シンデレラダービー 〜にゅーじぇねれーしょん〜 作:電動ガン
3学期になった。もう少ししたら新入生が入ってくる。蘭子とか。まぁそれは良い。とんでもないことになった。なんとゴルシが私に追い込み脚を完全に備えさせると猛特訓を申し出たからだ。やばい。ゴルシワープ身につけられちゃう。
「オラオラぁ!!!ブルー!!!もっと走れぇ!!!」
「ぎっ・・・!!」
「もっともっとぉ!!!追い込みはそんなもんじゃねぇぞぉ!!!」
「ぐぎ・・・!!!」
ものすごく走らされてる。その相手は・・・
「ブルーちゃん、頑張って!」
「はぁっ・・・!!!」
なんとスズカ先輩相手である。並外れたスピードを持つスズカ先輩を捉え、ぶち抜けと言われているのだ。
「はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」
「ブルー。思いだせ。あたしはかなりもう追い込み脚のなんたるかは教えたぞ。」
「えっ・・・」
「屋台・・・売り歩き・・・仕入れ・・・」
「・・・。」
「もう一回だ!!!」
「わか・・・った!!!」
「スズカようもうちっとスピード上げらんねーか?」
「え・・・でも・・・」
「スズカをぶち抜けばブルーは敵なしだ!!!本気でやってくれよ。」
「でも・・・」
「スズカ。」
「!?」
「あたしはよ。本気でブルーに教えてるつもりだ。無駄な事はしねぇゴルシちゃんがだ。ブルーなら・・・あたしの後を継げる。」
「・・・。」
「スズカよう、可愛がるだけじゃだめだ。可愛い可愛い後輩だがよ。だからこそ。本気になってもらわなきゃあなぁ。」
「・・・わかったわ。」
ゴォッッッ!!!とスズカ先輩の出る雰囲気が変わる。目から炎が吹き出しているように見える。
「・・・
「ッッッ!?!?」
「本気で、行くから。」
「は、はい・・・!」
「ブルーは本気で対峙した事のけいけんが少ねえ。これで少し変りゃあ・・・」
まずい・・・まずい!このままだと食い殺される!!!
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「がは・・・げほ・・・」
結局、スズカ先輩をぶち抜く事は出来なかった。走る度に離されていって相手にもならなかった。
「ブルー、水飲め。」
「げほ・・・」
「はぁ・・・ほら。」
バシャバシャと水が顔に掛けられる。口に入った物を飲んだ。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「ブルー、教えた事を思い出せって言ったろうが。」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ッ。」
「はぁ・・・もっと詰め込まねぇとダメかぁ?」
ゴルシはうんうんと頭を傾げながら呟いている。私に何をさせる気なんだろう。
「とりあえずあたしの4587の必殺技のうちのひとつでも身に付けられれば勝負になるんだがなぁ・・・」
「うっ・・・」
「ブルー。」
「な・・・なに・・・?」
「真面目にやれ。」
「・・・!」
「あたしはやる時はいつも真面目だ。遊ぶ時は遊ぶがな!」
「・・・。」
「ブルー今日は終わりだ。覚えとけよ。遊ぶ時は遊ぶ。真面目にやる時はやる。」
「・・・。」
私は・・・いつも真面目にやってた筈だ。
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
ある日のスピカ部室。あの日から私はゴルシにいつも扱かれている・・・と思いきや、屋台の手伝いに連れ去られたり、漁に連れ出されたり、山菜取りに行かされたりしていた。
「ふぅ・・・」
今日はお好み焼きの仕入れに行かされた。疲れた・・・
「おーブルー、行って来たか。」
「うん。」
「うんうんお好み焼き屋台やる時はまた呼ぶからな。」
「わかった。」
こうしてやってる時、わかった事がある。ゴルシはいつも遊ぶ時と真面目にやる時を分けていると思ったが。ここ最近、
「・・・。」
「いいか、ブルー。」
「ッ・・・何?」
この目だ・・・ゴルシは時折こういう目で私を見てくる。私の奥底を見ているような・・・そんな目。
「お前には脚も足りなければ遊びも足りねえ。あたしが見るに・・・お前は余裕があるのに捨てている。」
「・・・そうなの?」
「おうよ。」
私は・・・既に人生を1周している。人生経験ならある・・・と思っていたが、このゴルシ、まるで人生・・・ウマ生を何百周もした様な威圧感を感じた・・・なにこれ。
