【死神の子】    作:ランハナカマキリ

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烏有の事務所内での評価

フリルが連れてきた出自不明のイケメン。何人かは危ない気配を発していることに気づいているが、それ以外はコネで入った透かし野郎と見下されている。





5

 

謎の怪しい連中に襲撃された日の夜。

大樹と一緒に、烏有の部屋で昼間の下手人が身に付けていたアルファベットのEがついたネックレスを鑑識していた。

彼らの手元には、この間潰れたどんでん会が所持していた殺連非公認の研究所や組織について記載された資料があった。この資料をもとに、このネックレスを調べていたのだが、それに当てはまるものはなかなか見当たらなかった。

 

「見つかんねぇな•••どっか他の国の組織に喧嘩でも売ったんじゃないか?お前が潜伏してたロシアとか中国とか。もしくは東南アジアの組織じゃないか?あいつら最近日本に勢力を拡大してるらしいし」

「•••いや、心当たりは無い」

「こんな奴らより殺連の連中に来て欲しかったぜ」

 

ぶっちゃけ、その通りだ。

意味がわからない殺し屋連中が襲ってくるよりも、出会ったら即死レベルの最強殺し屋集団に来て欲しかった。

•••そう考える彼はおかしいのだろうか。

 

「勢羽には聞いてみたか?」

「あぁ、知らないってーー「うわぁぁ!!?」ーーん?」

 

バリィィィンっと大きな音が鳴り、ガラスが砕ける音がした。

 

烏有はナイフを、大樹はコンパクトボウを持って音が鳴った部屋へ向かう。

 

ドアを開けると、そこにはまだ幼さの残る顔をした少年と顔に面頬をつけた忍装束の男がいた。

 

「ぐぅーーはなせっ!!」

「ふふっ哀れなものだな。()()()忍びの一族の最後の生き残りが無様に死ぬのはなぁ!」

「ううっーーぐっ••••」

 

首を絞められ、少年は気絶した。

首元に短刀を突き刺そうとした男の手を、ブルー・ブラッドから弾かれたゴム弾が命中した。

 

「おい、お前は誰だ?」

「ん? 貴様は•••死神の弟子か!どんでん会がやられたと聞いて驚いた!!殺連の連中も巣を燻された蜂のようになっていたな!!」

 

「質問に答えろ」

 

「ほう•••なら言おう。俺はこのガキを殺しにきた。こいつの一族は、()()()()()が追い求める秘薬の材料を提供しなかった。だから一族皆殺しにした」

「•••そうか。なら見逃せないな」

 

烏有がそう言うと同時に、面頬の男の後ろに立っていた大樹がコンパクトボウで男の頭を勢いよく叩く。

 

「ぐっ!?」

 

隙ができる。

 

「大樹、そいつを連れて隣の部屋に」

「りょーかい」

 

気絶した少年を背負って退散する大樹を尻目で見ながら、烏有は敵を見る。

目の前の男は見るからに忍者の格好をしているが、それに見合った強さを持っていることに烏有は気付いていた。

 

(多分•••日本に来てから戦った中で一番強いな)

 

「コスプレに見合った強さだな」

「そうか。なら知ってるか?日本最古の殺し屋は忍者だってこと!!!」

「知らん」

「なら教えてやる!!!」

 

そういうと鎖鎌を取り出し、烏有に斬りかかってくる。

烏有はそれをナイフで受け止めると、そのまま弾き返すがすぐに次の攻撃が来る。

今度は鎌を投げてきたので、俺はそれをナイフで弾こうとしたが、その鎌が急に曲がったので反応しきれずに頬を掠めた。

 

「はっ!!そんなものか!?」

(今のは•••)

 

どうやらあの鎖鎌の鎌を、持ち手の下の部分を握り鎖の可動域を狭くすることで鎌が急に曲がったようだ。

そして今度は鎖を鞭のようにしならせて攻撃してきたので、烏有はそれを全て避けていく。

 

(なるほど•••確かに面倒だ)

 

周りにあるガラスの破片を蹴り飛ばし、そのまま空中を蹴って男に接近するとそのまま回し蹴りを喰らわせた。

ガラスの破片を防御するために視界を奪った事が功を奏し、男は吹き飛ぶがすぐに受け身を取ると俺に向かって鎖を投げつけてきた。

 

パシッ!!

