ、質問を考える。そうしてやっと一番の質問を聞き忘れていた事を思い出した。
「じゃ、じゃあ、ハル…さん?
さっき言っていた地球侵略とは文字通りの意味で?」
「うん、文字通り地球侵略。私の星ではね、7歳を超えると別の星に連れてかれて18歳までにその星を侵略するって言う成人の儀式があるんだ。」
なんて迷惑な儀式だ。今すぐに歴史から抹消しろ。
「それでね。失敗するとお腹に埋め込まれてる爆弾が爆発して死んじゃうんだ。」
「オーケーオーケー。何処からやる?国会議事堂あたりを焼け野原にする?大丈夫大丈夫、大魔◯峠が許されたんだ。僕たちも許される。」
「手のひら返しが凄いし、発想が怖いね!私は平和主義だから平和的侵略を目指そう!」
「僕を殺そうと追いかけ回して……平和?」
「あの時はアレが一番平和的な解決法だったから。」
それはディストピア的な平和の話かな?
だいぶ彼女の支配する地球が不安になってきたぞ。
「というか18歳?あと3年で地球侵略しなくちゃ行けないの?
普通に武力行使以外に選択肢が無くないっすか?」
時間が思ったよりギリギリで僕は深刻に受け止め始める。正直、ギリギリどころかもう詰んでいると言っても過言では無い。
「だいじょーぶ大丈夫、その時はハルに帰って地球の統治者名の部分をちょこちょこ〜っと改竄しとけばオーケーよ。」
「小賢しいな。」
まるで未発見の星に勝手に名前をつけるような蛮行だ。いや、よく考えたら普通のことだし別にこっちに被害全く無いな。勝手にしてくれ。
「そう言えば晩ご飯まだだったよね。食べてく?」
「ハルさん、マイペースって言われない?」
「言われない。友達いないから。じゃあ、用意するから待ってて。」
彼女はそういえば、キッチンの方へ引っ込んでしまった。まだイエスもノーも言っていないんだけどな。
仕方なく席で待っていると、ぶるっと身震いした。なんか視線を感じる。見れば虚な瞳で春乃さんの顔がテーブルの上から僕を見つめていた。夢に出てきそうだ。
しかし、と思う。そう言えばなんでハルはこんな仮面?なんか被って居るのだろうか。僕的にはこっちの顔の方が好みだが、あの独特すぎる髪の色以外を除けば見た目人間そのものだし、そっちの方が得する事多い気がするのだが。
「はい、出来たよ〜」
僅か3分もしないうちに彼女はキッチンから姿を現す。両手には地球では見ない料理が並んでいた。
「は、早かったね。」
「人間の物差しで考えないで欲しいな。手なら何本でもあるんだよ。」
「え、加熱時間とか……」
「サラダとか刺身しかないからダイジョーブ!」
「でも、それ明らかに地球の食材使ってないよね?地球人は食べれるの?」
「大丈夫だよ、ちょっと体の構造が変わるくらいで問題なし!」
「それ、僕にとっては大問題なんだけど……」
そう悪態は吐けど彼女がテーブルに着き、その料理を摘み始めた頃には僕もその料理たちを摘み始めていた。好きな子の手料理である。食べないわけがない。
「そう言えばハルさんってなんで……この仮面を被っているの?」
何かヌチャヌチャした物を食べながらそう問いかける。味は良い。
僕の問いかけに何故か彼女は少し顔を歪めた。
「うん…?あー、この顔も実は擬態なんだ。本当は体全体が触手で出来てる。」
「え、それが本当の顔じゃ無いの?じゃあ、擬態の仮面の下でまた擬態してたって事…?
なぜ……?」
「いや、実はこのマスクを付け始めた時は私自身が擬態なんて出来なかったんだ。だけどちょっとした事で擬態出来るようになって、マスクの状態で今まで生きてきたし、そっちの方が楽だったからそのままにしてたんだ……だけど、中学生くらいから私のこのマスクより可愛い女子たちから地味な見た目を引き合いに出されてマウント取られ始めて…」
そして、青筋を立てながら呟いた。
「何か言われる度に『だけど、私の本当の顔の方がコイツらより100倍可愛いしな…』って内心で自己肯定する為に擬態してる。」.
「切実………!!」