始まりの勇者は未来で勇者学園に通う 〜幼馴染と魔王を添えて〜 作:黒色エンピツ
目の前の椅子に座ったエルフが本を閉じる。すると、周囲から飛んできた鎖が俺の体に巻き付いてきた。
「おっと……」
『なっ──!?』
『いきなり何を!?』
『邪魔』
エルフの出した風により2人が吹き飛ばされる。
「『七属結界』『光条縛鎖』『四天封印』」
光の鎖が更に巻き付き、その場に倒されると周囲に全ての属性を含んだ結界と札を使った封印術が貼られた。
そのまま夥しい程の魔法が無詠唱で発動される。
いくつか見た事のある魔法もあれば見た事のない魔法もあった。
「まずは質問に答えてもらうよ。先に言っておくけど、嘘を吐いたら死ぬから気を付けてね」
「見れば分かる。条件付きの魔法だろ」
「わかってるならいいよ。じゃあまず君の名前は?」
「アイン」
「勇者としての君は何代目?」
「初代らしい」
「どこの村出身?」
「エラン村」
「使ってた武器は?」
「王国から出る前に貰った剣。城下町での値段はグラン銅貨20枚」
「勇者特剣は?」
「勇者特権ならある」
「殺した七大龍は?」
「地龍『グランドゥーエ』、雷龍『サンドロス』、風龍『ウィンディエ』、闇龍『ダークネス』」
「この時代に来る直前までなにをしてた?」
「魔王を倒した後に疲れて瓦礫に腰かけて一眠りしたらいつの間にかこの時代にきてた。もうそろそろ十分だろ。フィリア」
「……そうですね」
大量の魔法が霧散し、周囲と囲っていた結界も解かれ、鎖が緩んだ。
吹き飛ばされた2人も戻ってきた。
「も、もう大丈夫ですか?」
「ええ、少し本物か試しただけですから。驚かせてすみません。」
フィリアが頭を下げると2人が慌てて頭を上げるように言った。
では、と頭を上げて咳払いを1つする。
「なにがあったんですか……あの時貴方は、間違いなく死んでいたのに」
「え、嘘、俺死んでたの?」
「貴方の幼馴染が押していた押し車の中で息絶えているのも見ましたし、葬儀にも行きましたよ」
「迎えに、来てたんだな……」
手紙にああ書いたとはいえ、本当に来るとは。
「騎士の人に護衛をしてもらっていましたよ」
「おっさんが守ってくれてたなら安心だ」
「あ、あのぉ……」
恐る恐るミリアが手を上げる。
「なんですか。私と彼の2000以上振りの再会をしているのに」
「ご、ごめんなさい……その、2人の関係は……?」
「旅の途中でちょっと一緒に行動してただけだ。確か出会った時は、5体くらいのゴブリンに追い掛けられて泣いてた──」
「『黙りなさい!』」
「むぐ……」
言葉に魔力を乗せて強制的に黙らされる。
「いいですか、アインさん。その話はダメです。わかりましたか?」
1つ頷くと強制力が解かれた。
「貴女も、今聞いた事は他言無用ですよ?」
「は、はい……」
カクカクと何度も頷いていた。
「さて、このまま学園長に話を通しても構いませんが……その前に、アインさん、こちらへ」
「わかった」
「しゃがんでください」
言われた通りにフィリアの前に立ってしゃがむ──!?
「また会えて、本当に、本当に嬉しいです。もう、なにも言わずに消えないでください。お願いします」
首に手を回されて抱き締められる。慣れない女性との接触な上にまさかこんな事をされるとは思ってなくて両手が泳ぐ。
柔らかい! 良い匂い!! なにこれ!!?
「そ、そう簡単に死ぬつもりはないって」
「そう言って死んだじゃないですか」
「まあ……」
「それよりも抱き締め返してくれないんですか?」
身を少し離して至近距離で目と目が合う。
フィリアの期待をはらんだ瞳が俺を見つめる。対して俺は目が高速であちこちに泳ぎまくっていた。
「ちゃんと私の目を見てください」
「ぅ……ぇあ……」
「ストーーープッ!!!なにしているんですか!?」
ミリアが間に割って入ってフィリアと離れる。
ど、ドキドキした……! 女の体ってああなんだ……!!
「なにって、旧友との再会をこうして喜んでいるだけですが?」
「い、今のはそういうあれじゃないでしょう!? 見てください! 可哀想なくらいに真っ赤ですよ!」
「そうですね。昔は凛々しくかっこよかったですけれど、今こうして見れば可愛らしい普通の男の子のようです」
フィリアがくすくすと笑って目を細める。2000年以上生きてきていたからか、歳上のお姉さんのような余裕のある。
「ん、んん! 再会を喜ぶのも良いが、俺が消えた後の話を聞かせてほしい。」
「少しふざけ過ぎましたかね。わかりました。が、そちらの2人はどうしますか? 一応この話は各組織のトップレベルの人物しか知らない事です。それでも聞きますか?」
「わ、私は……き、聞きます。聞いてみたいです!」
「そうですか」『グラッドさん、これから彼について重要な話をしますが、聞きますか?』
『重大な……? それは一体……』
『ただの歴史の話ですよ。極一部の人しか知らない歴史ですけれどね』
『……むぅ』
隊長殿が唸り、表情が歪む。気にはなるが、聞いていいのかと悩んでいるようだ。
『……では、お聞きします』
『わかりました』
フィリアが小さく呟くと、隊長に小さな光が飛んでいき、溶け込む。
「これで古代言語がわかるはずです」
「あー、わかる?」
「おお……わかるぞ。便利な魔法だ」
こんな魔法も出来たんだな、と少し感動してしまう。昔は戦う事にしか使えなかったが、今ではこういった便利な使い方もできるようになるとは……
「立ち話もなんです。ゆっくりお茶でも飲みながら話しましょう」
フィリアが指を鳴らすと椅子と机にティーセットが飛んできた。
椅子に腰を下ろすと柔らかな感触に驚く。椅子1つとってもこんなに違うか……!!
紅茶がカップに注がれ、一口飲む。
「では、お話しましょうか。あの時なにがあったか」
派手な戦いはもうちょっと先です。俺だってかっこいい戦いを書いてみたいやい。
夥しい魔法、の所は本来であればルビをバッチバチに着けた厨二テイスト漂う魔法を滅茶苦茶書いてやろうと思いましたが、センスなくて諦めました。