鎖についた分銅を手で掴む。

 

「隙あり!!!」

 

今度は男が接近してきて攻撃を仕掛けてくるが、烏有はナイフでその攻撃を弾くと、そのまま奴の懐に入ってナイフを突き立てる。

だが、その攻撃を男は避けると、今度は烏有の首を狙って鎌を振り下ろそうとしてきた。

俺はそれを後ろに跳んで避けると、そのままナイフを構える。

 

目の前の男からは自尊と自己満足(オレンジ色)の炎が溢れ出ていた。

 

 

 

 

 

男の体には満足感に満ちていた。

 

ニンニンマンと名乗っているが、彼の家系は忍者じゃない。

普通の殺し屋一族だ。ただ殺連の命令を受けて、ターゲットを殺すだけの人形に過ぎない。

彼は思った。俺はあんな奴らは違う。

ガキの頃にテレビで見た忍者の特集で人生観が180度回転した。

日本最古の殺し屋である忍者の誇りを俺が引き継ぐんだ!!と。

 

そして3ヶ月前、本物の忍者の一族を見つけた。

 

だが、忍者としてはとっくに衰退し、一般人として生きている奴らを俺は認めることができなかった。

これが俺の憧れた忍者なのか?そんなわけがない。

 

本物は、俺だけだ!!!

 

「俺こそが本物の忍者に相応しいんだぁぁ!!!」

「••••つまり自分の自己満足のために、こいつの家族を皆殺しにしたのか?」

「そうだ!!忍者の一族の誇りを捨てて、忍者秘伝の薬を漢方にして売る愚か者どもを皆殺しにして、俺が本物の忍者になる!!!そのために死ね!!!」

 

鎖鎌の鎖を烏有に向けて飛ばし、先端の鎖分銅を胴体に向けて巻き付けようとするが、体勢を低くすることで鎖分銅の巻き付きを回避する。

だが、鎖の追跡は終わらない。まるで蛇のように執念深く追いかけてくる。そして鎖分銅がとうとう烏有の頭を捉えーー

 

ガシッ!!

 

片手で分銅を鷲掴みにした。

そして鎖を掴み、一気に引っ張り寄せる。

 

そして、正拳突き。

 

ドズッ!!!

 

鎖鎌使いの最大の弱点は、近接戦に弱いこと。

 

「ぐぉっ!!?」

「これ以上マンションを壊したくない。外でやろう」

 

引き寄せられたニンニンマンを壊れた窓から外に放り出し、隣のビルの屋上に投げ飛ばす。

外は真っ暗だったが、屋上は月明かりに照らされている。屋上にニンニンマンは転がったが、すぐに立ち上がり烏有を見入る。烏有は先ほどの一撃にあまり手応えを感じていなかったことを考えていた。

 

(多分忍装束の下に何か着込んでいる•••鎖帷子か)

 

下手な防弾チョッキより面倒くさい。

勢羽からもらったブルーローズでならギリギリ貫けるか?

いや、コイツの雇い主の情報が欲しい。

望むべきは瀕死の重症に追い込むことではなく、気絶させること。

 

「ふふっ•••流石は死神の弟子!!だがこれならどうだ!?」

 

背中に隠していたのは日本刀。

烏有も持っていたナイフを構える。

 

「•••行くぞ」

「そんな小さなナイフで刀にかなうわけがーーー」

 

刀を最上段で構えた瞬間、烏有は既に懐に潜り込んでいた。刀は強力だが、どんな武器も当てないと意味がない。接近戦ならなおさらである。大動脈を避けて、内臓を貫かないように肉だけを切る。そして鎖帷子の継ぎ目を縫うように刃を通す。およそ五箇所、烏有はナイフをニンニンマンの体に突き刺した。

 

