シンデレラダービー 〜にゅーじぇねれーしょん〜 作:電動ガン
1勝クラスのレースが終わってホテルに帰ってきた。今は7月後半。夏合宿は8月末まである。まぁそれはいいとして・・・
「美由紀、もう大丈夫?」
「うん!もう体痛くないよ!」
ホテルの食堂でもりもりご飯を食べる美由紀を尻目に他の1年生を見る。愛海は相変わらずゴルシのを揉んでるし・・・蘭子はなにやらご飯食べながら辞書片手に調べ物。晶葉は焼き鳥を齧りながらナターリアとシューズを見ている。法子は・・・あれ法子どこ行った?
「あれ?トレーナー法子は?」
「ノリコ?そういやいないな・・・」
「もう戻ったのかな。」
「まぁご飯食べたら解散って言ってあるし。」
「ふぅん。」
まぁいいか・・・とか言ってたら、法子がしおしおになりながらやってきた。
「とれーなぁ・・・」
「どうしたノリコ、しおしおだけど。」
「ドーナツが足りないよぉ〜〜・・・」
「ドーナツ?」
法子はドーナツ切れだったのか・・・というか夏合宿にデカいボストンバッグひとつ分ドーナツ持ってきてた気がする。それ全部食べちゃったの?
「うう〜〜〜・・・」
「我慢しろノリコ。まだあと1ヶ月あるぞ。」
「でも〜〜〜・・・ガソリン入れないで車が走ると思う?」
「それはそうだが・・・ドーナツ、ガソリンなの?」
「そうだよ。」
法子はしおしおになって膝から崩れ落ちた。だめだこりゃ。
「うう〜〜〜もう4時間もドーナツ食べてない・・・」
「晩御飯食べたんだろ?」
「食べたよ〜〜〜でも〜〜〜」
「はぁ・・・」
ああなると長いぞ法子は。私はトレーナーと法子を尻目に部屋に戻った。
「お風呂入りに行くかな。」
お風呂セット持って・・・あ、尻尾のシャンプー残り少ない。あと1ヶ月保つか・・・?
「まぁいいか。無くなったらゴルシにもらおう。」
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「・・・。」
夜。なんとなく目が覚めた。
「水飲むか・・・」
冷蔵庫から水を取り出し、飲む。美味い。
「ふぅ・・・」
蘭子は寝てる。起こすのは忍びない。ちょっと散歩行こうかな。
「よし。」
ホテルから出て、遊歩道へ。もうちょっと行けばコンビニがあるが、まぁ用はないし。いっか。
「うーん・・・」
夜の散歩は気持ちいい。夏合宿中は結構夜の散歩したな。まぁいいか。
「・・・ん?」
ふと・・・前方を見ると、フラフラと歩く人影・・・人だよね?
「・・・。」
「・・・。」
フラフラ・・・フラフラ・・・と歩いて・・・パタリ、と倒れた。どうしよう・・・本当に人だったらマズイよね。
「・・・。」
そーっと近づく。どうか人でありますように。
「・・・あれ?」
倒れた人をよく見ると・・・ちひろさんだった。何故か前世でよく見た黄緑色の服を着ている。というか、ウマ耳と尻尾がある。ウマ娘だったの?え?ちひろさん夏合宿着いて来てたっけ。
「ちひろさん、ちひろさん。」
ゆさゆさと揺するがうんともすんとも言わない。どうしよう。このまま放って行くわけにはいかないよね。
「よいしょ・・・っと。」
とりあえず背負って。トレーナーに連絡。起きてるかな。
「・・・。」
プルルとコールがして・・・出た。
『ふわぁぁ・・・もしもし?どうしたブルー。』
「ごめんトレーナー、ちょっと緊急で。」
『どうした?何かあったのか?』
「夜の散歩してたんだけど・・・」
とりあえずあらましを話した。ウマホからは怪訝な声が聞こえてくる。
『ちひろさんがいる・・・?そんな連絡受けてないぞ。』
「え?じゃあこの人誰。」
『間違いなくちひろさんか?』
「うん。流石に間違えないよ。」
『わかった。とりあえず連れて帰ってきてくれ。』
「わかった。」
ちひろさんを背負ってホテルに戻る。ロビーには誰もいなかった。そしてトレーナーの部屋へ。
「トレーナー、来たよ。」
「おう。」
トレーナーに迎え入れてもらい、ベッドにちひろさんを寝かせる。大丈夫かな。
「ブルーはなんともないか。重くなかったか?」
「大丈夫、人1人くらい軽いよ。」
「そうか・・・まぁ、確かにちひろさんだな。」
ベッドに寝かせてもうんともすんとも言わないちひろさん・・・生きてる?
