NERV本部、ヒトサンヒトマル。
「お手並みを見せてもらおう。君なら勝てるかね。」
第三新東京市の地下深くに作られた作戦発令所。国連軍の将校たちが最後の切り札N2地雷を使いはたして、空調のきいた屋内にいたにもかかわらず汗でぐっしょりになったまま捨て台詞を吐いて立ち去って行った。通常兵器は何の戦果も残さなかった。
「そのためのNERVです。」
そう返したのが特務機関NERVのトップに君臨する碇指令だ。
言葉少なに横に立つ冬月副指令とやり取りをし、迎撃準備を進めさせる。
「レイはどうしている?」
「使えるかね、まだ時間がかかりそうだ。」
騒動のあと特別非常事態宣言は1時間ほどで解除されたが、国連軍艦隊が新横須賀基地に帰投する合間を縫って進まねばならず、霞率いる艦隊の上陸はおやつの時間の少し前になってしまった。
新横須賀基地を通過し、足柄平野が水没してできた湾の中を酒匂川、狩川の旧河道に沿って進むと終点が新東京港大雄山埠頭だ。
第三新東京市の表玄関は小田原から湯本を経由する古くからの街道ルートである。早川沿いの急峻な谷地形のため交通量には限りがある一方で、新横須賀基地への最短ルートでもあるなど重要な動脈となっている。それに対して、ここ大雄山埠頭は直線距離では最も第三新東京市に近いのが売りの裏玄関だ。ただしその名の通り大きくて雄々しい1000m級の山を一つ越えねばならず沿線人口も少ないため、もっぱら貨物の搬入ルートとなっている。
「作戦は完了。ばっちり!」
「無事着いたぜ! ホッとすんな♪」
朝霜、清霜が丸2日間引っ張ってきた艀を岸壁にくくり付け、テルファークレーンで積み荷を陸上の貨車に積み替える。荷役の時間が彼女たちの休憩時間だ。
2人が積み荷を無事に陸に引き渡すと残りの3人も警戒態勢を解いて上陸を始めた。事実上NERV専用となっている艦娘岸壁、といっても小さな浮き桟橋から海中まで下がっている梯子を一人ずつ上がっていく。最初に上陸した霞が
「みんな、お疲れ様。もう遅いし、一番近くのいつもの食堂で良いかしら?」
と提案すると次に上陸した大淀が
「税関の食堂ならもう営業時間過ぎていますよ。」
と返す。
「ち、違うったら!たまたま税関が今日も暇そうだなって目に入っただけよ!こっちよっ!」
と赤面しながら違う建物を指さす。
「残念ながら、海員会館の食堂は休業中です。ポートストアにお弁当を手配してもらっていますので、そこのイートインで食べましょう。」
「だから!だから何で大淀はそういう大事なことを先に言わないのよ!」
すると大淀の後ろから梯子に両手を掛けた状態の足柄が首を伸ばしながら呼び掛けた。
「それは、うちの旗艦がかわいいからでしょう。後ろがつっかえているからとりあえず前に進んでもらえるかしら?これが本当の”首を長くする”!なんてね。」
続いて朝霜、清霜も上陸して5人の単縦陣で青い看板のコンビニを目指して歩く。
このイライラは疲れと空腹から来ていると自己分析する霞であったが、いろいろ考えていくうちにそもそも巡洋艦が2人もいるのになんで駆逐艦の私が旗艦なの?こんな目に合うのはやっぱりあのクズ指令のせいよ!といつもの思考回路にハマってしまった。そんなクズともしばらく顔を合わせていない。そういえば今日の使徒はNERV本部に向かっていったっぽいけど、まさかクズが本当にクズになってたりしないよね…。
「そんなの絶対許さないんだから!」
そうつい口にしてしまったとき、目の前には青と白の縞模様の制服を着た店員さんがいた。案の定、怪訝な顔でこちらを見ている。
「あっ、ちょ、違うったら!!」
両手を顔の前でばたばたせさせている駆逐艦の前に、メガネの巡洋艦が入った。
「お弁当5人前予約していたNERV第零号艦隊の大淀です。」
【用語解説】ポートストア
港湾福利厚生協会の敷地内に立つコンビニ。店名はポートストアだが、中身はよくある青色のコンビニや緑のコンビニだったりする。この店舗は利用者数の低迷対策の一環で所属次第でいろいろ融通を聞いてくれる裏サービスがある。港湾労働者がメインターゲットの店舗だが、一般人も利用できる。(艦娘も港湾労働者…?)