今回は前回の怪異の正体。そしてまさかの絶体絶命?楽しんでいただけたら幸いです。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
俺を殺したアイツが憎い。この粘土板でしか動けぬ己が憎い。寝ていた俺を捕まえたばかりか海外に売り飛ばしてしまったあの双子が憎い。全てが憎い。憎い。憎い憎い憎い。
ああそうだ、全部ぶっ壊してしまおう。
コマタナさんが差した先にあったのは、展示品の一つである石棺だった。蛇か竜の様な複雑怪奇な文様が描かれたもので、不気味な代物だ。それを見たアロエの夫は「ああっ!」と叫んだ。
「そ、それは……剣と盾みたいな変な髪型の現ガラル王家の当主を名乗る双子が、「うぅーん、ドラマチーックな代物がお望みか!ならばこちらを受け取るがよーいのです!」「我々こそ、ガラルの純粋なる血族!うぅーん、セレブリティ!」と、どう見ても粘土板だけど先祖の入ってた石棺ってことで押し付けられたやつです!やはり曰く付きのインチキな代物だったかあ!」
「なにその双子……」
「ナタッ!」
頭を抱えるアロエの夫と呆れているソハヤに、言ってる場合かと怒鳴るコマタナ。その瞬間、がたがた揺れ始めて固定器具を無理やり外した石棺もとい粘土板が浮かび上がって直立したかと思えば、パズルの様な線が入って分離。ペラペラで細長い影の様な触手が内部から砕けた粘土版の破片を繋ぐように伸びており、ちょうど粘土版に描かれた竜の目の部分からギョロギョロ動く紫色の単眼が覗いてソハヤとコマタナさんを睨みつけた。竜の顔や目の部分の形からかまるでこちらを嘲笑っているかのように見える不気味さと禍々しさを有した其れの名は、デスバーン。イッシュに生息するデスカーンのガラル版ともいうべきゴースト・じめんタイプのおんねんポケモンである。なお、進化条件がかなり厳しいため世に数体しか存在しない超絶珍しいポケモンである。
「デスッバァアアアアアアアンン!!!」
「デスカーン…じゃない!?コマタナさん!」
「ナタッ!」
粘土板の破片のついた影の様な手が一斉にコマタナさんを囲む様に伸びる。コマタナさんは刃で迎え撃とうとしたが、直前に直感で何かを感じ取ったのか身を捩り、回避。デスバーンはそれをいいことに本体から“シャドーボール”を連打。それに対応しようとしたところを四方八方から粘土板を押し付けてコマタナさんを押しつぶした。
「コマタナさん!?」
「ナっ、ナタぁあああア!?」
コマタナさんの苦悶の声が響き渡る。先ほどのピンチから救い出してくれたヒーローの様なポケモンの悲鳴にざわめく端から見守っていた客たち。それもそのはず、デスバーンはおんねん、すなわち怨念ポケモン。その影の様な身体に触れてしまうと、石碑に刻まれた呪いの絵の恐ろしい記憶を見せつけられるという。コマタナさんはその恐ろしい記憶を押し付けられてしまったのだ。
「コマタナさん!」
「あ、危ないですよ君!」
「コマタナさんから離れろお!モノズ!“ずつき”!」
いてもたってもいられなくなったソハヤが飛び出し、モノズを繰り出してそのまま渾身の頭突きをデスバーン本体に叩きつける。しかし、無傷。ゴーストタイプにノーマルタイプの技は無効だ。そんな当たり前の事実すらソハヤは知らなかった。
「え……?」
▼デスバーンの“ポルターガイスト”
するとデスバーンは癪に障ったのか、先ほどの惨状を作り出した技である“ポルタ―ガイスト”を発動。本来は相手の持つどうぐを操り攻撃する技だが、それは道具の多い博物館という場では“サイコキネシス”と同等の力を得る。どうぐを浮かばせ、自在に操る。デスバーンはそれを片手間でやってみせた。
「た、大変!バルチャイ!みんなを守って!」
「チャーイ!」
