【死神の子】    作:ランハナカマキリ

4 / 16

・なぜ好物が無いのか。
薄味だと味がわかりにくいから。
どっちかっていうと濃い味じゃ無いとわからない。

・時系列
2008年 星野兄妹誕生。
2009年 烏有誕生。


2011年 坂本 南雲 赤尾 有月合同任務 赤尾 有月行方不明となる。
2012年 アイ殺害。ユキ殺連から追放。麻樹殺害。
2013年 有月が赤尾と共にアルカマル襲撃。
    烏有が古いアルカマル関連施設から脱走。ユキに拾われる。
2015年 坂本太郎が恋に落ちる。
2016年 坂本太郎引退、結婚。
2017年 坂本花誕生。

2020年 ユキ白血病によって死亡

2023年 星野兄妹陽東高校入学 烏有芸能界入り 朝倉シン坂本商店に就職


3

休日、東京新宿区にあるレストラン街に烏有は足を運んでいた。

飯を食べにきたわけではない。もちろん一月前とは違って懐は暖かいが、それよりも重要な用事があるのだ。

政治家の街頭演説の観衆や人気店周辺の人混みを避けながら、小さな店に足を運ぶ。

 

店の名前は『勢羽クレープ』

 

「やってるか、夏生」

「久しぶりだな。烏有」

「兄貴、注文はいっーーお、烏有じゃん」

 

 

勢羽夏生、武器作りの名人。

ボサッとした髪癖のある黒髪と、左目の下に一つ右目の下に二つ泣きボクロがあり、下手なモデルや俳優よりも良い顔をしている。だが性格に難があり、非常にマイペースで生意気な性格の持ち主。しかし、彼の作る武器はどれも一級品であり、JCCの学部生時代の卒業制作で武器製造科では15年ぶりとなるヨツムラ賞を受賞した努力型の天才である。

 

彼は天才ではあるが凡人のように努力をする。

 

烏有は彼のそんな所を気に入っていた。

 

「へ〜今はスタントマンやってんのか」

「まぁな」

「推薦してくれたのってどんな人?」

「不知火フリル」

「え、あのマルチタレント?すげ〜サイン欲しい」

「真冬、お前潔癖症は?」

 

勢羽真冬、ツンデレゆとり野郎。

兄の夏生とは違って黒髪のストレートなマッシュヘアで、常日頃からマスクを着用するほど重度の潔癖症である。身体能力が高く、格上の殺し屋相手でも引けを取らない。非常に冷めた性格で道端で会ったアイドルオタクに対して正論でフルボッコにして泣かせたことがある。

 

「あれはあれ、これはこれ」

「俺が貰ったやつあげるか?ソーセージクレープLサイズと交換で」

「待って•••消毒してからちょうだい」

 

やはりブレない真冬である。

 

「分かった分かった。夏生に消毒してもらう」

「なんで俺•••。てか貰って大丈夫なのか?」

「知ってるか?あの女にとってサイン紙はティッシュみたいなモンらしい」

 

『烏有くん撮影お疲れ。初撮影の記念にサインあげる』

『•••要らん』

『あげる』

『要らん』

『と、言っておいて〜?』

『要らん』

 

結局貰った。

 

「へぇ•••で、本当は?」

「アイツについて一切興味のない俺が持ってたところで豚に真珠だろ」

 

 

 

 

 

一方その頃•••

「へっくしゅ!!」

 

 

 

 

 

 

厨房の床にある、元々地下冷凍庫だった場所を改築した夏生のアトリエに烏有は案内された。

壁一面に彼の考えた設計図が貼られており、床には試作品の山が作業テーブルを囲むように積まれていた。

 

「お前の要望した鎌はまだできてない。代わりに俺の発明品やるよ」

「•••失敗作?それとも成功作?」

「どっちかっていうと•••失敗9割成功1割」

「要らん」

 

手渡されたのは銃身の長い50口径型リボルバー拳銃だった。だが異様に重く、ゴツい感じがした。シリンダーをスライドしてみると、拳銃用の弾丸にしてはやけに尖って細長い形をしている銃弾が5発出てきた。

 

「『ブルー・ブラッド』見た目は少し大きくした50口径リボルバーだが•••通常の弾丸じゃなくて8mmライフル弾を撃てるようにした。反動はデカいが威力は絶大。試しに片腕で撃ったら、肩が脱臼した」

