今回はVS本気のアーティ。楽しんでいただけたら幸いです。
「(本気でやってくれ、か)」
ヤーコンさんの娘であるタロさんからの、こっそりと告げられたお願い。ソハヤさんには隠れてそう言ってきた彼女のお願いに、シッポウシティからの道中を思い出す。ジムリーダーでも手を焼く実力のケッキングとペンドラーのコンビ相手に苦戦はしたもののほぼ一撃で決め、伝説と謳われるビリジオンと互角の戦いを繰り広げた、コマタナさん。彼を相手に手加減なんてできようはずがない。なんなら、本気でぶつかってみたいとすら思える。話していたサンヨウトリオやアロエさんもそうだったんだろうな、と理解した。このポケモンなら、全力をぶつけられる。そう思わせる、なにかがあった。
「言われずとも……!」
故に、コマタナさんへのリベンジを狙っているペンドラーを手持ちに加えた。一日足らずしか調整はしてないが、それでも実力は十分。そして、蟲ポケモンのポテンシャルを引き出すのはむしタイプジムリーダーの己の本領発揮だ。
例え、以前苦戦した相手だろうと関係ない。主が圧倒しろと命令したのだから、圧倒するのみだ。そうコマタナさんは身構える。バトルフィールドの脇でいつの間にかアーティのボールから出ていたケッキングがペンドラーのエンブレムが描かれた大きな旗を振り回して応援する中で、ペンドラーの"ハードローラー”とコマタナさんの連撃で放つ"メタルクロー”が激突した。
「コマタナさん!"つるぎのまい”!」
「一気に決めるつもりか、ならば!ペンドラー!"てっぺき”だ!」
"メタルクロー”の連撃で攻撃力を上げ、さらにソハヤの指示で放った"つるぎのまい”で攻撃力をぐーんと上げるコマタナさんはてっぺきで固めた防御力を容易く突破し、ペンドラーの外殻を貫いて突き飛ばす。
「"とぐろをまく”だ!」
本来覚えないがこのペンドラーのみ習得している"とぐろをまく”で体勢を整え、車輪の様になってグルグル回転してバトルフィールドの端に四肢を踏みしめてギリギリ耐え凌ぐペンドラー。"てっぺき”と"とぐろをまく”により防御力は三段階、攻撃力と命中率は一段階上がっている。
「ペンドッ……!」
「よく耐えたペンドラー!“バトンタッチ”!」
「え!?」
「ナタッ!?」
体力ギリギリで耐えたペンドラーを引かせ、その能力変化を受け継がせて繰り出したのは相棒ポケモンであるハハコモリ。本来は打たれ弱いポケモンであるハハコモリ。その弱点を、"てっぺき”"とぐろをまく”"バトンタッチ”で解決した。ケッキングが立てた親指を下に向けてブーイングしているが、勝つにはこれしかなかったのだから仕方あるまい。
「“はっぱカッター”!」
ハハコモリの十八番である葉っぱの手裏剣を放つ。ただの“はっぱカッター”と侮るなかれ。量も鋭さも速さも通常のものとは比べ物にならない、もはや弾幕と言っても過言ではない代物だ。“バトンタッチ”に驚きこそしていたものの、その全てを“みだれひっかき”で斬り捨てながら突進するコマタナさんの実力にはアーティも舌を巻くが、ハハコモリの“はっぱカッター”はここからが真骨頂だ。
「コマタナさん!“アイアンヘッド”!」
「ナタッ!」
「効かないね…!“いとをはく”!」
“はっぱカッター”を突破してきたコマタナさんの、“つるぎのまい”で攻撃力をぐーんと上げた“アイアンヘッド”が叩き込まれるも、三段階も上げた防御力で受け止めたハハコモリ。ケッキング&ペンドラー戦でも援護として用いた“いとをはく”が放たれる。コマタナさんは訝しみながらそれを“みきり”で回避するも、狙いはすばやさを下げることではない。放たれた糸は、そのまま、斬り弾かれて宙を舞っていた“はっぱカッター”に次々と付着すると、ハハコモリは糸を繋いだ腕を振るう。
「ナタッ…!」
その行動に不信感を抱いていたコマタナさん。振り返りざまに背中に襲い掛かってきたまるで鋸の様な引いて斬る斬撃を両腕で受け止め弾き飛ばされる。それは、まるで蛇腹剣の様な“はっぱカッター”を繋げた糸だった。
「今のを防ぐとはね!ハハコモリ、容赦はしなくていい!美しく、華麗に、恐ろしく、とぎすませ!“つるぎのまい”!」
「コマタナさん!“みだれひっかき”をもう一度!」