「悪いが、もう喋るな。癪にさわる」

「つ•••つよ」

 

 

再び烏有の部屋、割られた窓を大家に『ハトが突っ込んで来た』と報告し修理費用を払って、床に散らばったガラス片を烏有は箒で集めていた。大樹は気絶したニンニンマンを、知り合いの対殺し屋の尋問に詳しいやつに預けて、少年を布団に寝かせていた。

 

「見た感じ怪我は無いし•••しばらくしたら目を覚ますだろ」

「おう•••もう帰っていいぞ」

 

隣の部屋に帰る大樹を見送った後、烏有は布団で眠る少年を見つめていた。

殺し屋に追われていた少年•••そしてその殺し屋は、昼間に襲ってきた奴らを知っていたようだった。

 

虹彩を赤く灯し、彼を見る。

そこには青色の炎(恐怖)がメラメラと静かに燃えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれを夢だったとできるのなら、対価に何を差し出してもいいと思った。

 

祖父と叔父が死に、父と母が死に、恐怖で歩くことさえできなかった。

 

『朧!!!振り返るなよ!!!!』

 

歳の離れた兄さん、頭から血を流しながら末っ子の俺を窓から外に逃がしてくれた。

 

『待って!!にいさーー『••••生きろよ』

 

 

 

 

よく漫画や映画で、家族を殺された主人公が復讐に駆られると言う設定がうらやましく思った。

 

現実にそんな事はありえない。

だって、復讐なんて実力を持ってない奴にはできないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーっ!?」

 

飛び起きる。

顔も首も、服を着ている体も汗で濡れていた。

 

「ここ、どこだ?」

「俺の家だ」

「ーーなっ!?」

 

気づけば、枕元に1人の男が座っていた。

月に照らされる銀色の髪の毛と絹のような肌、キリッとした釣り目、最初は赤かった瞳が次第に黒い黒曜石のような瞳になっていった。そして、見るだけでわかる。こいつは相当に強い。

 

「•••誰だよ」

「あのコスプレ野郎は半殺しにした•••何か食うか?」

「•••いらね。迷惑かけたな」

 

ボカンッ!!!

 

部屋に充満する煙。

 

気づけば少年は煙の中に姿を消していた。

 

「げっほ•••窓直せよ」

 

 

朝、今日は登校初日。

 

慣れないネクタイと学生服、紺色のブレザーを身に纏った烏有は妙な気分だった。

1ヶ月前までは戸籍も出生届もなかった自分が学校に通うなど夢にも思わなかった。星野ユキに拾われるまでは、孤児院に記憶しかない。その孤児院も、入居した時は10人いた同期も、人体実験やどの超えた訓練、怪しい薬などの投与に耐えきれず死んでいったまさにアンダーグラウンドの施設だ。

 

孤児院から逃げた後も、ユキが殺連からの追っ手から逃れるために各地を転々とするから学校に通うことはできなかった。本やアニメで学生の登場人物たちが学び屋で和気あいあいとしているのを見て、うらやましいと思った。

 

まさかこんな形で学校に通うことができるとは思っていなかったが••••

 

 

 

星野ユキの絵が目に入る。

 

彼女が死んで間もない頃に、自分宛に郵送されてきたものだ。そこには、絵と一緒に彼女の手紙が同封されていた。ここで彼女から、坂本太郎らへの手紙を渡すことになったのだ。もちろん自分宛のものもあったが、まだ開けていない。自分が殺しの道に落ちそうになったら、これを読もうと決めたのだ。

 

カラスやカモメに啄まれる星野ユキの死体を眺めながら、そう決めたのだ。

 

「•••行ってくる」

 

彼女の絵が、薄く笑みを浮かべたように見えた。

 

陽東高校。

中高一貫校で、日本でも数少ない芸能科のある高校である。

俳優やアイドル、声優、歌手、歌舞伎役者などのテレビや舞台などのマスメディアなどで"見られる"側の人間が多く通っている普通ではない学校である。

 

因みにだが、烏有の母親である星野ユキが通っていたのも()()()()()()()()()