「要らん」

 

即答である。

 

「置き場所がないんだよ。貰ってくれ」

「要らん」

「貰え。新作の『9式発煙爆弾』やるから」

「何それ」

「見た目はただの手榴弾だけど、一度爆発すると、めっちゃものすごい量の煙を出す代物」

「•••欠点は?」

「ピン抜いたら即爆発する」

「•••普通のやつにしてくれ」

「あ〜無い。在庫のスモークグレネード全部使って作ったから」

「••••はぁ、両方もらう。代わりにベーコンクレープ奢れ」

「deal」

 

コイツは昔からそうだ。

 

最初に会った時に持ってた拳銃を分解されて『スクリームガン』に改造された。

(ちなみにスクリームガンは烏有の家にある)

そもそもこの兄弟と出会ったのは日本に来た頃、懸賞金と殺連上層部のポスト目当てに殺しにきた真冬と戦闘したことがきっかけだ。

 

真冬はそこそこ強かったが、腹パン一撃で意識を奪い、誰に雇われたかを聞き出すために潜伏先の山小屋に連れ込んだ。真冬が意識を取り戻す数分前、烏有が尋問のために道具を準備している最中に夏樹が助けに来て一悶着あった後、詳しい話を聞き出した。

 

2人の父親は典型的なクズであり、息子たちを自分を見下した奴らを見返す道具として扱っていたとのこと。

真冬は自分が烏有を殺せば、父親がそれで満足し、兄が自由になれると思って殺しにきたとのことだと分かった。

夏生は母親から真冬が烏有を殺しに行ったことを聞き、本土から急いで駆けつけたとのこと。

 

自分の子供をまるで道具のように命令する父親がただただ不快で、2人の実家に押し入り、父親を半殺しにした。その後は自分が持ってるなけなしの持ち金をあげ、連絡先を交換して別れた。二人はその後家を出て、このクレープ屋を開いたそうだ。

 

尚、父親は何か違法なものに手を染めて殺連刑務所にぶち込まれたそうだ。

 

店内に戻り、テレビを見ていたその時、真冬が待望のソーセージクレープLサイズを持って来た。

 

「おまちど〜」

「お、サンーー」

バシッ!!

 

烏有の脳天目掛け飛んできた矢を、寸前で握って止めた。

 

「矢•••いったいどこからーー」

 

閃光、そして爆発した。

 

 

 

ドゴォォォン!!!!!

 

 

 

煙が充満する店内、スプリンクラーが作動する店内に調理場から夏生が銃を持って出てきた。

「おい何があった?怪我は?」

「敵だ!!烏有は俺を庇ってーー」

 

煙の中から人影が現れる。

服についた煤をはたき落とし、傷一つない烏有の姿があった。

 

「ーーたっく、てか俺のクレープは•••」

 

目に入ったのは、床に落ちたクレープだった。

 

「•••シメる」

 

矢の飛んできた方向に走りだす烏有。

 

「•••相手死んだな」

「おい、店閉めとくか?」

 

 

店から飛び出し、広場に出る。

広場には与党の新人議員の広報車演説で人が集まっていた。とりあえず人混みに紛れ、矢を放った殺し屋が自分を狙いにくくすーー

 

バシュッ!!!

『それでは〜女性初の総理大臣を目指す与党○○党新人の藤原議員〜』

『は〜い!!新人の藤原千花です!!!』

 

人の合間を縫うように、軌道の曲がった矢が正確に頭部を貫こうとしてきた。

矢が目に刺さる寸前にシャフトを掴む。

 

「ーーっ!」

 

弓矢は銃と比較して音が静かで、射手の位置の測定が難しい。

とはいえ弓なのでおそらくそこまで離れていない場所から射ってきているはずだ。

だが周辺に()()()()()()()はない。おそらくこの矢を射った奴はかなり遠くにいる。

 

「面倒だな•••にしてもが強いなーー?」

 

もしかして、と思い風上を見る。

烏有の視力はかなり良いが、弓を射っていたやつは遠すぎて見えない。

 

(・・・・しょうがない、使()()()

 

ギンッ!!

