シンデレラダービー 〜にゅーじぇねれーしょん〜   作:電動ガン

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第66話 夏合宿の怪

1勝クラスのレースが終わってホテルに帰ってきた。今は7月後半。夏合宿は8月末まである。まぁそれはいいとして・・・

 

「美由紀、もう大丈夫?」

 

「うん!もう体痛くないよ!」

 

ホテルの食堂でもりもりご飯を食べる美由紀を尻目に他の1年生を見る。愛海は相変わらずゴルシのを揉んでるし・・・蘭子はなにやらご飯食べながら辞書片手に調べ物。晶葉は焼き鳥を齧りながらナターリアとシューズを見ている。法子は・・・あれ法子どこ行った?

 

「あれ?トレーナー法子は?」

 

「ノリコ?そういやいないな・・・」

 

「もう戻ったのかな。」

 

「まぁご飯食べたら解散って言ってあるし。」

 

「ふぅん。」

 

まぁいいか・・・とか言ってたら、法子がしおしおになりながらやってきた。

 

「とれーなぁ・・・」

 

「どうしたノリコ、しおしおだけど。」

 

「ドーナツが足りないよぉ〜〜・・・」

 

「ドーナツ?」

 

法子はドーナツ切れだったのか・・・というか夏合宿にデカいボストンバッグひとつ分ドーナツ持ってきてた気がする。それ全部食べちゃったの?

 

「うう〜〜〜・・・」

 

「我慢しろノリコ。まだあと1ヶ月あるぞ。」

 

「でも〜〜〜・・・ガソリン入れないで車が走ると思う?」

 

「それはそうだが・・・ドーナツ、ガソリンなの?」

 

「そうだよ。」

 

法子はしおしおになって膝から崩れ落ちた。だめだこりゃ。

 

「うう〜〜〜もう4時間もドーナツ食べてない・・・」

 

「晩御飯食べたんだろ?」

 

「食べたよ〜〜〜でも〜〜〜」

 

「はぁ・・・」

 

ああなると長いぞ法子は。私はトレーナーと法子を尻目に部屋に戻った。

 

「お風呂入りに行くかな。」

 

お風呂セット持って・・・あ、尻尾のシャンプー残り少ない。あと1ヶ月保つか・・・?

 

「まぁいいか。無くなったらゴルシにもらおう。」

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・・

 

・・・

 

・・

 

 

 

「・・・。」

 

夜。なんとなく目が覚めた。

 

「水飲むか・・・」

 

冷蔵庫から水を取り出し、飲む。美味い。

 

「ふぅ・・・」

 

蘭子は寝てる。起こすのは忍びない。ちょっと散歩行こうかな。

 

「よし。」

 

ホテルから出て、遊歩道へ。もうちょっと行けばコンビニがあるが、まぁ用はないし。いっか。

 

「うーん・・・」

 

夜の散歩は気持ちいい。夏合宿中は結構夜の散歩したな。まぁいいか。

 

「・・・ん?」

 

ふと・・・前方を見ると、フラフラと歩く人影・・・人だよね?

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

フラフラ・・・フラフラ・・・と歩いて・・・パタリ、と倒れた。どうしよう・・・本当に人だったらマズイよね。

 

「・・・。」

 

そーっと近づく。どうか人でありますように。

 

「・・・あれ?」

 

倒れた人をよく見ると・・・ちひろさんだった。何故か前世でよく見た黄緑色の服を着ている。というか、ウマ耳と尻尾がある。ウマ娘だったの?え?ちひろさん夏合宿着いて来てたっけ。

 

「ちひろさん、ちひろさん。」

 

ゆさゆさと揺するがうんともすんとも言わない。どうしよう。このまま放って行くわけにはいかないよね。

 

「よいしょ・・・っと。」

 

とりあえず背負って。トレーナーに連絡。起きてるかな。

 

「・・・。」

 

プルルとコールがして・・・出た。

 

『ふわぁぁ・・・もしもし?どうしたブルー。』

 

「ごめんトレーナー、ちょっと緊急で。」

 

『どうした?何かあったのか?』

 

「夜の散歩してたんだけど・・・」

 

とりあえずあらましを話した。ウマホからは怪訝な声が聞こえてくる。

 

『ちひろさんがいる・・・?そんな連絡受けてないぞ。』

 

「え?じゃあこの人誰。」

 

『間違いなくちひろさんか?』

 

「うん。流石に間違えないよ。」

 

『わかった。とりあえず連れて帰ってきてくれ。』

 

「わかった。」

 

ちひろさんを背負ってホテルに戻る。ロビーには誰もいなかった。そしてトレーナーの部屋へ。

 

「トレーナー、来たよ。」

 

「おう。」

 

トレーナーに迎え入れてもらい、ベッドにちひろさんを寝かせる。大丈夫かな。

 

「ブルーはなんともないか。重くなかったか?」

 

「大丈夫、人1人くらい軽いよ。」

 

「そうか・・・まぁ、確かにちひろさんだな。」

 

ベッドに寝かせてもうんともすんとも言わないちひろさん・・・生きてる?