「うーんちょっと失礼。おおーいちひろさーん。」
トレーナーはちひろさんのほっぺを叩いて起こそうとする。
「ちひろさん起きて。大丈夫?」
「ちひろさーん。」
全然起きる気配無い。そしてトレーナーはちひろさんの左手を持ち上げた・・・が、急にトレーナーの血の気が引いた。
「・・・ブルー。」
「なに?」
「すぐ、部屋に戻れ。」
「え?」
「部屋に戻れ。」
「どうしたの?」
「ちひろさんは俺に任せて、戻れ。」
トレーナーは怖い顔で自分を壁にして私をちひろさんから遠ざけた。どうしたの?
「トレーナー?」
「行くんだ。ブルー。」
「わ、わかった・・・」
「それと。」
「何?」
「戻ったらすぐベッドに入って、朝になるまで誰が尋ねてきても絶対にドアを開けるな。」
「え・・・?うん。」
「行け!!!」
急に大声を出して来たのでびっくりして私は走り出した。何があったんだろう・・・私は部屋に戻って、言われた通り、すぐベッドに入った。
「・・・。」
・・・眠れない。静かだ。ウマホを見ると30分しか経ってない。
「・・・。」
もぞもぞとベッドで身を捩る。うーん。
「・・・?」
何か・・・物音がする。なんだろ・・・何かひっかくみたいな。
「・・・。」
「・・・ん・・・ちゃん・・・ら・・・」
声も聞こえてきた。なんだ・・・?
「凛・・・ちゃん・・・きらき・・・凛ちゃ・・・らきら・・・」
カリカリ、と引っ掻く音と声。なに・・・?私を呼んでる・・・?
「誰・・・?」
音の発生源は入り口のドアだ。誰か、ドアの前にいる・・・?
「・・・。」
寒気がした。こんな時間に何してるんだろう。
「このやろう!!!!」
「ぎっ・・・」
「!?」
急に大声がした。今のは・・・トレーナーだ。トレーナーが来てくれたんだ・・・
「・・・。」
「ブルー起きてるか。」
「トレーナー・・・?」
ドア越しに声がした。思わずドアに駆け寄って開けようとしたが・・・
「開けるな!!!!」
「ッ!!」
また大声がして、びっくりして手を引っ込める。
「ブルー、そのまま聞け。今日は、もう寝ろ。そして絶対に、朝、俺が鍵を借りて開けるまでドアを開けるな。」
「わ、わかった・・・」
「いいか。もう寝ろ。」
「うん・・・」
そう言って・・・静かになった。私はベッドに戻り、布団を被った。
「・・・。」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「・・・ブルー、ブルー。」
「・・・ん。」
「ブルー、起きろ。」
「んん・・・」
いつの間にか寝てたらしい、まだちょっと眠い・・・目を開けると、トレーナー。
「大丈夫か?何ともないか?」
「ん・・・なんともない。」
「そうか・・・良かった・・・」
「ふわぁ〜〜〜・・・ひゃぁ!!!トレーナーさん!!!どうして!?!?」
「おうランランもおはよう。」
「むぅ〜〜〜〜〜!!!!導き手よ!!!朝餉も取らぬ乙女の部屋に入り込むとは何事か!!!」
「すまんすまん昨晩ブルーが調子悪いって言ってな。鍵借りて様子を見に来たんだ。」
「え・・・?閃烈なる蒼光よ。落日の凶兆が?」
「え、あ、いや、大丈夫。」
「ブルー、後で話す。」
「わかった。」
「じゃ、お前ら、準備して朝飯食えよ。」
「うん。」
「はぁ〜い。」
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
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・・・・
・・・
・・
・
朝ごはん食べてトレーニング始める前、私は昨晩の事をトレーナーに聞きに行った。
「トレーナー、ちひろさんは?」
「・・・ブルー、昨日の事は忘れろ。」
「え?」
「ちひろさんはいなかった。昨日ブルーは誰とも会わなかった。」
「・・・。」
「いいな?」
トレーナーは・・・私のレースで作戦を決める時以上に真剣だった。これは・・・トレーナーの言うとおり忘れた方がいいだろう。だが・・・
「納得する話が欲しい。」
「・・・わかった。」
「何があったの?」
「ブルーは、手長足長って知ってるか?」
「手長足長?」
「知らないなら良い。まぁ。なんだ。ブルーは昨日、お化けに遭遇したんだよ。」
「お化け・・・」
「ああ。だから、忘れろ。」
「・・・わかった。」
お化けか・・・そういえば・・・昨日のちひろさんは、呼吸も、心音もわからなかった。その時は気にならなかったが・・・考えてみればおかしいな。忘れよう。
「じゃブルー、今日はスズカが海外渡航前のトレーニング最後になるからしっかり絞られて来いよ。」
「わかった。」
なんか・・・いや・・・まぁ・・・いいか。ちひろさんはウマ娘なのかな。なんで隠してるんだろう。この世界での昔の事話さないし・・・まぁでも知ってどうこうするわけじゃないから。これも忘れよう。ちひろさんなら最後には話てくれるだろうし。いいか。