始まりの勇者は未来で勇者学園に通う 〜幼馴染と魔王を添えて〜   作:黒色エンピツ

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10話:魔王勇者マオ

 

 

 

怯えやら厄介そうな視線を受けて居心地を悪くしていると、銀髪の少女が大股で目の前までやってきて俺の顔を掴んだ。

 

「貴様!顔をよく見せろ!」

 

「ふぁってにみふぇんやん……」

 

「なにをしているんですか……」

 

ジロジロと確認するようにじっくりと見るとひとつ頷いた。

 

「……貴様初だ──むぐ」

 

何を言おうとしたかがわかり、口を手で塞ぐ。

 

「お前誰だ?」

 

「ぷはっ!なんだ。私の顔を忘れたか──っと、そういえばあの頃はそもそも顔なんて無かったか。しかし、あんなに熱く互いを求め合って最後にはお前に貫かれたというのに……まあ良い。これで思い出させてやるとしよう。トリノ先生、次は私がやる」

 

「それは良いが、敬語をだな……」

 

「私よりも強くなればな」

 

「……ハァ」

 

なんとも扱いにくそうなやつだ。トリノ先生は苦労してそうだな。

 

「彼女と本当になにもなかったんですよね?怒りませんから正直に言ってください」

 

「初対面だし、それ怒る人が言うやつだろ」

 

さっきまで俺がいた場所に少女が立つ。

 

「『沈め』」

 

たった一言で案山子がその場に沈んでひしゃげた。

重力魔法か。……ん?待てよ、そういえば魔王も同じ単文で使ってたな。というか俺が使った重力魔法を重力魔法で相殺してきてたな。

 

「……あいつ俺が倒した初代魔王かも」

 

「えっ」

 

「どうやら思い出したようだな」

 

いつも間にか目の前にいた魔王はにんまりと笑ってそう言った。

あまり人に聞かせるような話ではないため声を潜める。

 

「お前なんで生きてるんだ?あの時間違いなく死んでたろ?いや、消えてたけどさ」

 

「知らん。私だって気が付いた時には見知らぬ女に抱かれた赤ん坊になっていたのだ。分かる訳がないだろう」

 

「……一応聞いとくけど、勇者なんだよな?」

 

「うむ、魔王だった私が勇者に選ばれるとは思ってもみなかったが、前世と違う生き方をしてみるのも一興だろう」

 

「そう言うって事は今度は魔王としてなにかするつもりはないんだな?」

 

「勿論だ。魔王としての力は未だ残っているが、かつて私が魔王になったのは私が1番強かったからという理由だけだからな。元々興味はあまりなかった」

 

「そうだったのか……」

 

もしかすると、今まで戦いしかしてこなかったから、最後に軽く話しただけでも楽しそうにしていたのか。

 

「それに、今は別にやりたい事も出来た」

 

「勇者として戦うんじゃないのか?」

 

「いいや違うな。……聞きたいか?」

 

にんまりと笑うと目を向けられる。焦らしているような言い方だが、ここまで言われたら聞きたいに決まってる。元魔王っていうのもあるし、ろくでもない事なら止めないと。

 

「ああ、聞きたい」

 

「ふふっ、それはだな──恋だ!」

 

「……こい?」

 

「恋愛だ」

 

「……そうか、頑張れよ!」

 

放っておいても良さそうだ。フィリアを連れて離れようとすると肩を掴まれた。

 

「まあ待て。元々は強い男を探そうと思っていたが貴様がいるなら丁度良い」

 

「な、なにがだよ……」

 

「私と結婚しろ!」

 

シン──と辺りが静まり返り、能力測定や先生までもが俺達を見ていた。

 

「……マオさん? 今、なんと言いましたか?もう一度、言ってくれますか?」

 

「む、なぜフィリア先生が聞いてくるのだ」

 

「いいですから、早く」

 

「アインと結婚するぞ!」

 

「許しませんが???」

 

もう一度フィリアが聞き直しても同じだった。

 

「なぜ先生に許されなければならないのだ!?」

 

「そ、それは……」

 

ちらりとフィリアが俺を見てくる。

なにか伝えたいんだろうか。しかし、不安気なその顔にとりあえず自信満々で頷いておいた。なんか言ってやれ!

すると不安気な顔がパッと晴れた。

 

「アインさんと、私の勇者様と結婚するのは私です!」

 

またしても音が消えてしまった。

昔色々と世話したり世話になったりし合った仲だがそんな風に思われているとは……

 

「アイン! どちらを選ぶのだ!」

 

「わ、私、ですよね……?」

 

魔王はともかく、フィリアは俺が幼馴染と結婚していた事を忘れているんだろうか。

いや、でも色んな人と結婚してる人もいたな。よし、それならいいんじゃないか?

 

「流石に気が早すぎるとは思うが、もし結婚するのならどっちとも結婚すればいいんじゃないか?」

 

三度空気が死んだ。いや、ひそひそと話しているのが聞こえる。

 

「……おかしい事なのか?」

 

「なるほどその手があったか!」

 

「出来れば私だけが良かったのですが……仕方ありませんね」

 

「待て待て待て待て待て!!?」

 

血相変えたラスが飛び込んできた。

 

「お、お前おかしいんじゃないか? 重婚なんて今の時代聞かないぞ!?」

 

そうだったのか……!!

 

「すまない……田舎から出てきたばかりだからわからなかった」

 

「別に私は構わんぞ。強い男にはその権利があるだろう」

 

「長く生きてきましたし、私からすれば珍しくもありませんが」

 

なるほど……つまり、俺達3人共、今の時代じゃ変わり者って訳か。

 

「コホンッ!今は測定中です。そういった話は全て終わった後にやりなさい。……最近の子は進んでいるんだな」

 

多分俺達が戻っているんじゃないかな。

 

 

 






このままどんどん文字数が増えそうだったのでここらへんで切っときます。
思っていた方向性ではあるけど大きく飛び跳ねちゃったな……
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