ワレワレハ侵略者だ!! 作:ワタシニホンゴワカリマセーン
そんな話をしているうちに20時が過ぎていた。夜中の森を歩かせるわけには行かないとハルさんが家に送ってくれたのだが、その方法がまさかのハルさんの家をそのまま動かして我が家の地下に瞬間移動するとの事だった。どうやら彼女の家は所謂UFOらしい。
UFOから出て彼女にお礼を言えば軽く流して彼女はまた例の山に戻っていった。これが日常になる日が来るのだろうか。まぁ、それはそれで嬉しい様な気もするが、ちょっと大変そうだな。
はぁ……………なんだか今日は疲れてしまった。さっさと風呂入って寝よう。
我が家の玄関を抜ければ「「ニャ〜、ニャ〜」」とデュエットの様に綺麗にハモった鳴き声が響く。一つは明らかに猫の鳴き声だ。ウチで飼っている猫の『ミー』の鳴き声だろう。だが、もう片方は違う。
僕は靴を脱いでリビングへ向かう。そうしてあるものを見て呆れた目線を向けつつ話しかけた。
「ただいま。
そこには猫耳カチューシャを付けた中学生くらいの少女がソファーで横になりお腹の上にいるミーと遊びながら眠たげな目線をこちらに向けていた。
"飯島
そして最大の特徴は…
「ニャにしてたの?こんニャ時間まで…ご飯は?」
「な」が「にゃ」になる。そう言う呪いというか何というか。子供のお遊びならともかく本当に子供の頃から全くそれが変わらないのだ。
「友達んとこいってた。飯はその友達の家で貰ったよ。」
そう言いながらキッチンでコップに水を注ぎ飲み干す。思い出すは会話中に出してくれたハルさんの手作り料理…どういう素材なのかは全く分からなかったけど、すっごい美味しかった事だけはわかる。
「友達……
「何故そう思う?」
「雌の臭いがするってミーが言ってる。」
「ふむ、ハルさんの匂いが付いてるって言われるとなんだか悪い気はしないな。むしろ、エッチ。」
僕がそう言えば和猫はミーを抱いてソファーから立ち退きズザっと後退った。
「キモい。マジでキモい。コレの妹だって事実がこれ以上ニャいくらい嫌だ。私の血を全部抜いて兄ぃとの関係断ちたい。
なんだったら猫に転生したい。」
「そこまで言う必要ないだろ。後、お前にとって猫になりたいのは手段じゃ無くて目的だろーが。」
「猫は気まぐれニャの!」
「答えになっとらん!!」
和猫が占領していたソファーにドサっと座り込み、体をソファーに埋める。
ため息と共に漏れ出るは魂だろうか。多分そうだろうな。擦り切れてる気がする。それだけ今日はめちゃくちゃに疲れたのだ。
「ニャ〜に?死んだ魚みたいな目ぇしてさ。」
「…死んだ魚好きだろ?」
「いくら好きでも非可食部に似てもらっても困るニャ。」
思わずと眉を寄せながら和猫はそう言う。猫って丸ごと行くイメージあるけど、和猫は人間だからな。
「いや、マジでさ今日はめっ……ちゃ疲れたんだ。」
好きな子に告白したと思ったらポロリもあるよ!捕まったら即死!チキチキ!触手鬼ごっこが始まって、それからようやっと逃げ切ったと思ったら山奥まで彼女の家に行く事になって、それからはもう情報の津波よ。死ぬて。脳が。
「死んだ魚の目から血の涙が…!」
「なんか今日!僕!不幸な目にしかあってない!!」
「あ〜〜
良い子良い子と頭を撫で始める和猫。それに乗じて血の涙を流し始めた僕はしばらくソファーの上で隣に座った和猫の膝枕でうつ伏せになりながら泣いていた。
「よしよし、兄ぃは悪くニャいよぉ…悪いのは世間だからねぇ……」
「グスッ……ゲスッ…でも好きな子といっぱいお話出来てよかった
…グスッ…」
「は?」
「手作り料理作ってくれて…おいしかった…」
「は?死ね。」
そう言われた瞬間、和猫に思いっきり蹴っ飛ばされた。
「メンタルクソ雑魚ナメクジが私より先に青春しやがって、許せない。兄ぃは私より先に恋人作るの禁止!!私彼氏作る気ないけど!!」
「永遠に彼女作れないじゃん!!僕!!
あと『ニャ』忘れてる!!」
「兄ぃには私がいれば十分でしょ!!ニャ!!!」
「取ってつけた様な『ニャ』に驚きを隠せない!」
僕のツッコミに満足したのか、なんなのか和猫は少しため息を吐くとソファーに座り直した。
「…まぁ良いけど、そろそろ始まるよ。テレビ。」
「あ、そんな時間か。」
そう呟けば僕は慌てて立ち上がると、和猫の隣に座って、リモコンのスイッチを押した。
僕ら兄妹には昔から応援しているアイドルがいる。所謂"推し"と言うやつだが、今日、実はとある番組に出演する予定となっているのだ。今朝から2人で楽しみにしていたのだが、僕は唐突な告白熱にやられさっきまですっかり忘れてしまっていた。慌てていたのはその為である。
「…たしか、7チャンだっけ。」
「うん。あ、これだ。」
そう呟いたのは誰だろうか。何気なく映し出された画面には僕と変わらないくらいの少女が居た。
所謂ボブカットと言う奴なのだろうか、肩まで伸ばした髪が滑らかに揺れている。だが、目を引くのはその髪質では無く髪色。炎の様に真っ赤に塗られたその髪は黒髪が殆どの日本のテレビ番組では目立ちすぎた。
『今日のゲストは現在人気沸騰中のアイドル!「ナツ」さんで〜す!!!』
ただ、目を引いたのは多分、髪色だけでは無い。
少女は人好きのする笑みで頭を下げながらバラエティーのひな段に座った。
『凄い髪の毛だね。染めてるの?』
そう馴染みのある顔の芸能人が少女に問いかける。それに対して少女は笑みを浮かべながら髪をふわりと持ち上げた。
『いえ、地毛ですよ!生まれつきです。』
『へぇ!地毛!?黒とか黄色とかは見るけど、赤い髪は始めてみるね。』
少女は言われたが良いか悪いか自信満々に胸を張り出した。
『それはそうですよ!私、宇宙人なので!』
そんな軽いジョーク、間に受ける方が馬鹿らしい。だが、今日の僕はそんな馬鹿らしい
意外とこの星には宇宙人が潜んでいるのかも知れない。