【死神の子】    作:ランハナカマキリ

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サカモトデイズの小説もっと増えますように!!


推しの子時間軸は、『今日あま』の撮影が終わった頃です。


1

 

ファミレス『セイザリヤ』

 

「ここは私が奢るから好きなもの注文していいよ」

 

不知火フリルに連れられて、烏有はファミレスに来ていた。目の前の席に座り、自分の顔をじっと眺める姿は側から見たら美少女に違いない。だが、なぜ彼女が自分に接近してきたのか分からない。そんな状況で飯を食うなど危険極まりない。毒を仕込ませてくるのかもしれない。

 

絶対に食わない••••

 

 

 

 

ぐ〜!!!

 

 

 

 

 

••••気づけばミートスパゲティを頬張っていた。

その様子をフリルはコーヒーを飲みながら見つめていた。

 

「ニヤニヤ」

「••••モグモグ何がおかしい」

「イケメンがリスみたいにほっぺ膨らませながら言うと笑えてくるね」

「ゴキュン!!•••それで?何が目的だ」

 

「ねぇ、私と同じ事務所で働いてみない?」

 

烏有はフォークを置いて口を拭きながら聞き返す。

 

「••••理由は?」

「貴方の演技•••他の人たちと"何か"が違った。あの場にいた俳優が、監督が、カメラマンたちが、誰も気付けなかった。もちろん私を除いて。けど、これだけは分かる。貴方は、私を超える」

 

自信に満ちた目でじっと見つめてきた。

薄緑色の角膜と、猫のような瞳孔でじーっと見つめてきた。

 

「つまり•••越えられる前に自分の味方に引き込もうと?」

「同じ事務所の俳優もライバルで敵だよ。けど私に本当の意味のライバルはいない。貴方は私を超えるかもしれないけど、飛び方の分からない鷹も同然。私が貴方に飛び方を教えてあげる。そして私は飛び立った貴方を越える」

 

そう言ってコーヒーをぐいっと飲み干す。

 

・・・取り敢えず、目の前の女について分かったことがある。

 

こいつは、一言で言えば怖いもの知らずだ。

壁を越えたら、また壁を作って飛び越える、終わりを見せない向上心の塊だ。

いわば円転滑脱の精神を持った怖いもの知らずだ。

 

関わったらろくな事にならないだろう。

 

それに懸賞金目当ての殺し屋に見つかりやすくなる。

 

だが待てよ?知名度を売ることになれば、表立って殺されにくくなる。そして、やってくる殺し屋は多くなり、いずれはORDERなど歴戦の殺し屋も来るはず。そうすればORDERと接触する機会がやってくるのでは?

 

つーか毎月500円生活から脱却できるのでは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、あの連中のことだ。周りの目なんて考えない。

やめておこう。

メリットよりデメリットの方がデカい。

 

「で、どうする?」

 

「••••断わーー「ギャラは一回の撮影で15万•••どう?」••••乗った」

 

 

 

烏有を見送り、タクシーに乗りながらフリルは物思いに耽っていた。

 

私は完璧な女の子に見られてる。

 

歌も踊りも演技もできた。

勉強もスポーツもゲームもできた。

 

周りの人間から求められるのも、完璧な私。

 

 

けど、まだ足りない。

 

 

私は完璧になれるように日々努力している。

天性の才も、努力の結晶も持っている。

 

 

もっと私を見て欲しい。

 

そんな私は誰かに目を奪われることなんてない。

 

 

 

 

そう思っていた。

 

私と同い年の、いやもしかしたら年下の?

 

ヒョロリとした少年が、主演俳優の前に立った途端、視界が奪われた。

 

 

 

 

 

何も見えなくなった。

 

彼の姿が消えたのではない。ただ、彼のいた場所、風景、空間が真っ黒に塗りつぶされたのだ。

 

まるで電気を消した寝室のベットの下を覗いた時のような、何もないのはわかっていても暗闇から怖い怪物がこちらを覗いているような、真っ黒な世界で、"何か"がじっと見つめているような感覚だった。

 

唇の色が青白くなり、鳥肌が立っている事に気づいた。

 

 

 

とても怖かった。

 

 

 

 

 

 

彼には"何か"ある。

私の持っていない"何か"を持っている。

 

 

 

私は完璧を目指してる。

彼の"何か"をどうしても手に入れたい。

 

 

「期待してるよ•••烏有くん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例えあんな事になると知っていたとしても、私はあの時の決断を後悔することはないと思う。

 

 

殺し屋の襲撃があったのはその日の夜だった。

ネカフェに戻り仮眠していると、中年のおっさんがブースの扉を開けて入ってきた。

 

「よぉ、死神のがきーー」

 

ベキッ!!