「しっちゃかめっちゃかだな〜〜〜ブルーは。これまでやらせた事、卒なく熟すかと思えばへっぴり腰だったりおどおどしたり・・・子供か大人かわかんねーよ。」
「・・・ッ。」
「まぁ子供なんだろうけどな。」
「・・・そうだよ・・・」
「あたしの方が人生では先輩だ!!!頼る事があればいつでも頼れよな!!!」
「ゴルシに頼むと後が怖いから・・・」
「こんにゃろ。まぁそういうところ大人っぽいよな。」
「・・・。」
私には・・・何が足りないんだろう。ウマとしての人生は・・・初めてだ。わからない事だらけ。どうしよう・・・
「・・・ぐす・・・」
「お、おいおい!なんで泣くんだよ!?!?」
「ぐす・・・ぐす・・・」
「ブルー!どうしたんだ!?どっか痛ぇのか!?」
「ぐす・・・うえ・・・」
「こんにちはーーーー!!!・・・あ?」
「ご機嫌ようって・・・」
「トレーナーさん・・・あら?」
「・・・やべー。」
「ぐす・・・うぇ・・・ぐす。」
「ゴールドシップさん・・・これはどういう事ですの?」
「ああ・・・いや・・・えと・・・」
「スズカさん。」
「死刑。」
「えっ。」
ぎゃあああああああーーーーーーーッッッッ!!!!!!ゴルシの悲鳴がこだました。
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
ゴルシ死刑事件から数日後。私に足りない物はなんなのかとりあえずノートに纏めて見た。トレーナーにも頼ったんだけどトレーナーは静観。自分で答えを見つけろって言われた。こういう時道標になるのがトレーナーじゃないの!?と小寺トレーナーに泣きついたのだがトレーナー毎にやり方はあると諭されてしまった。
「ふん・・・トレーナー、教えてやっても良いんじゃないか?」
「だがなブライアン、この件はブルーが直接自分で見つけて克服しないと意味が無いだろ?」
「・・・それもそうだな。」
ブライアンさんも小寺トレーナーも答えを知ってる風だった。なんで?そんなわかりやすい?
「ブルー。今日は何しろって言われた?」
「ゴルシに・・・遊んで来いって・・・」
「遊んでこいって言われてるのにここにいる時点でダメだな。」
「ああ。」
「むぅ・・・」
ダメなのか・・・でも今日は平日。遊びに行っても今の時間では補導されてしまう。
「ブルー・・・少しだけヒントをやろう。」
「何?ブライアンさん。」
「ウマ娘の遊びはな・・・かけっこだ。」
「・・・?」
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
かけっこ。詰まるところちびっ子レース。私は・・・ウマ娘として恥ずかしながら、かけっこはして来なかった。家で人形で遊んだり、花の図鑑を読んだり、友達の家に遊びに行ったり。かけっこはしてなかった。
「・・・。」
「あらぁ。凛ちゃん。」
「まゆ・・・」
カフェテリアでコーヒーを飲みながら悩んでいるとまゆに声を掛けられた。
「まゆ・・・ホープフルステークスは残念だったね・・・」
「はい・・・でもまゆにも足りない物があったので。」
「美嘉・・・強かったね。」
「はい・・・とっても・・・とーっても強かったです。」
「・・・ねぇ、まゆ。」
「はい?」
「強いって、なんだろう。」
「そうですねぇ・・・わかりません。」
「そっか・・・」
「でもひとつだけわかることがあります。」
「何?」
「速い事は強い事ではありますが・・・強い事は速い事ではありません。」
「・・・どういう事?」
「そこを履き違えていたから、ホープフルステークスでまゆは負けました。」
「・・・。」
「美嘉さんは強かったんです。」
「・・・そうだね。」
「本当に強かった・・・でも。」
「?」
「まだまゆが勝てる強さです。」
「そうなんだ・・・」
「はい。凛ちゃん。」
「なに?」
「強さを知りたいなら菜々さんに会いに行きましょう。」
「え?なんで?」
「菜々さんは決して速くありません・・・でも、隔絶した強さを持つウマ娘です。」
「・・・・そうなの?」
「はい。私が連絡を取っておきますねぇ。」
「え!?」
シュポ!とLANEを送る音がした。まゆ!?
「はい!これでおっけー!」
「まゆ!?」
「近くにいるって言ったのですぐ来てくれますよぉ。」
「ええ・・・!?」
するとトトトっと走る音がした。同時に背筋が粟立つような感覚。何が・・・何が来たの・・・!?
「まゆちゃん!」
「菜々さぁん♪」
其処には・・・前世から何も変わらない姿をした、菜々さんがいた。なんでメイド服着てるの!!?