今回はアロエ戦となります。楽しんでいただけたら幸いです。
「その後、私は保護したモノズとバルチャイ、そしてついてきたコマタナさんをを両親に頼み込んで手持ちにしました。でも、その時すんなりボールに入ってくれたコマタナさんがどうしてあの時助けてくれたのか、どうして私なんかに付き従ってくれるのか。それはまだわからないんです」
過去のことを話し終えたソハヤは、ぺたぺたとデスバーンにテープを貼りながら俯いた。コマタナさんのようなすごいポケモンを自分なんかが持っていいのか、という葛藤が見て取れたアロエは微笑ましさに笑った。
「なるほどねえ。それで、どうして家出なんてすることになったんだい?その頼もしいポケモンたちでジム制覇したいとか?」
「いえ。……私のバトルの楽しさを教えてくれた、憧れの人がいて。その人がソウリュウシティを離れてしまったから、えっと、その、追いかけようと……ごにょごにょ……」
「ははーん。わかった、ホの字だね?」
「ホノジ?ポケモンですか?それとも人の名前?」
「はははっ。違う違う。その人のことが好きなんだねってことさね」
「……………っ!」
ボンッと湯気と共に顔が真っ赤に染まるソハヤ。コマタナさんは異常事態にびくっと反応し、恥ずかしさのあまり顔を両手で覆ってしまったソハヤを心配して両手をブンブン振りまわして無事か確認している。その様子がおかしくてアロエはまた笑った。
「えっと、その、違いますよ?私、あの人に会うのが怖くて怖くて。自分なんかが追いかけてきて迷惑だって言われる悪夢ばっかり見て、それをなんとかするためにムンナに会うためにいあいぎりで木を斬るためにサンヨウジムに挑んで、ムシャーナに悪夢を食べてもらってようやく会いに行く決断がついてすやすや眠れるようになったぐらいですし!ぜーっ、ぜーっ!」
「ほらほら、息継ぎなしにそんな長く喋るから……ほら、お茶」
「あ、ありがとうございます……」
「まあつまり、家出して、ジム戦までして、ムンナを探して、そこまでして勇気が欲しかったってことだろ?大好きじゃないか」
「ぶふうっ!?」
渡されて口にしていたお茶を噴き出すソハヤ。お茶がびっしょりかかってコマタナさんは無念無想の境地みたいな顔をした。
「それに通りがかりだってのにこんなめんどくさそうなポケモンまで捕獲して保護してさ?本当に優しい子だよ、あんたは」
「いえ、その……放って、おけなかったのでっ」
「そうかい?ならあたしが預かろうか?ゴーストタイプの四天王とは知り合いなんだ。小説のネタ集めによく博物館に来てくれているしね。私から紹介してあげるよ?」
「だ、だめです!デスバーンは私たちの仲間なんだから!」
デスバーンを守る様に手を広げて立ちふさがるソハヤに、アロエは不敵に笑う。
「冗談さね。そこまで愛着を持ててるなら心配しなくていいね。でも残念さね」
「残念、とは?」
「サンヨウの三人が言ってた面白いトレーナーと戦うのを楽しみにしてたのさ。あたしはもう一年ぐらいしたら優秀な後継に引き継ごうと思っていてね。一年前のあの少年の時ぐらい痺れる戦いができるもんだとね。でもジム戦を目的としてないならしょうがないさね」
「えっと……コマタナさん、やる?」
「ナタッ」
アロエの言葉を聞いて少し考えるソハヤはコマタナさんに了承を取り、頷く。サンヨウジムはあくまで目的のための手段でしかなかった。だけど。楽しかったのは、事実なのだ。
「……私はさっきも言った通りバトルが好きで、コマタナさんは強い人と戦うのが好きなんです。そういうことなら、お願いします。アロエさん」
「そうかい?それは、嬉しいねえ。ぜひとも頼むよ。あ、それと敬語はやめていいよ。かたっ苦しいのは嫌だろう?」
「…はい!」
とりあえず修復を終えたデスバーンとコマタナさんをボールに戻し、奥のバトルフィールドに移動するソハヤとアロエ。アロエは伸びをしてボールを顔の前に掲げるように構え、ソハヤは掌を上にしてボールを乗せる形で掴んで構える。
「ルールは2VS2のシングルバトル。チャレンジャーは入れ替えていいがジムリーダーの方は勝ち抜きルール。どうぐは禁止。問題ないね?行くよ!」
▼ジムリーダーの アロエが 勝負を しかけてきた!