 

「ーーいぎ!?」

 

喋る前に指を5本へし折り、口の中にペットボトルを捻じ込む。

 

「俺は腹が一杯なんでね、機嫌がいいから三つ質問に答えたら生かしといてやる」

 

キョロキョロと周りを見て、誰も起きていないことを確認する。

 

「ひゃ、ひゃかった•••」

 

 

 

 

 

 

ネカフェの路地、ゴミ捨て場の近くで尋問を再開した。

 

「一つ、『どうやって俺の居場所を?』二つ、『誰に雇われた?』だ。あと三つ目は•••ヅラずれてんぞ」

 

ペットボトルを口から引っこ抜き、リサイクルゴミのゴミ箱に押し込む。

 

「マジで!?えっと、近くのネカフェでアンタを見たって奴からの情報だ!!()()に依頼したのはーー」

 

パシュッ!!!

 

次の瞬間、殺し屋のカツラが吹き飛んだ。

 

(狙撃手!!レミントンM700か!!)

 

「俺のヅラァぁぁぁぁ!!!」

 

中年のハゲ殺し屋をゴミステッカーに突き飛ばし、自分は他の建物の路地に滑り込み、走る。

 

(恐らくカツラ野郎とは別の依頼を受けてたんだろうな。雇い主の情報を吐こうとしたら殺そうとしたのは口封じか?)

 

パシュ!!

 

銃弾が烏有の足先に着弾。

 

「ーーっ!?」

 

地面を転がりながら、工事現場に突っ込んだ。

 

「うわびっくりした〜」

 

烏有が突っ込んだコンクリートブロックの山の目の前にいた建設作業員はそう言って作業を再開した。

 

 

 

 

「やっ、やった!!足に当たった!!」

 

スナイパー『マタギ』は震えながら笑みを浮かべていた。

 

彼はマタギを継ぐのが嫌で、親父と喧嘩して実家を出てきた。親父は齢50なのにヒグマと殴り合って勝利したという伝説のマタギだった。そんな親父と比較され、自信もやる気もなくして、現在パートの仕事をしながら殺し屋会社で仕事をしているのだが•••

 

『遅いんだよ新入りぃ!!!』

『テメェやる気あんのかぁゴラァ!!』

『ひぃぇぇぇ!?』

 

職場の上司が怖すぎた。今の所殺し屋どころか事務職しかしてない。

 

だが転機が訪れた。

 

(このガキを殺して、形勢逆転だ!!)

 

すでに足を撃った。もう走ることはできないだろう。

 

俺は"死神"狩りで派手なデビューを飾ってやるのだ。

 

「出てきやがれ•••出てきた!?これで終いだ!!!」

 

スナイパーのスコープにはこちらに背を向けて遮蔽物から出てきた烏有。

マタギは引き金を引いた。

次の瞬間、烏有の頭目掛けて銃弾が放たれ•••マタギのライフルを銃弾が撃ち砕いた。

 

「なっーーー俺の弾が!?」

 

気づけば目の前に烏有が立っていた。

 

「••••()()()で銃弾の向きを変えた。威力を落とさずにな」

 

()()()を地面に投げる。

 

「U字パイプ!?ーーまさかそいつで•••てか足は!?」

 

凹んだ銃弾を地面に放り投げる。

 

「防弾の靴•••スニーカーのな」

 

それにしても工事現場に逃げ込んで正解だった。

 

「んで•••誰に雇われた?」

「もし言わなかったら?」

「工事現場にあった鉄骨でバーベルスクワットをしてもらう」

 

喋った。

そしてマタギは殺し屋から足を洗って実家に帰った。

 

 

 

 

どんでん会か•••めんどいな」

 

スナイパーから聞き出した雇い主の名前を呟きながら、ネカフェに戻る。

 

「そういや、なんか忘れてるような•••」

 