 

 

 

陽東高校には一般科に通常コース・特進コース、専門学科、総合科、芸術科、芸能科など、一学年に6クラスが存在する。そのうち、学業を受けながら部活動やバイトなどの活動ができる総合科1-Dに烏有はいた。

 

 

 

 

 

•••ものすっごい不機嫌な顔をして。

 

「••••ちっ

「せっかく顔を見にきたのに舌打ちって酷くない?うぇ〜ん泣いちゃうかも〜(棒読み)」

「•••社長に接近禁止令出されても知らないぞ?」

 

帰りのホームルームが終わった放課後。唐突に現れ、自分の目の前の席に座った人物。

芸能科にいるはずの目の前にいる国民的美少女が、烏有の機嫌を悪くした原因だ。周りのクラスメイトたちは9割近くがフリルの魅力に気圧されて、烏有がいる窓側の列の最後尾周辺から直径3メートルの空間の人が消えてしまった。それほどに不知火フリルという魔性の美少女に脳を焼かれているのだ。

 

 

烏有にとっては、めんどくさい職場の先輩にしか見えない。

 

「言わなければいいじゃない。それに大丈夫だよ。社長は()()()優しいから」

「•••••あの人、やっぱりお前には甘いんだな」

「正確には身内にはね。あの人、私のお父さんの姉なんだ」

「•••••へぇ」

 

知りたくもないようで、知って得するような情報を延々と垂れ流される。

烏有は次第に本心を隠さなくなりかけていた。

 

 

 

 

これがフリルの計画だった。

この1ヶ月で烏有から、あることが分かった。

 

それは感情の欠落。

 

一般的にはDVを受けて育った子供によく見られる発達障害に近い。

だが彼の場合は、他人や自分のことを理解しているのに感情が欠落している。

 

そのためには苛つきや不満などで彼の頭を支配する。

 

(今日こそ彼の仮面を暴いて、彼の持つ"何か"を私のものにして見せる•••!)

 

 

「あ、そういえばウチのアクション俳優が1人、怪我で引退したらしいよ?あの京さんが監督してる映画の主演ーー」

 

ピクッと、烏有の視線が変わった。

先ほどまでイライラした感情に埋め付くされてた彼の頭が、すっと栓を抜かれたように静かに凪いだ。

 

「京•••••?」

「知らないの?監督・脚本・カメラマン・演出を全てワンオペでやる化け物だよ」

 

ひょっとして、京監督と面識があるのか?

 

「••••もしかして、知り合い?」

「いや、何でもない•••外の空気吸ってくる」

 

烏有は薄笑いを浮かべた。

 

京•••表は世界中に熱狂的なファンを持つ、殺し屋映画のパイオニア・映画制作会社のマーダーフィルムの創立者であり、その裏は殺連所属特務部隊ORDERのメンバー。

 

もし、ORDERのメンバーと接触することができれば?

 

南雲与一の居所が掴めるかもしれない•••!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ぷるるるる•••

 

と、息巻いていると電話が鳴った。

大樹からだ。

 

「•••もしもし」

『速報だ。昨日のガキが街中でーーおっと!?ーー例の変なネックレスつけた連中と鬼ごっこしてるぞーーうおっ!!手裏剣飛んできた!!』

「••••俺が帰るまで引き留めとけ」

 

プチっと電話を切り、雲ひとつない青空を見る。

 

「••••空青いな」

「うん青いね」

「ーーっ!?」

 

気づけば隣に立っていたフリルに烏有は驚愕した。

 

 

放課後、家に帰ると簀巻きにされて猿轡をつけられた少年がいた。

大樹は彼の持っていた武器•••手裏剣や忍者刀、仕込み槍、撒菱を没収していた。一体どこに隠し持っていたんだろうか?そして大樹の顔を見ると疲れが浮かんでいた。どうやらかなり長い間、逃走劇を繰り広げていたらしい。

 

「名前は?」

「•••鳳 朧(おおとり おぼろ)

「歳は?」

「12」

「てことは真冬より年下か•••昨日あの忍者が言ってた秘薬って?」

「•••」

 