“つるぎのまい”を応用してフィールド全てをズタズタに引き裂くとんでもないリーチの斬撃が次々と叩きつけられ、ソハヤの指示に従い“みだれひっかき”で防いでいくコマタナさん。アーティは冷や汗を流す。なにせ、本気を出したハハコモリはシャガのクリムガンすら防戦一方に追い込んだ実績を持つ。それを、さらにペンドラーで強化している状態。それですら、コマタナさんは傷一つついていない。すべて“みだれひっかき”で的確に弾いているという神業を行っており、美を追い求めるアーティはそれに美を感じた。その妙技に観客席のタロも気づいたのか感嘆の声を上げていた。
「なら、もう一度“はっぱカッター”!そして“いとをはく”!」
ならば増やせばいい、と相棒を信じて“はっぱカッター”を展開した傍から、右手で“はっぱカッター”つきの糸を振り回しながら左手から糸を伸ばしてくっつけ、脅威の二刀流を披露するハハコモリ。さしものコマタナさんも、手数の増えた連撃に冷や汗を流す。
「ビューティフルッ!今の君は最高に美しいよハハコモリ!それを引き出したコマタナさんに、ただ感謝を!」
「コマタナさんっ!」
思わず悲鳴を上げるソハヤ。それを聞いて、コマタナさんは意を決して“アイアンヘッド”で無理矢理“はっぱカッター”を弾きながら空中に舞い上がる。
「焦ったねコマタナさん!飛んで火にいる夏の虫とはこのことさ!華麗に決めるんだ、ハハコモリ!“シザークロス”!」
空中なら回避はできまい、とハハコモリに糸付き“はっぱカッター”を交差させる“シザークロス”との合わせ技を叩き込むアーティ。このとき、熱くなり過ぎたアーティは忘れていた。敵はあくまでコマタナさんではなく、トレーナーのソハヤで。これは2VS2の試合であることを。
「交代!メラルバ!」
「なっ!?」
回避不能の斬撃の前でコマタナさんをボールに戻し、代わりに空中に投げ出されたのは自分が託したメラルバで。ソハヤは逆に、ちゃんと自分が部外者ではないことを覚えていた。コマタナさんの強さに頼りつつも、敵を分析し、自分にできることをずっと探していたのだ。そしてこれは、この場における最適解。
「メラルバ、“ひのこ”をばらまいて!」
「なんと…!?」
炸裂する寸前、火の粉を雨の様にばら撒き“はっぱカッター”に引火させるメラルバ。進化後は“太陽の化身”とも謳われるウルガモスになるメラルバはまるで太陽の如く灼熱の火の粉を放ち、糸に引火して炎上するハハコモリ。
「っ、戻れ!ハハコモリ!」
「それを待ってました、アーティさん!メラルバ、“かえんぐるま”!」
たまらずボールに戻したところで、アーティは失策に気付く。“バトンタッチ”で引き継がせた能力上昇は交代によりリセットされ、さらに2VS2であるために出したのは瀕死のペンドラー。しかも、交代直後で硬直もある。そこに、炎を纏ったメラルバが縦に回転しながら突撃する。それはまるで火を纏った車輪の如く。
「ケッキンッッ!」
「ペンド…ッ!?」
ケッキングの叫びが虚しく響き、吹き飛ばされるペンドラーは横になって目を回し倒れ伏す。戦闘不能である。こうなればもう、なにも強化できていないハハコモリを出すしかなく、それに伴いソハヤも交代する。登場するは、主人に窮地を救われやる気満々のコマタナさん。
「……やられたよ。初心者トレーナーって嘘じゃないのかい?」
「バトルのやかたでずっと、学んできましたから!コマタナさん、決めるよ!“アイアンヘッド”!」
「負けるなハハコモリ!“シザークロス”!」
▼コマタナさんの“アイアンヘッド”
▼こうかはばつぐんだ!!
互いの最大火力が正面からぶつかり、そして。ハハコモリが錐揉み回転しながら天井に背中から叩きつけられ、落ちてくる。タロの歓声が上がった。
チャレンジャー・ソハヤ。完全勝利。
コマタナさんだけ警戒していたアーティの敗北でした。道中でコマタナさんの強さを見せつけられたからこその勝機でした。あそこで油断せずに交代しなければ勝負はわかりませんでした。
てっぺきとぐろをまくからのバトンタッチペンドラー+つるぎのまいでリーチ最強ハハコモリ。ペンドラー抜きでもシャガのエースポケモンを追い込むぐらいには強い組み合わせです。
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