シンデレラダービー 〜にゅーじぇねれーしょん〜 作:電動ガン
夏。夏だ。暑い。そして夏合宿の時期。
「よし。着いたぞー」
「はーい。」
18人いるチーム・スピカは去年行ったボロ旅館には泊まれず、ホテルに泊まることになった。トレーナーは出費が・・・としくしくしていたが見なかったことにしよう。
「おー・・・普通のホテルだぁ。」
「まぁ普通のホテルだな。」
「美由紀、晶葉、これからは多分普通のホテルだよ。」
「いや、ボロ旅館だってスペ先輩に聞いたから・・・ちょっとボロ旅館を期待してたんだが。」
「いや・・・ボロ旅館は・・・」
「美由紀、ボロくても平気だよ?」
「いやボロいのは良くないよ。」
「閃烈なる蒼光よ!此度の宿は如何にして決定為されたか知っているか?」
「蘭子また新しいゲームに手を出したでしょ。」
「!?な、なぜわかった!?」
「だって呼び方変わってるし。」
「むぅ・・・」
「おなか空いちゃった!」
「法子はバスの中でしこたまドーナツ食べてたでしょ。」
「え〜?でも〜」
「晩御飯まで時間あるよまだ。」
「おーい!お前ら!」
のんびりしてたらトレーナーに集合をかけられた。
「お前ら部屋割りはこれな。荷物置いたら着替えて1年生以外は砂浜集合。1年生はコース行くぞ。」
「はーい。」
「わかりました〜」
「おうトレーナー、やるのは事前に渡されたメニューだけか?」
「ハアト・・・そうだな。とりあえず最初の1週間はそれ。後で追加を渡す。」
「おっけー」
「うふふふ・・・熱中症対策に甘酒・・・」
「うわ楓ちゃんまた甘酒持ってる。」
「お前ら・・・もうちょっと気を引き締めろよな。」
ホテルのカウンターで挨拶し、部屋へ。私は蘭子と相部屋だった。さっさと着替えて行こう。
「よし。行こ、蘭子。」
「うむ。」
玄関を出たらトレーナーが1年生を待っていたので蘭子はそこで合流し、私は砂浜へ。今日はスズカ先輩とずーっとトレーニングだ。スズカ先輩は秋にはアメリカに飛ぶと言っている。
「行くわ。ブルーちゃん。」
「はい。」
まずは目の前のことをこなさないとね。
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「ぜはぁ・・・はぁ・・・ごふ・・・」
「ふぅーーーーーー・・・・・」
めっっっっっっっっっっちゃ走った。スズカ先輩スピード増してない!?まじ!?
「そろそろご飯の時間ね。」
「はぁ・・・ふぅ・・・そうですね・・・」
「じゃ、戻りましょうか?」
「ですね・・・」
タオルでゴシゴシ汗を拭う。早くお風呂入りたい。お腹も空いたし。
「とりあえず90パーセントはメニューをこなしたかしら?」
「そうですね・・・」
90パーセントというのは今日は砂浜でトレーニングする子が多く、波打ち際ランが出来なかったから90パーセントだ。本当なら全部こなしたかったが・・・
「まぁ大丈夫よ。代わりに足回りのウェイトトレーニングしたし。」
「そうですか?」
スズカ先輩は走って、筋トレして、走って、筋トレしてを繰り返していた。それって本当に効果あるのか・・・?わからないが・・・トレーナーがやれって言ってるんだからこうかあるんだろう。ホテルの玄関に戻ってくるとヘロヘロになった1年生達が戻ってきてベンチでぐったりしていた。
「お、お前ら戻ってきたか。」
「はい。トレーナーさん。」
「スズカの事だからもっと走ってると思ってのメニューだったが・・・」
「いえ、今日はちょっとお腹の空き具合が・・・」
「そうか。昼少なくしたのか?」
「いえ、普通に食べましたよ?」
「ふむ・・・接種するエネルギー量に変化が見られるのか・・・?」
トレーナーはうむむと唸ってしまった。そしてはたと気がつくと1年生達に解散、風呂入って来いと号令を掛けた。
「スズカはちょっと体に変化が起きてると思う。ピークアウトかどうかはまだわからないが・・・些細な変化でも教えてくれ。」
「わかりました。」
「よし!それじゃ風呂入って飯だ飯!」
トレーナーもホテルに入っていく。私も早くお風呂入りたい・・・はやく・・・
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お風呂入って、ご飯も食べて、夜。良い感じの月明かりで散歩したら気分良いだろう。私は散歩に行くことにした蘭子に一緒に行くかと声をかけたがもう寝息を立てていた。
「静かに・・・よし。」
潮風を感じながら散歩する。海沿いの遊歩道をゆっくり歩いて行くと・・・なんか、明かりが見えた。
「なにあれ。」
近づいていくと・・・3人の人影、とコーヒーの匂い。
「おや・・・ブルーさん・・・」
「カフェさん、それと・・・」
