【死神の子】    作:ランハナカマキリ

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新章スタート!!


9

 

「ーーというわけでこれからお世話になります」

「「待て」」

 

 

烏有のマンション、その玄関に喪服装備のままで現れたリサがいた。しれっと自分の変えのパーツやら生活必需品ーー燃料やら整備道具までスーツケースに入れてやってきていた。側から見れば押し掛け女房だ。

 

それに待ったをかけるのは大樹と脚に固定バンドをつけた朧。

特に朧は彼女に脚の骨折られかけた為、彼女を敵対視していた。

 

「帰るところがないのです。しかも私の正体が世間にバレれば解体されるかもしれないので、ここに格納ーー住ませてください。なんでもします」

「ていうかどうやって住所を?」

「烏有様が教えてくださいました」

 

すると、夏生を見送ったついでに晩飯の牛丼を3人分、彼女が要望したりんご由来のバイオマス燃料を持って帰ってきた烏有が帰宅した。

 

「おい烏有!!何でこいつ連れてきたんだよ!!厄ネタだぞ!!」

「••••コイツ鍵付きwifi内部搭載してる」

「「どうぞご自由にお使いください」」

「•••現金な方々ですね」

 

 

大樹は妹のいる自分のマンションへと戻った。

既に眠っている朧は布団の中。

 

「それでは烏有様•••おやすみなさい、ご要望通り明日の朝6時に目を覚ましますのでそれではーーーーピュゥゥゥン•••」

 

リサの青く点っていた瞳から光が消える。首筋から伸びた電源コードを、この家に持ち込んできた彼女のスーツケースーーバッテリーに接続し沈黙した。

烏有はその姿を尻目に外に出る。

外出前に何か連絡が来ていないかを確認しようとしてーー

 

「誰だ」

 

振り向きざま、烏有はブルー・ブラッドを抜き、引き金に指をかけた。

 

外廊下の手すりの上には、少女がいた。

 

満点の夜空を背にして、長い純白の髪が風にそよぎ、月明かりに照らされる。

反して、身に纏っているのは闇に溶け込むような黒いワンピース。

 

フランス人形のように美しく、可愛らしく、不気味な少女がいた。

 

「うふふ•••」

 

この世のものではないかのような美貌は、烏有の警戒心をマックスに引き上げた。

白い睫毛に縁取られたピンクブラウンの瞳が、烏有の紅い瞳と合った。

 

「初めましてだね、雪代烏有••••いや、本名で呼んだ方がいいのかな?神木夜闇くん?」

「••••誰それ」

「え、君の本名だよ•••?そういえば君はずっとその死神がつけた愛称(名前)で生きてきたからね•••まぁ、いいか」

 

こちらの質問に呆気に取られたような表情を浮かべる少女に、烏有は少しだけ警戒心を解いた。

少女は夜空を見ながら語り出した。

 

「君は異質、だよ。壮絶な過去によって、カグツチ(末弟)と同じ眼を手に入れた存在。魂の炎を見ることができる••••まぁ•••親も親なら子も子だよね。ORDER加入の条件として人身売買組織の全員と、組織に関わりの深い人間ーー外部委託者や構成員の家族まで1人残らず殺した星野ユキにも、魂の色が見えていたって聞いたし」

「へぇ•••魂って存在しているのか」

「知らない?人間は死んだら魂21グラム無くなるんだよ〜?」

「•••それダンカンの実験だろ。嘘を吐くのはやめろ•••将来碌な奴にならないぞ」

「ありゃりゃ•••」

 

20世紀初頭、アメリカ合衆国の医師「ダンカン・マクドゥーガル」が魂の重量を計測しようと、6人の患者と15匹の犬を使い、死ぬ時の体重変化を記録して魂の重さを測ることを試みた実験結果から、彼は魂の重さは21グラムと主張した。

 

だがこの21グラムは、心肺機能停止の際に血液が肺で冷やされなくなり、一時的な発汗によって体内の水分がなくなることに起因する。

 

また、犬には汗腺がほぼないため、彼によって魂がないと判断された。

 

「いや〜博識だね。星野ユキの入れ知恵かな?」

「"知識は無くならない武器だ"と、そう言って哲学とか色々教わった」

「さてーー本題に入ろうか?」

「•••あぁ、その前にやることがある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カフェ『hard boiled』

 

「ほらよ•••例のブツだぜ」

「•••••流石だ、ボイルさん」

 

ボイルという男は元殺連の殺し屋で烏有が探している3人のJCC時代の先輩に当たる人物。現在は殺し屋を引退し、カフェ『hard boiled』を経営する一方で情報屋としても活動している。

 

「いや〜ん!!!この子きゃわいい〜〜!!!」

「おひやめりょ!!(おいやめろ!!)ほっへをほみほごふな!!(ほっぺを揉みほぐすな!!)」

「ん〜何言ってんのか分かんない。でもそこがきゃわいい〜!!!」

「ふごごごごっ!!」

 

殺し屋時代の相方である帯黒は少女の柔らかな頬を揉んでいた。

 