 

「うーんちょっと失礼。おおーいちひろさーん。」

 

トレーナーはちひろさんのほっぺを叩いて起こそうとする。

 

「ちひろさん起きて。大丈夫?」

 

「ちひろさーん。」

 

全然起きる気配無い。そしてトレーナーはちひろさんの左手を持ち上げた・・・が、急にトレーナーの血の気が引いた。

 

「・・・ブルー。」

 

「なに?」

 

「すぐ、部屋に戻れ。」

 

「え?」

 

「部屋に戻れ。」

 

「どうしたの?」

 

「ちひろさんは俺に任せて、戻れ。」

 

トレーナーは怖い顔で自分を壁にして私をちひろさんから遠ざけた。どうしたの?

 

「トレーナー?」

 

「行くんだ。ブルー。」

 

「わ、わかった・・・」

 

「それと。」

 

「何?」

 

「戻ったらすぐベッドに入って、朝になるまで誰が尋ねてきても絶対にドアを開けるな。」

 

「え・・・?うん。」

 

「行け!!!」

 

急に大声を出して来たのでびっくりして私は走り出した。何があったんだろう・・・私は部屋に戻って、言われた通り、すぐベッドに入った。

 

「・・・。」

 

・・・眠れない。静かだ。ウマホを見ると30分しか経ってない。

 

「・・・。」

 

もぞもぞとベッドで身を捩る。うーん。

 

「・・・?」

 

何か・・・物音がする。なんだろ・・・何かひっかくみたいな。

 

「・・・。」

 

「・・・ん・・・ちゃん・・・ら・・・」

 

声も聞こえてきた。なんだ・・・?

 

「凛・・・ちゃん・・・きらき・・・凛ちゃ・・・らきら・・・」

 

カリカリ、と引っ掻く音と声。なに・・・?私を呼んでる・・・?

 

「誰・・・?」

 

音の発生源は入り口のドアだ。誰か、ドアの前にいる・・・?

 

「・・・。」

 

寒気がした。こんな時間に何してるんだろう。

 

「このやろう!!!!」

 

「ぎっ・・・」

 

「!?」

 

急に大声がした。今のは・・・トレーナーだ。トレーナーが来てくれたんだ・・・

 

「・・・。」

 

「ブルー起きてるか。」

 

「トレーナー・・・?」

 

ドア越しに声がした。思わずドアに駆け寄って開けようとしたが・・・

 

「開けるな!!!!」

 

「ッ!!」

 

また大声がして、びっくりして手を引っ込める。

 

「ブルー、そのまま聞け。今日は、もう寝ろ。そして絶対に、朝、俺が鍵を借りて開けるまでドアを開けるな。」

 

「わ、わかった・・・」

 

「いいか。もう寝ろ。」

 

「うん・・・」

 

そう言って・・・静かになった。私はベッドに戻り、布団を被った。

 

「・・・。」

 

・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・・

 

・・・

 

・・

 

 

「・・・ブルー、ブルー。」

 

「・・・ん。」

 

「ブルー、起きろ。」

 

「んん・・・」

 

いつの間にか寝てたらしい、まだちょっと眠い・・・目を開けると、トレーナー。

 

「大丈夫か?何ともないか?」

 

「ん・・・なんともない。」

 

「そうか・・・良かった・・・」

 

「ふわぁ〜〜〜・・・ひゃぁ!!!トレーナーさん!!!どうして!?!?」

 

「おうランランもおはよう。」

 

「むぅ〜〜〜〜〜!!!!導き手よ!!!朝餉も取らぬ乙女の部屋に入り込むとは何事か!!!」

 

「すまんすまん昨晩ブルーが調子悪いって言ってな。鍵借りて様子を見に来たんだ。」

 

「え・・・?閃烈なる蒼光よ。落日の凶兆が?」

 

「え、あ、いや、大丈夫。」

 

「ブルー、後で話す。」

 

「わかった。」

 

「じゃ、お前ら、準備して朝飯食えよ。」

 

「うん。」

 

「はぁ〜い。」

 

・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・・

 

・・・

 

・・

 

 

 

朝ごはん食べてトレーニング始める前、私は昨晩の事をトレーナーに聞きに行った。

 

「トレーナー、ちひろさんは?」

 

「・・・ブルー、昨日の事は忘れろ。」

 

「え?」

 

「ちひろさんはいなかった。昨日ブルーは誰とも会わなかった。」

 

「・・・。」

 

「いいな?」

 

トレーナーは・・・私のレースで作戦を決める時以上に真剣だった。これは・・・トレーナーの言うとおり忘れた方がいいだろう。だが・・・

 

「納得する話が欲しい。」

 

「・・・わかった。」

 

「何があったの?」

 

「ブルーは、手長足長って知ってるか?」

 

「手長足長?」

 

「知らないなら良い。まぁ。なんだ。ブルーは昨日、お化けに遭遇したんだよ。」

 

「お化け・・・」

 

「ああ。だから、忘れろ。」

 

「・・・わかった。」

 

お化けか・・・そういえば・・・昨日のちひろさんは、呼吸も、心音もわからなかった。その時は気にならなかったが・・・考えてみればおかしいな。忘れよう。

 

「じゃブルー、今日はスズカが海外渡航前のトレーニング最後になるからしっかり絞られて来いよ。」

 

「わかった。」

 

なんか・・・いや・・・まぁ・・・いいか。ちひろさんはウマ娘なのかな。なんで隠してるんだろう。この世界での昔の事話さないし・・・まぁでも知ってどうこうするわけじゃないから。これも忘れよう。ちひろさんなら最後には話てくれるだろうし。いいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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