咄嗟に繰り出したバルチャイがどうぐの飛び交う空間を飛行し、なによりも堅いと自負している髑髏のおむつでヒップアタックを繰り出し、客に襲い掛かるどうぐを次々と弾き飛ばしていく。バトルのイロハも知らないバルチャイだが、ひとつだけ決めていることがある。それ即ち、主人の命令を死んでも守る。それこそ、救われた自分にできる恩返しだから。
「モノッ!」
「うん、行こうモノズ!おじさんはみんなを外に避難させて!」
「あ、あなたはどうするんです!?まさか…!」
「アイツをぶっ飛ばす!よくもコマタナさんを…!モノズ、“かみつく”!」
「モノッ!」
そしてそんなバルチャイの頑張りを見たソハヤは奮起し、別の技で攻撃。今度は効果抜群の“かみつく”が本体に炸裂し、デスバーンは怒りの目をギョロリとモノズに向けた。
「モノッ!?」
「モノズ、私が指示するから避けて!左!しゃがんで!右に飛んで!上にジャンプ!左前に飛びついて!」
それ即ち“ポルターガイスト”の矛先が向くことと同義。デスバーンからいったん離れ、四方八方から飛んでくるどうぐを、ソハヤの的確な指示で紙一重で回避していくモノズ。生まれつき目が見えないというデメリットを背負っているモノズだが、なによりも安心できる声に全幅の信頼を置いてそれに応える。コマタナさんだけではない、ソハヤとそのポケモンたちは、深い絆で結ばれていた。
「デスッバァアアアアアアアンン!!!」
すると英雄像が再び動き出し、今度は直接浮かんで一直線にモノズ目掛けて飛んできた。ソハヤはまた回避の指示をしようとするも、その直線状にあるものを見て考えを変える。中途半端なバトルの知識しか持たない、されどソハヤは、その判断力だけは長年見続けてきたから知っている。あの憧れの背中を追いかけるために旅に出たのだから。
「モノズ。……今だよ!しゃがんで!」
「モノーッ!」
「デスッ!?バァアアアアアアアンン!!!???」
するとそれはしゃがんで頭を抱えたモノズの頭上を飛び越えて、怒りに駆られて自分が直線状にいたことすら気付いていなかったデスバーンに直撃。大きく吹き飛び、壁とサンドイッチにされてしまった。同時にコマタナさんに触れていた腕がすべて外れて解放してしまった。
「ナタッ!」
悪夢から解放されたコマタナさんが、ギロリとデスバーンを睨みつける。デスバーンは英雄像を押しのけ、全ての腕を掲げて威嚇。また悪夢で圧し潰そうとシャドーボールを連続で撃ちながら腕で触れようと伸ばしてくる。
「デスッバァアアアアアアアンン!!!」
「ナタッ!ナタッ!」
それに対し、コマタナさんは一瞬で全身を刃で研磨。“ロックカット”で素早さを上げて目にも留まらぬ速度で包囲から脱出。壁を走り、一周、二周、三周、四周と勢いづけていくと壁から飛び出し、錐揉み回転しながら渾身の頭突きを叩き込んだ。
▼コマタナさんの“アイアンヘッド”
▼こうかはばつぐんだ!!
「デスッ!?バァアアアアアアアンン!!!???」
凄まじい音が響き渡り、粘土板が粉々に粉砕。吹き飛ばされ、倒れ伏すデスバーン。それを見届けたコマタナさんはデスバーンの残骸を指さしながら「ナタッ」と告げ、それに頷いたソハヤが駆け寄り、手にしたモンスターボールをその残骸に投げつけると、デスバーンの残骸すべてが吸い込まれていき、床に落ちて力なく一回揺れてからカチンッと音が鳴った。
「この子も、そうなのかな?」
「ナタッ」
「モノッ!」
「チャーイ!」
「うん、みんな。……この子は、私が保護するよ」
新たな仲間の入ったモンスターボールを大事そうに撫でながら、ソハヤはへにゃっと笑うのだった。
というわけで例の双子の見栄のせいで送り込まれてブチギレてたデスバーンさんが犯人でした。新たな仲間です。
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