「南雲与一は8年前のORDER就任して以降、殺連以外の殺し屋組織が請け負っている非合法な仕事を取り締まっている。また、定期的に殺し屋の逃亡先としてよく挙げられる東南アジアの殺連関連施設に出張している•••よく検索しているのは、非合法な仕事を請け負った人物の顔写真や詳細なデータ••••誰かを探している?」

「あぁ•••最近、殺連刑務所に足を運んで所内に捕えられている囚人名簿を閲覧した記録もある。8年間、ずっと誰かを追い続けている•••ハードボイルドなストーカーだぜ」

「ボイルさんって南雲の先輩だよな?話したことは?」

 

無い!!!•••アイツは坂本以上に癇に障る奴だった。あれは俺が15の頃、俺は坂本の野郎と似たもの同士と思っていたが••••フゥ••••南雲のヤロウは最初から違うと感じてた。奴は代々続くスパイ家系の跡取りで、元々は諜報活動科にいたがーー」

(この話、5回目•••ため息つくところも、全部同じだな)

 

烏有は長話を始めたボイルから目をそらし、後ろのテーブル席に座っていた少女と黒帯に視線を向ける。

 

「ぷく〜〜〜!!!」

「や〜ん拗ねててもきゃわいい!!!」

 

どうやらほっぺもみもみされ続けた影響で、拗ねていたようだ。こいつ本当にさっき厨二病臭いこと言っていたやつなのか?

 

「ーーだがまぁ•••俺のSBB(スーパー・ボール・ボム)の名付け親でもあるから、多少はハードボイルドさが分かる男だったな•••フゥ」

(また同じだな•••)

 

「坂本に関しては詳しいことが分かり次第、追って連絡する。これからも気をつけろよ」

「あぁ•••助かる」

「へっ、星野ユキは俺の同期で命の恩人•••これくらい大したことないさ」

 

「じゃあね〜ツッキーちゃん〜!!」

「•••」

 

手を振る帯黒に対し、少女は苦虫を噛んだような顔をした。

 

 

「んで•••お前の本題って何だ?」

「何事もなかったように、話を始めないでくれないかな?君のほっぺをほぐして、真っ赤に染めてあげようか?」

「••••できるもんならやってみろ」

 

「わかった、わかった•••私はある"面白い子"を気にかけていてね。その子の出演する恋愛リアリティーショーに、君も出演してほしいんだよ。殺し屋に育てられて、この世界の光が照らされない所の全てを見た君の瞳に、あの子はどう映るのかなぁって。大丈夫だよ、君が出演できるよう細工してある。それにギャラも増えるし知名度も伸びるから、君も私もwin winじゃないかな?」

「••••断る」

「あれ?」

 

断られるとは思ってなかったのか、すっとぼけた声を上げるツクヨミ。

 

「俺は自分の実力で上に昇るし、知名度は自分で上げる。わざわざお前の手を借りなくても問題ない」

「そういう世界じゃないよ。血と硝煙の匂いで曇っていたそっちの世界と、嘘とさらなる嘘で塗り潰されたこっちの世界•••似てるところは似てるけど、似てないところはとことん違う。腕っぷし一つだけで、のし上がれる世界じゃないよ•••まぁ君の言うことも理に叶ってるんだよね。それに私の出した条件じゃ君にあまり理がないし、もっと対価を出すって言ったらやる?」

「•••その対価は?」

「うふふっ•••

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤尾リオンの現在の居場所を教えてあげる」

 

 

恋愛リアリティーショーとは、事前の台本なしで現実に起こっている予測不可能で困難な状況に、よく知られたプロの俳優などではない一般人出演者たち(無名の芸能人なども含む)が直面するありさまを、ドキュメンタリーやドラマのように楽しめると謳ったテレビ番組のジャンルである。

 

作られたシナリオでは感じることのできない共感性から視聴者の好奇心を煽る一方、視聴者の「のぞき見」に応えるという性質上、SNSの発展した2000年代以降は出演者に誹謗中傷が集まりやすい構造となっており、米国では2004年からの12年間で少なからず21人が番組にまつわる問題で自殺したといわれ、また2020年には、日本でも恋愛リアリティーショーの出演者がSNSでの誹謗中傷が原因で自殺する事件も発生した。

 

だが今も尚、番組は計画されている。

 

恋愛リアリティショー番組『今からガチ恋始めます』

基本的には高校生の男女が放課後に集まり様々なイベントを行い恋愛関係を築いていくというコンセプトの番組だ。

 

烏有がいなければ奇数になっていた人数に、人選したプロデューサーの性格が出ている。プロデューサーの名前は鏑木。社長曰く腕は良いけれど面食いで、少し前に撮った『今日は甘口で』のドラマ出演者は顔だけが良い素人集団だったと酷評していた。

 

 

だが今回は男子4人、女子4人の合計8人が出演する。

 

そう・・・合計8()()だ。

 

「スタントマンやってる。雪代烏有」

「玉内鞠菜です。バレリーナをしております」

 

ニコッ!!