 

赤く光る虹彩。

そしてこの広場から数キロ離れたビルの屋上•••つまり風上に•••

 

()()()()()()()

 

「そこか•••ロビンフッド野郎」

 

 

烏有の言うロビンフッド野郎ことーー塩見 大樹(しおみ たいじゅ)はコンパクトボウを片手に双眼鏡を覗いていた。

ツーブロックの茶髪を風になびかせながら、眼下の群衆に紛れるターゲットを覗く。

 

「くそっ•••あの店にいるところで殺せなかったのは痛いな•••だが狙いは外さねぇ!!」

 

矢を弓につがえて弦を十分に引く。

コンパウンドボウのリムーーハンドルと滑車の接続部位は通常の弓より引く力が強いが、滑車と連動することによって効率良く引くことが可能となっている。また、引き切ると滑車の仕組みでレットオフと呼ばれる保持力が軽くなる仕組みがあり、ピーク時の90%ほどの力で維持できる。その結果、狙っている間の保持力が少なく狙いが安定し、初速の向上と相まって高い命中精度を期待できる。

 

そして風の影響で矢は射程よりも長く飛び、勢いを保つ。

 

パシュ!!!

 

放った矢は弧を描いて飛びーー

 

人の合間を縫うように飛びーー

 

ーー先程同様に、烏有に掴まれる。

 

だが、掴まれたのは僥倖だった。

 

「食らいな!!」

 

弓のハンドルに付いたボタンを押すと矢の先端ーー矢尻が爆発した。

彼の扱う矢は『仕込み矢』といい、爆矢や電矢などの仕掛けが施されている。

 

「これで仕留めーーちっ!」

 

烏有は生きていた。

爆発する寸前、近くにあった議員演説車周辺に置いてあった規制線代わりのカラーコーンの中に投げ捨てたのだろう。

 

すると烏有はリボルバーを両手で構えた。

 

「リボルバー?この距離から当たる訳ーー」

 

バンッ!!!

 

「ーーーーマジかよ?」

弾は大樹の耳をほんの少し削っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーっぅ!?何て物作ってんだアイツ(夏生)!?」

 

「なんかすごい音しなかった?」

「そう?」

「鼓膜破れた〜」

「病院行こ〜」

 

あまりの反動に、ブルー・ブラッドを握っていた両手の骨が軋み、腕に振動がガンガン伝わる。

命中はしなかったが、赤い炎(射者)が動揺しているのが見えた。

 

これはチャンスだ。

 

先ほど貰った9式発煙爆弾のピンを抜き、広場全体を覆うほどの煙で姿を消した。

 

「うわ〜ドライアイス?」

「煙たい」

「火事?」

 

『いいВорона?狙撃してくる敵との戦闘は、まず身を隠しながら、距離を詰めるんだよ』

 

星野ユキ()から教わった訓練を思い出す。

 

まず視界を奪い、煙幕を展開して相手の心理的動悸を誘発。

そして気づかれないうちに距離を詰める。

 

射者の居場所は分かった。

 

だが焦って奴が移動する前に距離を詰めなくてはならない。

幸い、適した遮蔽物はある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、大樹は煙に隠れた烏有を必死に探していた。

「くっそーーどこだ?」

 

 

 

 

焦る。

 

もし烏有が逃げたら?

5年も殺連の追っ手から逃げ続けている狡猾な女の息子だ。

星野ユキからスナイパーとの戦闘についても訓練されているだろう。

 

ここで姿を消されたらどうなる?

 

『いいか?この仕事に失敗したらお前の妹を殺す!!!』

 

「・・・・どこだ?」

 

 

 

 

バリンッ!!!!

 

「な!?」

(ビルーーあの場から周辺の建物の中を伝ってここまで進んできたか!)

 

ドォン!!ドォン!!

 

放たれる銃弾ーー後ろにバク転して避け、片膝立ちの体勢から射つ。

 

パシュッ!!