朧は硬く口を閉ざす。おそらくだが、今までに殺し屋に質問された事は何度もあるのだろう。こういうタイプは尋問しても、拷問しても絶対に口を開かない。こいつがそうだとはまだわからないが、(ユキ)はそう判断しただろう。

 

烏有は口を開いた。

 

「・・・俺らは敵じゃない。俺には懸賞金が掛けられてるし、むしろ同類だ。お互いに殺し合うより、協力して、喧嘩売った奴らに立ち向かったほうがいい。そうだろ?」

「絶対言わねぇ•••信用できるかよ」

 

 

 

おい烏有•••関わらないほうがいいぞ。ただでさえよくわからない連中に命狙われてんだぜ?こいつ助ける理由がないだろ•••

「••••そうだな。おい、朧」

「•••何だよ?」

 

 

 

 

 

 

「換えの服、持ってるか?無かったら買いに行くぞ」

 

 

「「は?」」

朧と大樹は同時に口を開き、同じセリフを言っていた。

 

 

烏有と大樹、そして朧は街のデパートに来ていた。服が並んでるエリアに行くも、烏有はもともとファッションには一切興味がないし、大樹は妹に良いものを買うために安いやつで済ませているので、どういったものを買えばいいかわからなかった。

 

「取り敢えず、服買うぞ」

「•••だな。好きな絵柄とかあるか?」

「••••これ」

 

朧が手に取ったもの。それは1年前に流行った忍者が出てくるアニメのTシャツだった。

 

「外国人観光客みてぇ•••てか忍者っぽさ隠さねぇのな。バレないか?」

「•••こっちの方がいいだろ。生地も厚めでナイフを通しにくい」

「殺し屋っぽさは隠さないでいいのかよ!?つかっ、ダッセェの選ぶんじゃねぇよ!!」

 

烏有が選んだTシャツはブサいセイウチのキャラクターがプリントされたものだった。

 

「•••」

「まぁまぁ、落ち込むなって」

「お前のはもっと嫌だ!!誰がピリキュアの服なんて着るか!!」

「え!?お前らくらいのガキってみんなピリキュア好きなんじゃねぇの!?」

 

大樹が選んだのは女子が着るようなTシャツだった。

彼には妹がいるせいだろうか、2人とも朧のお眼鏡には敵わなかった。

 

そして、朧の服選びは難航した。

 

「じゃあこれは•••?」

「だから、セイウチから離れろ!?」

「めんどくせぇな••••これでいいだろ」

「なんで猫柄のズボン•••!?」

 

結局、朧の選んだのは灰色の生地に、黒い忍者の筆文字のプリントが入ったシャツを3枚。それに真っ黒なジャージズボン2本だった。

 

「•••これで終わりか?」

「••••次、靴買いに行くぞ」

「「靴も!?」」

 

朧の靴選びも、また難航した。

 

「やっぱり暗器も入れられるようにしたほうがいいか•••」

「•••だったら勢羽に作って貰えばいいだろ?」

「•••もう俺が選ぶ」

 

結局子供用の運動靴に決まったのだった。

この殺し屋思考バカどもめ、と朧は思った。

 

買い物を終えて一息つこうとカフェに入る。

大樹はコーヒーを頼み、朧は一番名前の長い変な飲み物を買い、烏有は水を頼んで席に着いた。

 

「最近の服って凄いんだな」

「そうだな•••やっぱ暗器入れられるように改造ーー「しねぇからな?」ーーはい」

 

朧に釘を刺され、尻込みした烏有。

そんな彼に大樹が耳打ちした。

 

「•••てかなんで買い物に付き合ってんだよ?まさかこいつを匿うなんて考えてねーだろうな?」

「考えてるが?」

「だからやめておけって!!確かに追いかけてきてる連中のしっぽを掴むにはまたと無い好機だが•••あいつ性格悪いし素性も教えてくれないだぞ?やめておけって•••百害あって一利なしのクソガキだぞ!?」