 

烏有の隣に立つ銀髪スレンダーの美少女がニッコリ笑う。

見るからに清純そうな見た目をしており、薄くピンク色の唇が色っぽく見える。

 

恐らくこの恋愛リアリティーショーのメインキャラの1人になるであろう。

 

だが、烏有が見た魂の炎は、そういうふうには見えなかった。

 

 

 

ゴウゴウゴウ!!!

 

 

 

紫色の炎が大きな音を立てて燃えていた。

 

(激しい嫉妬と静かな殺意•••アイツが言ってた"面白い子"ってのはコイツか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違う。断じて違う。

ソイツはイレギュラーで、彼女の言ってた"面白い子"ではない。

もし、この場にあの少女『ツクヨミ』がいたらキレながら否定していただろう。

「星野アクアです!いや〜緊張するわ〜!」

(こいつ顔合わせの時に比べてキャラ作りすぎだろ・・・)

 

ツクヨミが言っていた"面白い子"は星野アクアマリンである。

 

 

「よぅ、MEMさん」

「あ!ウユたんお久〜!!朧くん元気〜?」

「あぁ•••MEMさんってこういうのにも出るんだな」

「まぁね〜!!チャンネルへの導火線になればな〜って!!にしても美男美女ばっかだね〜」

「•••まぁ、撮影側の趣味だろ」

 

参加人数8人、烏有がいなければ奇数になっていた人数に、人選したプロデューサーの性格が出ている。プロデューサーの名前は鏑木。社長曰く腕は良いけれど面食いで、少し前に撮った『今日は甘口で』のドラマ出演者は顔だけが良い素人集団だったと酷評していた。今回自分が恋愛リアリティーショーに出れたのはツクヨミのおかげだが、半分くらいは顔のおかげだろう••••気に入らない。

 

この顔を見るたびに自分を捨てた実母を思い出す。

 

官僚の家の娘だったが浮気相手との托卵がバレて離婚。

風俗嬢に堕ちて酒とクスリに溺れる日々。

酒の代金のために自分を売り飛ばした人でなし。

 

だが恨みなどはない。ただ、どうでもいい。

 

目的のためになら何でも利用しよう。

ただ、顔だけで選ばれたことは気に食わない。

 

そんな鬱憤を押し殺して前を向きーーー

 

「うふふ?」

「ーーっ」

「どうしたのウユたーーぬおぉぉ!!?」

 

ギョッとするほどに、目の前に現れた玉内鞠菜と目が合った。

 

「雪代くん、だっけ?貴方とは仲良くなれそうな気がするの。これからよろしくね?」

「•••よろしく、玉内」

 

 

MEMちょはその後、星野アクアの元に向かったーー烏有から見たら自分を鞠菜への人身供物にして逃げたようなものだ。二人は学校の外廊下を並んで歩きながら話し始める。

 

最近の天気は〜とか、

どんな動画が好き〜?とか、

とりあえず、他愛のない世間話を。

 

「貴方の動画•••私にこの仕事を進めてきたディレクターが見せてくれたのよ。まさしく脱帽ね」

「お褒めに預かり光栄だな」

「けど気にかかることもあるの•••なぜ貴方はスタントマンに?あんなに動けるのなら、オリンピックも夢じゃなかったんじゃない?もっと、()()()()()()()()のだけれど?」

 

意味を含ませるような問いを投げかける。

 

「•••色々あるが、一番は金だな」

「お金?」

「これだけ言うとただの金の亡者みたいに思われるんだが・・・正直、スタントマンになるまでは生活が苦しくてな。金だけが全てじゃないって言葉は半分くらい嘘だと思ってる・・・ていうか綺麗事だと思ってる」

「・・・そうなの」

「・・・あの環境にいる自分を悲観視するでも楽観視するでもない、ただただ終わらせたかった」

 

「だから、金だけが全てじゃないって世迷言が言えるようになりたいんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確信したわ。私と貴方、似たもの同士ね」

「ん?何言っーー」チュッ!!

 

烏有の唇に、人差し指、越しに鞠菜の唇。

思わず目を見開く烏有を、クスクスと笑う鞠菜。

 

 

「だって君と私、同じ瞳をしてるわよ?うふふ!!」

「•••奸者め」

 

恋愛リアリティーショー番組『今日からガチ恋始めます』

初回から玉内鞠菜と雪代烏有のカップリングがあるのではないかとSNSで話題になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃•••

 

「へぇ•••••••この泥棒猫」

「ひっ!?」

同じ事務所の大物高校生女優が、移動用の車の中で独り言を溢していた。





同居人たちの反応

大樹「ウケる」
朧「あの鞠菜って人、ちょっと怖い」
リサ「人間は何故他人の恋愛を見て面白がるのでしょうか?」

どこかの人たちの反応

■■■■「?葵何を見てるんだ?••••恋愛リアリティーショー?」(•••花にはあまり見せたくないな)
■■■■「あれ〜大佛がこんなの観るなんて珍しいね〜」(••••あれ、どっか見覚えが)
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