「お願い、コマタナさん!」
「本気で行くよ、ムーランド!」
ソハヤが繰り出したのは絶対の信頼を置くコマタナさん。アロエが繰り出したのはかんだいポケモンのムーランド。アロエはノーマルタイプの使い手であり、人によってはジムリーダーで最も苦手と言う人も多い実力者である。それ即ち。
「なるほどね、はがねタイプはノーマルの通りが悪い……なんて、考えてなかった顔だね?」
「今初めて知った…!」
「素直なのは良いことだ!だけどはがね対策は万全さ!“ほのおのキバ”!」
「コマタナさん、“かまいたち”で防いで!」
炎を纏って噛みついてきたムーランドの攻撃を、ソハヤの指示に頷いて風の刃を渦の様に両手の間に展開し、炎を散らしてムーランドを斬り刻むコマタナさん。それを見てヒューッとアロエは口笛を鳴らした。
「…へえ。本来覚えないかまいたちを覚えるコマタナ……面白いね」
「コマタナさんに、できないことは、多分ない!“メタルクロー”!」
「ムーランド、“とっしん”!」
コマタナさんのジャブの如き連続で放つ高速の“メタルクロー”を、コマタナさんの何倍もある巨体を生かして吹き飛ばすムーランド。そのまま“とっしん”の勢いのまま旋回し、吹き飛ばされ転がったコマタナさんにもう一度攻撃を加えようとする。
「さあどうした!ムーランドの勢いは止まらないよ!」
「ならその勢いを利用して…“いあいぎり”!」
ソハヤの指示に、素早く腰に手を置いて、ムーランドの“とっしん”に合わせて一閃するコマタナさん。胴体を横に斬られたムーランドは転倒し、コマタナさんは残心する。
「やるね、だけどあたしのムーランドはタフだよ!“ほえる”!」
「ワオォオオオオオオンンッ!!」
「ナタッ!?」
「なっ……!?」
「チャイ…?」
すると、残心していて隙だらけのコマタナさんの背後から咆哮が浴びせられ、コマタナさんは無理矢理ボールに戻されて、代わりにソハヤが二匹目として用意していたバルチャイが出てきて困惑している。
「え、なんで…?」
「ムーランド!根性だしな!“かみくだく”さね!」
「ガウッ!」
「バルチャイ!?」
ソハヤの悲痛の声と共に、何とか起き上ったムーランドに噛み砕かれて宙を舞うバルチャイ。空を飛べるとはいえ、吹き飛ばされればそう簡単に滞空姿勢をとれなかった。
「“ほえる”はね、強制的にポケモンを交代させる技さ。コマタナばかりに頼ってきたんだろう?ああ、戻してもいいよ。その隙を狙って“ほのおのキバ”が炸裂するだけさね」
「え、えっと……えっと……」
予想外の事態に混乱し、さらにアロエの言葉で大混乱に陥るソハヤ。バトルのやかたやソウリュウジムの見学でこんな戦法使われたことはなかった。どうしようどうしようという言葉で頭の中が埋まっていく。すると、グルグルしている瞳が、空のバルチャイを映した。その顔は、覚悟を決めた顔だった。
「バルチャイ!“だましうち”!」
「なに!?」
バルチャイの髑髏のおむつによる強烈なヒップドロップがムーランドの背中に叩き込まれ、倒れ伏す。コマタナさん頼りだと考えていたアロエ。実際そうなのだが、一つだけ誤算があった。目の見えないモノズと違ってコマタナさんの強さをずっと見せ続けられてきたバルチャイ。ソハヤに恩義を感じている彼女は思ったのだ。自分だって、ソハヤの役に立つと決意したのだ。最初こそ困惑していたが、頼られたのが嬉しかった。ならば、女を見せるしかあるまい!
「チャイチャイ、チャイ!」
「やった、やったよバルチャイ!」
「…やられたね。コマタナ以外もちゃんと鍛えられていたのは予想外だ。だけど、そうでなくちゃね!ミルホッグ!」
「交代、コマタナさん!」
ムーランドが倒れれば恐れるものは何もない。コマタナさんと交代するソハヤに対し、アロエが繰り出したのはミルホッグ。けいかいポケモンと呼ばれるミルホッグは、見てすぐ理解した。圧倒的な力量差を。
「ミルホッグ、“かたきうち”してやんな!」
それでも主の指示は絶対。直前に仲間が倒されていれば威力が倍増する強烈な拳を叩き込み、仕留めたと確信するミルホッグだがしかし、脳内では警戒音が鳴り続けている。なぜだ、そう考えた瞬間、意識が文字通り吹き飛んだ。
▼コマタナさんの“リベンジ”
▼こうかはばつぐんだ!!
強烈なアッパーカットがミルホッグの顎に突き刺さり、打ち上げる。ソハヤは歓喜のままに両手を上げ、アロエは参ったとばかりに感嘆の声を上げる。
チャレンジャー・ソハヤの勝利!
ポケスペのアロエは良いぞ。
・バルチャイ♀
とくせい:ぼうじん
わざ:おいかぜ
だましうち(ヒップアタック)
ついばむ
しっぺがえし
もちもの:なし
備考:すなおな性格。ちょっぴりみえっぱり。なによりも堅いと自負している髑髏のおむつを武器にしている。群れの落ちこぼれで孤独を感じていたが、自分を拾ってくれたソハヤに恩義を感じて彼女のためになろうと頑張っている健気な子。弟分のモノズは目が見えないため、コマタナさんの凄さを一番よくみているポケモンでもある。
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