「どんどん会をぶっつぶしてやった恩を忘れたのか?」

「•••はぁ」

 

項垂れる大樹を見ながら、烏有は席で伸びをして、ググッと体を伸ばしーー

 

「•••朧、金出すから全員分のサンドイッチ頼んできてくれ」

「自分で買ってこいよ•••たっく」

 

 

 

 

 

「10時の方向、金髪ショートの女」

「殺し屋か?そうは見えないが•••」

 

こちらをチラチラと見ながら、声をかけようか迷っているような素振りをしている人物がいた。

怪しい。

そして烏有は炎眼で彼女の炎を見ていた。

 

「•••炎がチカチカ脈打ってる。緊張しているな」

「炎•••?」

「とにかく気をつけーーおい、こっち来るぞ」

 

彼女が意を決してこちらの席に歩いてくる。

烏有は騒ぎを起こさないように、目立たずに一撃で相手を倒せるようにフォークを逆手に持つ。

 

「あの!!さっきSARUくんと話してたよね!!」

「「•••へ?」」

 

 

「私、『MEMちょ』ってユーチューバーやってて〜•••聞いたことある?」

「•••」

「あぁ〜•••妹がよく話してたかな。小学校の図工の時間に、ダンボールで悪魔のカチューシャ作って家に持ってきてたような」

「え!!嬉しいな〜!!」

 

頭をかいて照れるMEMちょは烏有と大樹の正面、朧の席の隣に座っていた。

 

MEMちょのスマホの画面には、精巧な忍装束を着た朧の姿があった。

写真の中には、アニメやゲームに出てくる忍者のキャラのコスプレもあった。

 

SARUTOBIという名前で、どうやら50,000人のフォロワーがいるらしい。

 

「SARUくんとは結構前にユーチューブのコラボ配信で知り合って•••本当に可愛くて、弟みたいに思って〜」

「おい買ってきーーMEMさん!?」

「お〜!!SARUくん久しぶり〜!!」

 

「へぇ•••SARUTOーーじゃなくて、朧はインフルエンサーなのか?」

「••••別に」

「かっけ〜!!いい趣味してんじゃん!!」

「そ、そうかな•••あ、他にも写真あるけど•••見る?」

「おう見る見る!!!」

 

さっきまで、とげとげした雰囲気を醸し出していたのに、自分の趣味を褒められただけでこんなにも本性を出すとは、案外かわいいところもあるんだなと烏有は思った。

 

「•••良かったよ。あいつを笑顔にしてくれるやつがいて」

「いやいや〜なんか照れるな〜!!」

 

烏有に褒められて照れるMEMちょ。

こいつちょろいなと思った。

 

 

 

 

とある地下研究所にて•••

 

「なるほど、また逃したんですか?」

「もっ、申し訳ありません!!まさか、奴が死神の息子と相対するなんて!!」

「••••別に構わない。あのコスプレ男には元から期待はしていなかった•••居場所が分かったことと、二つの()()()()が同じ場所にあることは非常に好都合だ」

「•••失礼ですけど、本当に実在するのですか?その•••

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死者を蘇らせる薬なんてーー」

 

ドォッン!!

 

それが彼の最期の言葉になった。

後ろに立っていたメガネをつけた茶髪の研究者が、銃の引き金を引いた。

 

「あ〜言っちゃったね。そんな初歩的な疑問持ってたらここにいる意味ね〜よ」

「•••死体の片付けはしろよ。小林くん」

「あ、は〜い」

 

 





やっと新しい推しの子キャラ出せた〜むずい


・朧の実家
江戸時代には名のある忍者の家系だったが、明治以降は衰退し、忍者秘伝の漢方などを売っていくうちにほとんどが忍者の術を忘れる。朧は忍術を忘れなかった少数派の一族の末裔。今は彼のみ。



遠い親戚に蘇りの術を扱う一族がいるらしい。



・忍者コスプレイヤー『SARUTOBI』
朧が暇つぶしにやっていた装束作りを、兄が『何ならコスプレイヤーするか』と勧めてきたことがきっかけ。

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