シンデレラダービー 〜にゅーじぇねれーしょん〜 作:電動ガン
6月になった。メイクデビューの出走表が出た。私は早速トレーナーに見せてもらい、顔を顰めた。
「・・・。」
「まぁブルーなら余裕だろう。」
余裕?何言ってるんだ。
クローバーエリン
デンコウタマミ
ユカリオーケストラ
この3人が、メイクデビューの出走表で確認された。ちょっと・・・勝てるか危うい。
「・・・。」
「ブルー?」
どうする・・・今からこの3人のトレーニングを偵察しに行って、作戦だけでも確認するか?いやそれももう無理だろう。潜り込むのも厳しい。どうする・・・
「ねぇ・・・トレーナー。」
「なんだ?」
「この・・・クローバーエリン、デンコウタマミ、ユカリオーケストラの3人の・・・作戦ってわかる?」
「そうだな・・・クローバーエリンは模擬レースした時と一緒なら逃げ。デンコウタマミは差し、ユカリオーケストラも差しだ。その3人が気になるのか?」
「うん・・・ちょっと勝てるか危うい。」
「大丈夫だ。ブルーの成長度合いは他と比べてもダントツ。勝てるか勝てないかは、俺が作戦を正しく伝えられるかに掛かってる。心配する事ないよ。」
「・・・そっか。」
「おう。」
トレーナーを・・・信じられるかどうかに掛かってるのか。じゃあトレーナーを信じて、その通りの作戦でやろう。自分の主観じゃ、それこそしてやられる。
「トレーナー・・・私、頑張るよ。」
「そうじゃないと困るな。」
「うん。」
メイクデビューまで・・・残り1週間。
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・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
メイクデビュー前の最後の休み。この日はトレーニングしないでリフレッシュに努めろと言われたので寮の部屋でのんびりしてる。喉乾いたな。
「冷蔵庫は・・・何もない。」
補充を忘れてしまったか・・・後で自販機行って何か買ってこよう。さてどうするか。
「コーヒー飲みに行こ。」
食堂のコーヒーメーカーで一杯飲もう。そうして私は部屋を出て食堂に向かった。
「あら。」
「え?」
食堂に到着すると声を掛けられた。キング先輩だ。
「ちょうど良かったわブルー。ちょっと手伝ってくださらないかしら?」
「え、ええ。いいですけど。」
「じゃあこれ付けて。」
「え?」
そう言って渡されたのはピンクのエプロン。何するの?キッチンに連れ込まれ冷蔵庫の前に立たされた。
「さぁ始めるわよ!クッキングヘイロー!」
「は?」
ウマホが三脚に固定してある。そしてその側にパソコン。配信だこれ。
「今日の助手はその辺で捕まえたナリタブルーライトさんよ。今週末メイクデビューだからみんな応援してあげてね。」
『ナリタ?』
『あのナリタか』
『期待出来るな』
『おいおいキングちゃんメイクデビュー前の大事な時期に捕まえるんじゃないよ。』
『今日の犠牲者メイクデビュー直前なのかよ。』
コメントが次々と流れていく。こういう個人配信は私もやった事無いな。
「大丈夫。メイクデビュー前だってリラックスする事が重要なの。こうして緊張を解してあげるのも一流たる私の努めよ!おーっほっほっほ!」
「はぁ・・・」
『ナリタブルーライト困惑顔だぞ。』
『さてはなんも説明してないな。』
『ブルーちゃんキリッとした顔でかわちいねぇ。』
『まぁ緊張を解してあげるのも大事だわな。』
『はいはい一流一流。』
同接が2000もある。人気配信なんだなぁ。クッキングヘイローって言うんだし。お料理配信なのかな。
「それじゃ始めて行くわ。今日のメニューは親子丼よ。京風で作るわ。」
「おー。」
『気の抜けたおーで芝2000メートル。』
『まんまるお口でかわちいねぇ。』
『おいやばい奴おるぞ。』
『キングの拉致はえげつない。』
「いいから!先ずは割下を作るわ!めんつゆ、白だし、を用意して・・・ブルー、冷蔵庫から出して。」
「はい。」
私は冷蔵庫からめんつゆを取り出して並べる。さぁどうなることやら・・・
⏰
「おーっほっほっほ!!キングの一流親子丼の完成よ!」
『おー』
『美味そう。』
『少な、量足りるんか?』
「足りるわよ!!!」
親子丼が完成した。良い匂いだ。お昼ご飯は食べたけど。親子丼食べるくらいいっか。
「さぁ早速実食よ。」
「わー。」
『ブルーちゃん・・・』
『おいたわしやブルーちゃん・・・』
『おいキング。マトモに作ったのか。』
『手順はマトモなのになぁ・・・』
なんかコメントが不穏だ。とりあえず一口パクリ・・・!?