 

烏有は側方宙返りで矢を回避し、二射目を銃で撃ち落とす。

爆矢を撃ち抜いたことで爆煙が上がり、ふたりの間を黒い煙が遮る。

 

「どんでん会の殺し屋か?」

「••••人質とるクズどもと一緒にすんじゃねぇよ!」

 

烏有はリボルバーの弾倉を確認しながら、煙越しの揺れ動いてる赤い炎を見る。

 

 

•••大樹は、人質にされた大事な妹のことを思っていた。

 

 

〜〜

 

俺の腹違いの妹『塩見 未来』

両親にネグレクトされてから一人っきりで幼い妹を育ててきた。

 

『に〜に〜!!』

 

俺の父親はクソだった。

酒に溺れ、平気で子供に暴力を振るうようなゴミ野郎。

会社の金を横領したことがバレて逃げてる途中に車に撥ねられて死んだ時も悲しくなかった。

 

『にぃに〜〜!!』

 

未来の母親も、男を作って出て行った。

ふたりで支え合って、生きてきた。

 

 

『お兄〜〜!!』

 

〜〜

 

また、あいつの笑顔を見たいから•••

 

(未来のためにーー俺はこいつを殺さないといけないんだよ!!!)

 

パシュッ!!!

 

眉間に飛んでくる矢、それを避けて撃とうとしーー

 

バンッ!!!

 

矢ではなく、銃弾が烏有の肩を貫いた。煙の向こうには拳銃を構えた大樹がいる。

 

「知らないのか?"相手が同じ武器だけ使ってると、それ以外への注意が無意識に削がれる"ってよ!」

「ーーーくそっ」

 

ひとまず体勢を立て直さなければ、煙の向こうに発煙爆弾を投げ入れる寸前ーー

爆弾を握った手ごと矢が貫き、血を含んだ爆塵が周囲を覆う。

 

そしてーー

 

バシュッ!!!

 

「ーーっ!!?」

 

ビリビリビリビリ!!!!

 

電極が2つ、先端についた矢が烏有の懐に刺さった。

 

「妹のためだーー許せよ」

 

パシュッ!!!

 

放たれた矢が、烏有の眉間目掛けて飛んで行きーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

烏有は飛んでくる矢の方向の地面に、発煙爆弾を投げつけた。

 

ボォン!!!

 

爆煙の影響で矢の軌道がずれ、矢は烏有の側頭部を掠めた。

 

「な!?」

 

この隙を逃さない。

 

"赤い炎"へ素早く接近。

手に持っていた弓を蹴り上げ、そのまま蹴り飛ばす。

 

「ぐっーー!!!」

 

壁にぶつかる大樹。

そして、リボルバーの銃口は大樹の腹に向けられていた。

 

「ーー嘘だろ」

「現実だ。残念ながらな」

 

ドォン!!!

 

「み、未来••••っ!」

 

どさっ!!!

 

立ち崩れる大樹。

 

 

 

 

 

 

「••••ん?」

 

その場で立ち尽くす烏有はあるものを見つけた。

それは、目の前で倒れた男と小さい女の子がアミューズメントパークでお揃いのカチューシャをつけているツーショット写真だ。彼の先ほどの言動から察するに、この子が妹だろう。

 

プルル•••プルル•••

 

男の携帯が鳴る。烏有は気絶した彼の上着を弄り、ポケットから古いスマートフォンを見つけ出した。その通話相手の名前にはどんでん会社長(ゴミクズ)と表記されていた。

先ほど、コイツはどんでん会に対して悪態をついていた。

そして俺を殺そうとしているのに(意志)が揺れ動いていたこと。

そしてこの写真。

 

家族

人質

 

全て辻褄が合う。

 

「•••なるほどな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どんでん会本部のビル。

 

ドゴォォォォォン!!!!

 

駐車場が爆発した。

ちょうど社長室には幹部が集合していたところだった。

 

「な、何事だ!?」

「ここがどんでん会本部か?」

「は!?誰ーーぐほっ!!」

 

社長室のドアの前に立っていた殺し屋たちが、一瞬にして急所をナイフで刺される。

ドアを蹴破り、気絶した男たちの体を踏み越えて歩いてくるのは烏有だった。

 

「ひいぃ!?」

 

「お前ら全員•••皆半殺しだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん誰?」

「あ〜••••お前のお兄ちゃんの•••知り合い?」





・真冬がどんな風にアイドルオタクを論破したか
真冬『何かを過剰に推すとか、自分の人生生きてないし自信のねぇ奴だけだろ。そもそもお前何アイドルの彼女面してるわけ?あんなのどうせ作り笑顔だし裏で枕営業しまくってんだろ。そんな女のどこがいいのか俺にはわかんねー、つーかお前の顔でアイドルにつりあってるわけねーだろ。整形しろばーか』
夏生『おいコイツ泣いてるぞ』
真冬『きっしょ・・・』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。