始まりの勇者は未来で勇者学園に通う 〜幼馴染と魔王を添えて〜 作:黒色エンピツ
「急遽で悪いけれど、彼が今日から転入する事になったわ。仲良くして頂戴」
「アインだ」
訓練所に集まっていた人達の前で自己紹介をする。
「出身がかなり田舎の特殊な所からきたから古代言語しか喋れない。今はフィリアのお陰でなんとかなっているが次からはこっちのミリアに翻訳してもらいながら話す事になる。共通語の勉強はしていくつもりだが、しばらく迷惑をかけると思う。よろしく頼む」
ジロジロと興味津々といった視線を向けられる。だが、その中にはどこか敵意を感じるような視線もあった。
「なぁ、質問してもいいか」
「ああ、その前に名前を教えてほしい」
「俺はラスってんだ。なんで転入してきってだけのてめぇに態々フィリア先生が一緒にいるんだ?」
「……さあ?なんでだ?」
「決まってるじゃない。彼が私の唯一の勇者だからよ」
そう言うと周囲からの敵意と好奇の目が強まる。そのどさくさに紛れてフィリアが腕をそっと抱こうとするのを1歩動いて避けた。
「あら、つれないですね」
「勘弁してくれ……」
ただでさえ慣れてないんだから……
「お、おいぃ……? なんだってお前みたいなのポッと出がフィリア先生と……」
ラスが剣呑な雰囲気を出す。手を出してくるかと身構えた瞬間、拍手の音が響いた。
「そこまでだ。私の前で喧嘩は許さんぞ」
教師の男が俺とラスを睨む。なぜ俺が睨まれるんだ。
「くっ……」
「落ち着いたな? では私の自己紹介でもしようか。私はトリノ。これから君の担任を任された。困った事があれば言ってくれ」
そう言って差し伸ばされた手を握る。
「ああ、ありがとう」
「それと、フィリア先生に認められたとはいえ教師には敬語を使うように」
「すまない。敬語には慣れてなくてな。努力する……ます」
「うむ」
「また勉強しましょうね」
「……ああ」
嫌だなぁ……
「ではこれより能力測定を始める。まずは魔法だ。魔法の使えない者はあちらの方で離れておけ。使える者はこの場に留まるように」
使えない勇者がいるのかと思い、フィリアの耳に顔を寄せて囁く。
「使えない勇者もいるのか?」
「ん……ふぅ。えぇ、近接戦闘が得意な勇者は魔法よりも魔力操作で自己強化をする人が多いですから。それもあった魔法が使えない、もしくは得意ではない勇者も少なからずいます。……それと、次からはもっとこちらに寄って話してくださいね」
「ああ、わかった」
囁いた時にぴくりと跳ねたから嫌なのかと思ったが、驚いただけだろうか?
「分かれたな。それでは順番にそれぞれ得意な魔法を全力であそこにある案山子に当てるのだ。何、お前達の全力の魔法であってもこの訓練所の外へと影響がいく事はない。安心して力を出し切るがいい。では、まずは……そうだな。アインからだ」
トリノに呼ばれて前に出る。
「本当に全力でやってもいいのか……ですか?」
「構わんよ。そこのフィリア先生の結界はそうそう破壊される物ではないからな。この学園創立以来5回程しか壊れた事はないと聞いている。安心して全力を出すがいい」
その言葉にそっとフィリアの方を見ると全力で手をバツにして首を横に振っていた。
わかったと頷いて返す。
「トリノ先生、どの属性を使えばいいん……ですか?」
「ふむ、複数扱えるのか」
「7属性全て使えます」
「なるほど、では1番よく使う属性や使い慣れた魔法を使うといい」
「わかった」
「敬語を忘れるな」
「……ました」
どの属性も使うが……よし、決めた。
「『咎人を焼く地獄の業火よ。全てを焼き払え──』」
空中に魔法陣が形成されると地面が揺れ、魔力の高まりと共に割れた大地から炎が吹き出す。
最大火力ではないし、これでいいだろう。
「『インフェ──』」
「あ、それ禁術ですよ。使っちゃダメです」
炎の勢いが一気に落ち込んだ。
「……そうなのか」
「はい、なので別の魔法を使ってください」
「わかった。『極光よ、仇なす者に──』」
「それも禁術です」
「……これもなのか」
それから何度も魔法を唱えようとする度にフィリアに止められる。どれもこれも禁術ばっかりじゃないか……時の流れと言うべきか。
「わかりました。私が指定します。トリノ先生、構いませんか?」
「え、ええ……正直、こちらも知らない禁術ばかりで困っているので、指定してもらえると助かります」
「ありがとうございます。では、『イグニス・フレア』を使ってください」
「わかった」
ぐっと拳を握ると腕の周りに複数の魔法陣が巻き付くように現れる。そのまま拳を引いて案山子へと殴る様に振ると炎が一直線に突き進み案山子を貫いくと結界に衝突して消えた。
「普通に貫いたけど……いいのか?」
「自動で修復してくれるので大丈夫です」
そう言われて案山子を見てみれば確かに修復していた。
「ところでフィリア」
「なんでしょう」
「この空気をどうしたらいい?」
後ろを見れば何度も禁術を発動しそうになった事で信じられないといった目で見られていた。
いや、一部好戦的な目をしているし、一部は心配そうに見ているか。
「アインさん、安心してください。もし、友達が出来なくても私はずっと一緒にいますからね」(このまま友人が出来なければずっと二人きりですし)
フィリアがにこりと笑った。
「……そうかぁ」
折角の学園に通うんだから友達が欲しかったなぁ……
やっとこういうクソ強主人公要素を出せました。
やっぱなろう系ってんならこれよ。こういうの1回書いてみたかったのよ。満足です。