「うっ・・・」
「ヴェア・・・」
『あーあ。』
『なんで失敗するんやろなぁ。』
『あとでアーカイブ見返してミスったところ探そうな。』
『いつも見つかってねぇだろがい。』
『じゃあなんであんな反応するんだよ。』
なんだこれ。しょっぱ苦甘い。これ親子丼?
「うう・・・」
「うご・・・」
「ご、ごめんなさいね・・・ブルー・・・なんかいつも上手く行かなくて・・・」
「最初に言ってください・・・」
『これだから助手に名乗り出る奴いなくて拉致する羽目になるんだよ。』
『いたいけな後輩を誑かすな。』
『一流(爆笑)』
『これでメイクデビュー負けたらキングのせいだかんな(憤怒)』
まぁ食べられんほど不味いわけじゃないから・・・この不思議な味は表現しづらいけど。
「むしゃむしゃむしゃ。」
「ブルー・・・」
『おー。』
『すげぇあのキング料理食べてるぞ。』
『ブルーちゃんお腹壊すよ!!!』
『やめろ・・・もういいッッッ!!!』
『やめてぇぇぇぇぇぇ』
「ご馳走様。」
「・・・。」
「キング先輩はもうちょっとレシピ確認しながら作ってくださいよ。おばか先輩って呼びますよ。」
「ぐぅ・・・」
『グゥの音が出るほど直球。』
『これほど迄に辛辣な後輩が今までいただろうか。』
『いいぞブルーちゃんもっと言ってやれ。』
『食材を無駄にするな。』
「ごほん・・・今日のクッキングヘイローはここまでよ。次回はロールキャベツを作るわ!お楽しみに!」
「ええ・・・」
『全てが良い女だけど諦めが悪い。』
『トレーナー連れてこいトレーナー。』
『キャベツ君死す。』
『次回の犠牲者は誰だろな。』
キング先輩がパソコン操作して終了。まぁ・・・えげつない料理食べさせられたけど面白かった。
「ブルー、一応胃薬飲んでおきなさい。」
「じゃあ食べさせないでくださいよ・・・」
「今日は上手くいくと思ったのよ!」
反省とかしないのかこの先輩。大丈夫だろうか・・・胃薬を飲んだ。
「さて、コーヒーコーヒーっと。」
コーヒーを淹れて、一休み。帰りに自販機に寄ってジュース買って帰った。
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・・・・・・・
・・・・・・
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週末。私のメイクデビューの日。福島レース場、1600メートル、芝が私のメイクデビューだ。そしてパドック。
「・・・。」
ばさっとジャージを脱いでアピール。
『ナリタブルーライトです。チーム・スピカ。4番人気です。』
『良い感じに仕上がってますね。緊張しているのか少々表情が固いですが。』
『今日はどんな走りを見せてくれるのか、楽しみですね。』
パドックを終えて控室へ。
「ブルー。」
「何、トレーナー。」
「今日の作戦を伝える。」
「うん。」
さて今日はどう出るか・・・
「良いかブルー。今日は逃げが2人、先行が4人、差しが2人。前に詰まったレースになる。」
「うん。」
「だから今日は追い込みだ。最後方に着くんだ。」
「わかった。」
「パドックで見た感じ、ブルー程調子を整えられたウマ娘はいない。最高で普通、と言った感じだ。」
「うん。」
「全力で・・・楽しんで来い!」
「・・・うん!」
そして時間になり、コースへ。ここが・・・公式レースのコース。観客が大勢いて、確かにメンコが無かったら驚いてたかも。
「・・・。」
芝の感触を確かめる。良だから・・・ちょっと軽い?まぁ問題無い。
「・・・ふぅ。」
始まる・・・始まるんだ。私のメイクデビューが。生涯で一度しか出られないメイクデビュー。どういうレース人生になるかは・・・まだわからない。
「・・・ゲートイン。」
ゲートに収まり深呼吸。前だけ見ればいい。他は放っておけばいい。私の走りに集中すればいい。それだけで・・・良い。
ガッシャン
「・・・!!」
・・・スタート!!!!