ちなみにハゲは殺し屋をやめて、田舎に帰った。

 

 

 

フリルの事務所は、はっきり言って大手だ。

 

テレビをつければ所属お笑い芸人が番組持ってたり、所属アイドルグループがドームライブしたりしている。

 

芸能事務所『ハート オブ フェニックス』に烏有はいた。

 

「初めまして、社長の大宮です」

「烏有です」

 

社長の大宮は年齢よりも若く見られるOLだ。2年前までは副社長のポストにいたのだが、社長が急逝し、役員や社員からの推薦で社長となった。以来この会社を経営している。ちなみに夫とは離婚していて、成人して県外の大学に通っている娘がいる。

 

「ね?言ったとおり、顔整ってるし"何か"あるでしょ?」

「•••そうね。ハンコ持ってきた?」

「•••••••••少し待ってください」

 

烏有はリュックサックに右手を突っ込み•••芋と彫刻刀を取り出した。

 

「い、芋?君、ハンコ持ってなーー」

 

シュバババババババッ!!!

 

目にも止まらぬ速さで芋を削り、ホンモノのハンコのような芋ハンを作り出した。

 

「はい」

「ーーえ、はやっ、本物みたい」

「••••刃物屋に居候してた時期あったんで」

 

嘘である。

 

本当は6歳の頃、星野ユキにナイフ術を叩き込まれたからである。

本当はリンゴ一個から金剛力士像を掘り出せるくらい精密な動作ができる。

 

「えっと、じゃあこれにハンコを押して?あとここに注意事項とか書き込むところがあるから」

 

受け取った紙をじろじろ見て、呟いた。

 

「•••俺、電話番号無いんですけど」

「え、じゃあ、住所はかける?家の電話番号はーー」

「ネカフェの住所でいいですか?」

「ネカーーひょっとして家ないの?」

「ない。つーか、戸籍がないです」

 

マジである。

 

「•••ちなみにご家族は?」

「父親は夜逃げ、母親に酒代として売り飛ばさーー」

 

これもマジである。

 

「ストップ!!?そこから先は話さなくても大丈夫だから!!!ちょっとこっち来て、フリル、もしかしてやばい子連れて来ちゃったんじゃない?

社長大丈夫。私見る目あるから。烏有くん、戸籍とかは任せて。そのかわり、私の後輩としてビシバシ指導するからいいね?」

「•••乗り掛かった船だ。上等だよ」

 

差し出された手を握り返す烏有。

後日•••烏有は役所にいた。

 

「ここに分籍届、戸籍を作るための紙があります。戸籍に名前と年齢、生年月日を書いてください」

「年齢は••••15?誕生日は•••1月7日、苗字は分からない」

「それでは•••自分でこういう苗字がいいなどの希望はありますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すごく寒い、雪の日だった。

 

皮の剥がれた血まみれの手で、鉄格子のついた窓から注ぎ込む光を頼りに、コンクリートを手で掘って、穴から脱走した。

 

 

真っ白な世界だった。

 

 

逃げていくうちに、足取りが重くなった。

 

 

大きな音がした。

 

 

右手に穴が空いた。

 

 

右手を燃えるような痛みが襲った。

 

 

男に蹴り飛ばされた。

 

 

血を吐いた。

 

 

肋骨が折れた。

 

 

内臓が壊れた。

 

 

銃口を頭に突きつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づけば、血まみれになった男が地面に倒れていた。

 

身体中が痛かった。

 

『驚いた•••全身打撲、肺に肋骨が刺さって、しかも心臓右心室と胸部大動脈を撃ち抜かれてるのに生きてるなんて。さすがは()()()()()()()()()()()ね』

 

後ろに、死神のような大鎌を持った女が立っていた。

黒いドレスが、雪の白さと相反して一層美しかった。

大鎌についた金属製のカラスの頭骨を撫でながら、彼女は口を開いた。

 

 

 

『•••キミ名前は?』

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ••••雪代で」

 

所属タレント『雪代烏有』

 

「じゃあこれから宜しくね雪代くん」

「•••宜しく、不知火」





烏有が環境利用できるのは直感です。坂本の弟子とかそういう理由じゃなく、天賦の才です。

星野アイは天才(アイドルとしての)、烏有は天才(殺し屋としての)

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