「凛ちゃん!久しぶり〜」
「久しぶり凛ちゃん。」
そこにいたのはカフェさんと太田優さんと衛藤美紗希さんの3人だった。
「ここで何してるの?」
「夜の・・・コーヒーを・・・楽しんでいました・・・」
「カフェちゃんのコーヒーって美味しいよね。」
「うんうん達人〜って味がする。」
「いえいえ・・・私の腕はまだまだです・・・」
キャンプ用のミニコンロでコッヘルにお湯を沸かしている。それぞれの手にはもうミルで挽いた豆の入ったカップを持っている。
「ブルーさんも・・・飲みますか・・・?紙コップに・・・なりますが・・・」
「いや、私は遠慮しとこうかな。」
「私も〜夜に飲むと眠れなくなることあるけど我慢出来なくて〜」
「あたしはスッキリして逆に眠れる様になるよ?」
「それは美紗希ちゃんが独特なだけだよぉ〜」
「あはは。」
飲まないけど、ちょっとお話しはしようかな。お湯が沸く音と虫の音色をBGMにしながら海の香りを楽しむ。贅沢な夜だ。
「そうだ、2人とも名前はなんていうの?私ナリタブルーライト、中等部2年。」
「私はヨイチユウ!高等部1年だよ〜」
「あたしはミサキミサキ。高等部2年だよ。」
「そっか。」
「あ、お湯沸いたよ。」
カフェさんが手っ取り早くドリッパーにお湯を注ぎ、辺りにコーヒーの香りが充満する。良い匂いだ。
「2人はさ、レース、勝ってる?」
「私はクラシックなんだけど〜今やっと3勝クラスだよ〜」
「あたしもクラシックでOPになったばかり。」
「そうなんだ。」
「レースってほんと大変。いつも全力疾走だからさぁ〜メイク崩れたままインタビューでなきゃならない時だってあったし〜」
「あたしもそれ勘弁して欲しい・・・せめてメイク直しさせて〜!って何度思った事か・・・」
「ね。私ダート専だからいつも泥まみれインタビューだった。芝はいいな〜」
「芝もそんな良くないよ。顔中に芝のかけらついてるもん。」
「ええ〜〜〜?」
インタビューか・・・私はまだメイクデビューを勝っただけだからインタビューは受けた事ない。メイクデビューはトレーナーが受け答えしたし。流石に私も泥だらけ芝まみれでインタビューはしたくない・・・
「なのにさ〜トレーナーはすぐインタビュー出ろ!って言うんだよ?ひどくない?」
「ひどい〜」
「2人とも・・・私も考えなかったわけではありませんが・・・そういった汚れも勲章だと思えば・・・」
「でもカフェちゃん。髪もめちゃくちゃなことあるんだよ?」
「女の子としてそれはちょっと〜」
「むぅ・・・」
優さんと美紗希さんの言うことはもっともだ。インタビューはかっこいいところでやって欲しい。なんで走った直後にやらせたがるのか。
「レースを・・・走った・・・そのままの・・・感想が欲しいと・・・思ってるんですよ・・・仕方がないと・・・飲むしかありません・・・」
「うえ〜ん。」
「あたし達、もしG1走る事になったらもっとぐちゃぐちゃで出なきゃなんないの〜」
「それはいや〜!」
「あはは・・・」
「私なんて・・・天皇賞・・・3着だったにも関わらず・・・泥まみれでインタビュー受けて・・・お茶の間に無様な姿晒したんですよ・・・」
「いやいやカフェちゃんのあれはカッコよかったよ。」
「うんうん。流石G1バだな〜って。」
「ふふ・・・なら皆さんも・・・一緒ですよ・・・」
「え〜〜〜?私たちの時はそうなんないよ〜」
「うわ〜メイクぐちゃぐちゃ〜って笑い物にされる〜!」
「されませんよ・・・せっかくレースを走ったのに・・・」
「ねぇ凛ちゃん。凛ちゃんもいやだよね。メイクぐちゃぐちゃインタビュー。」
「ね?ね?」
「うーん・・・私もそれは嫌・・・かな・・・」
「ほらカフェちゃん!」
「はぁ・・・わかってませんね・・・ブルーさん・・・」
「ええ〜?」
「形振り構わず走った姿は・・・どのような状態でも・・・美しいんです・・・!」
キラキラと星を見ながらそう呟いたカフェさんは2人にもんにょり顔を向けられたままドヤ顔を返した。ええ・・・
「私は・・・もう気にしてません・・・というか・・・インタビューなんて・・・後から見返したりしません・・・気になるから・・・!」
「カフェちゃんも気になるんじゃん〜!」
「あたしもっと汗とか泥に強いチークとか探そ・・・」
気がついたら結構話し込んでた。そろそろ戻らないと。
「じゃカフェさん、優さん、美紗希さん、私そろそろ行くね。」
「はい・・・おやすみなさい・・・ブルーさん・・・」
「おやすみ凛ちゃん。」
「おやすみ〜」
「おやすみ。」
良い気分転換になった。さて明日もトレーニング頑張ろう・・・と意気込んだのは良いのだけれど、次走の出走表が発表されて、私は息を呑む羽目になるのだった。